【海外働き方事例】ヨーロッパ3か国から学ぶ、労働生産性を上げる働き方とは

海外と比べて残業時間が長いと言われている日本で、「働き方改革」という言葉が叫ばれるようになってもうすぐ3年。プレミアムフライデーの実施や残業時間の削減・テレワークの推進など、企業でも様々な施策が打ち出されています。しかしながら、労働時間を減らすだけでは持続可能な施策だとは言えません。業務の進め方やシステムそのものにメスを入れず、以前と同じ仕事量を少ない労働時間でこなそうすれば、社員に無理を強いるだけの結果になってしまうでしょう。本記事では、労働生産性が高いと言われているヨーロッパの事例を参考に、日本が真の働き方改革を遂げるにはどうすればよいのかを考察していきます。

働き方改革を進める日本企業

実は、日本は先進国で最も労働生産性の低い国

労働生産性とは、「一定の労働時間で、どれだけ高い売上・成果を上げるか」を指します。実は、日本は先進国の中でもっとも労働生産性の低い国だと言われています。日本生産性本部の発表した「OECD加盟国の時間当たり労働生産性ランキング(2016年度)」では、日本は35か国中20位(平均以下)、先進国G7中7位と、データからも生産性が高くないことが示されています(下図参照)。

出典:https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/

また、米リサーチ会社の発表した「給料が高く労働時間の少ない都市ランキング(2017年度)」においても、東京は69都市中47位とあまり高い順位であるとは言えません。上位3都市と比べて、年間勤務時間が300時間以上も多くなっています(下図参照)。

出典:https://www.expertmarket.com/focus/research/best-cities-to-work

こうした状況から、2016年以来国全体で「働き方改革」が推進されており、残業時間削減などに取り組む企業が増えてきています。しかし労働時間を減らしても、旧態依然とした方法や制度で仕事を続けていては、結果的に社員の負担がより大きくなってしまうかもしれません。では、上記のランキング上位の国々は一体どのようにして仕事の効率化とワークライフバランスを達成しているのでしょうか?

Case①:労働生産性の高い国1位は、ヨーロッパの小国

では、労働生産性が最も高い国とは一体どこなのでしょうか?実は、先ほどの「労働生産性ランキング」で2位、「給料が高く労働時間の少ない都市ランキング」で堂々の1位を獲得したのが、ヨーロッパの小国「ルクセンブルク」です。

ルクセンブルクは「一人当たりの名目GDPランキング」においても、20年以上連続で首位をキープしています。一人当たりのGDPが高いということは、国民の一人当たりの生産量が大きいということを表し、一人一人が豊かで経済が活発に循環していることを示します。日本の0.68%の国土面積(神奈川県とほぼ同じ)を持ち、0.45%の人口が住むこの小国が、どうしてこれほどまでに高い経済力を維持できているのでしょうか?

(1) ICTインフラ整備とスタートアップ企業支援

ルクセンブルクはICT(情報通信技術)のパイオニアであり、政府主体で世界トップレベルのデジタルインフラを整備しています。例えば政府の施策では、5G通信サービスの提供、信頼性の高い(ティア4)データセンターの建設、高齢者に対するデジタルリテラシーの普及などを積極的に促進しています。

このようにICTが進んでいるルクセンブルクは、多くのスタートアップ企業や技術開発系企業のハブとなっています。特にICTを生かしたフィンテック系企業が多く集まり、ブロックチェーンから仮想通貨、セキュリティの強化、投資サービスの自動化など様々な事業の開発が活発です。また政府も産業や経済の活性化のため、税優遇や法整備などを通してスタートアップ企業の支援に力を入れています。こうした理由から、ルクセンブルクは”自国で起業した後、世界進出を目指す際に、会社の本拠地とすべき場所”とも言われています。

(2) 社内の多様性が高い

ルクセンブルクの労働人口の70%は、実は外国人。ドイツ・ベルギー・フランスに囲まれているという地理的条件もあり、ヨーロッパを中心に170以上の国から、人々が移住しているのです。ルクセンブルクの職場では、多様性を重視し互いの文化を尊重するムードがあり、外国人でもコミュニティに入りやすいと言われています。

また、ルクセンブルクは国民が平均3.6種類の言語を話す、多言語併用国家になっています(Eurobarometer調べ)。これは、公用語がルクセンブルク語・フランス語・ドイツ語の3種類で、学校では英語の学習が義務付けられているためです。ヨーロッパは多文化・多民族国家が多く、EU域内では往来も自由なので、ルクセンブルクのような多様性が高く国際的な職場環境こそ、ビジネスを円滑に進めるのに効果的なのです。

ルクセンブルクから学ぶ「優秀な人材の集め方」

ICTインフラを整備し、国際色の高い職場を持つルクセンブルクは、「優秀な企業・人材の誘致に成功している」と言えます。これはEU圏という地理的条件も関係しているので、島国であり独自の文化を持つ日本が単純に真似をすることは難しいでしょう。しかしながら、日本でも昨年より「渋谷ビットバレー構想」というITベンチャー企業の拠点を渋谷に集める計画が進められています。今後は日本政府にも、デジタルインフラの整備などITベンチャー支援の施策が求められるでしょう。また政府の方針により、外国人労働者の受け入れを拡大することが決定しています。外国人の社員を受け入れる体制を整えたり、多様性を尊重する文化を社内で作り上げることがより重要になるでしょう。

Case②:「優秀な人々が世界でもっとも集う場所」、スイス

ルクセンブルクに負けず、優秀な人材が数多く集まっているといわれるのが、永世中立国で有名なスイスです。スイスは、2018年発表の「人財競争力ランキング(GTCI)」「IMD世界人材ランキング」共に5年連続で首位をキープしており、“優秀な人々が集う、世界で最も重要な活動拠点”であるとの評価を受けています。(ちなみに日本はGTCIで22位、IMDでは29位となっています。)どのようにして、スイスは優秀な人材を持続的に育成し、国外からも有能な人材を引き寄せるのでしょうか?

(1) 職業教育(訓練)の徹底

スイスでは、国内の人材育成の手段として、学生を即戦力にするための質の高い職業教育が重視されています。スイスの若者は16歳で義務教育を終えた後、基礎的な職業教育コースか、勉学に専念する高校に進むかを選択します。例年、およそ3分の2の学生が前者の職業教育コースを選択し、専門学校での授業と企業の実習に参加します。

座学の授業では、体育も含め一日8時間の授業を週2日受けます。セールスマンやエンジニアなど、入学前に選んだ職種に必要な理論や知識を学習することができます。実習では、学生は約230もの職種からインターンシップ先を選ぶことができ、専門的な知識・技術を直接現場で教わることができます。このように、スイスでは学生だけでなく企業側も職業教育に力を注いでいます。これは、各企業のニーズに合わせて実習生を育成することによって、新規雇用のコスト削減・雇用後のミスマッチを減らすことができるからです。実際、2017年以降は企業側の受け入れ人数が志願者数を上回っていると報告されています。

スイスの若者の失業率が2.4%(2019年1月)とかなり低いのも、早い段階で職業教育を受け、自分に合った職業を見つけられるからだともいえます。(※同時期のEU加盟国の平均は14.9%)

3~4年間の基礎的な職業訓練を終えた後、さらに専門的な知識や国家資格を得るために「高等職業教育」を受けることも可能です。高等職業教育では、同時期に大学で学術的な教育を受けたり、専門分野の研究を進めたりすることも可能です。このようにスイスでは、学術な研究とキャリアアップを両立させる教育システム(デュアルシステム)が人財育成に大きく貢献しているのです。

(2) イノベーションを重視する社会

スイスは「世界イノベーション指数(GII)」で2011年より首位を維持しており、「世界で最もイノベーティブな国」だと言われています。

スイスのイノベーションを支えているのが、世界トップクラスの研究所の存在です。スイスは小国でありながら、国内の研究開発費へ年間2.5兆円、対GDP比率では3.42%の投資をしています。先進国・日本の研究開発費は対GDP比率で3.49%なので、スイスが研究開発に力を入れていることがお分かりいただけるかと思います。

またスイスでは、研究機関と企業の連携を強化する取り組みも行われています。2018年には、民間企業・実験所・研究所を一地区に集めた「スイス・イノベーション・パーク」が国家と州の支援により作られるなど、様々な施策がとられています。

スイスから学ぶ「人材の育て方」

このように、スイスは早期からの職業教育に力を入れています。学生に高いスキルを身につけさせる職業訓練は、失業率の低下やスイス経済の安定にもつながっていると言われています。こういった職業訓練を日本の教育システムとして導入することは難しいかもしれませんが、それでも日本が学べる点は数多くあります。

  • 実習生に担当者やメンターを付けるなど、人材育成に力を入れる。
  • 年齢にかかわらず、インターンシップを受けられるようにする。
  • 雇用前のインターンシップを必須化する。

日本でもインターンを導入する企業は増えてきており、学生側の関心も高まってきています。tnewsの調査によると、大学生で「長期インターンに興味がある」と答えた人は約85%なのに対し、「経験がある」と答えた人は10%のみです。そして興味がある理由として一番多かったのが、「社会経験を積むため」という回答でした。

現在、日本のインターンシップは採用目的のものが多く、スイスのようにキャリアアップを推奨する長期インターンはまだ多くないように思われます。年齢にかかわらず参加でき、学生のキャリアアップを助ける有給・長期インターンが増加すれば、学生にとってより自由な職業選択が可能になるかもしれません。

Case③:世界で最も幸福度の高い職場を持つ、北欧の国とは?

最後にご紹介するのは、「社員幸福度ランキング(2016年度)」「ワークライフバランスの優れた国ランキング(2018年度)」で共に1位、「世界幸福指標(2017年度)」で例年トップ3にランクインしている、デンマークです。

北欧に位置し、高福祉・高負担国家で有名なデンマークですが、また、職場環境や働き方はどのような特徴があるのでしょうか?そして、社員の満足度を高める働き方とはどのようなものなのでしょうか?

(1) ワークライフバランスを重要視する価値観

デンマークで暮らす人々が大切にしている概念に、「ヒュッゲ」というものがあります。ヒュッゲとは、「家族や友人と一緒に過ごしたり、リラックスする中で生まれる心地よい時間、そしてそこから生まれる幸福感」という意味です。これは、デンマークに住む人々の「暮らしの姿勢・心の持ち方」を表しているともいわれています。こういった価値観から、デンマークでは他国と比較して日々の生活の中で「仕事」を重視しすぎない文化があります。

この「ヒュッゲ」という価値観は、デンマークの働き方の柔軟性の高さに反映されています。まず、夜が長いなどの地理的条件もあり、フレックスタイム制もかなり普及しています。デンマークにある企業のうちおよそ85%が、社員ごとに1日の始業・終業時間を変更できる規則を導入しています。

また、労働時間そのものも非常に短いです。InterNationsの調査によれば、デンマークの週労働時間は39.7時間(世界平均は44.3時間)であり、社員のほぼ全員が残業せず、午後5時には退勤します。法律により、労働時間の上限が残業時間も含めて週48時間であること、全ての労働者が毎年5週間の有給休暇を取得する権利を持つことが定められています。時間外労働には通常の給与の150~200%支払うことも決められています。

昼休憩は毎日決まった時間にとることができ、同僚とともに食事をするのが一般的です。会社のデスクで食事をするような社員はほぼおらず、小さな企業であっても社員食堂が整備されていることが多いです。

これだけ働く時間が柔軟にしているのであれば、仕事をうまく回したり、大きな成果を上げたりするのが難しいのでは?と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、驚くことにデンマークの労働生産性は世界トップクラスなのです。「OECD加盟国の時間当たり労働生産性ランキング(2016年度)」では、デンマークは72.2ドルと35か国中5位です(=日本のおよそ1.5倍の生産性)。デンマークの職場では、短い労働時間で効率よく仕事を進めることが期待されるのです。

(2) 女性の働きやすい環境づくり

デンマークは職場での女性進出にも力を入れており、「ジェンダー平等の先進国」とも呼ばれる国です。

まず、出産後の女性の職場復帰に対するサポートが充実しています。国営の保育所は、午前8時~午後5時まで、6歳までの子供が利用可能です。必要であれば、小学校入学後も学童保育を利用できます。そして、デンマークは産休・育休制度も積極的に導入しています。産休はもちろん、出産後も、女性は14週間・男性は2週間の有給休暇を取得できます。それに加えて、32週間(=8か月間)の有給休暇を両親で分割することができ、父親が育休をとることも多いそうです。有給休暇としての育休が制度化されていることで、女性が復職しやすい環境が整えられているのです。

男女間の職場での格差も、他国と比べて縮小してきています。OECDによると、デンマークの男女間の給料格差(2017年度)はおよそ5.7%であり、OECD平均の13.8%、日本の24.5%と比べても世界的にも低い水準であることがわかります。

デンマークから学ぶ「社内環境づくり」

「ヒュッゲ」という暮らしの姿勢から、仕事を重視しすぎず、柔軟性の高い働き方を導入しているデンマーク。ここから学べるのは、「仕事とそれ以外の時間の区切りを明確にする」ことの重要性です。

  • 十分な日数の休暇を取得できる制度を整備する。
  • 休憩を決まった時間に取り、だらだらと仕事をしない。
  • 残業せず、定時に退勤できることを当然の権利とする。

このように、一定のタイミングで休憩をとったり仕事を早めに切り上げるなど、疲れた状態を引きずったまま作業をしないようにすることが生産性向上の近道だといえます。また、「残業=効率が悪い」という認識を社内で広め、ムダな残業時間を少しでも減らすことが大切です。

まとめ

ここまで、労働生産性ランキングトップ10に入る3か国のビジネスカルチャーをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。スタートアップ支援が盛んで、国際色の高い職場が特徴的なルクセンブルク。職業訓練が重要視されており、優秀な人材を次々と育成しているスイス。そして、労働時間短縮や女性の復職など、社員の満足度を上げる施策を導入しているデンマーク。3か国とも日本とは異なるビジネスカルチャーや制度を持ち、生産性を上げる音に成功しています。日本がこれまでの働き方や制度を根本的に見直すにあたり、こういった海外の事例から学べることも多いのではないでしょうか。

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