TeamHackersをお読みの皆さん、こんにちは。
ニュージーランドで働くプログラマの「はっしー」です。
前回の記事では、僕が海外プログラマへの道を歩むきっかけとなった、シンガポール生活についてお話しました。(https://teamhackers.io/determination-to-the-overseas-programmer)
日本に帰国してから、いよいよ僕は海外転職に向けた準備を着々と進めることになります。しかし転職以前に、僕にはやり残したことがありました。それは大学で情報工学を学ぶことです。
連載の第1回でお話したように、僕はもともと文学部日本史学研究室の出身。いちおうは情報処理の国家資格を取得し、ITの基礎を勉強したとはいえ、学問的にITを学んだことがないのはずっとコンプレックスでした。
そこで転職する前段階として、海外大学への留学を挟むことにしたのです。そもそも当時の自分にはプログラミングの技術がほとんどなく、いきなり転職するのは無謀でしたから。
IT関係の勉強ができて、なおかつプログラマとして転職できそうな国はどこか? そんな基準でいろいろな国を探しているうち、ニュージーランドという選択肢が急浮上してきました。
今回は、
- なぜニュージーランドを選んだのか?
- 海外脱出を実現させるために行った英語勉強法
についてお伝えしていきます。
興味ゼロだったニュージーランドを狙った理由
まずは、数ある国の中からニュージーランドを選んだ理由からお話しましょう。
理由1: 英語さえできれば留学できた
英語圏の留学先というとアメリカが真っ先に思い浮かびますが、アメリカ留学はほかの国に比べてハードルが高いのです。というのも、英語力試験であるTOEFLのほかに、GMATという数学などの学力試験も受けなければならないから。
以前よりもマシになったとはいえ、相変わらず毎日残業している自分に、英語以外の試験まで手を回す余裕などありません。ところが、イギリスやオーストラリアなど旧イギリス植民地圏の国々では、IELTSという英語力試験のスコアさえあれば大学に入学できます。
このため、旧イギリス圏の中から渡航先を選ぶことにしました。
理由2: 予算を安くおさめることができた
僕が海外脱出準備をしていた2012年末から2013年にかけては、急激な円安が進んだ時期でした。年の頭には1ドル70円台だったのが、あっという間に80円になり90円になり、2013年5月には100円を突破してしまいます。
学費や生活費のことを考えると、少しでも予算を安くおさめられる国を探さなくてはなりませんでした。そこでベストだったのがニュージーランドだったのです。
イギリスやカナダ、オーストラリアなどほかの国に比べても通貨が安い。計算してみると、他の国に比べて年間100万円以上出費をおさえることができるとわかりました。
この費用の差は大きかったですね。
理由3: 卒業後に現地で就職できる可能性が高い
もちろん、留学はゴールではありません。あくまで目標は「海外で働くプログラマになること」ですから、それが目指せる国でないと意味がないのです。その意味で言っても、ニュージーランドはかなり現実的な選択肢でした。
そもそも移民の国であり、外国籍の社員を採用することに抵抗がない。ニュージーランド政府自体がIT技術者を優遇し、永住権を得ている人も多い。
ならば、自分にもチャンスがあるかもしれない……!そう思うに十分なポテンシャルを、ニュージーランドから感じられたのです。
それまでまったく興味のなかったニュージーランドという国を目的地として選んだのには、こうした理由がありました。
IELTS Academic 6.5 への挑戦
ニュージーランドにはいくつか国立大学がありますが、僕はその中でもクライストチャーチの郊外にある「リンカーン大学」を選びました。小さな大学ながらITを学ぶことができること、食事付きの学生寮が整っており生活費の目安が立てやすいこと、また数ある大学の中でも特に学費が安かったことなどが理由です。
ニュージーランドの大学には Graduate Diploma (グラデュエイト・ディプロマ)と呼ばれる、1年間のみの履修で学士卒相当の資格が得られるコースがあり、そこを目指すことに決めました。
進学のためには、英語力試験のIELTS Academicで規定のスコアを取らなければなりません。IELTSはリスニング、リーディング、ライティング、スピーキングの4つのセクションに分かれており、それぞれが9.0点満点で採点され、総得点によって全体のスコア(オーバーオール)が決まります。
進学に必要なスコアは、各セクション6.0以上、オーバーオール6.5以上。必要スコアを達成するまでの戦いが始まりました。
全然スコアが取れない状況からの挑戦開始
シンガポールでの海外研修から帰国した直後、2012年12月に受験したときのIELTSのスコアはこんな感じでした。
- リスニング: 5.5
- リーディング: 7.0
- ライティング: 5.0
- スピーキング: 5.0
- オーバーオール: 5.5
うーん、はっきり言って、ぜんぜんダメです。
リーディング以外のスコアが最低基準にすら達しておらず、これは相当がんばらないと厳しいぞと痛感しました。
必要スコアをクリアするために僕が行なった対策は、主に以下の3つです。
- IELTSの問題集を毎日解く
- 専門の塾に通う
- 毎朝オンライン英会話をする
順番に解説していきましょう。
IELTSの問題集を毎日解く
IELTSには、運営元であるブリティッシュ・カウンシルが出版している公式の問題集があります。まずは問題集を手に入れて、帰宅してからは毎日リスニングとリーディングの問題を解くようにしました。
それぞれ3〜4つのセクションにわかれているので、1日1セクションずつ解くようにして、知らなかったり聞き取れなかったりした単語はノートに書き留めていました。
リスニングに関しては、最初はIELTS特有のイギリス英語がぜんぜん聞き取れなかったのですが、次第に耳が慣れていきコンスタントに6.0以上を取れるようになりましたね。
専門の塾に通う
IELTSで最大の難関だと感じたのが、ライティングとスピーキングでした。なにしろ、ライティングとスピーキングは自己採点ができません。実際にIELTSを受験してもスコアが返ってくるだけで、なぜその点数なのか? どこを改善すれば良いのか? が、さっぱりわからないのです。
これはちゃんとした先生に評価してもらわないとどうにもならないと思ったので、IELTSのライティングとスピーキングの練習ができるところを探してみました。すると運良く、自宅から近いところにIELTS専門の塾があったんです。すぐに入塾を申し込んで、毎週土曜日に通うことにしました。
ライティングについては先生が添削をして想定スコアと一緒に返却してくれますし、スピーキングは毎週1時間ガッツリと練習できます。
本番のIELTS直前にはスピーキングの模試を実施してくれるのも心強かったです。
毎朝オンライン英会話をする
以前から行なっていたオンライン英会話も継続しました。会話のレッスンは聞く・話すというスキルの練習に加え、文法や単語の理解度を確認する作業にもなるので、最速で英語力を伸ばしたい人にはオススメですね。
僕の場合、毎朝出勤する前に15分間のオンライン英会話を行なっていました。はっきり言って朝から英語で会話するのはむちゃくちゃしんどいですが、残業が当たり前で何時に帰れるかわからない生活をしていたので、朝くらいしかレッスンの予約ができなかったんです。
少しの時間ではありますが、コツコツ練習を積み重ねていくうちに、IELTSのスピーキング課題にも心の余裕をもって臨めるようになっていきました。
そんな毎日英語を勉強する生活を半年ほど続けた後……ついにIELTSの必要スコアをクリアしました!
試験結果はトイレの個室の中でスマホで確認したんですけど、見た瞬間
「これでやっと自由になれるぞーーー!!」
とひとりでガッツポーズを決めたのを覚えています。
それからすぐに大学へ入学を出願し、受理されたのを確認して、会社へ退職届を提出。とうとう、5年半の社畜生活にピリオドを打つことができたのでした。
「語学」x「専門性」はセーフティネットになる
長時間労働ながらも、毎月ちゃんと給料がもらえる会社員の身分を手放すのは、正直言って怖かったです。ニュージーランドでの学費や生活費を考えると、社畜生活の中で貯めたお金をほとんど吐き出すほどの出費になるのは確実でした。
それでも僕が海外に行く挑戦ができたのは、英語とプログラミングができるようになれば仕事には困らないだろうという自信があったからです。
海外ではともかく、日本国内ではTOEICのスコアが900点もあれば英語ペラペラ扱い、立派な希少人材です。それに加えてソフトウェア開発のスキルがあれば、さすがに以前のような社畜生活に甘んじる必要はないでしょう。この考えはいまでも変わっておらず、最悪NZに住めなくなっても日本に帰ればいいやと思っています。
自分の専門性に語学力がかけ合わさるだけで、超強力な武器になります。プログラミングに限らず、どんな仕事でも同じです。特に接客に関する仕事をしている人にとっては、これからの日本にはますます多くの外国人観光客が訪れることが予想されるため、語学力は高く評価されるでしょう。
「海外には興味あるけど、あとのことを考えると勇気が出ない……」という方。平均的な日本人よりも高い語学力を身に着けてしまえば、仕事の心配をする必要はまずありません。海外経験そのものがセーフティネットになるので、どうぞ安心して日本から飛び出してみてください。
次回は、いよいよニュージーランドへ渡航。アラサー男の留学生活が始まります。