【ビジネスパーソン必見】『グランメゾン東京』から学ぶプロの流儀

2019年の秋ドラマ、木村拓哉主演の『グランメゾン東京』は、前評判通りの高視聴率を記録しました。その魅力は、定番のキムタク人気、脇を固める豪華な出演陣、高級なフランス料理のシーンはもちろんですが、このドラマにプロフェッショナルを追求する真摯な姿があったからだと推測されます。

今回は、ドラマ『グランメゾン東京』において、超一流の料理人たちが織りなす物語から、我々が学べるプロフェッショナルとは何かを考えたいと思います。

1. プロフェッショナルとは

木村拓哉演じる尾花夏樹は、かつてパリのミシュラン二つ星レストランのカリスマシェフでしたが、ある重大事件が起きて店も同僚も失います。どん底で逃げ回っていた彼が、鈴木京香演じる早見倫子と出会うことで、再び東京で三つ星レストランを目指す物語です。

この物語で見られるプロフェッショナルとは何でしょうか。

  1. どんな逆境でも(三つ星という)最高の目標を掲げ、プライドと情熱をもってやり遂げること
  2. 優秀な仲間を集め、信頼関係を築き、相乗効果を最大限に発揮すること
  3. お客様に至高の感動と喜びを感じてもらうために、素晴らしい仕事(料理)を追究し続けること

1-1 最高の料理人としてのプライド

一流のプロでも、失敗して終わってしまう人と再び輝きを取り戻す人がいます。その違いは何かといえば、プロフェッショナルとしてのプライドを持ち続けているかどうかということなのかもしれません。

「自分なら最高のフレンチを作れる」「料理人は料理で返す」という気概で、尾花は再びミシュランの三ツ星獲得を目指します。

物語では難題が次々と現れますが、彼は「大事なのはどうすれば一番いい料理ができるかどうかなんじゃないの」といって気にしません。そうした料理人としてのプライドがあるからこそ、この物語は動き出すのです。プロフェッショナルのプライドだけは、何があっても失いたくないものです。

1-2 プロとしての最高の知識と技能

尾花のプロ意識の高さは、自分が納得するまで究極の料理をとことん追求するところからうかがえるでしょう。誰かの料理を真似たり流行を追ったりせず、自分が本当にすばらしいと思える料理を作るために、最高の知識と技能を身につけ妥協なく突き進んでいきます。 

グランメゾン東京に集まったスタッフも、同じようにプロ意識の高い魅力がある人物ばかりです。

食べるとその料理の素材や調理工程がわかる絶対味覚の持ち主・早見倫子オーナーシェフをはじめ、フランス料理の知識や経営感覚を持ち合わせたギャルソンの京野(沢村一樹)、ユニークな発想をもち繊細な料理を生み出す相沢(及川光博)など、その道で最高を極めた優れたメンバーがそろいます。それぞれ違った個性や強みをもっているメンバーであるため、その多様性が大きな相乗効果を生み出していっています。

倫子シェフが「私、すっごい仲間に恵まれているな…」としみじみ呟くのも本音でしょう。

1-3 リーダーシップ力

尾花はかつてカリスマシェフでミシュラン二つ星の総料理長でしたが、それだけでパリの元同僚たちがついてきてくれるわけではありませんでした。

実際、元同僚たちは官僚を殴って逃げ隠れした尾花を非難し、当初は協力しようとはしなかったのです。そもそも型破りすぎて性格にも難があり、料理にも厳しすぎる尾花に嫌悪する同僚たちがいたのも事実でした。

ただ、尾花がある事件(ナッツオイルを誤って混入した事故)を起こした同僚の失敗を責めず、料理長として全責任を引き受けた潔さと彼の腕前は誰もが認めるところだったのです。尾花のそういったプロ意識と実力がリーダーシップの源泉であり、かつての同僚たちを再びグランメゾン東京に集結させる魅力となったのでしょう。

2. 何のために働くのか

働く目的がはっきりしないと、やる気を持続できません。それでは、尾花たちは何のために働いているでしょうか。

2-1 三つ星を取らせるために働く

尾花がグランメゾン東京で懸命に働くきっかけとなったのは、オーナーシェフの倫子に三つ星を取らせたいと思ったからです。「俺があんたに三つ星を取らせてやるよ」といって欧米風に中指、薬指、小指をビッと立てるところが、このドラマの決めポーズでもあります。

実際、尾花は過去の事故による風評被害のため表舞台に立てず、スーシェフとして倫子シェフを支える役に回らざるを得ない事情はあります。それでも、彼は自分を料理人として再起させてくれた倫子シェフに三つ星をプレゼントしたいという思いが行動を駆り立てたのでしょう。

その後、尾花は元の同僚たちを集め、自分たち(日本人)が東京で三つ星を取れる資質と能力があることを証明しようとします。みんなが同じ三つ星というビジョンをもって奮い立ったから、ワンチームとしてブレることなく同じ方向に突き進むことができたのでしょう。

2-2 お客様一人ひとりのために

三つ星を取るためには、素材の質、料理の技術の高さ、独創性、店の装飾、皿や接客などに至るまでいろいろ必要になるようです。こうした仕事の高品質を保障するのはもちろん、料理のプロのみならずビジネス全般において大事な要素は、お客様第一主義の発想です。

尾花のかつての師匠であった潮卓(木場勝己)がそれを教えてくれています。グランメゾン東京の料理や接客術は最高級だと自負して、どのお客様にも一コースだけ出し続けていた尾花たちに、お客様一人ひとりへの配慮が決定的に足りなかったことを気づかせたのです。

そうして、お客様のコンディションによって料理やもてなしを個別最適化した配慮が生まれます。また、従業員のひとりがノロウイルスを発症したときも、自ら保健所にすぐ連絡、一軒一軒訪問して顧客に異変がないか調べるなど、危機管理を徹底して誠実に対応しました。

単に三星を獲得するためではなく、「お客様に、私たちが用意できる一番美味しい料理を味わってもらいたいだけなんです」と真摯に語る倫子シェフの姿にもプロ意識を感じます。

2-3 最高基準を満たすために

プロフェッショナルとして仕事をする場合、一番納得させなければならないのは、実は自分自身なのかもしれません。

尾花は食材・味覚・見た目のすべてにこだわり、つけ合わせ・ワイン・デザートなどのあらゆる品の細部にまでこだわります。少しでも納得できなければ賄い料理に回し、本当に美味しいと感じたときだけ首をゆっくり後ろに倒して堪能する ― 彼のそんなしぐさにスタッフたちは一喜一憂するのです。

尾花はそうした最高の基準をほかのスタッフにも求めます。たとえば相沢の考えた創作料理に納得できないと、「こんなんで三つ星とれるか」「死ぬ気でやれよ」と激しく罵倒する。下働きの芹田(寛一郎)が必死で努力しても、まともな仕事は簡単に任せません。ソムリエの久住(中村アン)のワイン選びやそのペアリング料理を考案するときもそうでした。

究極の料理を提供するためには、死ぬほど料理を愛し、もっと上を目指し続け、価格を超えるサービスや商品内容を提供する。そうしてお客様の満足や審査員の最高評価を得るために、自他ともに厳しい行動基準を課すのが彼らのプロ意識なのでしょう。

3. どのように働くのか

プロ意識が強くあり、仕事の目的も明確になると、あとはどのように働くかというスタイルが問題になります。

3-1 妥協なく徹底して追求する

プロは自分の仕事を徹底的に追求するため、妥協をしません。グランメゾン東京のメニューを考案する際も、尾花をはじめとしたスタッフたちは連日の徹夜をいとわず料理に打ち込みます。口だけでなく努力も怠らないのです。

昨今こうしたハードワークを美化することは問題視されがちです。実際、このハードワークに付き合って、か弱い倫子シェフは何度か倒れています。さらに、仕事と私生活が相乗する存在になるほど一緒に没頭することは、誰もができることではありません。

ただ、実際の起業家などは、創業時や勝負所の正念場でトコトンやり抜くタイミングがあったと言う話も伺います。やはり、プロフェッショナルとしてそういった全力を尽くして鬼気迫る態度で取り組む時があるということなのでしょう。

3-2 最高のフランス料理を作る

尾花たちは「フレンチにはまだ無限の可能性がある」と、現状に満足せずメニューの改良・改作を続けます。三つ星の定義は「その店のために旅行する価値のある卓越した料理」を提供すること。ある意味、食べる前と後では「人生が変わってしまうようなすごい料理」「世の中を変える力、人を動かす力のある料理」を追求しなければならないということです。

現状に満足しないで、もっと上を目指すことで進化を遂げられるとも言えます。そうした料理を作る姿が頼もしく、そして優雅であるのも、このドラマの見どころです。

尾花を演じる木村はビストロSMAPなどで料理を作ることには慣れているのか、繊細な味付けや風味、見栄えを究極まで洗練していて、手さばきや身のこなしが見事です。磨き抜かれた職人の包丁で素材をさばく姿は、侍の佇まいのように端正で隙がありません。

3-3 季節と素材を活かした日本風のフランス料理

グランメゾン東京は、日本にあるフランス料理店であるため、単に本場フランスの料理を真似るのではなく、日本(東京)ならではの土地柄や四季感に合わせて節物の素材を活かしたフランス料理にするこだわりを見せています。東京近辺の産地に根付いた文化や風土まで理解し、最高のジビエや魚を調達したり、季節の野菜や山菜を使ったり、創作料理に最適の日本ワインを選んだりするところにシェフ達のこだわりや創意工夫がきいています。

また、悪評を立てられて客足が遠のいたときには、フードフェスに打って出てフレンチ以外の料理にもチャレンジします。臨機応変に誰にでも喜んでもらえるような料理を提供できるところもまたプロフェッショナルを感じさせます。

そのほか賄い料理や相沢の娘アメリーへのデザートなど、多彩な料理を披露してくれます。尾花が厳しい現実にも対応して、自己の頑固な方針すら柔軟に変え、仲間のスタッフたちと協力しながら成長していく姿もプロ意識があるからだといえるでしょう。

まとめ

こうしたプロフェッショナルがあるから、妥協なく最高の仕事をし、自分も大切な仲間もお客様もみな最高に幸せにすることができるのです。こうしたプロフェッショナルな仕事の流儀は、日本のみならず世界の標準なのではないでしょうか。

この原稿を書いている現在(12月25日)、グランメゾン東京が三つ星を取るかどうかわかっていないのですが、彼らのプロ意識は確かに三つ星に値するといえるでしょう。

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