マネジメント能力を高めるにはどうすればいい? 必要なスキルやおすすめの本を紹介。

管理職やプロジェクトマネージャーに就く人が、必ずといっていいほど求められるのがマネジメント能力です。マネジメント能力はさまざまな能力から成り立っているので、どのように高めるのか、具体的な方法がわからない人も多いはず。

そこで、マネジメント能力とはどんな能力か、マネジメント能力が高い人の特徴、マネジメント能力の高め方について、詳しく解説します。

マネジメント能力とは

マネジメント能力とは、「管理能力」のことを指し、特に経営者や管理職に求められる能力です。ビジネスシーンでは、企業やチームなどの組織を管理する能力を指し、管理することで目標や成果の達成を導きます。

「マネジメント」という概念をビジネスシーンで提唱した、アメリカの経営学者であるピーター・F・ドラッカーは、著書『マネジメント』の中で「マネジメントとは組織に成果を上げさせるための道具であり、機能であり、機関である」と定義しています。

引用:ピーター・F・ドラッカー(2001)『マネジメント』ダイヤモンド社

目標や成果を達成するために、求められる要素を適切に分析し管理する能力、そしてそれを活かしてチームを維持・促進するスキルがマネジメント能力なのです。

マネジメントの定義や目的、役割については「マネジメントとは? マネジメントの業務内容や求められるスキルについて解説」で詳しく解説しています。

リーダーシップとの違い

マネジメント能力と同義で使用されている言葉に、「リーダーシップ」があります。どちらも企業やチームの目標や成果を達成するという意味では同じ方向を向いていますが、それぞれ異なる能力を指しています。 

リーダーシップとは統率力や指導力と訳される言葉で、人に対して使われています。目標や成果に向かい、メンバーを導く能力を意味します。

一方マネジメントは、目標や成果に向かい、人だけでなく資源や資金など、ビジネスに関する全てを総じて管理し、運用する能力を意味しています。社内社外問わず、さまざまな立場や能力を持った人材が業務に取り組みやすいような環境を整え、生産性を向上させる力がマネジメント能力なのです。

マネジメント能力が高い人・低い人の特徴

マネジメント能力が高い人はビジネスシーンでも活躍の場が多く、困難なプロジェクトであってもその能力を発揮し、成功に導きます。では、マネジメント能力が高い人はどんな特徴を持っているのでしょう? マネジメント能力が高い人、低い人それぞれの特徴を比較してみましょう。

マネジメント能力が高い人の特徴

マルチタスクで仕事ができる

マネジメントを任されると、自分自身のタスクをこなしながら、メンバーのタスクの進捗状況まで気にかける必要があります。そのため、複数の作業を同時進行したり、いくつもの検討事項を並行して考えたりする能力を持っています

適材適所に配置した人材が自主的に動ける仕組みを作れる

スキルや能力、適正の異なる人材ごとに、最大限パフォーマンスを発揮できる業務を見極めて任せます。いくらマルチタスクで仕事ができたとしても、全ての工程を管理することは不可能です。安心して任せられるチームづくり、必要な時にサポートしやすい仕組みづくりをし、それぞれが自立して仕事ができるよう管理を行っています

観察力に長けており、本質を見抜くことができる

目標や成果を達成するためには、どのような優先順位でタスクを処理すれば良いかを的確に判断します。マネジメントをしているとしばしば問題が起こることがありますが、そんな時は経験や感情で判断することなく、正確なデータや統計を用いて冷静に観察し、問題の本質を客観的に判断することで解決に導きます。

どれかひとつでも欠けていると、マネジメント能力が高いとはいえません。これらは全てマネジメントに必要な能力なのです。

マネジメント能力が低い人の特徴

マネジメント能力が低い人は、マネジメント能力が高い人とは逆の特徴を持っています。マルチタスクが苦手、チームに任せず業務を抱えがち、人材を活かしきれない、自分軸で考えがちで視野が狭いというような特徴があります。

マネジメント能力が低い人の特徴も同様で、どれかひとつでも当てはまってしまうとマネジメント能力が低くなってしまいます。くれぐれも注意しましょう。

マネジメント能力の高い人が持っている8つのスキル

マネジメント能力の高さについて、より深く考えてみましょう。この章では、マネジメント能力の高い人が持っている8つのスキルを解説します。

目標設定能力

1つ目のスキルは、実現可能な目標を設定する能力です。リアリティのない目標では、チームのメンバーに負担をかけたり、モチベーションを下げたりしてしまう恐れがあります。しかし、着実に取り組むことで実現が可能な目標であれば、チーム一丸となって達成まで走り抜けることができます。

そして、その成功体験が今後の信頼を築き、成果を最大限発揮するマネジメントができるのです。

意思決定力

プロジェクトやチームのマネジメントには、成功を左右するような判断や意見の対立への対処など、意思決定力が求められています

マネジメントをする立場として、中立の視点を持ち意思を示すこと、進むべき方向を明らかにすることで、チームは安心して業務に取り組むことができるでしょう。

分析・課題解決能力

目標や意思を決定するためには、課題に対し適切な解決方法を選択するスキルが必要です。この時重要なのが、経験や直感だけに頼るのではなく、論理的に分析する能力です。

プロジェクトマネジメント力

プロジェクトを俯瞰的に見て、定めた目標の実現に向けて計画通りに進んでいるかを管理するスキルです。人材やコスト、スケジュールなど、プロジェクトに必要な要素を総合的に判断する必要があります。

プロジェクトマネジメント力の手法やおすすめの本は、「プロジェクトマネジメントとは? 代表的な手法やノウハウ、おすすめの本をご紹介」で詳しくまとめています。

進行管理能力

マネジメント能力の高い人は、決められた期限までに目標とするクオリティを達成するために、作業工程やスケジュールの見直し・調整を定期的に行うスキルを持っています。進捗の遅れやクオリティの低下が生じないように、起こり得るトラブルや課題を予め想定し、備えておくことも重要です。

進捗管理で状況を見える化するには? おすすめの手法やコツを紹介。」の中で、進行管理の方法やコツについて解説しています。

コーチングスキル

コーチングとは相手の話をよく聞いて観察や質問を繰り返すことで、潜在的な答えや能力を引き出し、目標達成を促す手法です。マネジメント能力が高い人は、コーチングスキルを活用し、チームメンバーのパフォーマンスを上げることができます。

コーチングスキルの方法は「コーチングとは? ティーチングとの違いや使い分け、手法を解説」をご覧ください。

ファシリテーションスキル

ファシリテーションスキルは、会議や報告会などの場を進行するスキルに留まりません。意見しやすい場の雰囲気を作ったり、参加者のアイディアを引き出したり、さらには参加者が考えを整頓できるように導くことや、意見の食い違いを避けるようにコントロールすることなど、さまざまなスキルが含まれています。

参加者の多様性を尊重し、インクルーシブなマネジメントを行うために必要なスキルです。

アセスメントスキル

メンバーの持つポテンシャルや動機付けなどを正しく把握した上で、育成するポイントや方法を理解するスキルがアセスメントスキルです。

普段の行動をよく観察し能力や行動傾向をつかむとともに、面談などのコミュニケーションの時間を持って、相互の理解を深めます。

マネジメント能力を高めるためにまず始めたい5つのこと

マネジメント能力の高い人のほとんどが、生まれつき高いスキルを持っているわけではありません。つまり、前章でお話したような能力を今持っていなくても、がっかりすることはないのです。

ここからは、マネジメント能力を高めるにはどうすべきかを考えてみましょう。

経営者視点を持つ

マネジメント能力を高めるには、例え経営者でなくとも経営者視点を持つようにしましょう。

パナソニックグループの創業者である松下幸之助氏も、自身の著書『社員稼業』の中で「たとえ会社で働く一社員の立場であっても、社員という稼業、つまりひとつの独立した経営体の経営者であるという、一段高い意識を持って自らの仕事に当たる」と述べています。

引用:松下幸之助(2014)『社員稼業』PHP研究所

会社全体の仕組みやバリューチェーンを知ること、長期的な視点を持つことなど、高い視座を持つようにします。

分析力・問題解決能力を高める

分析力や問題解決力を高めるには、「ディズニーストラテジー」という方法が用いられます。これは、ウォルト・ディズニーがアニメーション制作の夢を実現する際に用いたことから、その名前がつけられました。

ドリーマー(現状に捉われない長期的な戦略を語る)・リアリスト(現実的な視点で戦略を考える)・​​クリティック(課題やリスクを見つけて解決する)の3つの視点を持って、分析し問題を解決しましょう

ポジションチェンジ(相手の立場になって考える)

物事を考える時には、自分の立場だけでなくクライアントやカスタマーの立場に立って考えるようにします。多角的な視点を持つことによって、問題や優先順位が見えたり、課題の解決につながったりします。

コミュニケーションやコーチングのスキルを高める

チームのメンバーやクライアントとの良好な関係性を築くためには、コミュニケーションスキルやコーチングスキルを高めましょう

コーチングに用いられる傾聴のスキルは、話す相手に安心感を与え、信頼関係を生みます。メンバーとコミュニケーションを取る時には、日常的にコーチングのスキルを意識しましょう。

タスク管理能力を高める

タスクを細分化しチームのメンバーに割り振り、進捗状況を管理するタスク管理能力も高めるべきスキルです。タスクをどのように分解するか、誰に任せるか、どのタスクを優先すべきかなど、タスク管理能力にはさまざまな判断が求められます。また、計画通りにタスクが進まない場合は、軌道修正を行います。

タスク管理能力を高めるには、個人のタスク管理を行うことから始めて、能力を養っていくこともおすすめです。

タスクマネジメントとは? 正しい方法やコツ・おすすめのツールについても紹介」を読むと、タスク管理の手順や方法がわかり、マネジメント能力を高めることができるでしょう。また、タスク管理をサポートする便利なツールについては「【2021年版】タスク管理ツールおすすめ・Todo管理ツール34選を徹底比較(無料プラン有り)」にまとめています。

マネジメント能力に関するおすすめの本5選

マネジメント能力を高めるためには、本によるインプットもおすすめです。本稿の最後に、マネジメント能力を高めたい人におすすめの本を集めてみました。

リーダーの仮面 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法

2021年の年間ベストセラーランキングで6位 (ビジネス部門。トーハン、日販調べ)になったマネジメント書です。マネジメントに有効な、ルール・位置・利益・結果・成長を解説しています。

この本で取り上げている「識学」とは、組織内で起こる誤解や錯覚はなぜ発生し、どのように解決するかを明らかにした学問です。昨今の働き方にも有効な識学のメソッドを元に、いわゆる「中間管理職」や若手リーダーのマネジメントのノウハウについて書かれています。

リーダーの仮面 「いちプレーヤー」から「マネジャー」に頭を切り替える思考法
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心理的安全性のつくりかた

日本の人事部「HRアワード2021」書籍部門 優秀賞のほか、「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」マネジメント部門賞や『週刊東洋経済』ベストブック2021特集「ビジネス書」ランキングの第2位にランクインした、現代のチームビルディングの本です。

著者は日本の心理的安全性について研究を重ねています。組織やチームで重要な「心理的安全性」を取り入れるための、具体的で効果的な方法を解説しています。

心理的安全性のつくりかた
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イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」

発売されたのは10年以上前ながら、45万部を発行しているベストセラーです。時代が変わっても変わることのない「問題解決」の定番書。AI×データ時代の必携書ともいわれています。

脳科学研究、マッキンゼー勤務、ヤフーCSOというトリプルキャリアを持つ著者が生み出した、究極の問題設定や解決法をわかりやすく解説しています。

イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」
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もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

通称『もしドラ』は、映画化やアニメ化もした話題作です。やり手マネージャーと野球部の仲間たちが甲子園を目指して奮闘する青春小説にのせて、マネジメントを解説しているので、本を読む習慣がない人でも読みやすいことが特徴です。

やり手マネージャーが読んだのは、「経営学の父」とも呼ばれる経営学者、ピーター・F・ドラッカーの『マネジメント』です。ビジネス入門書である『マネジメント』をさらにわかりやすく、ストーリー仕立てに説明しています。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
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コーチング・マネジメント―人と組織のハイパフォーマンスをつくる

日本唯一の「国際コーチ連盟マスター認定コーチ」で、コーチングの第一人者の伊藤守による著書。マネジメントには不可欠なスキルであるコーチングの理論から実践的な応用までを解説しています。

コーチングスキルの解説は具体例を交えて詳しく書かれているので、マネジメントにコーチングを役立てたい人は必読となる一冊です。

コーチング・マネジメント―人と組織のハイパフォーマンスをつくる
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まとめ

マネジメント能力を高めるために最も重要なのは「地道な積み重ね」に尽きるといってもいいでしょう。自分を分析し、強みは何か、弱点は何かを考えることから始め、コツコツとマネジメント能力を身につけていきましょう。

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