ドラッカーの『マネジメント-基本と原則』から予測困難な市場で生き抜くための本質と真理を学ぼう

P・F・ドラッカーは、「マネジメントの父」と称される経営学の巨匠です。ただ、ドラッカーの名前を多くの日本人が知っているのは、意外な理由があります。

2009年に『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海 著/ダイヤモンド社 刊)が出版されました。「ドラッカー×女子高生」という不思議な組み合わせで書かれた本は、なんと250万部以上を売り上げて大ベストセラーになったのです。

今回、第1回目の「心を動かす書評」では、「もしドラ」の原書とでもいうべき『マネジメント-基本と原則』(P・F・ドラッカー 著/ダイヤモンド社 刊)について考えます。

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『マネジメント-基本と原則』の要約

  • マネジメントをすべての組織が求めている
  • 企業の目的は「顧客を生み出す」こと
  • マネジャーは組織の成果に責任を持つ者

なぜいま、ドラッカーか?

ドラッカーの生い立ち

「マネジメントの父」といわれたドラッカーの生い立ちをみていきましょう。ドラッカーは1909年にウィーンで生まれ、フランクフルト大学にて法学の博士号を取得、投資銀行に務めます。

1946に出版の著作『企業とは何か?』では、世界で初めて組織運営のノウハウを体型的にまとめあげ、注目を集めました。ドラッカーは生涯にわたり経営学をよくするために活動をしています。ドラッカーの理論は、企業だけではなく、政府機関や慈善団体などのあらゆる組織に応用することができ、大きな影響を社会に与えています。

ドラッカーは2001年に集大成というべき著作『マネジメント-基本と原則』を書き上げ、2005年にこの世を去ります。しかしドラッカーが私たちにもたらした知恵は、いまでも輝きを失っておらず、多くの人に読み継がれています。

「変化が早く、複雑性が増す」時代に必要なことは?

私たちは現在、「変化が早く、複雑化する」時代に生きています。背景には、インターネットの台頭があります。世界中で情報が瞬時に行き交い、さまざまなアイディアが実行されるもほとんどが消えていきます。

世界中の情報に簡単にアクセスできることによって、物事はわかりやすくなったでしょうか? 私はそう思いません。むしろ膨大な情報の波にのまれて、その真偽を確かめるだけでも一苦労です。これでは、何を信じて行動すべきかわからず、人々は混乱しています。このような時代において、どのように振る舞うことが正しいのか? その答えの一つは物事の「基本と原則」を見つめ直すことです。

ドラッカーの唱えるマネジメント理論は、半世紀の時を経ても決して色あせることはありません。マネジメントに関わるすべての人にとって、いままさに必要とされているものではないでしょうか。

マネジメントを体系的に理解する

マネジメントに関する本は、日本語で書かれたものだけでも数多くあります。しかし、多くの書籍が事例の紹介にとどまっており、マネジメントの体型的な理解を養うことは難しいです。その点、『マネジメント-基本と原則』は、マネジメントの理論を整然と説明しています。

ドラッカーの「マネジメント」と聞いて、「難しそう…」と一度手にした本を棚に戻してしまうのはもったいないことです。『マネジメント-基本と原則』は、経営学の類書の中でもシンプルな内容であり、どんどん読み進めることができます。

『マネジメント-基本と原則』は、ドラッカーが生涯を捧げて研究してきたことをまとめあげた名著です。企業のトップ経営者だけではなく一般の会社員まで、さまざまな刺激を得ることができるでしょう。

すべての「組織」がマネジメントを必要とする

― 企業は顧客を生み出す

「企業とは何か?」を知るために、企業の目的から考えましょう。ドラッカーは、企業の目的を「顧客を生み出す」ことだと述べています。顧客を生み出すとは、どういうことでしょうか?次の2通りのパターンがあります。

  • 潜在顧客のニーズを満たす商品・サービスを販売する
  • 新しい商品・サービスが顧客のニーズを顕在化させる

なお、企業そのものは目的ではなく手段であることに注意しましょう。

企業の2つの機能とは?

ドラッカーは、企業には2つの目的があると説いています。
マーケティングとイノベーションです。

― マーケティング
マーケティングは「顧客」からスタートしなければならないと、ドラッカーは述べています。つまりまずは、顧客の「現実・欲求・価値」を考えることが先決です。マーケティングは「私たちが何を売りたいか?」ではなく「顧客が何を買いたいか?」を常に問い続けなくてはなりません。

― イノベーション
イノベーションとは、「新しい満足を生み出す」ことです。イノベーションと聞くと、多くの人は「新しい発明・技術」のことだと考えます。しかしそれは少し誤解があります。なぜなら、すでに存在する製品を組み合わせることで新しい価値を生み出すことも立派なイノベーションだからです。企業は絶えず成長しつづなければなりません。そのために、イノベーションは不可欠です。

企業の生産性

ドラッカーは、「顧客の創造」のためには、企業が持つ資源(ヒト・モノ・カネ)を生産的に活用して利益を生み出すことが重要だと述べています。では、生産性はどのように向上させることができるのでしょうか? 次の6つの資源に注目します。

  1. 必要な知識・ノウハウ
  2. 十分な時間
  3. 製品の組み合わせ
  4. プロセスの組み合わせ
  5. 強み
  6. 組織構造

これら6つの資源を上手に扱うことで、企業は顧客を創造することができ、対価として利益を得ることができます。

「マネジャー(リーダー)」に求められること

マネジャーの定義とは?

今日、あらゆる組織において「マネジャー」が存在します。マネジャーは、チーム全体の方向性を決めて、メンバーをその先へと牽引していきます。早速、ドラッカーによるマネジャーの定義をみてみましょう。ドラッカーは「組織の成果に責任を持つ者」をマネジャーと呼びました。

かつて、企業で高い地位につくには「マネジャー」になるしかありませんでした。しかし、今日の企業では「専門家(スペシャリスト)」の存在が不可欠になっています。マネジャーの役割は、専門家が生み出すもの(アウトプット)が、他の人の資源(インプット)になるように潤滑油として活動することが求められます。

マネジャーと一口にいっても大企業のトップ経営層から小さな工場の管理職まで、千差万別です。ただ、ドラッカーによるマネジャーの「組織の成果に責任を持つ者」という定義は、あらゆるマネジャーが自分の役割を見直すきっかけになるのではないでしょうか。

マネジャーの2つの役割、5つの仕事とは?

ドラッカーの説くマネジャーの2つの「役割」について考えましょう。

1つ目の役割は、「資源をすべて足した時に合計よりも大きな結果を生み出す」ことです。、「1 + 1 = 2以上」と考えればわかりやすいのではないでしょうか?ドラッカーは、マネジャーをオーケストラの指揮者に例えて解説しています。

2つ目の役割は、「短期的な成果と中長期的な成果のバランスを上手にコントロールする」ことです。大事なことは、物事の成否はタイムスパンに依存することを知った上で、マネジャーが最終的にどのような決断を下すかということです。

ドラッカーは、マネジャーの5つの「仕事」についても言及しています。

  1. 目標を設定する
  2. 組織する
  3. 動機づけとコミュニケーション
  4. 評価規定する
  5. 人材を開発する

上記の仕事をみると、マネジャーの仕事が企業の成果にとって、大きく影響を与えることがわかります。そのため、私たちはマネジメントを学ばなければならないのです。

「仕事」と「労働」の違いとは?

仕事は「モノ」の力学で働く

「仕事」の生産性を向上させる動きは、これまでも活発に行なわれてきました。代表されるものは「テイラーの科学的管理法」です。テイラーの科学的管理法によって、先進国の生活水準は大きく向上しました。鍵となる要素は、

  1. 分析
  2. 統合
  3. 管理

です。モノの力学は対象を客観的に捉えることが可能なため、論理に従って生産性を向上させることが可能になりました。しかしながら、「ヒト」に焦点を当てた労働に関する研究はなかなか行なわれませんでした。

労働とは「ヒト」の力学が働く

「労働」の生産性を向上させる、すなわち「ヒトとヒトが活き活きと働ける」ようにすることは、その性質上、捉えにくさがあり、今日においても理想的な状態からは、程遠いといえるでしょう。ドラッカーは、「労働」には5つの次元が重要だと述べています。

― 1. 生理的な次元
1つ目の「生理的な次元」では、ヒトを機械のように扱ってはならないということです。
例えば、一つの作業を長時間にわたり延々と繰り返したり、自分の働くスタイルに選択権がない場合において、ヒトは疲弊します。

― 2. 心理的な次元
2つ目の「心理的な次元」では、働くことはコインの表と裏のように、苦痛と喜びであるとしています。働くことは、人格の延長線上にあり、自己実現の手段として、心の動きを左右します。

― 3. 社会的な次元
3つ目の「社会的な次元」では、ヒトと社会のつながりのうちもっとも大事なものを労働としています。確かに、1日の時間のうち私たちは多くの時間を働いて過ごしています。ですので、労働は社会的な営みです。

― 4. 経済的な次元
経済的な次元では、私たちの多くが「お金」を手に入れる方法として労働をすると述べています。労働による収入はやがて支出になると同時に他の人の収入になります。経済的なシステムの中で労働を捉えることは大変面白いです。

― 5. 政治的な次元
政治的な次元では、企業においてはあらゆることに必ず「権力」が付いてまわることが指摘されています。昇進を重ねていけば企業の中でも違う働き方になるでしょう。また、派閥や部署による対立も見逃してはならない労働の側面です。

考察:「生涯学習」が求められる時代において

ドラッカーは、肉体労働に代わる知的社会の到来を予見していました。知的社会において重要なことは何でしょうか? それは、「生涯学習」すなわち一生にわたって新しいことを学び続けることが重要だと述べています。メディア・アーティストの落合陽一氏も『0才から100才まで学び続けなくてはならない時代を生きる 学ぶ人と育てる人のための教科書 』(2018, 小学館)の中で生涯学習の必要性を説いています。

私は、WEBエンジニアの経験があるため、変化の激しい技術にアンテナを張らないと競争からこぼれ落ちてしまうことを知っています。マネジメントにおいても同様でしょう。企業の製品やサービスは一度人気が出ても、真似する企業が出てきて価格競争になり、すぐにコモディティ化してしまいます。そのためマネジャーは、一つの分野だけ優れていても十分な役割を果たすことができません。時代が求めているのは、新しい変化にすぐに組織が対応できるような柔軟性のあるマネジメントなのではないでしょうか?

『マネジメント-基本と原則』は、こんな人におすすめ

  • マネジメントを学ぶ上で基礎となる考え方を知りたい。
  • 部下をどうやってマネジメントすればいいのか悩んでいる。
  • ドラッカーってよく聞くけど、どういう人なんだろう?

まとめ:『マネジメント-基本と原則』

マネジメントについて、さまざまな議論を述べてきました。ドラッカーの唱えることに「具体性に欠ける」という反論はあるかもしれません。確かに、今回の連載で述べたことは抽象的なことです。しかし、「抽象性」と「具体性」はトレードオフの関係にあります。『マネジメント-基本と原則』が抽象性を選んだのは、あらゆる組織に応用できるような考え方を提示したかったからでしょう。もし、もっと具体的なノウハウ知りたいと思うのであれば、他の類書を読むことも選択肢になります。

今回、第1回目の「心を動かす書評」の連載でした。
引き続きよろしくお願いいたします。

ドラッカー「マネジメント」
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