ドラッカーのマネジメントとは? 名言や手順について要約

マネジメントの父と称されるピーター・ドラッカーが提唱した、組織を運営する概念を「マネジメント」といいます。ドラッカーによるマネジメントの考え方は、年月のたった今でもビジネスシーンを支え、たくさんのビジネスパーソンに親しまれています。

しかし、マネジメントに関する書籍が多く発売されているものの、専門的で難解であるというのが正直なところ…。本稿では、ドラッカーの「マネジメント」について簡単に解説します。

ドラッカーのマネジメントとは

マネジメントは組織の運営に重要な概念です。経営学者であるピーター・ドラッカーによって提唱されました。

そもそもピーター・ドラッカーとは

Peter F. Drucker 著作者: Jeff McNeill CC 表示-継承 2.0

マネジメントという考えを提唱したのがピーター・ドラッカーです。

代表的な著書の「マネジメント」は、近年でも多くの人に読まれていますが、その「マネジメント」を野球部の女子マネージャーが読んで実践し、部員を甲子園まで導く物語である「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」が話題になったことで、さらに知名度を上げました。

強みを活かす働き方や時間術、組織における人間関係や自己実現の方法など、ビジネスパーソンが必要とする知識やスキルのほどんどは、実はドラッカーが提唱したものであり、会社やチームのポリシーには、そのエッセンスが含まれるものが多くあります。

ドラッカーの考える企業の目的

一般的に、売上や利益をあげることが企業の目的だと考えられています。しかし、ドラッカーは「顧客を創造すること」が企業の目的であると考えています。顧客の集合体である市場を創り出すことこそが、企業の目的なのです。

この「顧客の創造」は、ドラッカーが数多く残した名言の中でも非常に有名です。

『企業の目的は、それぞれ企業の外にある。企業は社会の機関であり、目的は社会にある。

したがって、事業の目的として有効な定義は一つしかない。すなわち、顧客の創造である。』ーー「現代の経営」より引用

企業は単体で存在できません。売上や利益は、顧客のいる企業の外にあります。企業は外部への貢献をもってこそ、目的を果たすことができるのです。

ドラッカーのマネジメントの手順

では、ドラッカーが提唱するマネジメントの手順とは、どのようなものなのでしょう。「売上や利益」をもたらす「顧客の創造」につながるマネジメントについて、順を追って解説します。

定義を定める

まず、チームが取り組む事業の定義を定めます。

・顧客は誰か
・顧客に対して何を提供できるのか
を考えましょう。

ここでいう「顧客」の概念は大変広く、クライアントやカスタマーにとどまらず、企業の社員などの関係者も含まれています。

目標を立てる

前述したように、企業の目的は「顧客創造」です。顧客創造を達成するための目標を立てましょう。

・どのような貢献を成し遂げたいか
・どのような成長を求めるか
を達成できるように、具体的な目標であることが重要です。

また、短期目標や長期目標、行動目標など、多様な視点での目標を立てるようにしましょう。

マーケティングを行う

「顧客創造」に向け、顧客のニーズを把握すべくマーケティングを行います。

顧客の創造にはマーケティングとイノベーションが重要だと、ドラッカーはいいます。これは顧客を知ることがいかに重要かを示しており、顧客が本当に必要とするものであれば、自然と利益を生み出すと考えています。

これが、マーケティングの最終的な目標になります。

改善する

マーケティング結果を反映し、改善を行います。これが前章で触れていている「イノベーション」です。イノベーションとは、これまでにない新しい価値を提供することで顧客を創造することを指します。

ドラッカーは、マーケティングとイノベーションが、企業には存在する基本的な機能だと複数の著書で述べています。企業を成長させるマネジメントには、これらが不可欠なのです。

ドラッカーが調査した成功するマネージャーの特徴

マネジメントを遂行する役割を担う人を、一般的に「マネージャー」と呼びます。ドラッカーはマネージャーを「組織の成果に責任を持つ者」と定義しています。

組織の雰囲気や目標によってマネージャーの在り方に違いはあれど、ドラッカーの調査によると、成功するマネージャーには共通する特徴がありました。

・問題ではなく、機会に目を向ける
・組織のことを考える
・今やるべきことと将来的に必要なことのバランスを取る
・コミュニケーションをとる
・意思決定に責任を持つ
・人の強みを引き出す
・アクションプランを細かく考える
・意義のある会議を行う
・「私は」ではなく「我々は」という目線を持つ

これらが、マネジメントに成功する確率が高いマネージャーの特徴です。

マネジメントにおいて、マネージャーは重要な役割を担っています。次章から、マネージャーが身につけるべき能力について考えてみましょう。

マネージャーが身につけるべき5つの能力

ドラッカーは「マネージャーはマネジメントにおいて非常に重要な役割を担っている」と
述べています。では、マネジメントを任されたマネージャーは、どのような能力を身につける必要があるのでしょう。

目標設定能力

ドラッカーは目標の設定をとても重要視しており、著書である「経営者の条件」の中でも、以下のように述べています。

『成果を上げるには、自らの果たすべき貢献を考えなければならない。手元の仕事から顔をあげ、目標に目を向ける。組織の成果に影響を与える貢献は何かを問う。そして責任を中心に据える』(引用)

目標設定をする時には、以下のポイントに留意しましょう。

・達成可能な高い目標である
・目標達成の期限は妥当である
・具体的にわかりやすく伝える
・新たな価値を創造し世の中を変える目標である

組織化能力

組織を作る能力も、マネージャーには必要です。目標を達成するチームは、メンバーが強みを発揮できることはもちろん、あらゆる弱みをカバーする必要があります。この采配を求められるのが、マネージャーなのです。

チームのメンバーの適正を見極めた人材配置や、意思決定を任せられる人材選定を行い、組織を作ります。

コミュニケーション能力

目標を達成し成果をあげられるチームを維持するためには、メンバーのモチベーションがカギとなります。

ここで求められるのが、自分も含めたチームのメンバーのやる気を引き出し、自発的な行動を促すために、メンバーの視座を高めることです。そのために必要なのがコミュニケーション能力なのです。

ドラッカーは著書の中で、コミュニケーションを「知覚」「期待」「欲求」という言葉で表現しています。コミュニケーションとは、相手に情報を与えることにとどまらず、期待や欲求を知り、知覚させることが求められるのです。

評価測定能力

マネージャーが身につけるべき能力の4つ目は、評価測定能力です。

著書である「マネジメント 基本と原則」の中では、『いかなる組織であっても、メンバーの欲求やニーズを満たさなければならない。この個人の欲求を満たすものこそ賞や罰であり、各種の奨励策、抑止策である。』と述べています。

マネージャーはメンバーに対して目標設定を行い、達成度を評価することでメンバーの欲求を満たします。これがチームが成果を上げ続けられる仕組みです。

問題解決能力

マネジメントをしていると、さまざまな問題が発生し、その都度解決をする必要があります。問題を解決する能力も、マネージャーが持つべき能力です。

問題を解決するためには、以下の手順で考えることが効果的であるとされます。

・問題の本質を見極める
・問題解決への必要条件を明らかにする
・問題を解決するために行動する
・解決策が正しかったか検証する

問題解決には、ネガティブなイメージがあるかもしれませんが、より良いマネジメントのヒントやきっかけになる可能性を持っています。

ドラッカーのマネジメントに関する6つの名言

ドラッカーはマネジメントに関する名言をたくさん残しており、今や多くの企業のポリシーになっています。ここでは、代表的な6つの名言を解説します。

1.マネジメントとは人のことである

『マネジメントとは、人にかかわるものである。その機能は人が共同して成果をあげることを可能とし、強みを発揮させ、弱みを無意味なものにすることである。』ーー「マネジメント 基本と原則」より引用
 
これは、
人が共同することで成果や達成につながるという概念を表した名言です。ドラッカーの経営の本質は「人」にあります。
 
マネジメントによって人の強みを発揮させることで、弱点のない組織が構築されます。それによって、世の中への貢献や創造的な存在への成長をもたらすのです。

2.人が成果を出すのは強みによってのみである

『人が何かを成し遂げるのは、強みによってのみである。弱みはいくら強化しても平凡になることさえ疑わしい。強みに集中し、卓越した成果をあげよ。』ーー「マネジメント 基本と原則」より引用
 
ドラッカーが提唱するマネジメントでは、
強みだけを必要とする、という意図を持つ名言です。
 
苦手なものを強みに変えようと努力するよりも、個人やチームの強みだけにフォーカスを当てマネジメントをした方が、高い成果を上げると考えられています。

3.強みは当然とできるもので気づかない

『知っている仕事はやさしい。そのため、自らの知識や能力には特別の意味はなく、誰もが持っているに違いないと錯覚する。逆に、自らに難しいもの、不得手なものが大きく見える。』ーー「創造する経営者」より引用
 
「強み」の特徴を的確に表現する名言です。強みとは、意識せずともできることであり、ほとんどの人はそれが強みであることに気が付いていない、とドラッカーはいいます。
 
強みを見つけ、尊重し合える組織を作る
ことが、重要なのです。

4.他社との比較で自社の強みを見つけ出す

『他社はうまくできなかったが、わが社はさしたる苦労なしにできたものは何かを問わなければならない。同時に、他社はさしたる苦労なしにできたが、わが社はうまくできなかったものは何かを問わなければならない。』ーー「創造する経営者」より引用
 
ドラッカーは、マネジメントには
自社の強みと弱みの分析が必須だといいます。他社と自社を比較することで、これまで見えていなかった自社の強みを発見するという意味の言葉です。

5.組織の目的は、人の強みを爆発させ、弱みを無くすこと

『人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである。人は弱い。悲しいほどに弱い。』ーー「創造する経営者」より引用
 
「強み」を最大限に活用するドラッカーの思想が現れている名言です。
 
最大の経営資源である人の、
強みを最大限に発揮させ、弱みを極力なくすことで、目標を達成できる組織を作るのです。

6.目指すべき組織は、凡人でも非凡な働きができる組織

『組織の優秀さとは、凡人をして非凡な働きをなさしめることにある。』ーー「マネジメント」より引用
 
組織の中でも数少ない天才よりも、数多く存在する凡人が生きるような組織を作る必要があると、ドラッカーはいいます。
 
凡人が非凡な働きをするならば、各々の
強みのみに集中し、弱みをカバーし合う関係性が重要なのです。

ピーター・ドラッカーのマネジメントに関するおすすめ書籍

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」をはじめ、ピーター・ドラッカーのマネジメントに関する本が多数書かれていますが、最もおすすめしたい本は「マネジメント  基本と原則」です。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
created by Rinker
マネジメント[エッセンシャル版] – 基本と原則
created by Rinker

この本では、ピーター・ドラッカーがマネジメント論を自ら体系化しています。本格的な入門書であり、マネジメント初心者でも読みやすいはずです。

まとめ

ドラッカーのマネジメントについて、要約しながら解説を行いました。

「マネジメント」が、ドラッカー経営学の集大成として刊行されたのは、1974年のことです。実に50年近くも昔の本でありながら、今もなお、ビジネスマンのバイブルであることはもちろん、大学やビジネススクールの教科書として読まれています。

今回紹介した内容は、ほんの入り口に過ぎません。より理解を深めることで、マネジメントスキルは向上するでしょう。

「これさえ読めば間違いない!」とまでいわせるドラッカーの「マネジメント」。今回、少しでも理解が深まったのであれば、ぜひ本を読んでみることをおすすめします。

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