日頃、さまざまなシーンで口にする「マネジメント」が本稿のテーマです。マネジメントはビジネスシーンになくてはならないもの。今回は、マネジメントの目的や役割、業務について改めて考えてみましょう。マネジメントの質や意義の向上につながるはずです。
マネジメントとは
マネジメントは「管理」や「経営」を意味する言葉です。ビジネスシーンにおいては、企業や組織が成果を出すために経営資源（ヒト・モノ・カネ・情報）を効率的に活用し、「目標」や「ミッション」の達成を目指すこととされ、組織の管理や運営のことを指して広く使用されています。
企業や組織は時代とともに絶えず発展せねばなりません。そのためになくてはならない要素が「マネジメント」なのです。
「マネジメント」定義の歴史
マネジメントという言葉の定義はさまざまありますが、一般的に広く認識されている定義は、経営学者として知られるピーター・ドラッカーが1973年に刊行した著書「マネジメント」から生まれたと考えられています。
ピーター・ドラッカーの「マネジメント」の概念と定義
「マネジメント」の概念を生み出したピーター・ドラッカーは、起業コンサルタントや経済学者として活躍し、「経済学の父」や「マネジメントの父」と称されています。
経営や経済に関する著作を多く発表していますが、中でも「マネジメント」は、ベストセラーになった「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の中で引用されたことでも有名なビジネス書です。
ドラッカーは、著書の中で「マネジメント」ついて「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しています。
マネジメントの種類
組織が大きくなるにつれ、それぞれに適したマネジメントを行うことが求められます。役割によって分けられた「階層別マネジメント」には、どのようなものがあるのでしょう。
トップマネジメント
会長や社長、副社長、常務、専務などの役員が行うマネジメントが「トップマネジメント」です。「経営」とも呼ばれるマネジメントであり、組織のベースとなる方針を決定し経営計画を立てたり、運営方針を決めたりします。
企業や組織の運営や発展に関する意思決定を行い、最終的な責任を負います。
ミドルマネジメント
主に、工場長や支店長、部長、課長、マネージャーのような管理職が行うマネジメントが「ミドルマネジメント」です。情報管理・進捗管理や課題解決・要員の管理・コンプライアンス管理などを行います。
大きな組織では、ミドルマネジメントが非常に重要な役割を担います。トップマネジメントのサポートはもちろん、ローアーマネジメントの指導や管理、現場のケアなど、現場と役員、どちらの観点も持つ必要があり、双方の橋渡しをします。
ローアーマネジメント
トップマネジメント、ミドルマネジメントに次ぐマネジメントを行うのが「ローアーマネジメント」です。係長や主任、現場リーダー、キャプテン、チーフのような、監督者層が行うマネジメントが該当します。
業務の進行を直接的に指揮し、トップマネジメントやミドルマネジメントが決定した組織戦略や施策、方針を現場の業務に反映させ、組織のビジョンの実現を目指します。
マネジメントの目的と役割とは
マネジメントの質や意義の向上に欠かせないのが、目的や役割への理解です。マネジメントの業務内容を知る前に、この2つをおさえておきましょう。
マネジメントの目的
マネジメントは「設定した目標の達成を目指して組織を運営すること」を目的とします。
組織の運営は、単なる「管理」にとどまらず、経営資源（ヒト・モノ・カネ・情報）の効率的な運用を行い、組織を発展させ続けねばなりません。そのために、計画や分析、改善を繰り返します。
マネジメントの役割
ドラッカーの「マネジメント」によると、マネジメントには3つの役割があるとされています。
1つ目は、企業や組織の目標を達成することで成果を上げ、組織の継続した発展を目指すことです。
また、企業や組織は仕事を通じて人材を活かすという役割を持ちます。マネジメントによって、強みを活かしたり成果を上げたりすることで自己実現できる機会を提供します。これがマネジメントの2つ目の役割です。
そして、マネジメントには社会が求めるニーズや課題に応える役割があります。これが3つ目のマネジメントの役割で、企業や組織が掲げる目標が達成されると同時に、社会貢献に繋げることが求められているのです。
マネジメントの業務内容とは
マネジメントの基本がわかったところで、ここからはマネジメントの具体的な業務内容をみていきましょう。
目標設定
企業や組織の役割を果たすには、目標の設定が必要です。目標を設定し、設定した目標を達成できる組織の構築と運営はもちろん、目標を達成したあとは、評価やフィードバックを行います。
マネジメントを行う上では、組織やチーム全体の目標設定だけでなく個々の業務に対する目標まで設定することもあります。
メンバーの実力を十分に発揮させるためにも、目標を丁寧に説明し理解してもらうことが重要です。ただし、一方的に目標を押し付けることはせず、自律的に目標達成を目指すようにサポートを行います。
組織運営
組織が適切に機能するように必要な要素を分析し、業務として分類します。業務ごとに適切な組織作りをし、戦略を立てたり仕組みを設計したりして運営を行います。
企業や組織の円滑な運営、生産性作業効率、クオリティを高めるための経営資源（ヒト・モノ・カネ・情報）のマネジメントが重要となります。
メンバーの指導や育成
マネジメントの業務の中でも「ヒト」の育成は特に重要です。企業や組織の人員のキャリアを見据え、指導や育成を行います。
そのためにも、強みを引き出し、仕事に活かせるような采配と育成が求められます。メンバーの業務内容を把握するだけでなく、精神的なサポートや自主的な成長を促すような指導など、業務は多岐にわたります。
また、人材の育成にはミスやトラブルがつきものです。起こりうるリスクを正確に理解し、リスクヘッジを行った上でサポートを行いましょう。
モチベーションの維持
モチベーションを維持することで、スムーズな組織運営につながります。
モチベーションを維持するためには、目標を設定したり仕事がしやすい環境を整えたりする必要があります。業務そのものはもちろん、報酬や役職に反映することでモチベーションを維持し、企業や組織の意欲を引き出すこともあるでしょう。
適切な評価や改善点、期待していることを伝えたり、メンバーの意思に耳を傾けたりし、双方向のコミュニケーションを心がけましょう。具体的なフィードバックを受けることで、存在意義の再確認やモチベーションアップも期待できるでしょう。
環境作り
組織の環境作りは業績アップや作業効率アップに必要な要素です。時代の流れを的確に掴み、働く環境の絶え間ないアップデートを行いましょう。
コンプライアンスの遵守や働き方改革への対応、テレワークの推進など、近年では働く環境も多様化しています。そのため、フリーランスや子育て層など、さまざまな境遇の人材がパフォーマンスを発揮できる職場環境作りが求められているのです。
マネジメントに必要なスキル
マネジメントにはさまざまなスキルが必要とされますが、ここでは代表的な4つのスキルを紹介します。
意思決定力
マネジメントをする上では、重要な意思決定に迫られるシーンが多くあります。しかし、組織のメンバーはもちろん、ステークホルダーまで含めて、関係者全員の賛同を得られることはほぼないといってもいいでしょう。数々の異論や対立が起こる中で、自分の軸を持ち意思決定をする必要があります。
時に、自分の軸だけでは組織のビジョンや方針との矛盾が起こることもあるため、客観的な判断材料を用いた判断が求められます。
統率力
統率力とは、目的達成のために組織をまとめ上げる力のことです。メンバーとの信頼関係を構築し、ついていこうと思われるような人望が必要です。
企業や組織のメンバーの考え方やポリシーはさまざまですが、目標を達成するには同じ方向を向かねばなりません。メンバーを率いるためにも、目標の精査に始まり、細かなタスクへの落としこみや的確な指示を行います。
コミュニケーションスキル
チームを統率するためになくてはならないのがコミュニケーションスキルです。
目標達成に向かうプロセスや方針など、マネジメントを行う上ではメンバーの理解を得なければならない時があります。そんな時には一方的に伝えるだけでなく、メンバーの意見に耳を傾ける双方向のコミュニケーションが求められます。
また、メンバーが管理職に不満を感じるケースのほとんどが、説明不足といわれています。マネジメントを行う上で、チームのメンバーが納得できるまで、丁寧なコミュニケーションを行いましょう。
管理・分析能力
マネジメントには管理能力は欠かせません。進捗を常に管理し、現状と目標との間にズレが生じれば、いち早く発見し適宜軌道修正を行います。
目標の達成に向け、スケジュール通り進んでいるか、クオリティが保たれているか、予算をオーバーしていないかなど、さまざまな視点で管理をし、ズレが起きたらその原因を分析し、効率よく成果を最大化させる戦略を立てることも必要とされます。
まとめ
働き方や価値観の多様化と共に、マネジメントに求められる役割も変化しています。時代の変化に対応できるマネジメントをいち早く理解し順応することで、絶えず組織全体の生産性アップや活性化を目指すことができるのです。
