変化に柔軟に適応していくことは、ビジネスパーソンにもっとも重要な能力の一つといっても過言ではありません。では、どうすれば変化を敏感に捉えることができるのでしょうか?
そのためには考え方を少し変える必要があります。本稿では、その方法を紹介するとともに、時代の変化をマクロな視点で考えるきっかけを提示していきます。
これから30年の時代の変化をみてみよう
「変化」に敏感になる方法をご紹介する前に、まずは頭の体操として、これから30年にわたる時代の変化いわゆるメガトレンドについて俯瞰してみましょう。これによって、既存のあり方が大きく変容しうるということを直感的にイメージできるようになるはずです。
① 加速する人口増加
国際連合の「世界人口予測2017年改訂版」によると、現在76億人の世界人口は、2030年に86億人、2050年には98億人に達すると予測されています。また、2050年までの世界人口増の半数は、インド・ナイジェリア・コンゴ民主共和国・パキスタン・エチオピア・タンザニア・アメリカ・ウガンダ・インドネシア、の9カ国の人口増によるとされています。主にアフリカ地域における人口増が顕著ですね。アフリカ市場は未開拓な部分も多いため、今後の経済成長を牽引する地域になるとしても、おかしくはありません。
② 枯渇する自然資源
WWFの”Living Planet report 2010″では、「2050年までに人々が今の生活を続けた場合、地球2個分の自然資源が必要」と発表されています。これは衝撃的な予測だと思いませんか? 当然、地球は1つしかありませんので、何らかの対策を講じることが不可欠でしょう。これを放っておくと、世界中で、食料・水・エネルギーが枯渇します。
③ 高齢化する社会
国際連合の調査によると、2015年には8.3%だった65歳以上人口比率が、2060年には18.1%になると予測されています。なお、対象を先進地域に狭めると2060年には27.4%の人が65歳以上になるとされています。これによって、先進国では、社会保障費の増加・世代間格差・労働人口減少が深刻な問題になります。ちなみに日本はその高齢化レースのトップを走っている国になります。
いかがでしょうか? ここで紹介した3つの例だけでも大きな時代の変化を感じることができたかと思います。頭の体操ができたところで、次の章に進んでいきましょう。
木を見て森を知る
「木を見て森を見ず」という言葉があります。これは、細かいことばかりに気を留めて、大きな視野で物事を見ないことに対して警鐘を鳴らしていることわざですが、現代では、「木を見て森を知る」ことが重要になってきているのかもしれません。
一体どういうことでしょうか? この言葉は、些細な変化の兆しから、大局の推移を概観するということを意味しています。どんなに大きな変化であっても、その兆候は些細な変化であることが多いです。例えば、近頃、コンビニや飲食店などで外国人が多く働くようになりました。この変化は、もしかしたら見逃してしまうかもしれない些細なものですが、それを大きな変化の兆しとみて考えるならば、その背景に、少子高齢化による労働人口減少で人手不足が慢性的に起きており、そのマンパワーを補うためにコンビニや飲食店は、外国人留学生の雇用を強化しているということが潜んでいることに思い当たることができます。
これがまさに、「木を見て森を知る」ことです。ここでは一例を紹介しただけですが、普段から些細な変化に気づいて、時代の推移を知ることが癖になれば、学びを習慣化することができます。本稿の読者には、ぜひとも実践していただきたい方法です。
変化に敏感になることによってもたらされるメリット
ここでは、変化に敏感になると、どのようなベネフィットを享受することができるかについて説明します。大きく分けて、3つのメリットがあります。順番に説明していきます。
① チャンスを掴める
まず、1つ目のメリットは、「チャンスを掴める」ことです。世の中やビジネスにおける変化に人より早く気づくことで、将来を見据えた打ち手をとることができます。現在のビジネスシーンにおいては、市場が成熟するのを待ってから製品やサービスを生み出すのでは、到底利益を掴むことができません。変化の兆しにいち早く気づけば、大きな先行者利益を得ることができます。すなわち、チャンスを掴むことができるのです。
② リスクを回避できる
次に、2つ目のメリットは、「リスクを回避できる」ことです。これは、データや設備等の異常に気づくことで、大きなトラブルを回避することができるということです。一方、変化に鈍感な人は、危険信号が出ているにも関わらず、それをキャッチすることができず、大きな不利益を被ってしまいます。こうならないためにも、変化には敏感でいなくてはいけません。
③ 成長できる
最後に、3つ目のメリットは「成長できる」ことです。これは、成長する主体が組織の場合は、前述したチャンスとリスクに正しく対応することで利益を得て、不利益を回避することができるため、大きな成長が期待できます。また、成長する主体が個人である場合にもメリットがあります。それは、行動を通じて自分自身が変化していることに気づくことで、自分の成長を実感することができ、そこから新たなモチベーションを得て更に、成長を続けるという好循環に身を置くことができるからです。組織にとっても個人にとっても、変化に敏感であることには、成長を促す効果があるのです。
どうすれば小さな変化に気づけるようになるのか
ここまで変化に敏感になるメリットなどを説明してきました。それでは、実際に、変化に敏感になるためには、どのような方法をとれば良いのでしょうか? ここではポイントを3つにまとめました。
① 意識の幅を広げる―カラーバス効果―
変化に敏感になるためには、意識の幅を広げなくてはなりません。ここで「カラーバス効果」について考えてみましょう。カラーバス効果は心理学の用語の一つです。簡単に説明すると、意識していることほど関係する情報が自分のところに舞い込んでくるという現象です。例えば、今日のラッキーカラーは「赤」といわれれば、街を歩いている時に、赤色のものにばかり目がいくようになります。カラーバス効果からもわかるように、意識していることほど、変化に敏感になります。そのため、小さな変化に気づくためには、意識の幅を広げることがとても大切なのです。
② 異なる角度で「見る」「聞く」
いつも何気なく見聞きしていることを、異なる角度で見たり、聞いたりしてみましょう。そうすることで、今までは感じることのなかった微細な変化に気づくことがあります。
例えば、通勤電車に乗っている時に、いつもであれば自分のスマホやタブレットをいじっていて、周りに注意がいくことは多くないと思います。ここで、違った角度で車内の様子を見てみましょう。そうすると、ほとんどの人がスマホをいじっていることに気づくはずです。これは、ここ最近の時代の変化ですが、テクノロジーの進化を実感することができるでしょう。
このように、何気ない日常を、異なる角度で「見る」「聞く」ことで、今までは認識することのなかった変化に敏感になることができます。
③ 思い込みをなくす
思い込みはいつでも創造的な思考を妨げます。なぜなら、新しい気づきを得るためには、既存の価値観に囚われないように想像することが大切だからです。大きな変化であってもその兆候は始めのうちは些細なものです。思い込みを持ったまま、その兆候を見ても、その後にやってくる大きな変化を見抜くことはできません。その理由は、「○○は○○である」と頭から決めつけてしまっているからです。そのため「○○が××になりうる」という可能性に気づくことができないのです。変化に敏感になるためには、まず、思い込みをなくすことから始めてもいいかもしれません。
「身の回りの小さな変化に敏感になってチャンスをつかむための方法」についてのまとめ
本稿では、「変化に敏感になる」ことをテーマとして考察してきました。変化に敏感になるためには、考え方を少し工夫する必要があります。ただ、そのちょっとした工夫をすることで、変化に敏感になることができれば、大きなメリットを享受することができるため、挑戦する価値はあると思います。