昨今の働き方改革の煽りを受け、多くの会社で残業規制などが行われています。見た目上仕事時間が減っている印象はありますが、しかし実際には「時短ハラスメント」が行われ、仕事の持ち帰りを強要されている人もたくさんいます。
そしてそれに対しての残業代は支払われず、結果会社だけが得をし従業員が働き方改革の負の部分を補っているという状況があるのです。
この時短ハラスメントは今後の働き方を大きく左右する重要な要素になります。今回は時短ハラスメントが起きやすい職場環境から、それを避けるための方法まで解説していきます。
時短ハラスメントとは
時短ハラスメント(以下ジタハラ)とは、やらなければいけない.先にやっておかないと後々困る業務があるにも関わらず、特に先のことも考えずに就業時間が終われば帰るように上から指示されることを言います。
昨今のブラック企業による超過勤務による過労死などが、大きな問題として社会的に大きく取り上げられるようになりました。その結果、社会的制裁を受け仕事の受注や採用活動に悪い影響を及ぼすようになってきています。それを避けるために業務時間を短くし、”表面上”ホワイト企業に見せるために、残業規制を行っている企業がたくさんあります。
しかし、実態としては業務の持ち帰りで終業後も自宅で仕事をせざるを得ない事態に陥っている人が少なくありません。しかもこうなると、会社からの帰宅後の仕事になるので「自主的にやったんでしょ?」という捉え方をされるので、残業代は支払われません。
今までは終業後も必要な仕事を終わらせるために、会社に残ってやれば残業代が支払われていました。現在のジタハラは、表ズラでは残業の少ないホワイトな職場ですが、実態は自宅残業を強いられその報酬は0という状況です。
ジタハラは会社にしかメリットのない働き方改革(?)です。
時短ハラスメントが起きる要因は、業務効率化システム投資の消極性
ではジタハラはなぜ起きるのでしょうか?
- 業務量に対しての慢性的な人手不足
- 残存する不必要な業務
- 承認制の多い業務フロー
などがありますが、これらをひとつの方法で改善する方法があります。それが業務効率化システムの開発投資です。そしてジタハラが起きる職場のほとんどが、それを行っていないのです。
中小企業庁の2019年版中小企業白書の発表では、「従業員規模別に見たIoT・AI の導入状況(2017年)」の調査結果において、100~299人規模の中小企業の約54%が、300人以上の大企業の同回答割合は約38%「IoT・AIどちらも導入意向はない」と回答しています。
IoT/AIの領域は今現在においても様々な業務を自動化・効率化しています。それは経理や総務といったバックオフィスツールといったパッケージ化されたサービスから、自社特有に開発するできるものまで多種多様です。
そして導入している企業のほとんどでは、業務効率の改善による従業員の労働時間や残業代の削減に成功しています。それは前章であげた従業員の仕事の持ち帰りをさせずにです。
ジタハラの要因は様々ですが、そのほとんどをシステムを導入することで改善することができます。しかしそれをやらない企業が半数を上るので、ジタハラがなくならないのです。
時短ハラスメントが起こりやすい職場の環境
ではジタハラが起こりやすい職場環境とはどういったところでしょうか?要因としてあげた3つは会社の個別個別の要因と細かいので、ここではあげません。もっと大別した枠組みであげるとすると以下の2つはジタハラが起きやすいでしょう。
- 請負・受託で稼いでいる会社
- 子会社・孫会社
詳しく解説していきます。
請負・受託で稼いでいる会社
まず自社のサービスがなく、取引先からの仕事で売り上げをあげている会社はジタハラが起こりやすいでしょう。なぜなら
- 自分達でお金を生む力がない
- 売上減を避けるために常に仕事を取ってくる
という原因があります。
会社の業績を自分達でコントロールすることができず、裁量を取引先に握られている会社は立場上かなり弱くなります。無理な納期や予算であっても、受けなければ他で仕事を取れない危険性や、受けることで今後の仕事の展開につなげられるという期待から、むちゃな要件の仕事をたくさん取ってきます。そこで無理が発生して業務超過になるのです。
子会社・孫会社
独立系の会社でなく、親会社があったりグループ会社の一員であると、下に位置するほど業務超過になりジタハラ環境になりやすいです。理由は
- 上から降ってくる仕事
- 自分達でとる仕事
- 人員は圧倒的に少ない
の2つがあるからです。
請負や受託で稼いでいる大きな会社として広告代理店があります。例えば電通や博報堂などです。広告代理店は激務で有名ですが、最近は働き方改革が進み、仕事量が調整できているようです。それは業務改善の設備投資や環境構築もあるでしょうが、もう1つに仕事を流しやすいというのもあるでしょう。
電通や博報堂といった大きな会社には、子会社や孫会社や特定業務専門のグループ会社など、数多くの会社を持っています。そこには上下関係ができているので、上から依頼された仕事を断ることはできません。しかもその量は、もともと親会社で捌ける量と判断した分になります。そしてほとんどの場合親会社の方が従業員数は多いです。
そこからはみ出た分の業務であっても、その量は子会社・孫会社の普通の仕事と同等もしくわ多いかもしれません。自分達が取ってきた仕事に加え上から大量の仕事が来る。それを捌くにはどれだけ業務改善の投資をしても、時間を掛けなければ終わりません。
しかし残業時間が増えると世間に叩かれ、従業員は辞め新規採用は難しくなる。結果、ジタハラ環境になるのです。
時短ハラスメントな職場から逃れる方法
ではジタハラ環境から逃れるにはどうすればいいのでしょうか?結論上記で説明した会社で働くのをやめればいいのです。間違っても環境を変えようと自分から動いてはいけません。1社員でそんなことは不可能だからです。
ジタハラ環境になりにくい職場に移るのが一番再現性が高いです。
- ビジネスの上流を占める会社に転職する
- 業務改善投資に積極的な会社に転職する
- 自社サービスで売上を作れる会社に転職する
こういった会社への転職を検討していきましょう。
みなさんがよくネットニュースで見かける、労働時間短縮を実施している会社はどんな会社でしょうか?ほとんどの企業が上記の3つに当てはまるのではないでしょうか?
筆者の1番最初に勤めた財閥系金融機関を例に挙げてお話しします。僕の入社した前年、同じ部署の先輩は月間の残業時間は60〜70時間ほどだったそうです。しかしその年に例の電通の事件があり、本格的な働き方改革と残業規制が入りました。
そこから業務改善のためのシステム投資を行っただけでなく、営業スタイルも変えたり、部門の統一をしたりするなどして、残業時間は月間30時間まで短縮されました。現在同僚に話を聞くと、月曜日は19時までに、水曜日は18時までに退社をするというルールができ、それでも会社は以前と変わらず回っているようです。
金融機関は大別すると請負・受託系の業種にはなりますが、比較的大手が多くコンプラにも厳しい会社が多いので、業務改善をする投資も躊躇なくできます。
上でに挙げた3つに当てはまる会社を選べばジタハラに悩む可能性が低くなるでしょう。
結論:転職できるスキルを身につける
ジタハラに悩みたくないのであれば、いっそその環境から逃げてしまった方が早いです。なぜなら解消するにはさまざまな要因があり、社員1人で解消できることはほぼ不可能だからです。
ジタハラになりにくい職場の特徴をいくつか紹介しましたが、それらの会社を一言で言うと「大手」になります。こういう会社に転職するのは簡単なことではありません。仕事の実績とスキルの両方が伴っていなければ不可能です。
なので、大事なのは自分を磨くことです。それができなければいつまでもジタハラ環境で働き続けなければいけません。自己研鑽を積み、ぜひ理想の職場に転職しましょう。