課題設定をするときの最短ルートは、意識的に「ムダ」「ムリ」「ムラ」の発見をすることです。そして、それらを排除することで、プロジェクトの生産性を大幅に向上させることができます。
ムダ・ムリ・ムラを直視する
仕事を行なう上で必ず生じる「ムダ・ムリ・ムラ」。それらを直視することで、プロジェクトの抱える課題を明らかにすることができるでしょう。ここではまず、「ムダ・ムリ・ムラ」の定義について考えます。
「目的」と「手段」という視点から、「ムダ・ムリ・ムラ」を捉えるとわかりやすいでしょう。
目的 < 手段 → 「ムダ」
目的に対して、手段が大きすぎる場合を「ムダ」といいます。これは、直感的にイメージしやすいでしょう。例えば、仕事の進捗を報告する資料を作る時に、必要以上のアニメーションをつけることは、「進捗の報告」という目的に対して「必要以上のアニメーション」という手段が明らかに大きくなっているので、「ムダ」であるといえます。
目的 > 手段 → 「ムリ」
目的に対して、手段が小さい場合を「ムリ」といいます。具体例を挙げると、3人がかりで1日かかる仕事を、作業量と納期を変えることなく1人だけに任せることは、「仕事の完了」という目的に対して、「1人に任せる」という手段が、小さくなっているので、「ムリ」であるといえます。
目的 ≠ 手段 → 「ムラ」
目的と手段がイコールではない不安定な状態のことを「ムラ」といいます。言い換えると、「ムダ」と「ムリ」が頻発していて、バラツキがあることを指します。
「ムダ・ムリ・ムラ」を発見するコツ。「目的」と「手段」のギャップに注目しよう。
プロジェクトの「ムダ・ムリ・ムラ」を発見するためには、プロジェクトの「目的」が明確でなくてはなりません。目的を明らかにすること、つまり「あるべき姿(ビジョン)を描くこと」で初めて、現状(手段)との乖離(ギャップ)が生じて、問題を可視化することができるからです。このような手法を「ギャップ分析」ともいいます。
目的を決める時には、「なぜこのプロジェクトを立ち上げたのか?」という背景を考えた上で、どのような状態を達成したいのかを考えると良いでしょう。そして、目的はイメージだけではなく、必ず定量化しましょう。例えば、「売り上げを大幅に伸ばす」ではなく、「売り上げを1年後に3,000万円まで増やす」といった具合です。このように、目的を明確化したら、次にやるべきことは現状分析です。そのために最も効果的な方法は、「業務を見える化」することです。具体的には、属人化した業務をフロー図に落とし込むことやメンバーの能力をスキルマップで表現すること、などが考えられます。
さて、ここまでで、「目的」と「現状(手段)」を明らかにすることができました。それでは、双方のギャップについて考え、「ムダ・ムリ・ムラ」を洗い出しましょう。つまり、「目的≠現状(手段)」となっている箇所を探すのです。これが完了して、「ムダ・ムリ・ムラ」をリスト化することができたら、それらの問題が起こっている本質的な原因について思考してみましょう。次の章では、いわゆるボトルネックの探し方について説明します。
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ボトルネックはどこにある?
「ムダ・ムリ・ムラ」をリストアップすることができたら、その中でもっともクリティカルな問題を特定しなくてはなりません。
そのためのツールとして、原因追求型のロジックツリーを利用します。原因追求型のロジックツリーを用いることで、問題の「原因」を掘り下げることができます。問題の原因は、一つだとは限りません。ロジックツリーを使うことで、問題の原因を生み出す要素を網羅的に洗い出し、特に影響が大きい、本質的な原因を突き詰めます。
それでは、具体例で考えてみましょう。「ダイエットしても体重が落ちない」という問題があったとします。それに対するロジックツリーは次の図のようになります。
ロジックツリーを作成する上で気をつけなければならないことは、2つです。
MECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)であること
MECEとは、「漏れなく・ダブりなく」という意味です。つまり、網羅性を担保する必要があるということです。ロジックツリーの目的は、具体的な要素を抽出することが目的ですので、抜けや重複があるとその要件を満たせなくなってしまいます。
階層の次元を揃えること
例えば、上の図の例でいうと、第二階層(左から二番目の層)で「ジムに行けてない」という要素を挙げるといったことです。それは本来、運動不足の階層の下に存在すべきであるのに、間違った階層の要素と並べてしまうと、ロジックツリーの整合性が保てなくなってしまいます。
ロジックツリーでボトルネックを見つけるためのコツは、「なぜなぜ分析」を行なって、階層の深掘りをしていくことです。「なぜなぜ分析」とは、問題が生じた時に複数の「why」を考えることによって、その問題の根本的な原因を特定する手法です。
さて、リスト化された「ムダ・ムリ・ムラ」から、ボトルネックを見つける方法がわかりました。それでは、ボトルネックを見つけたら、それをどのように解決すればよいのでしょう。
生産性を高めるには
まずは、ボトルネックを分解することです。ボトルネックはいくつかの要素から構成されている場合が多いので、それぞれを細分化しましょう。それが完了したら、次はそれぞれの要素に対する優先順位を考えなくてはなりません。経営資源(ヒト・モノ・カネ)は限られているので、選択と集中が必要です。そして最後に、それぞれへの打ち手を考えていきます。
ここで、一旦振り返りをすると、ここに至るまでの大きな流れは、「目的」を設定して問題を逆算、ボトルネックを考えることで、「現状(手段)」を改善するというプロセスになります。つまり、「ムダ・ムリ・ムラ」が発生する要因である「目的と手段の不一致(目的 ≠ 手段)」を解消するために、もっとも効率的なやり方を提示してきました。
結局は、「目的と手段を一致させる(目的 = 手段)」ことが、プロジェクトの生産性を高めるためには必要不可欠であるということです。プロジェクトマネージャーは、その点について、意識しておかなければなりません。
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「「ムダ」「ムリ」「ムラ」から、生産性向上の取り組みを始める」についてのまとめ
本稿では、プロジェクトの「ムダ・ムリ・ムラ」の発見が、どのように生産性向上に寄与するのかについて論じました。
「ムダ・ムリ・ムラ」は、「目的」と「手段」の関係性から考えると、理解がしやすいです。最終的に、「目的 = 手段」となる状態を生み出すことが、プロジェクトの成否にとって、非常に重要だということを、ご理解いただけたのではないでしょうか。記事内で、いくつか紹介したビジネスフレームワークも、ぜひ実践に役立てていただければ幸いです。
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