定時で帰るのは当たり前です。そう言えるためにできること・できないこと

働き方改革関連法案が施行された2019年4月。残業や有給休暇、副業・リモートワークなどの多様な働き方に関する報道をよく見るようになりました。また報道だけでなく、『わたし、定時で帰ります。』(TBS)という新ドラマが始まったり、『チコちゃんに叱られる』(NHK)でGWの10連休にCGスタッフを休ませる予定であることをチコちゃんが発表したりと、テレビ番組でも働き方について取り沙汰される機会がぐっと増えたように思います。

働き方改革にはさまざまな側面がありますが、『わたし、定時で帰ります。』のテーマにもなっている、残業や有給休暇などの従業員であれば当たり前に付与されている権利について、今回は改めてご紹介したいと思います。

新ドラマ 『わたし、定時で帰ります。』

出典: 『わたし、定時で帰ります。』公式
まず、このドラマの概要を説明しましょう。
主人公は、Web制作会社で働くディレクター。仕事中は生産性の高い仕事をし、残業をせず定時に帰ることをモットーにしている女性です。しかし、主人公の勤める職場は、ワーカホリックの社員やブラック発言をする上司など、曲者社員ぞろい。本ドラマは、こういった曲がった職業観やブラック企業問題、職場の人間関係などのさまざまな社会問題に主人公が立ち向かう様子を描き、「何のために働くのか?」「自分を大切にすること」などの強いメッセージを伝えていくドラマであるということです。

朝礼や全体集会は労働時間に含まれるのか?

『わたし、定時で帰ります。』初回放送では、「新人なら就業開始30分前に会社に来い」「終電まで働け」といった、指導エピソードがありました。いまでは、このようなカルチャーの会社も以前よりは少なくなってきているようには思いますが、確かにほんの数年前の日本では一般的なことでした。私も新入社員のころは、朝7時半までに出勤して、先輩たちの机を布巾で拭いたり、事務所の掃除をしたりするのが務めでした。その会社では、そういった朝の役割を毎年の新人1年目が行なう決まりになっていたのです。あまり覚えていませんが、確か規定の就業開始時刻は9時だったと思います。朝の掃除をするとはいえ、7時半なんてとんでもなく早い時間です。

また、営業報告会議という名の、売上ノルマを責められるみたいな時間が毎週金曜日の19時くらいから始まりました。私は営業職でしたので、出席が必須。もちろん普段も19時前に帰ることなどありませんでしたが、営業会議は2〜3時間続くので、帰りは終電になることも。いまではあまり考えられないような環境かと思いますが、当時は他の会社でもそこまで珍しくなかったように思います。

その後、何回かの転職を経て、人材会社に就職。広報部門でしたが、広報の社内施策は人事制度と密に関係していることもあり、人事の知識が身につきました。
例えば、労働時間について。前述の朝の掃除や深夜の会議。法的にはいずれも業務時間にカウントされます。会議は当然ですが、朝の掃除だけでなく、朝礼なども業務時間となるのです。ですから、「始業の5分前から朝礼」というのは、実はNG。もし設定するなら、時間外業務を命令しているということになり得るのです。また、期ごとの全体集会(締め会、キックオフなど)ももちろん業務時間。通常の仕事が終わる17時頃から始まるといったこともよくある話ですが、規定の就業時間を超える分は時間外労働として報酬が支払われなければなりません。

人材業界の広報部門に入ったことで、会社の何気ない施策やイベントも、参加を必須にできるか否か、それを業務時間として扱うか否かなどだいぶ気を使うようになりました。

有給休暇を取得するのに理由は必要ない

有給休暇も少し前までは、「ペットが死んだという理由が有給休暇の理由になるか?」といった記事が炎上するなど、認識の間違いが多くありました。労働時間と同様に、有給休暇は労働者の権利ですので、いつでもどんな理由でも取得できます。こちらも、『わたし、定時で帰ります。』のドラマの中で出てきていましたが、有給休暇取得に理由は必要ではありません。この理由なら取得が許されるかどうかという考え方自体がおかしなこと。とはいえ、周りに迷惑がかからないようにするなどの、「空気を読んだ」取得が原則とされているので、日本ではどうしても休みが取りづらいという状況になってしまっていました。今でも「有給休暇を取りたいけど、職場の繁忙期だから言い出せない」「今の上司は全然休まないから、有給休暇を取るなという圧を感じる」といった理由から、休みたくても休めない人は少なくないかもしれません。

『わたし、定時で帰ります。』にしても、有給休暇の消化にしても、労働法的には至極当たり前のこと。働いた分だけ給与が支給されるのと同じように、労働者に与えられている権利なので悩むことなく主張すればいいことで、むしろ残業などを前提に人を使う会社が間違っているということが言えます。ただ、これはあくまで労働法上のことではありますが。

人事のホンネとタテマエ


ここまでは、あくまで法的な建前の権利についてご紹介しましたが、人事担当者(または経営陣や直属の上司)はどう考えているのでしょうか。

これについては、会社や上司によるので一概にはいえませんが、労働者に与えられている権利とはいえ、それをすべて行使しようとする社員をポジティブに見ているかというとそうではないことが多そうです。残念ながら、どちらかというと、「権利の主張ばかりする社員」といったネガティブな印象を持たれているほうがまだ一般的な考え方のように思います。

これは、有給休暇や残業といったことだけでなく、産休などにも言えることで、「あの社員また妊娠して産休取るの?」「(子どもが小さいからって)時短勤務いつまで続けるのか?」といった無神経とも取れる発言をたくさん耳にしてきました。今は、建前的にこういった発言は慎むべきだと我慢する人事担当者が増えていますが、ホンネではそう感じている人も多いのだと思います。このような人事や上司のホンネを感じることは働いている女性なら1度や2度ではないと思います。
私自身だってそうです。新入社員時代は朝7時半に出勤して掃除をしていた経験があることから、労働者とはこういうもの。会社に尽くして当たり前という気持ちが以前はあったようにも思います。なので、権利の主張をする社員を見ると、「まずは仕事して結果を出してから言わなきゃ」みたいな感情を持っていたのも否定できません。

働き方改革の本質とは

しかし、働き方改革とはただ制度や仕組みを国の言う通りに変えるのではなく、このような個人の感情や意識を変えることが本質的には求められているのだろうと思うのです。私自身も数年前にかなり意識的に自分の考え方を変えました。それは、自分自身が子どもを持って、時短勤務をしなければならなくなったことが大きいかもしれません。遅くまで働くこと、朝早く出勤することが偉いわけではない。有給休暇などの休暇を取らないから良いということもない。当たり前の権利を当たり前に行使することと、不真面目に働くことはまったくの別物であるということが身をもって理解できたからです。

本質的な意味を理解し、必然性を感じていないと、「時短ハラスメント(ジタハラ)」などといった、ただ「残業するな」「休め」という逆の意味での圧力につながってしまいます。国が考える施策を表面的に行うだけでなく、このような時代の流れを機に、なぜそれが必要なのか、じっくりと考える機会にしてみるのも良いかもしれません。

まとめ

残業や休日出勤が当たり前といった環境で頑張っている女性は、まだ多くいらっしゃるかもしれません。このような働く環境というのは、会社のカルチャーや上司の志向性、考え方などが大きく影響するので、1人の社員ではどうすることもできないことが多いのも事実です。特に、それが若手であったり、女性であったりすると、なおさら環境を受け入れるしかないことが多いかと思います。そんな時は、どうすれば良いでしょうか。会社のカルチャーが変わるまで待つか、上司が変わるのを待つか、法律がもっと厳しくなることを待つか。確かに、どれも自分ひとりでは不可能な環境を劇的に変えるきっかけになりそうです。ただ、そのような外的な変化をただ待つだけというのも辛すぎます。

そのような時は思い切って転職を考えるのも良いと思います。今は人手不足なので、より良い環境へと転職できる可能性は高いです。または、思い切ってフリーランスへの転身なども考えてみても良いかもしれません。大切なのは、今の環境を不満に思いながらも受け入れ続けるのではなく、少しでも変えようとほんの一歩踏み出すこと。一人ひとりのこのような行動や意識が、最終的には「みんなが健全に働ける社会」へとつながっていくのかなと思います。
吉高由里子が演じる結衣のように、自分ひとりで権利を主張するのは難しくても、「定時で帰りたいのに」と感じるその気持ちを大切に、次の一歩につなげる原動力にしていただけたらと思います。その一歩が将来の理想的な社会につながると信じて。

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