「台湾」と聞くと、日本と比べてなんとなく女性がよく働いているイメージがありませんか?
それもそのはず、現在台湾のトップである「総統(総理大臣)」は、2014年から民進党の代表である「蔡英文」という女性です。そして、台湾で5年働く私も「台湾は女性が働きやすい国だなあ」と常に感じています。
そこで今回は、台湾ではなぜ働く女性が多いのか、どうして働きやすいのかを、台湾労働部が公開しているデータや、実際に台湾で私が見聞きしたことを元にお話していきたいと思います。
台湾女性の労働力は何%?
台湾労働部が公開しているデータによれば、2017年の台湾女性の労働力は、50.92%です。あれ、意外に低いな、と思いますよね。台湾には、15才以上の女性が1026万5000人いるのですが、労働者の割合は50.92%ですので522万7000人です。
とはいえ、1026万人のうちは171万人が65才以上の高齢者ですので、国民年金の受給が65才以上ということを考えると、労働人口が少ないのも納得できます。
仮に15~64才までの女性しか働いていないとすれば、女性の労働力は約61%まで上がります。
日本と比べると労働力はどうか?
厚生労働省の報告によれば、2017年の日本人女性の労働力は43.7%です。15才〜64才に限定した場合、労働力は69.4%になります。
割合だけでみると、日本人女性のほうが「労働力」が高いというのが少し意外でした。女性全体の労働力は台湾のほうが高いけれど、15〜64才の女性でいえば、日本のほうが割合が高いということがわかりましたね。
台湾男性と女性の経済格差について
さて、イメージ以上に日本人女性は働いていることが分かったのですが、どんな形態で働いている人が多いのでしょうか?正社員?それとも派遣社員?パートにフリーランスと、「働く」にも様々な形がありますので、次は経済格差をみていきたいと思います。
台湾男性の平均的な月収は54,066元(約19万4600円)で、女性が45,333元(約16万3200円)となっているので、女性の給与は男性の86%程度ということがわかります。就職情報などを見ていても、仕事はほとんどがフルタイムで、パートタイムという形態は非常に少ないと感じます。
日本と比べると男女間の経済格差はどうか?
日本はというと、男性の平均月収が33万5500円、女性の平均月収が24万6100円なので、女性の給与は男性の73.4%となります。台湾と比べると、想像していたとおり男女間の経済格差が大きいですね。
月収24万円というとパートタイムではなく、正規社員の割合が大きいと思うので、パートなどの労働人口も合わせるとさらに差は開くでしょう。
「台湾は女性にとって働きやすい環境」は事実か?
これまで労働人口と男女間の経済格差を、日本と台湾で比べてみて、「台湾女性のほうが日本人女性よりも多く労働している」ことが分かりました。
では、実際に台湾は女性にとって働きやすい環境になっているのか?社会や職場のどのような部分が、女性を働きやすくさせているのか、具体的にみていきましょう。
育休取って当たり前!職場普及率はなんと90%超え!
台湾の労働部が公表しているデータによれば、2016年から2017年にかけて育休休暇を半年取った女性の93.54%が職は復帰しているという事実があります。台湾では、出産前後で2ヶ月の産休があり、この期間は100%のお給与が支給されます。(政府が半分、会社が半分負担します)
産休を終えると、子供ひとりにつき半年間の育休休暇に入るのが一般的です。この半年は、産休に入る前にもらっていた給与の半分が毎月支給されます。
ばりばり仕事をこなしている管理職だと、子供を出産する直前まで大きなお腹を抱えて業務をこなし、2ヶ月休んでから職場復帰する人もいます。
結婚・出産を経験しても社会復帰する環境が整っていることが、台湾で女性が働きやすいことの大きな理由になっているんですね。
台湾のワーママの1日を追ってみた
数百人いる職場の同僚の中から、まだ小学生に満たない子供がいる営業管理職のワーママ平日ルーティーンを聞かせてもらいました。彼女の平日はこんな感じです。
就業時間は8時30分。職場まではバイクを20分ほど走らせれば着くので、起きるのは大体が8時になる少し前。子供と一緒に8時まえに起きると、簡単に着替えをして、子供を保育園に送りにいきます。台湾では、職場にメイクをしていく人は少ないので、朝の準備は顔を洗ってスキンケアをするくらいで済みます。
家と職場の中間にある保育園にバイクで子供を届けたあと、最近できたばかりの朝ごはんやさんで美味しいダンピン(台湾式パンケーキ)と豆乳を買って、始業時間ぎりぎりに会社へ。就業時間と同時にタイムカードを押したら、朝のメールチェックをしながら朝食を頬張ります。
お昼休みになると、前日に母や旦那さんが作ってくれたお弁当を温めて、同僚と楽しくおしゃべりをしながらあっという間に食べ終える。食べ終えたら、1時半にまた仕事が始まるまで30分ほど仮眠をとります。
午後の仕事が始まったら、電話やメールに会議に慌ただしく過ごしているうちに、定時の時間に。今日のやることを終えたら、基本的には定時で帰宅です。
定時が近くなると、実家の家族や旦那さんからしきりに電話が掛かってきます。内容は大抵が「今日はどこで食べようか?」など。
保育園は、最大で20時まで預けられるけれど、特別会食や残業のない日は基本的に19時前には旦那さんか自分のどちらかが迎えに。子供を迎えに行ったら、近所の夜遅くまで空いているお店で夕食を取って、置いてあるテレビなど観ながら雑談して21時までには帰宅。
シャワーを浴びて、子供の宿題をみたり、翌日のスケジュールを確認して22時半には就寝。時間のあるときには夕食を簡単に済ませて旦那さんと川沿いをランニングすることもあるそうで、生活は健康そのものですね。
もちろん営業部長なので、海外から来客があるときは付き添いで会食にいくこともありますし、数ヶ月に1度は1週間程度の海外出張もあります。それでも、平日に家族や会社の協力を得て無理をしないことで、規則正しく、ストレスのない生活を送っているように思います。
そして、家事の時間がほとんど見当たらないのが良いですね。お手伝いさんは雇っていないらしいので、掃除や洗濯など最低限の家事はしていると思いますが、子供を交互に迎えにいくことから旦那さんが家事にとても協力的なのが分かりますね。こんな生活ができるならば、正社員として働きながらもストレスなく子育てができるのかなと感じました。
まとめ
台湾では「女性が働きやすい」というよりも、「女性が働いて当たり前」という前提で社会が出来上がっていると感じました。産休や育休などが、事務職だけではなく管理層まできちんと行き届いていて、職場の誰もが復帰を後押ししてくれます。
仕事以外の社会である家庭でも、両親など親戚に気安くお願いができるのも、家族の繋がりを大切にする中華圏ならではだと感じました。日本でも、女性があまり気を負わず、気軽に働いて生活していけるようになれば良いなと思います。
【出典】
・近年我國女性勞動參與狀況(労働部統計)
・平成29年版働く女性の実情(厚生労働省)