緊急レポート:働き方の多様性の足を引っ張るアメリカの無給政策

世界でもっとも進んだ国、アメリカ。政治、文化、経済、科学、先進技術、どの分野をみても、世界的なリーダーであり続けています。先進国のなかでも最大級の経済力を有し、世界最大の製造国のひとつでもあるアメリカ。国内野球のリーグ優勝を決めるにも、「ワールドシリーズ」と銘打ってしまうが、それにふさわしい国民性も有しているアメリカ。世界でももっとも豊かな国の一つであるアメリカが、遅れをとっている分野があります。それは産休・育休制度の遅れです。

産後無給はアメリカのみ

すぐれた生産性をもつアメリカ経済。人権や平等といった問題に特に敏感であり、女性の躍進もめざましく、管理職の女性も多数存在する、そんなアメリカは、出産した従業員が産休を採っている期間、給料を無給とし続けているのです。無給であるのは、OECD(経済協力開発機構)に加入している国で見ても、アメリカのみです。 例えば、北欧のフィンランドでは、出産した母親は最長3年間の有給休暇を取得する権利があります。同じく北欧のノルウェーでは、最大91週間、イギリスでは39週間、アメリカのお隣カナダ北部は、一年間の有給休暇の権利があります。

一方で、アメリカは、当時の大統領ビル・クリントンが連邦法において、産休時(養子を迎え始めたときも含む)における無給休暇を12週間、取得する権利を与えると規定しました。それはつまり、休むことを認めるが、給与は与えません、そして企業はその期間、その休暇を申請した従業員を解雇してはならない、という法なのです。

子供を持つメリットとコスト

子供を持つことは、生物学的にも、経済的成長のためにも、私たちの社会において必要条件なのです。国レベルでみても、経済成長が続けるためには、カップルは可能な限り多くの将来の従業員と納税者を誕生させていく必要性を持っています。

子供を持つことは、実際問題、家庭にとっても費用のかかる大きな事業です。典型的なアメリカの子どもを出産から18歳に昇格させるには233,000ドル以上の費用がかかると試算されています(大学教育コストは含まず・子供一人約13,000ドル)。

そして、さまざまなケアを多く必要とする乳児や未就学児などは、その手のかかる年齢までは、主な世話をしている役割の親は、仕事を休まなければならないことを意味しています。そして、出産にかかわり、母乳が出ることからも、仕事を休むのは一般的に母親の場合が多いでしょう。

したがって、女性が仕事を休まざるを得ない時期に、有給がないと、ますます家計所得は急減していきます。典型的な家計収入は、アメリカでは出産時点で10%下がり、数ヶ月後に両親が仕事に復帰するまでは完全に回復しません。そして、保活などを経て、働きだすことができたとしても、仕事を休めないときに子供が病気になってしまえば、病児保育コストを母親が負担していたりすれば、所得はなかなか回復させることができません。

子供を産み、育てるという大変重要な仕事をしている家庭は、膨大な費用が必要な時に、収入が減ってしまうということを経験するのです。子供の存在が、国の経済を存続させるためにも必要なことであると認識しているアメリカ以外の富裕国は、子供の養育のためにも、このような家庭を援助することに高い関心を持っており、特に働く両親、特に母親に、有給休暇を取る資格があると定めているのです。

企業へのメリットを重んじるアメリカ

それなのに、米国にはそれがないのです。
そういった賃金政策は、「政府ではなく、雇用者にとってメリットの高い政策である」と批判されています。アメリカでは、そのような雇用者への保障は、企業がするものであるという考え方もあります。しかし、雇用主にそれを求めると、どうなってしまうのでしょうか。実際、中小企業の40%以上がそれを提供していないことが統計で明らかになっています(2016年調べ)

出産における肉体的および精神的な外傷は産婦それぞれ異なり、完全な回復には長い時間がかかるものです。にもかかわらず、経済的に産後休むことができず、働かなくてはならない母親にとって、アメリカの無給政策は大変苦しいことです。母親に休みが必要なことと同様、出産直後の生まれたての赤ちゃんには、細やかな注意とケアが必要なのです。ケアに様々なコストが発生するときに、政府がサポートを検討しすべきではないでしょうか。

アン・ハサウェイのスピーチから考える産休・育休制度

2017年の「国際女性デー」での会合で、アカデミー助演女優賞の受賞者で国連親善大使でもあるアン・ハサウェイは「国際女性デー」の3月8日、ニューヨークの国連本部でスピーチを行ない、アメリカの産休・育休制度の改善を訴えました。一人の子供がおり、ワーキングマザーでもある彼女は、「アメリカの母親の4人に1人は、休んでいる経済的余力がないために、出産後2週間で仕事に復帰しています。この事実を聞いて、私は胸が痛くてたまらなくなりました」とスピーチをしました。

それほどの割合で、2週間で職場復帰している女性がいるとは、大きな問題ではないでしょうか。日本では、厚生労働省の取り決めにより、出産の翌日から8週間は、就業することができません(ただし、産後6週間経過後、医師が認めた場合は、請求することにより就業することができます)。このことからもわかるように、日本では少なくとも、出産で酷使した体には6週間の休息が必要であると考えられています。他にも、特に産後の肥立ちを重んじる韓国では、通常1ヶ月から3ヶ月ほど、なるべく安静に過ごすことが必要だととされており、出産後のママたちが利用できる、手厚いケアサポートが多数あるのです。

まだまだ出産後の女性へのサポートについて考える余地がある

このような無保障は、出産する女性を軽んじてはいないでしょうか? 新生児が家族に加わるという一大事、家庭には多くの出費が必要とされる時期に、アメリカ政府は無給を選択し続けることはなにを意味しているのでしょうか? 生物学的に出産を義務付けられている女性が、望まずとも無給になってしまうことによって、軽んじてもよい存在であると見なしてもよいという考えを生み出してはいないでしょうか? 出産をする妻の夫や配偶者は、妻が経済的に弱い存在であると見下すことにつながらないでしょうか? シングルマザーの場合は特に深刻です。出産してから無給ともなれば、夫やパートナーからの援助を見込めずに、産後の疲れた体を十分休めること無く、すぐに職場復帰しなくてはならないことは明らかです。

男女平等と女性の地位向上などを目指す会合が行なわれる国連総本部のあるアメリカにおいて、出産の役割を生まれながらに持つ女性を軽視しているともとれる無政策が続けられていることは大変疑問です。これからの未来を、よりよいものにするためにも、出産や子供を産み育てることにおいて、女性たちがポジティブになれるような社会を作っていけるように、政府や企業、私たち個人も、私たち女性の経験を活かして考えていかなくてはなりません。出産というかけがえのない経験と、働くことをまったく別のことにせず、仕事に活用できる貴重な経験として前向きにとらえられるような世の中にしていくことを望みます。

本記事は、ワシントン・ポスト 2/5の記事を参考に執筆しています
https://www.washingtonpost.com/news/wonk/wp/2018/02/05/the-worlds-richest-countries-guarantee-mothers-more-than-a-year-of-paid-maternity-leave-the-u-s-guarantees-them-nothing/

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