絵本『かいじゅうたちのいるところ』の子どもの姿に学ぶ

子どもに絵本を読み聞かせる時間。小さな子どもが絵本を求めるその尊い時間は、絵本を読んであげている大人側にとっても得難い時間です。
絵本は、美しい絵と厳選された言葉で表現力の世界の広がりを教えてくれます。
発表されてから長年にわたり、絵本の中の絵本として子どもたちから不動の人気を得ているモーリス・センダック著『かいじゅうたちのいるところ』は、繊細で特徴的な美しい絵と、シンプルながらも深い言葉の重なりで、その世界へ読者を引き込む力を持っている作品です。
子どもに読み聞かせる絵本から、子どもと一緒に何かを感じとってみましょう。
今回の記事は『かいじゅうたちのいるところ』の絵本の子どもの姿から、私たち大人が思い出すべきスキルについて紹介していきます。

『かいじゅうたちのいるところ』内容紹介

この絵本で、子どもと一緒に、かいじゅうの国を訪ねてみましょう。世界中の読者をひきつけてやまないセンダックの代表作で、子どもの内面のドラマが繊細に描かれたこの絵本は、1963年に出版されました。1964年にはアメリカで最も権威のある児童書の賞のひとつ、コールデコット賞(アメリカ合衆国でその年に出版された最も優れた子ども向け絵本に毎年授与している賞)を受賞しています。この絵本は古びることなく、クリエイターにも大きな影響を与えており、2009年には(日本では2010年公開)同名絵本をスパイク・ジョーンズ監督によって実写映画化されています。

あらすじ

イタズラ好きの主人公マックスは、オオカミの着ぐるみを着て、大暴れしたいたずらの罰に、夕食ぬきで寝室へ閉じ込められてしまいます。ところが、いつのまにか気がつくとその部屋は森になり、マックスは旅に出ます。船に乗って怪獣たちのいるところへ行き、そこで王様になります。楽しい遊びにも飽きて、また船に乗って優しい誰かさんの元に戻るマックスなのでした。

著者について

1928年生まれ、2012年没。ニューヨークのブルックリンにポーランドからのユダヤ移民の子として生まれる。ディズニーや、イギリス人イラストレーターのランドルフ・コールデコットの影響をうけつつ、ウィンドーディスプレイの仕事をしながら、夜間学校でデザインを学び、児童本の作家・画家となる。1963年に出版された「かいじゅうたちのいるところ」で1964年コールデコット賞、1970年には国際アンデルセン賞など、数々の絵本賞の授賞歴がある。オペラやミュージカルなどの舞台美術も手掛けたことがあり、その幅広い才能で世界の注目を集めた、絵本界を代表する作家の一人でした。

子どもこそマインドフルネスの達人


子どものときに読んだことのある絵本を、大人になって再読すると、違った印象を持ったり、新しい気づきを得られることがあります。この作品は、大人の再読にふさわしい、子どもだけではなく大人も楽しめる作品となっています。
まず目を見張るのは、センダックの描く、繊細な線の集合からなる美しくも独特なイラストです。読者はページをめくるごとに、新しい驚きを覚えます。自分たちよりもとても小さなマックスを王様にする風変わりなかいじゅうたちは、大きすぎる頭をそなえた体、大きすぎる目、とがった爪を持っていて、ときに読者の子どもを震え上がるほどに恐ろしく見えると思えば、ときにはユーモラスで楽しげな姿でページに現れてきます。

センダックの記すシンプルな文章のトーンと、繊細なイラストとのハーモニーが、子どもらしい空想世界を存分に表現しています。

部屋にこもったマックスは、子どもという特別な時代特有の感性と想像力で、お母さんに叱られたことを棚上げして、部屋の中からかいじゅうのところへと世界を作りあげていきます。小さな部屋という空間から、想像力を膨らませてかいじゅうと、かいじゅうたちのいるところを作り上げるという、一種の迫力さえ感じさせるところに、子どもの持つ驚異的なマインドフルネスを覚えます。

マインドフルネスとは、今起きている、今行なっていることだけに集中して生産性を高めようとする考えかたですが、子ども時代に誰しも行っていたであろう、今を生きることについての大切さを思い起こさせられます。

子どもの観察力の鋭さ

この絵本は、子どもと大人とは違う考え方を持つ生き物であることを再認識させてくれる本です。
顔が大きくて、目もぎょろぎょろしたかいじゅうたち。彼らはおそらく、マックスの周囲の母親や先生などの大人をモデルにしているのではないかと考えられます。顔が大きく特徴的なのは、いつも周囲の大人たちにガミガミと叱られているために、顔や目への印象が強いため、かいじゅうの姿をそのようにとらえているのでしょう。何かの特徴をとらえてデフォルメするという能力を、子どもが発揮するのは、図工の授業中だけではありません。担任の先生や、周りの人の特徴をとらえて真似をして友達を笑わせたり、それを見ている大人がドキッとするようなアイロニカルなユーモアを表現したりと、子どもの持つ観察力と表現力は、時にまっすぐで辛辣で、大人を驚かせ、心を打つのです。

帰るところがあるからこその冒険

マックスは、かいじゅうたちの国で王様となり、かいじゅうたちに指示命令する立場になります。マックスは怖いもの知らずで、その瞬間瞬間を楽しもうという子どもらしい気持ちに溢れています。マックスは、かいじゅうたちとある種のチームを組み、踊ったり、様々な楽しみを経験します。マックスのように、子どもとは、いたずらや危険なことを、危険と知らずに経験していく中で、日々成長していくものです。そして、いたずらや危険、冒険は成長に必要不可欠なものであり、それらの冒険は、子ども自身が安心して戻れる場所があってこそできることなのだと感じさせられます。

仕事においても、何か新しいことにチャレンジしたり、新しい分野に飛び込もうと考えたときに、いざという時に安心できる場所やスキルを持つことが大事なのではないでしょうか。

根底に愛があるか

この絵本を読むと、子どもとは、愛に包まれ守られながら育まれていくべき存在である、というメッセージを感じます。子どもの行動や冒険を、親や周囲の大人が、愛を持ってさとしながら、良い道へと導いていくことができたら良いと思いさせられます。例えば、マックスのお母さんは、イタズラ過ぎたマックスを、夕ご飯抜きで部屋に独りにさせますが、それは単純にマックスを怒っていたからではなくて、行き過ぎた興奮状態にあった子どもを、落ち着かせるために取った手段でした。マックスを叱る時も、「この、かいじゅう!」と叱っているお母さん。マックスを叱るのではなく、マックスの取っていたかいじゅう的な態度を叱っているのであり、マックス自身を否定するものではありません。子どもの態度やイタズラに困って子どもを放置したり、いさめることを諦めたりもしてはいませんでした。

そしてこの絵本の一番の素敵なところが結末です。部屋にいつの間に置いてあったお母さんの作ったと思われるごはんの温かかったこと。これらのエピソードのすべてに、お母さんの、マックスへの確かな愛情を感じさせられます。お母さんは、絵本の始めのほうでは、イタズラのすぎるマックスに夕ご飯抜きと宣言していましたが、本当はそうするつもりはなく、子どもの行きすぎた行動に終止符を打たせ、興奮した子どもの体を夕食前に休ませようとしたのだとも思えます。親の大きな愛情を、子どもはこのような情景から感じて、成長していくのだと考えることができるシーンです。

毎日の生活で起きる出来事はひとつとして同じことがなく、日々このような対処でいいのか迷いながら私たちは子どもを育てています。迷いがあっても、間違いがあっても、親が持っている根底からの愛情を子どもが理解してくれていたならば、子どもに必ず何かを伝えられるのではないでしょうか。

仕事においても、何かに迷ったり、決断が必要なときに、自分自身が持つ愛をどのように捧げられるのかを考えてみると、納得のいく答えを得られるかも知れません。

絵本『かいじゅうたちのいるところ』の子どもの姿に学ぶのまとめ

絵本は、子どもだけのものにしておくのには惜しいコンテンツです。子どもと一緒に、『かいじゅうたちのいるところ』のような素敵な絵本を読んで、子どもといろいろ話をしてみましょう!

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