一言でチームと言っても、2人でチームになっていることや20人やそれ以上でチームを作っていたりと、チーム人数は企業によってさまざまです。チームの人数は何人が理想的なのかは、組織論の世界でも活発に行われてきた研究テーマになっています。果たして、最適人数は存在するのでしょうか? また、チームに必要な役割とは何でしょう?
今回はチームの理想の人数や各々の役割について確認をしていこうと思います。
チームは最大でも10名前後
「スパン・オブ・コントロール(Span of Control)」という組織原則では、理想的なチーム人数は10名前後であるといわれています。スパン・オブ・コントロールは、組織において上長が統制する範囲には限界があり、その限界を超えると組織の統制がとれなくなると論じる理論です。アマゾン創業者でCEOのジェフ・ベゾス氏が、最適なチームの規模は、食事がピザ2枚で足りる人数であるという「2枚のピザ理論」を提唱していることからも、10名前後はチームの適性値であるといえるでしょう。
チームの人数がそれ以上になってしまうと、リーダーがメンバーを管理することのコストも向上して、ディレクションという重要な職務にかけられる時間が制約されてしまう弊害もあります。また、メンバー同士でも、コミュニケーションの希薄化によって、チームワークに影響が出てしまい、業績低下に繋がるシナリオも考えられます。
それでは、もしチームが10名前後よりも多くなってしまった場合は、どうすれば良いでしょうか? ここでは、2つの対策について述べます。
チームを2分割する
これは最も手っ取り早いやり方です。チームを2つに分割して、それぞれにリーダーを置くことで、チーム人数の適正化をはかります。ただ状況によっては、その規模のチーム改革ができない場合も想定できます。
サブリーダーを置く
チームを2分割することが現実的に難しい場合、チーム内にサブリーダーを置いて、管理をリーダーと分担することで対応する方法もあります。チームの中にもう一つチームが生まれるような感覚ですね。これは、実行するハードルが低いため、状況に応じて柔軟に取り入れることができるでしょう。
以上、2つの対策も考慮しつつ、リーダーはチーム人数が10名前後になるように調整していきましょう。それが結果的にチームのパフォーマンスを向上させます。
人数を左右する要因
前の章では、チームの人数は10名前後が適性値であると述べました。しかし、現実的には、チーム人数の正しさは絶対的なものではなく相対的なものであるといえます。つまり、状況や文脈に応じて、最適なチーム人数は変化するということです。ここでは、チーム人数に影響を与えるファクターについて紹介します。次の表をご覧ください。
チーム人数 | 多い | 少ない |
---|---|---|
業務内容 | 全員同じ業務 | 一人ひとり異なる業務 |
業務レベル | 低い | 高い |
権限移譲 | できる | できない |
業務管理手法 | 効率的 | 非効率的 |
教育 | 重要 | 重要でない |
ITシステム | 整っている | 整っていない |
それぞれの項目について解説します。
業務内容
メンバーの業務が全員同じかあるいはそれぞれ異なるかによって、リーダーの管理コストは左右されます。全員同じであれば、共通のフォーマットで一元管理できます。
一方、それぞれ異なる業務をメンバーが行っている場合は、一人ひとりの作業にそれぞれ注意していなくてはなりません。
業務レベル
業務レベルが低ければ、リーダーの指示もざっくりしたもので良いですが、業務レベルが高ければ、ある程度具体的に指示を出して、経過を観察していかなくてはなりません。
権限移譲
メンバーに権限移譲することができれば、リーダーの負担も軽くなります。しかし、それが難しければ、リーダーの管理コストは上がります。
業務管理手法
業務管理手法が効率的であれば、リーダーの管理コストは軽減されます。非効率であれば当然、その逆です。いかに効率化するかは「作業効率が3倍上がる、質を落とさず早く仕上げるタスク管理・時短編」を参考にしてみてください。
教育
チームメンバーを教育することが重要であれば、リーダーの役割は大きくなります。一方、教育に重きをおいていなければリーダーの負担も軽くなります。
ITシステム
ITシステムが整っていれば、効率的にメンバーを管理することができるため、管理コストは低いです。一方、整っていなければ、管理コストは上がります。
ここまで、チーム人数を左右する要因について、具体的に説明しました。チームの人数を決める時には、状況に応じて、対応するのもいいかもしれません。
スパン・オブ・コントロールの拡大
スパン・オブ・コントロールを拡大させる、つまり管理するチームメンバーの数を増やしながらもきちんと管理の手がいき届くようにするためには、どのようにすればよいでしょうか? ここでは2つの対策について考えます。
マネジメントを工夫する
チームメンバーを管理するために、マネジメント手法はとても大きな意味を持ちます。よって、効率的なマネジメント手法をチーム管理に導入することができれば、スパン・オブ・コントロールを拡大させることができるでしょう。当然、効率的なマネジメント手法を採用しても、それが実践されなくては意味がないので、マネジメント手法を実際に生かすリーダーのマネジメント能力の向上も同時に求められます。
高度な情報システムを使いこなす
昨今、チームを管理することを目的とした情報システムは有象無象に存在して、そのレベルもどんどん高度化しています。それらのシステムを導入することは、イニシャルコストがかかりますが、中長期的にみてリーダーの管理コストを低減させるので、適切な情報システムを導入することができれば、スパン・オブ・コントロールを拡大させることが可能です。ただこれもマネジメント手法と同様に、そのシステムを運用するスキルをリーダーが身につけてなければ不要の長物となってしまうので、学習するコストも計算に入れる必要があります。
チーム内の役割とは?
最適なチーム人数を構成することも、非常に重要なトピックですが、それと同時に、チーム内における役割分担についても考えることで、より強いチームを作ることができるでしょう。ここでは、チーム内に求められる7つの役割について順番に説明したいと思います。
1.困難を突破する役割
チームを前進させるエンジンとなる役割です。ビジョンを決めて、メンバーを鼓舞して、困難を乗り越えていく役割、すなわち「リーダー」です。
2.作戦を考える役割
戦略を理論的に考えて、チームの進み方や障害となる問題について作戦や手順を考えるブレーンです。
3.継続を促す役割
諦めずに粘り強く実行する役割です。どんな状況であってもコツコツと前進する姿をメンバーに見せることで、困難に直面してもチームが目標に向かって進むことができます。
4.人の話を汲み取る役割
共感する役割です。チーム内はもちろんのこと、チームに関わるステークホルダーとも共感して、その気持ちの代弁者となり、その意見によって、チームに影響を与えることができます。
5.仲間をつくる役割
とことん付き合う役割です。どんな状況であっても、チームメンバー全員のことを自分より優先して、傾聴して、人と人とを結びつけます。コミュニケーションの柱となる存在です。
6.アイディアを出す役割
独自の発想力で、既存のやり方に囚われない解決作を生み出します。共通の目的に向かう途中では、さまざまな問題に直面しますが、それらを解決するために、たくさんのアイディアを提示して、チームに希望をもたらします。
7.リスクに備える役割
「このままではいけない」と誰よりも早く気づいて、警告を発します。また、恐れていることが起きないように、早い段階で打ち手をとることで、チームを危機から救います。
以上、チーム内に求められる7つの役割について、紹介しました。あなたは、どの役割が向いているでしょうか? そう考えてみるのも楽しいかもしれません。
チームの理想は何人? それぞれどういう役割があるのかを確認しようのまとめ
本稿では、理想的なチーム人数は10名程度であるという一般論を述べ、さらにチーム人数は相対的なものであること、スパン・オブ・コントロールを拡大させる方法について示しました。最後には、チーム内における7つの役割について解説しています。ぜひあなたのチームビルディングに参考にして最強のチームを作り上げてみてください。
また最強のチームを作り上げるためのヒントを「最高のチームの共通点とは何か? 最先端の企業で実践されている5つのポイント」から得られるので、こちらもぜひ一読してみてください。