優れたチームを作ることは、ビジネスの成功にとって非常に重要なファクターですが、それは多くの企業が難しさを感じている課題でもあります。チームビルディングに失敗する要素は、チームの数だけあるといわれますが、成功しているチームには共通要素があるようです。
ここで成功する最高のチームに共通している必要な5つの要素をご紹介します。
1. 共有された目的とエンゲージメント
成功するチームは、メンバーが高いエンゲージメントで働くことができるような、共有された目的を持っています。メンバーが共有された大きな目的意識を持つことで、チームや組織に対して良い影響を与えているということだけでなく、社会に対しても貢献することができていると感じるようになります。それによって、それぞれが自分の仕事を「天職」として感じ、当事者意識を持って積極的に業務に取り組めるようになるでしょう。
このようなチームメンバーは、チームの成功のための投資(時間、労力、思考)を惜しみません。そこに「やらなければならない」という義務感ではなく、「やらずにはいられない」という積極的な気持ちがあるのです。
成功しているチームというのは、このような心意気で働くチームメンバーと、そのチームメンバーの共通認識によって構成されているのです。
例えば、「トイ・ストーリー」や「モンスターズ・インク」などのCGアニメの制作で世界的に有名なPixar Animation Studio、アウトドア用品・アパレル製造のPatagonia、有機野菜などの健康食品に特化した小売店を運営しているWhole Foods Marketは、それぞれの業界で大きな成功を収めている企業ですが、これらの企業は映画製作に情熱を持つメンバー、環境保護やアウトドアが大好きなメンバー、そして、健康的な商品の提供を通じて人々に健康をサポートしたいメンバーによって愛されるような社内施策を行って、高いエンゲージメントを実現しています。
成功するチームでは、このようなメンバーたちの類まれな執着によって創造の機会を創出し、その結果、こだわり抜かれた商品やサービスを生み出しています。社会に他にはない「特別な価値」を提供している ― 全てのメンバーがその自覚を持っています。お金が目的や最終目標ではないということは、言うまでもないでしょう。
2. 優秀さよりも重要な「チームへのフィット感」
成功するチームは、メンバーの個性に価値を置きます。そして、一人ひとり異なったモチベーションや価値観、性格などがうまく組み合わさることで、チームの力が最大限に引き出されるようなチームを目指しています。チームメンバーに求められるのは、優秀さではなく、どれだけチーム全体の力を最大化できるかなのです。
そのため、経歴書の内容よりも、チーム文化にフィットするかどうかを重視し、採用や昇進の意思決定を行います。文化に適合しないと判断されれば、どんなに経験豊富で優秀な人材も採用しませんし、入社後に規律を守れない、チームのニーズに合わないと判明した場合には容赦なく解雇します。
例えば、オンラインでシューズの販売を行なっているZapposは、すべての人の幸福度を上げるという目標を持ち、他者を助ける意欲の高い人を求めています。これはZapposの企業ブランドでもあります。入社後の研修の後に、自社に合わないと判断された人に対しては、寛大な退職パッケージが用意されていて、自社を去ってもらうのです。
3. 本当に必要なことを見抜いて取捨選択すること
成功するチームは、その成功のために不可欠な重要事項は何なのかということにこだわっています。
チームは、新しいアイデアを歓迎しつつも、絞られた優先事項を強く意識するのです。優先事項を共有することによって、メンバーは優先される目標を達成するために「何が必要か」「何をすべきでないか」を明確に理解します。メンバーがこのことを継続的に理解することが、成果につながる適切なフォーカスを実現するのです。
メンバーは、不要なプロセスや管理など邪魔になるものを徹底的に省き、優先事項に多くの時間を注ぎ、チームの進行と密接に関わっていきます。それと同時に、チームの現状を超えていくために必要な成長の機会を探ります。時間と自主性を開発することを常に模索しているのです。
優秀なチームを持つ企業は、大企業によく見られる組織プロセスや管理を吟味し、邪魔となるものを組織全体で継続的に排除しようとします。中には、チームの目標達成を邪魔する時間のかかる総務上のプロセスを無くしている企業もあります。
例えば、Netflixは正式な年次業績管理制度、休暇申請制度、勤務時間管理、経費使用手続きなどを撤廃しています。そうすることで、優秀なメンバーが本当に集中すべきことに時間を費やせるようにサポートしているのです。Netfrixのチームビルディングに関して詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください。
4. 気まずさを怖れず意見を交わすこと
優れたチームのメンバーは、チームにとってもっとも恐れるべきものが自己満足だということを知っています。他のメンバーの不足を補ったり、励まし合ったりする一方で、摩擦や対立をあえて発生させることも重要視しています。
しかるべき論点であれば、対立や摩擦が起きようとも、良いアウトプットにつながることを信じているからです。メンバー個人から見れば心地よくない状況が想定されるかもしれませんが、チームの成功にとってはメンバー間の摩擦に価値があることを知っているのです。
メンバーはお互いの発言を促し、現状に疑問を持つことを怠りません。気まずい状況にベネフィットを見出しているため、好んで気まずい状況になりそうなことに身を投じるとも取れるほどです。優秀なチームは、摩擦や対立が起きるたびに創造的な対処方法を開発していくのです。チームのこの風土が、リスクであってもチャレンジすることを促し、イノベーションにつながっているのです。
良いコミュニケーションをとり優れたチームを作る具体的な方法は下記の記事でご紹介しています。
誰もが、最高のチームに所属し、仕事上の成功を収めたいと願っています。最高のチームをつくるためにはよいチームコミュニケーションが不可欠です。コミュニケーションは、仕事のパフォーマンスに大きな影響を与えることができる、大事な要素なのです。企業[…]
5. ハードかつソフトなカルチャーを築くこと
優秀なチームは、成果や結果を出すことに対して一般の企業よりも厳しく追求するハードな面もありますが、同時にソフトな側面も持ち合わせています。
チームメンバーの個々の弱みは十分に受け入れられており、サポートや協力を差し伸べ合う文化が築かれています。そうすることで、メンバー同士がコラボレーションする環境や、相互信頼、そしてチームへのロイヤルティを実現しているのです。
大切なことは、ハードな面とソフトな面のバランスの取れた文化があるということです。成功するチームは、結果を出すことへのハードな側面と関係性を良好に保つためのソフトな側面の両方の存在が成功に欠かせないということを知っているのです。
失敗するチームは、どちらかに偏っている場合が多いようです。結果に注力しすぎれば人間関係にひずみを生み、人間関係のみを重視すれば、良い成果を生み出す能力を蝕んでしまうのです。課題は、ハードとソフト面の両立。どちらかを優先したり、遠ざけたりするのではなく、両方を築き上げることが重要になります。
最高のチームの共通点とは何か? 最先端の企業で実践されている5つのポイントについてのまとめ
成功するチームに共通した5つの要素をご紹介しました。業界や業種によって具体的にどのような施策を実施するのかは変わってきますが、これらの5つの要素には普遍的な価値があるはずです。変化するビジネス環境に対応するしなやかさを持ちながらも、基礎事項を意識することで、最高のチームを作っていきましょう。
参考:ロバート・ブルース・ショー著、上原裕美子訳『EXTREME TEAMS(エクストリーム・チームズ)— アップル、グーグルに続く次世代最先端企業の成功の秘訣』(すばる舎刊)