ビジネスパーソンにとって身近なソフトのひとつであるエクセルを使ったタスク管理は、導入コストがかからないこともあり、タスク管理を試すのに最適な方法です。
具体的にどのような表を作り、どんなことに気をつければよいか…それらを解説するのが今回の記事です。
エクセルを使ってタスク管理を行う方法やエクセルでタスク管理を行うためのテンプレートを紹介します。
タスク管理とは
タスク管理とは、プロジェクトを達成するために必要な「タスク」を整理して管理することをいいます。
タスク管理においては、あらゆる業務を作業レベル(すぐ取り掛かれる状態)まで分解して「見える化」し、担当者を決めて作業を行います。これにより、プロジェクト全体を俯瞰的に見られるようになるのです。
タスク管理には
・作業が見える化される
・タスクの優先順位が明確になる
・チームマネジメントがしやすくなる
・タスクの対応漏れがなくなる
というメリットがあります。
タスク管理を実践することで、作業の無駄を洗い出したり、メンバーのモチベーションをアップしたりでき、業務の質や作業効率の向上が期待できます。
タスク管理の基本をさらに詳しく知りたい人は「タスク管理の方法はどうする? コツや考え方を紹介」を読むとよいでしょう。
プロジェクト管理との違い
タスク管理とプロジェクト管理は混同されることが多いですが、プロジェクト管理とは、プロジェクトを成功に導くために、人員や予算、納期までのスケジュールなどのリソースや、進行計画を管理することを指します。
プロジェクトに必要なタスクが正しく遂行されているかを管理することも、プロジェクト管理の一部です。
エクセルでタスク管理をするメリット
タスク管理の方法は多数ありますが、エクセルでタスク管理をすると、どのようなメリットが得られるでしょうか。エクセルでタスク管理をするメリットを見ていきましょう。
作業内容や進捗状況を見える化できる
プロジェクトに必要なタスクを書き出しエクセルでタスク管理をすると、「何をすべきか」「どれ位のタスクがあるのか」などの作業内容や、どこまで完了しているかなどの進捗状況が見える化できます。
作業内容や進捗状況が見える化できるとスケジュールが立てやすく、業務を整理して進めることができます。
テンプレートが豊富
ビジネスで使用されることが多く、ユーザー数も多いエクセルには、テンプレートが豊富に提供されています。無料でダウンロードできるテンプレートも多くあるので、管理するタスクの特徴や業務内容にあったテンプレートを見つけることができるでしょう。
テンプレートを活用することで、一から作成せずともタスク管理を始めることができます。
自分好みにカスタマイズできる
エクセルでタスク管理をすると、必要な項目の設定など、管理するタスクにあわせて自分好みにカスタマイズできるのも、メリットのひとつです。
普段から使い慣れているエクセルは、基本操作を習得している人も多いため、項目の追加や削除などの操作でカスタマイズが容易に行えます。
エクセルでタスク管理をするデメリット
一方、エクセルでタスク管理をする場合のデメリットは、どのようなことが考えられるでしょうか。3つの観点から見ていきましょう。
メンバー間での共有が難しい
クラウドで管理をするタスク管理ツールと違い、エクセルは一度に複数人で編集を行うことができせん。共有データとして管理する場合も、1人が編集を行っていると、他のメンバーはデータを開いても閲覧しかできず、編集しているメンバーがデータを閉じるまで待たねばなりません。
また、一つのデータをメンバーそれぞれがPCなどに保存し、編集を加えて上書きして保存してしまうと、複数のデータが存在することになり、どれが最新データかわからなくなってしまうなど共有の難しさがあります。
モバイルで確認するのが難しい
エクセルはモバイル対応は最適化されていないため、タブレットやスマホでの確認や編集が難しいこともデメリットとして挙げられます。
出先や移動中などに、タスクの追加や変更が発生した時には、一時的にメモをしておく必要が生じ、更新忘れにつながるおそれがあります。
修正や編集に手間がかかる
前述の「メンバー間での共有が難しい」でも解説しましたが、エクセルでは同時に複数人が編集を行うことができないため、修正や変更の際は手間がかかります。
プロジェクトの進行途中では、大規模な計画変更や軌道修正が必要な場合も少なくありません。変更や修正の内容によっては、作成したタスク管理シートでは対応できずに作成しなおす事態が生じる可能性もあります。
エクセルでタスク管理する方法
本稿ではエクセルによるタスク管理の方法を解説しますが、タスク管理には大きく分けて2種類の方法があります。
まず、個人でタスク管理をする方法、そしてチームでタスク管理をする方法です。それぞれの方法を詳しくみてみましょう。
個人でのタスク管理の方法
まずは、個人でタスク管理をする場合の管理表作成方法について解説します。
個人のタスク管理では、上記のような簡単な表を作ることで管理ができます。
優先度やステータスはドロップダウンリストを入れることで、簡単に入力ができます。
エクセル画面上部【データ】タブの【入力規則】を使い、セルの選択肢となる文言を「,(コンマ)」で区切って入力すれば、ドロップダウンリストを作ることができます。
また、文言ごとにセルの色を変えれば、今あるタスクの重要度やボリュームなどを一目で把握しやすくなります。条件付き書式を使用すれば、一つひとつセルを塗りつぶすことなく、決まった文言を選択するだけでセルに色がつきます。
色をつけたいセルを選択し、エクセル上部にある【ホーム】から【条件付き書式】を選択しましょう。【新しいルール】>【スタイル】>【クラシック】と選択し、【指定の値を含むセルだけを書式設定】→【セルの値】→【次の値に等しい】と選択します。
その後、タスク管理表に表示させる文言ごとに表示させたい色やフォントを選択して【OK】をクリックしましょう。
また、特定の項目だけを絞り込んで表示させたい時には、フィルター機能が便利です。
抱えているタスクが多くなった時などは、未着手のタスクや優先度の高いタスクなどを絞って表示させることで、タスクの確認がしやすくなります。
フィルター機能を使う時には、フィルターをかけたい列全体を選択し、エクセル上部の【フィルター】をクリックしましょう。項目の上部に表示される【▼】をクリックして、絞り込みたい項目にチェックを入れるだけで、必要なタスクだけを羅列できます。
個人でのタスク管理のポイント
個人でタスク管理を行う目的は、タスクを忘れずに期日通り完了させることと、作業を効率的に段取りすることです。
そのため、個人でのタスク管理では、以下のポイントを押さえておきましょう。
・タスクは漏れなく書き出し、一元管理をする
・納期や優先度を明確にする
・未着手、対応中、完了などのステータスがわかるようにする
・こまめにタスクを確認し更新をする習慣をつける
エクセルでタスク管理を始めたら、手帳や付箋など複数の管理方法を取り入れたりせずに、全てエクセルで行うようにしましょう。エクセルに集約させることで、抜け漏れを防止したり、段取りのミスを防いだりすることができるでしょう。
チームでのタスク管理の方法
つぎに、チームでタスク管理する場合の、タスク管理表の作成方法を解説します。
個人のタスク管理表に担当者を足すことで、チームでも運用が可能なタスク管理表になります。前述の方法でドロップダウンリストを作成しておくと、担当者の入力もスムーズです。
明確な期限があるタスクをチームで管理する時は、ガントチャートもおすすめです。
チームでのタスク管理のポイント
チームでのタスク管理は、複数のメンバーにタスクを共有することで、業務の重複や認識の齟齬、業務の対応漏れを防いだり、メンバー間での業務の偏りや進捗状況を共有・管理したりすることを目的としています。
チームでのタスク管理は、個人のタスク管理と異なり複数名で共有することが前提となります。そのため、以下のことをポイントとしておさえておきましょう。
・タスク管理を行うツールを統一する
・タスクの担当者を明確にし、対応漏れや重複を防止する
・タスク管理ツールの情報更新や編集について一定のルールを定めて運用する
・ステータス管理などで、進行状況を可視化する
チームでのタスク管理では、メンバーが漏れなく管理表に記入することで、最新の状況に保つことができます。そのため管理表への記入が習慣化するような仕組み作りも重要です。
エクセルでタスク管理を行う手法
エクセルでタスク管理表を作成するために、次の2つの手法を押さえておくと作成がスムーズになります。
WBSで作業を細分化
WBSとは作業分解構成図ともいわれ、タスクを作業ごとに、大きな粒度から小さな粒度へと分解して図式化して整理することです。
タスクを細分化し整理することで、必要なタスクを漏れなく洗い出すことやタスクの重複を避けることができます。
細分化したそれぞれのタスクについて所要時間を見積もり、担当者や期限を設定すると、プロジェクトの全体像がみえてきます。
WBSについては「WBSのおすすめツール9選。選び方のコツや使い方まで紹介」でくわしく解説しています。ぜひあわせてお読みください。
ガントチャートでタスクの流れやスケジュールを可視化
ガントチャートは、プロジェクトにおけるタスクのスケジュールやプロセスを管理するためのタスク管理表で、ツリー構造とチャートでタスクをあらわします。
ガントチャートを用いるとタスクの流れやスケジュールが可視化されるため、チーム間の進捗状況や手順、担当者などを効率よく把握できるようになります。
ガントチャートの作成は、先に解説したWBSを用いると作成がしやすくなります。WBSで細分化したタスクを縦軸に配置し担当者や期日を入れ、横軸に時間を配置することでタスク管理表を作成することができます。
ガントチャートによるタスク管理については「ガントチャートとは?プロジェクト管理で利用する3つのメリットとおすすめツールをご紹介」の記事をご覧ください。ガントチャートを導入するメリットやエクセルでのガントチャートの作り方を細かく解説しています。
エクセルでタスクを管理する際に注意すべきこと
無料で導入でき、ビジネスパーソンにとって身近なツールであるエクセルだからこそ、タスク管理を気軽にはじめることができますが、必ず注意すべきことがあります。
以下の点に留意したタスク管理表や運用ルールを定め、タスク管理を行いましょう。
スマートフォンでの表示には最適化されていないため、タスクの閲覧や更新が困難
外出先など、スマートフォンでしかタスク管理表を開けない場では、タスクの更新ができないため、後回しにすることで更新を忘れてしまう恐れがあります。
また、気軽にファイルを開くことができないため、タスク管理表を印刷したりメモしたりする必要があります。それではタスク管理表の意義が薄れてしまい、段々と使われなくなってしまう可能性もあります。
数式を組み込むには一定の知識が必要
特にガントチャートのようなタスク管理表の場合、数式を組み込むなどエクセルの知識が必要となります。
数式を用いたタスク管理表は非常に便利ではありますが、ほんの少し意図しない操作をしただけで式がおかしくなってしまい、タスク管理に影響を与えるリスクがあります。
エクセルでタスク管理を実行するためのテンプレートリンク6選
エクセルの場合、タスク管理表さえ作ってしまえばタスク管理ができるとはいえ、自分で作るのは時間がかかります。また、その時間も実際のタスク処理にあてたいと考えるかもしれません。
そんな時におすすめなのが、web上で配信されているエクセルのテンプレートを利用することです。形式だけを利用しカスタマイズしやすいシンプルなタイプのタスク管理表から、複雑なVBAマクロなどが組み込まれたタスク管理表まで、さまざまなタイプのテンプレートが提供されています。
本稿では主に無料でダウンロードできるテンプレートをチョイスしています。シンプルなものから順に紹介するので、企業やプロジェクトに適したテンプレートがあればダウンロードしてみてください。
1.エクセルがそんなに得意ではないという方に
ホタテの苦悩
設定内容が書かれたConfigシートに開始日と稼働日を入力。実際にタスク管理を行うスケジュールシートに工数と開始日を入れれば、あとは自動計算でバーが継ぎ足されていく仕様です。
2.自分でマクロ・VBAを設定するので、シンプルなものがいいという方に
Feedsoft
「日程管理表」「プロジェクトごとのガントチャート」「進捗管理表」の3つが用意されています。マクロ・VBAなどが設定されていないため、カスタマイズが自由自在です。
3.スケジュールが把握できればいいという方に
関数のみで作成されているので、計算式を自分好みにすることも可能です。100件までのスケジュールに対応。人材管理などを行っている人に適しているかもしれません。
4.日別・月別・年別の工程管理をしたいという方に
曜日、週、月、半年、1年、10年など、複数の工程を自動マクロが描画してくれます。各分野・担当別に工程を区分け表示し、階層化して管理することも可能です。
5.エクセルを生み出したマイクロソフト社のテンプレートを使う

非常にシンプルで直感的に使うことができます。開始日、期日、達成率、メモの項目があり、カスタマイズも可能です。
6.日単位で細かくタイムスケジュールの管理を行いたいという方に
1枚のシートに31日間を表示。使いやすく、秀逸ですが、VBAマクロが組まれているため表記内容の変更ができません。
エクセル以外でタスクを管理する方法
最後に、エクセル以外でタスク管理ができる便利な方法を紹介します。エクセルの注意点をカバーする有効な手段になりうるので、あわせて使うのもいいでしょう。
紙とペン
紙とペンを使ったアナログなタスク管理方法が楽で便利! という人には、この方法がおすすめです。エクセルが開けず更新できない場所でのメモとしても役に立つでしょう。
タスク管理の方法は、紙にタスクをペンで書き出し管理するだけのシンプルさ。ITが苦手な方でも気軽にタスクを管理することができます。
紙とペンでできるタスク管理の方法は「デジタルよりアナログ派? 紙でタスク管理をする方法やメリット・デメリットとは」で解説しています。
メール
連絡手段というイメージがあるメールですが、タスク管理ツールを兼ねて使用できます。
メールをタスクと捉え、受信BOXは未着手のタスクとします。優先度や緊急度に合わせて分類できるメールフォルダを作成し、受信フォルダから移動しましょう。
この時注意してほしいのが、すぐに対応できるメールは直ちに返信をして処理済みフォルダにうつすことです。残ったメールは分類して、優先度の高いものから対応します。
フォルダ分けの際は
・すぐに対応すべきタスク
・できれば早めに対応すべきタスク
・相手のアクション次第で、アクションがない場合にはプッシュが必要なタスク
・相手のアクション次第で、アクションがなければそのままでよいタスク
など、メールの優先度によって分類し、色分けをするなどして管理します。
しかし、近年ではコミュニケーションツールとしてチャットツールなどが使われはじめているので、メールが主なコミュニケーション手段でない限り、これひとつでの管理は困難です。
Googleスプレッドシート
エクセルに似たツールとして知られているGoogleスプレッドシートでも、タスク管理が可能です。
汎用性や自由度の高さからビジネスシーンでもよく使われているツールで、インターネット環境下であれば、パソコンやタブレット、スマートフォンからの閲覧や編集ができることが特徴です。
Googleスプレッドシートにもタスク管理ができるテンプレートがあり、手軽に始めたい人におすすめです。
テンプレートのほか、Googleスプレッドシートでのタスク管理に役立つ便利な機能は、「Googleスプレッドシートでタスク管理を行うには? テンプレートやおすすめの機能について解説」にまとめています。
タスク管理ツール
タスクをクラウド上で共有し管理ができるタスク管理ツールも非常に便利です。
インターネット環境さえあれば、タイムラグのない情報共有や更新が可能です。また、タスク管理表の作成も不要で、タスクや付随する情報を記入するだけですぐにタスク管理ができます。
またタスク管理ツールの中には、タスク管理にあると便利な機能を備えているものもあります。
例えばTeamHackの場合、タスクから派生する小さなタスクをサブタスクとして設定し、階層化して管理ができます。
上記の場合、【M-1】の親タスクを完了させるために必要なサブタスクを【M-1-1】【M-1-2】と書き出しています。また、サブタスクの進捗状況は親タスクの下の「進捗バー」で見える化されます。
また、タスクごとにチャットスペースがあるので、タスク管理ツールとチャットツール間の行き来は不要です。タスクごとにコミュニケーションが整頓され、非常にスマートな管理ができます。
このように、タスク管理ツールにはさまざまな便利な機能があり、導入することで作業のクオリティ向上や効率アップが期待できるでしょう。
タスク管理ツールを比較・検討される際は、34のタスク管理ツールの特徴やメリットを比較した「【2021年版】タスク管理ツールおすすめ・Todo管理ツール34選を徹底比較(無料プラン有り)」をご覧ください。
まとめ
長く携わっている仕事をしていれば、タスク管理を行う必要もないほど、すでに体にスケジュールが染み込んでいるという人もいるかもしれません。ただ、そこにいくつものタスクが重なれば、スケジュールを管理すること自体が負担となってしまうのは想像に難くありません。
マルチタスクになりがちな昨今、ひと昔前のようにカレンダーやスケジュール帳だけでタスクを管理することが困難になりました。 チームや自分が抱えているタスクを適切に管理し、実行していくことが必要不可欠といえるでしょう。
今回、ご紹介したタスク管理方法を参考に、ぜひチームやプロジェクトにあったタスク管理をお試しください。