サンクコストバイアスから逃れるための3つの方法

分かっていてもなかなかやめられなくて悩んでいることはないでしょうか。私は何でももったいないと考えてしまう未練がましい性格をしているため振り返ってみると、どうしてあの時に止めるという決断を取れなかったのだろうと思ってしまうことが多々あります。思いつくだけでも、

  • 一度、課金してしまったオンラインゲームをなかなかやめられない
  • 含み損を抱えている株を持ち続けてしまう
  • 一緒にいて苦しくなる人間関係を何となく続けてしまう

など,ここには書けないようなこともたくさんあります。人生というのは、なかなか頭で分かっていても合理的な判断を下すのは難しいものです。そしてずるずると続けてしまい結果的に振り返ってみると新しい機会を得るチャンスを失い有限の時間や資源を無駄づかいしてしまうこともたくさんありました。簡単に言えば一度、もったいなくてやめられなくなることをサンクコストバイアスといいます。しかしサンクコストバイアスに打ち勝つことで、いま本当に必要なことと向き合えるようになります。

サンクコストバイアスとは

サンクコストバイアスとは、「何かに手を出したり買ったり関係ができた時に、お金や時間を既に使ってしまい回収不可能なため後には引けなくなり、合理的な判断が難しくなる人間の認知的な傾向」

のことです。

有り体に言ってしまえば、もったいない心理のことです。私は未練がましい性格をしているためサンクコストバイアスが働きやすい側の人間です。

例えばオンラインゲームをはじめたら、こんなに時間をかけて苦労してレベルをあげたしレアアイテムもたくさん手に入れてゲームの中には自分の城まで建ててしまったから簡単に今更やめられないと考えるプレイヤーが多いようです。

株投資の世界でも、もう含み損で買値の半分の資産価値になっているけど一度、買ってしまったものだから持ち続けておこうと思う投資家も少なくありません。

恋愛でも依存されすぎて自分が精神的にも金銭的にも限界だ・・・、でも別れられないなど、サンクコストバイアスの例は日常生活で多く見られます。自分自身でも経験があることばかりですし、一方で身近な人が客観的に見て同じサンクコストバイアスに縛られている事例も多く見てきました。

人間関係も投資も仕事も損切りが難しい

続いている人間関係も投資も取り組んできた仕事も、いざやめるとなると決断に大きなエネルギーが必要になります。いざやめるとなると、せっかくここまで続けてきたし・・・とためらってしまうのではないでしょうか。少なくとも私は何かをやめる時には、かなり悩む方です。

人間関係の精算は難しい

例えば小学校・中学校・高校・大学や専門学校・職場とライフステージが変わると環境も変わります。そのステージ度に人間関係は多少SNSなどでつながりはあっても物理的に関わる時間も機会も少なくなります。

しかし中には腐れ縁のようなもので続いてしまう縁もあるでしょう。人はそれぞれライフステージごとに考え方や立場も変わっていくものです。その時に過去から続く人間関係も変わってしまうことも珍しくありません。

例えば、ある人が仕事人間で日々の仕事に情熱をもって取り組んでいる一方、もう一人は仕事よりも日々のプライベートな時間や遊びを大切にするタイプだとしたら一緒にずっといると噛み合わなくなってしまいます。価値観が合わなくなり話が合わなくなり一緒にいても心地よくない時間と関係が続いてしまいます。しかし縁をいきなりきるというのも、ためらいを多少なりとも感じてしまうのではないでしょうか。

多くの投資家は損切りできない

多くの投資家は損切りができません。一度、買った銘柄が含み損に転じ上昇する見込みがなければ損切りを素早くすることが勝てる投資家の条件の一つだと投資の世界では長く言われ続けています。しかし、それでも多くの投資家は

  • 一度、買った銘柄だから最後までつきあおう
  • (最初は短期で売るつもりだったけど)自分は長期投資家だから売らない

と考える人が珍しくありません。ちなみに1000円の株価が−50%下落すると500円になります。
しかし500円になった株価が+50%になっても750円にしかなりません。−50%からもとの株価に戻るためには+100%、つまり2倍にならなければなりません。

株投資だけではなく現実のビジネスの現場でも一度、設備投資をしてしまうと採算が続かないビジネスでもなかなか事業撤退できずに結局、大きな赤字だけ残ってしまうことも珍しくありません。

一度はじめた勉強や仕事はなかなかやめられない

一度はじめた勉強や仕事はやればやり続けるほどやめるのが難しく感じてしまいます。例えば私の場合、大学が法学部だったのですが全く法律に興味が持てませんでした。それなのに一応、法学部に入学下からには法律の専門家にならないともったいないのではと、なかなか大学時代に法律の勉強をやめることができませんでした。今から考えると思い切って転部の試験でも受ければ良かったのではないかとすら思うほどです。

教育でも本当は高校や大学で教えたいのに、しばらく小学校で教えていた時期もありました。小学校で教えていた経験が全く無駄になったわけではないのですが小学校の教員免許まで無理にとってしまったので、もったいないと思いなかなかやめる決断ができませんでした。その後タイの国立大学では日本の学校で教えていた経験も役には立ったので無駄だったわけではありませんが、一度続けていたことをやめるのは決断力が必要でした。

サンクコストバイアスに対処する3つの方法

サンクコストバイアスは人間が持っている認知バイアスです。多かれ少なかれ、サンクコストバイアスで正常な判断ができなかった経験のある人もいるのではないでしょうか。少なくとも私はサンクコストバイアスで多くの時間や労力を無駄にしてきたかもしれないと感じている側です。

そこでサンクコストバイアスに対処するための具体的な3つの方法をご紹介します。

  1. 機械的にルールを決める
  2. ゼロベースで思考する
  3. オポチュニティコストを意識する

それぞれ詳しくみていきましょう。

方法1:事前にルールを決めることでサンクコストバイアスに勝つ

サンクコストバイアスから自由になるためには事前にルールを決めると効果的です。例えば3ヶ月経って月に20万円稼げなかったらフリーランスの仕事をやめて一旦、就職しようなど事前に撤退したりやめたりする条件を決めておくのが効果的です。

単に「心を入れ替える」などと決めていても人間、なかなか考え方や認知バイアスを変えることはできません。機械的なルールに基づいて行動することで決断にエネルギーを使わずに済みます。

投資の世界で有効なシステムトレード

投資の世界は儲けようする欲と損するかもしれない恐怖との戦いです。株取引の世界では何度も買うか売るかの決断を迫られます。そして大きな資金を扱えば扱うほど精神的な負担は大きくなっていきます。

例えばアメリカの今後の金利動向を予測してアメリカ株に投資するとします。しかし金利の動向を正しく予測するのは難しいのです。場合によっては金利が上がる予想も下がる予想も同程度の確からしさを感じてしまうこともあります。そして迷いを抱えながら毎回、大きな資金を動かさなければなりません。

実際にやってみると分かりますが株取引の売買を損と欲の感情を抑えながら淡々と、その場その場で最適な決断を下し投資することは非常に難しいのです。精神的な負担も大きく、現在ではアメリカの有名な投資銀行の人間のディーラーは、ほとんどAIやアルゴリズムによるシステムトレードにとってかわられました。

感情を持たないAIやアルゴリズムの方が客観的にみて正しい判断ができるのです。そして感情に流されず機械的にルール通りに判断を下すことができます。事前にルールで買値から−10%になった持ち株は損切りするとプログラムしておけば−10%になった瞬間に損切りの売り注文を出します。

システムトレードにはサンクコストバイアスによる認知の歪みなどないのです。

事前にルールを決めておけば悩まない

サンクコストバイアス対抗するためには事前にルールを決めておき撤退する時ややめる時の条件を決めておくことです。サンクコストバイアスそのものをなくすことはできません。しかし事前にルールを決めておきしっかりと守ることでサンクコストバイアスによる迷いや不合理な判断を避けられるようになります。

方法2:サンクコストバイアスに対応するためゼロベースで思考する

一度、リセットして考えてみるのもサンクコストバイアスの罠から抜け出すために有効な方法です。何かをはじめた時と今とでは周囲や環境なども変わっているはずです。そんな時にはゼロベース思考がサンクコストバイアスに対して効果を発揮します。

一度、条件を白紙にしてみる

一度、条件を白紙に戻してみましょう。例えば毎月、定期購読しているメールマガジンや音楽配信サービスなど忙しくてあまり利用できていないこともあるのではないでしょうか。例えばメールマガジンを読んだり音楽配信サービスの申し込みをした時は時間に余裕があったが仕事が忙しくなりすぎてほとんど活用できていないということも多いのではないでしょうか。

そんな時は自分が定期購買しているサービスの契約をしていないと仮定して一度、白紙の条件であると仮定して改めて定期購読したいかどうかを見直すと良いでしょう。

現代サブスクリプション型のビジネスが流行っていますが人はやめる決断をするのが億劫だったりサンクコストバイアスにとらわれてダラダラと続けてしまいがちです。一度、まっさらな状態であると仮定して再び購読や関係を続けたいのかを考えることで合理的な判断がしやすくなります。

自分ごとでなくし架空の人物にどうアドバイスするか考える

人は自分の問題となると客観的に見ることが難しくなります。そんな時は自分と同じ状況にある架空の人物を想像してみてください。そして客観的に自分ならどのようにアドバイスをするかを考えてみることで合理的な判断を下しやすくなります。

岡目八目という諺もあります。自分よりも第三者の方が物事がよく見えているという諺です。もしも周囲に客観視できる第三者がいるなら、第三者の人に相談してみるのもサンクコストバイアスから逃れるための有効な方法です。

方法3:オポチュニティコストと比較しサンクコストバイアスから逃れる

古いものごとに縛られてしまうことで新しいものごとと接する機会が失われてしまいます。古いものを捨てることで新しいものが入ってくることもあります。オポチュニティコストを意識することでサンクコストバイアスで持ち続けている古いものを捨てることができます。

オポチュニティコストとは

オポチュニティコストとは日本語で「機会費用」のことです。他方を選択していたら得られたであろう逃してしまった利益のことです。

サンクコストバイアスにとらわれることで古いものにしがみついてしまい新しいものごとに時間やお金、労力を割けなくなってしまいます。古いものでいっぱいになってしまうと新しいものが入ってこないのです。

例えばAさんは本当はイラストの仕事が得意なのに慣れない事務の仕事をしているとします。本来、イラストレーターならば人気のあるイラストを売ることで月に50万円ぐらいの月商が見込めるにも関わらず事務員でいることで得意なことができず月給20万円で生活しているとします。

この場合はオポチュニティコスト50万円の見込みを放棄していることになります。しかし事務員の仕事をやめることで得意のイラストの仕事ができるようになります。

フリーランサーの知人から仕事をしていると古い仕事をやめることで新しい仕事が入ってくるという話を耳にします。時には古いものを捨てる勇気も必要なのです。

オポチュニティコストとサンクコストを比べる

オポチュニティコストで逃してしまっている利益とサンクコストを比べてみることで合理的な判断ができるようになります。サンクコストで古いものにとらわれすぎることで本来、今するべき決断を先延ばしにしてしまっていないかどうかを確認してみましょう。そのためにはオポチュニティコストとサンクコストを比較することです。

例えば毎月サブスクリプションで課金している動画サービスを全然利用できておらず3000円を払い続けているなら、その3000円を使ってできたことを考えてみてください。

比較する対象をつくることで合理的な選択をとることができるようになります。

まとめ

サンクコストバイアスとは簡単にいえば、もったいなくてやめられなくなってしまい合理的な判断ができなくなることです。しかし古い関係やものに縛られ続けることで本当に必要なものが入ってこなくなります。そして後から振り返って後悔してしまいがちです。

人がサンクコストバイアスに陥るのは自然なことです。だからこそ

  • 事前にやめる時のルールや条件を決めておく
  • ゼロベースで見直してみる
  • オポチュニティコストを考え比較してみる

この3つでサンクコストバイアスから自由になりましょう。

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