「マイルストーン」というワードを、ビジネスにおける会話や管理ツールの画面の中で頻繁に見かけるようになりました。日常会話では滅多に登場することのない言葉かもしれませんが、ビジネスシーンにおいては日常的に使われる重要な言葉です。
マイルストーンとは、どんな時に使われるのでしょう。マイルストーンの意味や書き方、具体例とあわせて紹介します。
マイルストーンとは
人生の節目となる出来事のことをマイルストーンと呼ぶことがありますが、本稿ではビジネスシーンで使われる「マイルストーン」についてまとめてみました。
語源
マイルストーンは、距離を示すために道路や線路に1マイルごとに置かれた標石のことをいいます。出発地点から何マイル進んだのか、この先どのくらい続いているのかは、マイルストーンを指標として判断することができます。
このことから、物事の途中に起こる重要な出来事のことを「マイルストーン」と呼ぶようになり、プロジェクト管理の現場で使われる言葉となりました。
ビジネスシーンでのマイルストーンの役割
プロジェクトの進捗状況を管理するために設けた中間地点や節目、通過点となるポイントがマイルストーンです。
進捗管理を伴うプロジェクトであればマイルストーンを置くことができますが、特に長期的なプロジェクトやたくさんの人が関わるような複雑なプロジェクト、納期の遅れが許されない時やバトンを繋ぐようにタスクが進行する時には、マイルストーンを置く意義を実感しやすいでしょう。
プロジェクトの進行に大きく影響を及ぼす地点にマイルストーンが置かれ、計画通り進んでいるか、遅れを取っていないかを振り返るポイントになります。一つひとつのマイルストーンが道しるべとなり、着実なプロジェクト進行が可能となるのです。
スケジュール・タスク・目標との違い
マイルストーンは、プロジェクト全体に対し設定する特定のポイントです。
例えば、商品開発であれば、リサーチ・企画立案・試作品テストのようなマイルストーンが置かれます。字面だけで見ると、スケジュールやタスク、目標とどう違うのか? と疑問に思うかもしれませんが、これらは使われる意味合いが異なります。
スケジュールは、日程表や予定表であり、プロジェクトにおける全てのイベントを書き入れるものです。その中に、節目となるポイントや期限として置くのがマイルストーンです。
タスクはプロジェクトを構成する要素です。マイルストーンを達成するために、必要な業務の数々がタスクです。1つのタスクを終えると1つの業務が完了しますが、マイルストーンは複数のタスクを処理することで達成される「ひとつの地点」です。
そして、マイルストーンは目標をどれくらい達成しているかを把握するための目印のようなものです。マイルストーンを通過し、到達するものが目標です。
マイルストーンの具体例
実際のプロジェクトで置かれているマイルストーンの具体例をいくつか挙げてみましょう。
もちろん、プロジェクトの内容や性質、チームの環境によって設定するマイルストーンは異なります。プロジェクトの進行をスムーズにするポイントに、マイルストーンを設定しましょう。
マイルストーンをビジネスで使用するメリット
マイルストーンはどのようなシーンで役に立つのでしょう? 自身のプロジェクトでもマイルストーンを使いたくなるようなメリットを4つ挙げてみました。
スケジュール管理がしやすい
プロジェクトの規模が大きければ大きいほど、関わる人が多ければ多いほど、目標までの道のりは長く、スケジュールやタスクは複雑になりがち。気が付いた時には現在地がわからなくなってしまうことがあります。どのようにタスクを進めればいいのかさえもわからなくなり、不安を覚えることもあるかもしれません。
また、各プロジェクトチームのメンバーのタスクを把握するには時間も手間もかかります。
マイルストーンを設定することで目標までのプロセスが明確になり、プロジェクトが計画通り進んでいるか、遅れは発生していないかがひと目でわかります。
もし順調に進んでいなかったりトラブルが発生したりした時は、マイルストーンを置き直して作業時間を修正します。マイルストーンを置くことでメンバー間の連携が取りやすくなり、その後のスケジュールに及ぼす影響を最小限にすることができます。
品質の維持や向上
マイルストーンを使用するメリットは、スケジュールや納期の管理に加え、品質管理ができることです。マイルストーンごとに目標となる品質を満たしているか、振り返りを行います。
もし品質が下回っていたとしても、短いスパンでの振り返りを行っている分、軌道修正はしやすいでしょう。
作業効率アップ
タスクの進捗状況をマイルストーンごとに確認することで、作業の漏れを防ぐことができます。プロジェクトの全体を可視化できるので、作業効率のアップにつながります。
マイルストーンごとにステークホルダーを洗い出しておくと、プロジェクト関係者とのやり取りを最小限にとどめることができ、コミュニケーションコストを下げることができます。
モチベーション維持
長期的なプロジェクトになると、中だるみしモチベーションが下がってしまうこともあるでしょう。日常に小さな達成を感じるポイントとしてマイルストーンを置けば、モチベーション維持に役立ちます。
先が見えないマラソンは辛さを感じることもありますが、「中間地点」や「あと◯km」とわかると、不思議と力が湧き「まだ頑張れる! 」と次の一歩が踏み出せるものです。
マイルストーンの書き方
マイルストーンへの理解が深まったら、実際のプロジェクトに落とし込んでみましょう。
マイルストーンの書き方を、順を追って説明します。
ガントチャートの作成
マイルストーンを作成するには、ガントチャートを作ることからはじめます。
ガントチャートとは、ツリー構造とチャート(横棒)を用いて、やるべき作業やタスクの進捗を視覚的に表す棒グラフの一種のことをいいます。タスクのボリュームやプロセスを把握するのに役立ちます。
ガントチャートの作成手順や使用ツールについての詳しい解説は「ガントチャートとは?プロジェクト管理で利用する3つのメリットとおすすめツールをご紹介」をご覧ください。
期日とマイルストーンを設置
プロジェクトの目標やゴールを具体的に設定します。タスクの開始日・終了日に加え、プロジェクトの節目となるポイントにマイルストーンを置きましょう。
上記の表では、日時の下の横軸にマイルストーンを置いて可視化しています。会議や中間報告日などが決まっていたら、マイルストーンとして設定しましょう。タスクの担当者は、★マークが置かれた期日を中間目標とし、タスクに取り組みます。
また、ゴール=納品日とするのは避けましょう。修正の発生や不測のトラブルなどを想定し、納品日の前、数日のバッファを持って設定することをおすすめします。
参考記事:ガントチャートとは?プロジェクト管理で利用する3つのメリットとおすすめツールをご紹介
タスクを設定する
マイルストーンを置いたら、プロジェクトを円滑に進めるためにタスクの洗い出しを行い、チームで共有します。タスクを細かく書き出すことで各工程に必要な時間が算出でき、スケジュールを組みやすくなります。
担当者を設定する
洗い出した各タスクに担当者を設定します。担当者の役割は、タスクに必要な作業を行うことはもちろん、計画通りに進行しているかをチェックすることです。
担当者を設定していれば、各タスクの責任の所在が明らかになり、万が一タスクに遅れが生じたとしても、早い段階で計画の立て直しができるでしょう。
これらを一元管理するには、Googleスプレッドシートの活用が便利です。「Googleスプレッドシートでガントチャートを簡単に!作成の方法とテンプレートを紹介。」の中で、ガントチャートの作り方や注意点を解説しています。
マイルストーン設定時の注意点
最後に、マイルストーンを設定する際に注意すべきポイントをまとめてみましょう。
実現可能なスケジュール
マイルストーンは的確で無理のないスケジュールの上に組まれていることがとても重要です。現場を知らない管理者が想定だけで設定したマイルストーンが、実際の作業者にとっては実現不可能で、その通りに進めることができず破綻することは少なくありません。
プロジェクトマネージャーはマイルストーンに無理はないか、設定した順番で効率良く進められるか、必ず担当者に確認するようにしましょう。
期間の余裕
マイルストーンを設定した後にタスクが増えることは珍しいことではありません。期間に余裕を持たせたマイルストーン設定にすることで、柔軟に対応することが可能になります。
タスクと混同しない
マイルストーンは、プロジェクト全体を通して区切りとなる地点であり、タスクとはマイルストーンを達成するために必要な作業のことを指します。
マイルストーンとタスクは混同されがちですが、全く異なるものとして使用しましょう。
タスクに漏れはないか確認
設定したタスクに漏れはないか、具体的に書き出されているかを確認します。
可能な限り細かくタスクを設定することで、スケジュールがより具体的になり、予定外の変更やトラブルにも柔軟な対応が可能です。
しかし、タスクの漏れを気にしすぎるとタスクを細かく設定してしまい、管理に手間がかかってしまうので、適度な粒度を意識します。
マイルストーンは適度に
マイルストーンを細かく設定すると、目標の達成度合いを可視化しやすくなります。また、マイルストーンごとに、できるだけ細かくタスクを書き出すことで、スケジュールの予想がつき工数も見積もりやすくなります。
その反面、細かく設定しすぎると融通が利きづらく窮屈になってしまいます。マイルストーンの見直しが頻繁に発生しては、円滑なプロジェクトとはいえません。適度なマイルストーンを心掛けましょう。
ステークホルダー(利害関係者)の洗い出し
どのポイントで、誰とのやり取りが必要となるかを把握するために、ステークホルダーを洗い出します。この作業によって、マイルストーンに遅れが生じることで発生する外部への影響を認識することにつながります。
他部署や外部委託業者などとのやり取りが発生するプロジェクトであれば、ステークホルダーを全て洗い出しておきましょう。
見直しを行う
プロジェクト管理をする場合、大切なのはタスクが計画通りに完了されているかを定期的に確認することです。そうすることで手遅れになる前に、マイルストーンの見直しができ、プロジェクトの円滑な進行やクオリティ保持につながります。
また、設定したマイルストーンの有効度やより良い管理をするためのポイントをまとめ、次にマイルストーンを設定する際に活かせるようにしましょう。
まとめ
マイルストーンは日常の業務や小さなプロジェクトでも活用が可能です。普段の業務でもマイルストーンを置く習慣をつけておくと、スケジュール管理やタスク管理のスキルは向上します。
また、マイルストーンはプロジェクト管理やタスク管理などと合わせた、一元管理をおすすめします。タスクやスケジュールはもちろん、wiki、マニュアル、チャットなど、プロジェクトに関する情報を集約できるタスク管理ツールを使うことで、管理や共有の時間を最小限にしつつも、タスクの抜け漏れやミスを防ぎ、プロジェクトの進捗管理を行うことができるのです。
タスク管理ツールの導入を検討する際は「タスク管理ツールで進捗を共有・管理しよう! おすすめのツールや選定のポイントを紹介。」を参考にするといいでしょう。タスク管理ツールを導入する際のポイントやおすすめのタスク管理ツールを紹介しています。
マイルストーンを身近なものにして、ますますの作業効率アップを目指してみてはいかがでしょうか。