突然ですが、みなさんは夢や目標を持っていますか?
また、同じ夢や目標をずっと持ち続けるのって大変だと感じたことはありませんか?
私はとても大変だと感じています。特に、理想と現実の「ギャップ」には一時期すごく悩みました。私は水泳をしていたのですが、目標のタイムを目指してキツイ練習をこなしても、なかなか結果を出すことができずに、いつしか、「これやってて意味があるのかな…」と自信を失った経験があります。
こういった種類の葛藤は私だけでなく、多くの人にも共通している部分があるのではないでしょうか?
そこで今回は、いま夢や目標を持っていたり、探していたりする人に向けて、ポジティブ思考法で夢を叶えたミュージシャンの堀川真理夫さんに「いまを楽しく生きるためのコツ」を教えてもらいました。
やらなきゃいけないことにも、おもしろさが転がっている
将来を見据えてちゃんと考えるようになったのは、大学に行こうかなって思い始めた高校2年生ぐらいの時かな。そこから、さらに真剣に音楽に取り組むようになった。
でもね、「このまま音楽を続けてもいいのかな?」ってやっぱり一回考えるわけよ。音楽で生計立てられないなら、趣味にしたっていいじゃん?
で、ほんの一瞬だけど、弁護士になる道とかも考えた。ほら、お金が稼げそうって思うじゃん?でも、自分には無理だなって即思った。(笑)ずっと音楽に触れて育ってきて、音楽が生活の一部になっていることに気づいたんだよね。
それで、改めて音大に行こうと思って、音楽以外の勉強もしないとやべぇってなった。いつも授業中イヤホンして音楽聞いてたからさ。なんも分からねぇって思って、必死に勉強したよ。(笑)頑張って勉強したおかげで、何とか無事に大学に合格できたんだけど、音大でもやっぱり音楽とは関係のない授業があるんだよね~。単位に関わるから、やらないわけにもいかないし、みたいな感じだったよ。
でもね、そうやって勉強をしていたら、ふと「あること」に気づいたんだよ。
それは、勉強を実際にやってみたら、意外とおもしろいってこと。でも、勉強がたまたま俺に向いていたってことではなくて、「目の前のこと」に本気で取り組んだから、意外と「おもしろいかも」って思えたと思う。
誰しも自分のやりたいことってあるじゃん? 仮にやりたいことがなくても、やりたくないことは少なからずあるじゃん?? 例えば、高校に行きたいとか、学校行くの嫌だとか(笑)
そうそう!いくらやりたくないって嘆いていても、やんなきゃいけない状況があるわけで。
でも、どうせやるなら楽しい気持ちの方がいいじゃん? だから、俺はそこに全力で取り組んだわけよ。全力で取り組むことで、「あれ?意外と面白いじゃん!」ってなれることがあるんだよね。
だから、なんでもいいから、一回、本気で目の前のことをやってみてほしい!
例えば、試しに、いつもの帰り道を思いっきり走ってみるとかね!でも本音では、そんな時間あるなら楽器の練習した方がいいって思ってた。(笑)
どん底なら、あとは上に行くだけ
順調で幸せだった。(笑) だって、考えたら自分のやりたいことが音楽で、学校すべてがそのものみたいな感じだったからね。もちろん、さっき言ったみたいに音楽以外のアカデミックもあったけど。たとえば、全然関係のない歴史の話とかも勉強したしね。
興味はなかったけど、やんなきゃいけないならやろうって決めてやってた。本気でやると面白いからさ。
うん、奨学金も無事もらえることになったからさ。っていっても3年生の時にだけど。(笑) ボランティアで学校の手伝いとかしまくって、やっともらえるようになった。これも本気でやった。
まぁそれで、奨学金も貰えたし、せっかくだから関係なくてもいいから取れるコース全部取ろうって思って、専攻は「アレンジ(編曲など)」だったけど、エンジニアリングコースとか自分が取れる分だけ片っ端から取った。
それで、大学卒業したら、日本語がちょっと弱いっていうこともあったから、アメリカで生活して音楽をするっていう考えがあったんだよ。でも、一応日本人だから「俺、日本でどう通用するんだろう」って興味が湧いてきたんだよね。
そういう経緯があって、実際に日本で仕事を探してみると「自分は甘く考えていたんだな」ってことに気づいた。日本に帰っても、仕事があるだろうって思っていたんだけど、音楽の仕事がなくて。(笑)
しかもね、スムーズに行くと思ってるじゃん? だから、アメリカにいる間に、貯めてたお金ほぼ使っちゃったんだよね。(笑) 日本に帰ってきた時は、残金5万円みたいな感じだった。
それに、音楽業界って名刺とかじゃなくて、その人がどういう音を出せるかっていうのが、一種の名刺代わりになるんだよね。だから、日本に来たばかりだと、みんな、おれがどんな音出すかわからないんだよ。そうすると、仕事もなかなか来ないし、カネがないからバイトをするしかない。
そこで、何が一番稼げるかって考えて調べたら、夜中の警備員だった。後は、塾で英語の先生やってた。カネが無いと何も始まらないからさ。
その時期が俺の中でのどん底だった。人によってはもっと悪いシチュエーションとか考えると思うんだけど、おれはそこで「いまのこの状況がどん底だ」って決めた。
本当にどん底だったかどうかは分かんないけど、ここが「底だ」って決めてしまったほうがポジティブになれるんだよ。(笑) だって、どん底って決めちゃえばもうそれ以上、下に行くことはないじゃん?
だから底を決めることで、上にしか行けない状況を作った。 自分の行動もそうだし、気持ちもそうだし、全部上向きのワンウェイみたいな。
いまの自分が持っている最大の価値を使う
ちょくちょくトラ(欠員が出た時の代わり)でやったりしていたけど、カネが優先だから、音楽の優先順位は低くなっていた。そうしている内に、ちゃんと生活しないといけないってなって、日本に帰ってきて2年目からはサラリーマンになったんだよ。
だから、音楽業界とは関係のない、自分が持っているもので最大限に活かせる「英語」が使える職についた。その時の状況では、自分には「音楽」よりも「英語」の方が価値があった。
音楽で飯を食っていきたいけど、仕事がない。でも、英語で仕事を探したらいっぱいあるって状況だったんだよね。カネがないと生活もできないし、音楽だってできない。だから英語学習塾に就職した。
こういうの自分軸と他人軸っていうのかな? 自分ではこれが一番良いと思ってても(自分軸)、周りをみてみるとどうやら違うらしい(他人軸)っていうのが分かった。
俺の場合だと、自分が持っている一番価値のあるものは「音楽」だと思っていたけど、置かれている状況を見ると、当時は仕事があって、ちゃんとカネももらえる「英語」の価値の方が高かった。
それに、カネの面で余裕が出てきてから、楽器を買って「音楽」を伸ばせばいいって思ってた。 だから、やりたいことのためにしっかり生活基盤を整えるっていうのは、別に自分軸を疎かにしている訳でもないんだよ。
本音を隠さない
そうそうそう!完全につなぎだった!会社にも正直に言ったんだよ、面接の時に「あくまでも、自分は将来、音楽をやりたいので。」って。そしたら、向こう側の反応が微妙だったから、ダメだ、これは落ちたなって思った。
と思っていたら、面接から2日後に電話が来て、「今日から働いて下さい」って言われた。え!?さ、採用!?みたいな感じだったよ。(笑)
でも、面接で正直に言ってよかったと思ってる。というのも、自分の気持ちを隠してもどうせバレると思ったから。定期的ではないけど、音楽の仕事が入ったら会社を休むことになるから。(笑)
だから、「まだ軌道には乗っていないけど、音楽の仕事があるときはそこを優先したいので有給使えますか?」みたいな感じで、面接の時にしれっと音楽がある時は休みますアピールした。実際は、全然有給どころか、音楽の仕事で1か月間いなかったこともあったけどね。(笑)
それに、本音を隠して「英語を活かしたいのでここで働かせて下さい!」って入社したのに、そのあとで「音楽があるので休みます」って言われたら「こいつやる気ないのかな?」 って思うでしょ?
それよりは、最初に本音を話して、堂々と「英語」も「音楽」も本気でやったほうが面白いし、楽しいって思ったんだよ。
はったりが近道になる
そういえば、NY時代の話まだしてなかったよね。俺、大学を卒業して、1年間はNYで音楽の仕事をしてたんだ。大学を卒業するタイミングでプラクティカルビザがもらえてさ!
プラクティカルビザっていうのは、簡単に言うと、卒業して一年間はアメリカで働けますよっていうビザのこと。働くための練習期間みたいなものかな。
せっかくあと1年アメリカでできるならってことで、アメリカでアシスタントエンジニアを1年間やった。苦労したのは、1年間っていうリミットがあるけど、すぐに仕事が見つからなかったこと。
学校側はビザは出すけど、働く場所は自分で探してみたいなスタンスだった。だから、生活がスムーズにいかなくてちょっと焦ったね。ビザの期限も1年しかないし、早く勉強したいし。カネもどんどん無くなるし。(笑)
それでもハングリー精神で、「knock on doors」って言ってさ、アポなしで、履歴書持って雇ってくださいみたいなことしてたね。もちろん、門前払いみたいなこともあったけど。結局、そのやり方では上手くいかなくて、日本で言うハローワークみたいなところに登録した。登録して1か月後にそこから連絡が来て、マンハッタンにある「ジングルスタジオ」ってところで働いた。
履歴書にさ、職歴を書く欄があるじゃん? そこに、「ボストンスタジオ」みたいな名前を適当に作って、そこで仕事してましたってはったりをかましたんだよね。(笑) 自分で書いててボストンスタジオって何?!って思ったけど、そのまま採用されて。。あれはやばかった。(笑)
作業遅くて時間もかかってるし。もうそこでたぶんバレてたよね。あの職歴うそでしょって。(笑)
でもね、はったりを使うと近道になることもあるんだって気づいた。
全然できなくても、できるってアピールしたほうが注目されるし、その分ちゃんとやらないとマズイと思って頑張るから、結果的に上達がはやくなるんだよ。だから、「考える前に、まず行動」するっていいと思う!でも、やるからには手を抜いたらだめ。自分の熱量を伝えるためにもとことんやらないとね。
王道だけど、自信がめっちゃ大事
あるね!もう間違いなくカネ!(笑)
ウソウソ!(笑)カネは前提条件。
一番大事だなって思うことは、やっぱり「自信」かな? いま振り返っても、自信がなかったら、ここまで絶対に来れていなかったと思う。自信をつける方法はたくさんあると思うけど、俺の場合は、本気でコツコツかな。そんで、はったりだよ。(笑)
ここまで色々と話してきたじゃん? それが全部、いまの自信に繋がっている。あとは、adaptability(アダプタビリティ)だと思う。
adaptability(アダプタビリティ)を身につける
adaptabilityは「適応性」って意味で、それがあると自信が揺らがなくなるんだよ。
例えば、ギターが得意で、ギターのスキルは誰にも負けない自信を持っているとするじゃん? でも、いま求められている能力はドラムが叩けることだったとしたら、その人が持ってる自信は役に立たないよね?
でも、もし、その人がドラムも叩けていたら、自分の能力が活かせるから「自信」も失わなかったんじゃないかなって思う。そう考えると、できることを増やしておいて、その時々に求められることに柔軟に適応できるほうがいいじゃん?
だから、ブレない自信を身につけるならadaptabilityを意識したほうがいいと思う。
俺も大学では「アレンジ」って言って、曲を作る側の勉強をしたけど、いまはプレイヤーとして楽器を弾くことが多い。でも、作曲とか編曲の仕事がある時はそれもこなせるし、できることを増やしたからこそ、そこにも自信が持てているよ!
enjoy what you’re doing!
「enjoy what you’re doing!」いまやっていることを楽しんで!ってことを言いたい。
夢や目標に向けて頑張っている人は、そのためにいまを耐えているかもしれない。カネを貯めるためにバイトを必死にしていたり、勉強をしていたり、人によっていろいろだと思うけど。夢や目標がないっていう人も同じ。仕事や勉強とか、何かしら今取り組んでいることはあると思う。
でも、つらいとかきついとか、いまやっていることに対してネガティブであり続けることは良くないと思う。それは、自分で壁を険しいものにしているようなものだと思う。だからさ、夢や目標を達成するためのプロセスにいる人は、いましていることも楽しむべきだと思う。
あとは、解決策になるかは分からないけど、理想(夢や目標)と現実(まだ達成できていない)のギャップに思い悩んでいる人は、理想を趣味にしてしまうこともありだと思う。
俺は、「音楽で飯を食えるミュージシャンになる」っていうことを決めていたけど、そうできない時期もあった。でも、その時に、音楽を諦めるんじゃなくて、一度自分の中では「趣味」ってことにしておいて、カネを貯めることにフォーカスした。カネがないと、生きていけないからね。(笑)それに、趣味って考えておくと、楽しんで音楽ができたんだよね。良い意味で囚われないっていうかさ。
理想と現実のギャップはあって当たり前なんだよ。理想って現実では持ってないものをほしいと思うから生まれるわけでしょ? だから、いまの自分が持っているものの価値を知ることってめっちゃ大切で、それを肯定してあげることも同じぐらい大切!
「enjoy what you’re doing!」
インタビューを終えて
真理夫さんは普段から「joke around」を意識しているようで、インタビュー中も終始楽しい時間を過ごすことができました。
ベーシストになった理由も、当時、持ち運びが簡単だったからだそう。でも、ベーシストになったばかりの頃はベース自体を持っていなかったと言っていたのには驚きました。(笑)
理想を追いかける上で、「いまの自分(現実)が持っているものに目を向ける」ことが大事だとおっしゃっていたのは、私にとって印象的でした。私は理想を追いかけると、足元が見えなくなってしまうので、何よりもこの点が夢や目標を目指す上で一番大切なのではないかと感じたほどです。
また、真理夫さんの「その時の優先順位を考えて、取り組むことを変える柔軟性」に触れて、「大変な時には、1つのことだけ努力をし続ける必要はないんだ」とも気づくことができました。
interviewer/谷添 隼司