「ありのままの姿で仕事をしよう」-Little Things代表・中川亜紀子さん

リレーインタビュー連載『私の仕事が変わった瞬間』。今回は、Little Things代表の中川 亜紀子さんにインタビューをしました。話の中で、人生の先輩ならではの独立後の新たな発見から、女性ならではの苦悩までさまざまな話題が飛び交いました。

中川 亜紀子さん

1981年、三重県生まれ。
ファーストキャリアは関西老舗のホテル。ブライダルコーディネーターとして従事する。その後、広告代理店、ファストファッションブランド、リラクゼーションサロン、ITベンチャー2社を経て、2018年、自分が介在することで誰かが1ミリでも楽になる、楽しくなることをする!と胸に決め起業。オンライン秘書・アシスタント育成コンサルティング・社長の壁打ち相手・ビジネスチャット活用研修・営業代行など、フリーランスとして幅広く活動中。

転職の決め手はワクワクするかどうか

中川さんは、独立に至るまで、さまざまな職場を経験されてきました。ホテル業界に始まり、ブライダル、ユニクロ、ベンチャーなど多岐にわたります。それら転職の意志のを決め手となったのが「転職先にワクワクしか感じられないかどうか」だそうです。転職に対する中川さんの考え方をお聞きしました。

まず、働き方(仕事の仕方)は、「さまざまな経験を生かすオールラウンダー」か、「1つのことを極めるスペシャリスト」かの2つかと思っています。私の場合は、たくさんのことを経験したいという思いが強かったので、これまで多くの職場に勤め、最終的には独立に至ったのだと思います。私は、いくら興味が湧いても、好条件でも、そこにワクワクを感じられないときは転職しませんでした。

転職後に後悔するということはなかったです

この時代はすごく恵まれている

私のような転職を繰り返す働き方に、不安を抱える方もいるでしょう。
実際に田舎に暮らす私の祖母は心配で仕方なかったようです。しかし、私はこの時代をすごく恵まれている時代だと思っています。

「パラレルワーク」という言葉も聞かれますよね。例えば、それぞれの会社の中の小さな業務をかけ持ちすることによって、パズルを組み合わせるような働き方が叶う時代になってきました。

これまでは、「勤務先で困っている部署があったら手伝う」という範囲にとどまっていましたが、いまは、いろいろな場所でさまざまな働き方が選べる時代です。そんなふうに、ぜひみなさんも前向きに捉えてみてはいかがでしょうか。

ベンチャーならではの自由と戦友感

大手も経験された中川さんは、ベンチャー企業で働き始めた頃、制度やマニュアルがそろってなかったりしたこともあり、大手とのギャップに悩まされたそうです。一方で、次第にベンチャーならではの魅力にも気付けたと言います。

私は、もともと大手志向でありミーハーなところもあり、20代のころは、名の知れた企業に勤めていました。そのため、たしかにベンチャー企業で働き始めた当初は、決まっていないことばかりで苦労することもありました。

しかし、そのような決まり事がないからこそ、自由にできることがたくさんあるということに気付いたのです。

例えば、大手ではルールやマニュアル、組織体制が整っているため、限られた範囲で役割を果たすという印象ですよね。社長とすら会うことなんてありませんでした。ですが、ベンチャーでは社長が目の前で仕事をしていて、「中川さん、これお願いします〜」と、あまり細かな指示もされないまま仕事が降りてくる感じで、本当に最初はドギマギしました。

けれど、これって信頼して任せてもらえているということなんだと後に気付いていくのです。ルールや決まりごとが少ない分どうすれば良いかという苦労もありましたが、自由度が高く次第にやりがいに感じていけたんですね。そうすると、一人でがむしゃらに役割を全うするのではなく、共に協力しあいながら目標に立ち向かっていくという戦友感すら感じるようになり、ベンチャー企業の居心地の良さや面白みがわかるようになったんです。

独立して分かった自分のやりたいこと

中川さんは、ビジネスチャット「Chatwork」を運営するITベンチャー関連企業に勤めたあと、自身が介在することで「介在価値」が生まれたらいいなという思いで「IT秘書」として独立。実際にクライアントを間近でサポートされとてもやりがいがあったそうです。その後、関わる企業様からのオファーに応えたい!と、さまざまな業務を受け順調にお仕事が増えていったそうですが、その一方で、苦労することもとても多かったと言います。

一番苦労したのは、「頑張りすぎてしまう」ことですね。

もともと私の強味は、仕事をがむしゃらに取り組めることにありました。その甲斐があって一回お願いしてみようかな!と、ご依頼いただくことが増えていきました。しかし、たくさんのお仕事をいただくようになるにつれて、「自分の仕事の質は大丈夫なのか」という不安と、「●●さんはこう言っていたから」と、いろんな方に良い顔をしようとしてしまったりと、自分自身のバランスが取れなくなっていってしまったのです。

考え直して分かった、やるべきこととやっていることの乖離

そこで1回リセットしようと決意して、業務範囲を狭めることにしました。改めて自分の得意なことを考えたのですが、なんとそれは、これまでとは真逆!企業や人に、新しい情報や技術をお伝えするという営業やプレゼン、講師業を得意とすることに気付いたのです。
きっと、一生懸命ものにした業務を必死に頑張ることに、「それをやれる私って素敵だもん」と思い込んでやってきたのだと、恥ずかしながら最近やっと知ることができました。本来得意なことをだんだん絞れてきたところです。

ビジネスチャットを運営する立場から

ビジネスチャットを用いたサポートの先駆者である中川さん。LINEでもビジネスコネクトが登場しました。そこで、中川さんから見た、ビジネスチャットの展望や浸透度についてお聞きしました。

普通のメールとビジネスチャットの違いは、返信に1日待てるか待てないかという違いだと思っています。ビジネスチャットを使わないという方もいるかと思いますが、この先、そのような人は取り残されてしまうとも言われているんですね。

というのも、コミュニケーションはもちろんのこと業務のスピードに差が出てしまうからです。例えば、「この作業をやってほしい」と考えたとき、それをお願いされるのはすぐに連絡ができる人です。返信がなかなか来ない人に仕事は頼みづらいですよね。

そもそも、会話形式のチャットにおいて、返事が返ってこない相手とスムーズなビジネスを出来るとはイメージし難いのではないでしょうか。そのため、ビジネスチャットを好きか嫌いかを言っている場合ではなく、コミュニケーションの観点から返信を早くできるかどうかは、仕事上での信頼関係において必要不可欠だと思っています。

女性の固定概念に悩まされた

数年前から日本も「女性活躍推進社会」を掲げ、多くの女性の社会進出を後押ししています。でもそれは果たして確実に社会に根づいているのかどうか、中川さんご自身の実感とまさに経験されてきたことを伺いました。それはまさに女性ならではの、お話でした。一度結婚されましたが、その後長くは続かなかったそうです。当時、「女性はこうあるべきだ」という固定概念に悩まされ、自由度があまりなかったと言います。しかし、このような女性に対しての固定概念は、ご自身ではさほど深刻ではないにしろ、職場にも存在したようです。

私の経験では、20代という年齢だったのか、大手企業という環境だったのか、今から約20年前、女性に対する固定概念は自他ともに強かったように感じます。「女の子だから、早く帰りなさい」と上司に言われてしまうこともしばしば。そして私自身も、過剰にその言葉を受け取っていたように思います。

しかし、その後さまざまな職場を経験していくうちに、「そういうものなんだな」と割り切っていくようになりました。

女性としての人生どう生きるか

そうしたら今度は、自分の女性としての生き方、結婚や子育てといった計画をどうするか悩み始めるようになりました。でも、考えているうちにその悩む時間がもったいない気がしてきてしまったんです。結果、「仕事が楽しいから、私は仕事!」と、考えるのが面倒になってしまって、結婚や出産に興味を持たなくなり、どちらかに絞るなんて、ちょっと極端な判断に至ってしまったんですね。

女性が多様な生き方ができるように日本でも多様な選択肢が増えていってほしいです

「結婚・出産をしない選択」を後悔しているかと言われると、まったくそうではないです。また、今後どんな選択をするか未知数ですが(笑)。時代も変わり、これまでより柔軟な選択が出来る世の中になっていると思いますし、自分自身にとって心地よい生き方を自分で掴んでいくことの大切さを感じています。

若い人に向けてメッセージ

最近やっと、「自分は自分だけなんだな」ということがわかりました。と言うと、当たり前に思われるかもしれません。振り返ると、私はずいぶん周りの目を気にしながらいろいろなことを決めていた気がしています。

相手に合わせて生きることが板についていました。社会性がある、あるいはコミュ力があるという言い方ももちろんできて、必ずしも悪いことだとは思っていないのですが、言葉を変えると「自分自身の軸」を疎かにしていたのじゃないか、とも思えたのです。

それは、仕事に対しても然りで、自分が何をする人なのかという本質を見失いがちです。また言葉を変えると、「自分の得意はなにか」ということなのじゃないかと思います。

ですから、私が若い人たちに伝えたいことは、周囲からの影響を受けすぎずに自分がこうしたいと思えることを実行してほしい、ということです。それがたとえ突拍子もないことでも、いまはそれが許される「ダイバーシティ」の時代なのではないでしょうか。ルールは守らないといけませんが、必要以上に周りからの影響を受けすぎないことがとても大事だと思います。

インタビューを終えて

いま、1つの職場で働き続けることが難しいと言われる時代になっています。実際、この記事を執筆している私自身の周りでも、そのことに対する不安の声も聞かれます。

そのような中で、中川さんはこの現状を「それだけ可能性を持っている時代」とおしゃっていました。そして、こうともおっしゃっていました。

-この時代は、さまざまな経験から得たノウハウで仕組みを作り、多くの人の共感を得られれば、収益につながります。それがさらに大きなモチベーションにもなります。そして、空いた時間で得意なことを見つけ、次は何ができるかを考えられるわけです。

この中川さんの考え方のように、変わりつつあるこの時代を不安と考えずに、「チャンス」と捉えることが必要かもしれません。たくさんの働き方があるかと思いますが、中川さんの働き方を知ることによって、みなさんがより多くの選択肢を増やすきっかけになれば幸いです。

INTERVIEW中川亜紀子 Little Things代表/コンサルタント
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