リモートワークの普及、働き方改革、労働人口の減少を背景に、業務効率化が急務となる昨今。さまざまな企業が業務効率化を課題としています。貴重な時間にどのように向き合えば、業務効率化につながるのでしょうか。
糸口となるような進め方やアイディアをまとめてみました。
業務効率化とは
業務上の「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすことで、時間的・経済的なコストを削減し、効率的に業務を遂行することを業務効率化といいます。
業務効率化でなくすべき「ムリ・ムダ・ムラ」とは
「ムリ・ムダ・ムラ」とは、具体的に以下のようなものを指します。
ムリ:達成可能性が極めて低い目標や現実的ではないスケジュールが設定されているため、組織への負担が大きく、パフォーマンスが低下している状態。
ムダ:目標や目的を達成するまでのプロセスが多く、なくても滞ることのない工程や意義のないタスクがあるため、必要以上に時間がかかっている状態。
ムラ:チームや時期によって業務の偏りが大きいため、適切な人員配置になっておらず、業務量に偏りが生じている状態。
業務効率化の基本は「ムリ・ムダ・ムラ」を見つけ出し、省くことで、リソース配分を最適化し、今までと同じかそれ以上の成果を出すことです。「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすと、作業時間が短くなり、残業や休日出勤のない健全な経営につながるでしょう。それに伴い人件費も削減されます。
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「ムダ」「ムリ」「ムラ」から、生産性向上の取り組みを始める
生産性向上との違い
業務効率化について考えるにあたり、おさえておきたいのが「生産性向上」です。
業務効率化は、生産性向上の手段のひとつです。生産性とは、インプットに対するアウトプット(成果)を計る指標であり、生産性を向上させるには、少ないリソースのインプットで、高いアウトプットを打ち出す必要があります。
成果を出すためのコストをいかに効率化するかを重視する業務効率化に対し、生産性向上では、成果をいかに最大化するかを重視します。
業務効率化の進め方 5つのステップ
では、具体的なアクションに落とし込んでいきましょう。業務効率化へのプロセスを5つのステップに分けて解説します。
1.現状の業務内容を把握・業務の可視化
業務効率化に取り組むには、業務内容の現状把握から行います。全体像を明らかにすると、改善すべき場所がどこにあるのか正しく判断できます。
現状把握をする際は、担当者にヒアリングするなどし、以下のポイントまで具体的に可視化しましょう。
・業務内容:作業工程、必要なスキルやツール
・所要時間:作業の各工程にかかる時間
・業務に関わる人数:各工程やカテゴリーごとの人数
・時期:作業が発生する頻度や繁忙期・閑散期
2.改善箇所の洗い出し
業務内容の全体を客観視し、課題や問題点を洗い出します。この課題や問題点に「ムリ・ムダ・ムラ」が隠れている可能性があり、業務を効率化するための改善ポイントになるのです。
改善箇所を洗い出す時には、課題や問題がどこにどの程度の影響を及ぼしているのか、改善することでどんな成果やメリットが見込めるのかまで、じっくり考える必要があります。
3.改善の優先順位を決める
洗い出した改善箇所に優先順位をつけます。複数の改善策を並行して着手すると、現場の混乱を招きかねません。
効率化しやすい作業や効果が出やすい作業を優先して改善するといいでしょう。
優先順位をつける時は、「現状かかっている工数」と「影響する範囲」を基準に比較します。業務効率化への影響が大きく、改善の難易度が低いものから優先して着手すると、成果が出やすくなります。
4.スケジュールを決め実施する
改善箇所に対する改善策を打ち出します。解決する方法が明確なものもあれば、複数の施策を試して解決策を見つけ出すものまでさまざまです。そこで必要となるのが、業務効率化実現に向けたスケジュールです。
どのタイミングで振り返りを行うのか、いつまでに効率化を図るのかなど、業務効率化に取り組む期間を明確にしましょう。
スケジュールを決めないと、改善すべき課題がそのままになってしまったり、改善策の振り返りが先延ばしになったりし、改善がスムーズに進まないことがあります。
業務改善の具体的な実施案については後述します。
5.改善結果の効果検証を行う
5つめのステップは、非常に重要です。業務の効率化に向けて実施した施策に対し、効果検証を行いPDCAを回しましょう。
このステップを踏むことで、更なる業務効率化につながります。
どのように改善したかの数字はもちろん、効果が出ず現状維持だったもの、効率が落ちたものもしっかりと検証しましょう。うまくいったことだけでなく、成果につながらなかったというデータも、企業やチームにとっては、貴重なナレッジになります。
改善したら完了ではなく、改善のサイクルを常に回すことで、業務効率化を目指す習慣が身につくのです。
業務効率化の7つのアイディア
ここからは、前章の【4.スケジュールを決めて実践する】で割愛した実践の方法について、7つのアイディアを解説します。どうしたら業務効率化が実現するのか、さらに深掘りして考えてみましょう。
やらなくてもいい業務はないか洗い出しする
業務のムダをなくすには、可視化した業務の中から「やらなくてもいいこと」を洗い出します。これはコストや時間をかけずとも簡単に実践ができ効果も大きいため、業務効率化に取り組むにあたり、最初に考えるといいでしょう。
・やらなくても業務に支障がない
・頻度や量を減らしても業務に支障がない
といった観点で、洗い出しをします。
例えば、毎週行っている定例会は、本当に必要か?開催頻度は適切か?オンライン会議にできないか?書面での申し送りも可能ではないか?と、問いかけてみましょう。
アウトソーシング
アウトソーシングは、社内のメンバーでなくても対処できる業務を、外部に発注することをいいます。オフィスを共にしなくとも仕事ができるようになった近年では、コストカットや人的リソースを有効活用できる、アウトソーシングの需要が高まっています。
社内リソースのムリをなくすことはもちろん、必要な時だけアウトソーシングをすれば、業務のムラをなくすこともできます。
例えば、ルーティンワークになっているデータ入力やマニュアルの範囲内で対処できる問い合わせ対応などの簡単な作業は、クラウドソーシングサービスに出すことで、社内のリソースをコア業務に集中させられます。
また、セールスやマーケティング、デザインなどの専門的な業務は、専門業者に依頼した方が、社内の知見のないメンバーが行うよりもスピーディーに、かつ高い品質のアウトプットが得られるでしょう。自社では持っていないスキルやサービスを外部に依頼することで、企業全体の業務効率がよくなることがあるのです。
RPAなどのITツールの導入
RPA(Robotic Process Automation)やITツールを導入すると、マンパワーで行っていた作業を機械によって自動化し、業務効率化を進めます。
RPAとはRobotic Process Automationの頭文字をとった言葉で、PCやクラウド上で行う定型的な事務作業を自動化するテクノロジーです。
業務を可視化すると、ルーティン化されている仕事が見つかります。多くの場合、ルーティンワークは単純作業ながらも仕事のボリュームが大きいという特徴があります。そして、形骸化しているものも多く、そもそもの必要性や効率が長い間見直されていないケースもあります。
このような作業はRPAやITツールを用いて自動化すると、業務効率は著しくアップします。
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マニュアルを作成する
作業プロセスや対応者によって作業効率が変わる作業は、短時間で質の高いアウトプットを生み出せるプロセスに一元化し、マニュアルを作成することで平準化します。マニュアルを共有することで、作業のムラの削減にもつながるでしょう。
作業スピードや質が異なっていては、業務効率が良いとはいえません。しかし、マニュアルを導入すれば、誰がやっても同じスピードや質を保てるようになります。
また、マニュアルに業務のルールやポリシーを記載すると、意識や進むべき方向性を揃えることができ、結果的に業務の効率化につながるのです。
業務のフローチャートを作成
フローチャートの作成も業務効率をアップさせます。フローチャートとマニュアルは似ていますが、マニュアルに記された業務をどのように進めればよいかをまとめたものがフローチャートです。
マニュアルとフローチャートは必ずセットで用意しましょう。
業務の担当者を変更してみる
業務の中にはたくさんの作業があり、メンバー全員がその全てを得意とするとは限りません。そこでメンバーの得意不得意に合わせて、業務の担当者を変更してみましょう。
各々が苦手とする作業を手放すことができ、得意な作業に専念できるので、自ずと作業効率は上がります。メンバーの経歴やスキルについてのヒアリングなどを実施して把握し、適切なタスクを割り当てましょう。
業務を分業・統合してみる
業務の分担や統合も、業務効率化につながります。複数の部署・担当者で横断的に行っていた作業を、いずれかの部署の担当者にまとめたり、単独で行っていた作業を複数の部署・担当者に分散させたりすることで、業務の負荷を適正にします。
各工程が独立しているケースは、分業すると業務効率化につながります。自分でやるまでもない作業を、リソースに余裕がある部署や外部に切り分けることも有効です。
逆に、各工程間に連携が必要な場合、統合するといいでしょう。業務の進行にこまめな情報共有が必要なケースや、似たような作業が複数の部署で発生している場合は、作業を1箇所に統合してみましょう。作業の重複を防いだり、連携の工数を削減したりでき、業務が効率化します。
業務効率化を進める上での注意点
今すぐに業務効率化に取り組みたいところですが、その前に2つの注意点についてお話します。業務効率化の過程では、大掛かりな業務の再構築が発生することもあります。着実に業務効率化を進めるために、以下のポイントはおさえておきましょう。
業務効率化のロードマップを作成し共有する
業務効率化は、業務の全体像や可視化された課題、改善の方向性をロードマップに集約することからはじめましょう。ロードマップに書き出すことで、効率的な業務改善フローが見えてきます。
ロードマップがないと、可視化された課題にシステムを導入したものの、業務効率化が進むにつれて、その施策は不要だったことが判明することもあるでしょう。
目指すべき業務のあり方を可視化し、常に更新し続けることで、適切な対処法を選択できるのです。
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一度に複数の施策を実行しない
業務全体を可視化し、たくさんの課題が見えてくると、次々と手をつけたくなりますが、一度に複数の施策を行うことはおすすめしません。
1つの施策に全力で取り組む体制と、10の施策に力を分散させて取り組む体制では、最終的な成果に差が出てしまうと考えられています。また、複数の施策を同時進行することで、どの施策によって効率アップしたのかが見えにくくなり、適切な評価ができません。
業務効率化のプロセスにムリやムダが発生しては本末転倒です。実現可能な改善プランを立て、一歩ずつ確実に実行しましょう。
まとめ
人手不足の解消やワークライフバランスを意識した働き方の推奨を背景として、残業の削減や業務時間の短縮、働く場所の自由化が求められています。さらに、市場やニーズが変化するスピードも激化し、競争力もあげねばなりません。
これからのビジネスシーンを生きるビジネスパーソンにとっては、業務効率化を意識した働き方が必須スキルといってもいいでしょう。
経営層のみならず、一人ひとりがいかに業務効率化を進めるかを考えることが大切なのです。