夫(彼氏)の転勤は突然に。そのとき働く妻(彼女)はどうする?

一昔前は、女性が結婚すると「永久就職」といわれ、夫は外で働き、妻は専業主婦となって家庭を守る、というスタイルが一般的でした。中でも、夫の仕事で数年ごとに転居を伴う家庭は「転勤族」と呼ばれることもありました。しかし、2000年以降、共働き世帯が専業主婦世帯を上回り、現在では共働き世帯は専業主婦世帯の2倍以上ともいわれ、その差は広がる一方との見方がされています。

共働き世代が抱える転勤問題。失業!?ワンオペ!?別居婚!?

結婚後も共働きする夫婦が主流となった今、この“転勤”というシステムは様々な問題を引き起こすことになります。女性が働く、結婚する、子どもを産む、育てる、といった各ステージにおいて、夫や自身の転勤が弊害となって降りかかってきた時、一体どのような選択をすべきでしょうか。今回、3名の女性から経験談を伺いました。

ケース① 家族帯同編 二人目が欲しい!妻が会社を辞め、家族で引っ越し(転勤時 夫30歳/妻30歳/子ども2歳)

まず初めに、育休明け一年後というタイミングで夫の転勤が決まり、会社を辞めたというAさんの経験談です。

新卒で入社した大手百貨店に勤めて7年目のとき、食品メーカー研究職の夫が東北へ転勤することになりました。夫からは、転勤の可能性はゼロではないがごく稀だ、と以前から聞いていたので、東北転勤は青天の霹靂に近い気持ちでした。ちょうど、第一子育休明けから一年たったタイミングだったので、私自身は子育てと仕事の両立にやっとペースを掴み、仕事にのっていた時期でもありました。夫は、自分自身が転勤族で育ち4度の引越しをした経験があるせいか、都内から出たことのない私が知らない地で生活することを心配し、単身赴任でも良いと言ってくれました。ただ、任期は少なくとも2,3年と聞かされていたため、私がこれから2歳の息子と二人きりで暮していくことを考えると、それはそれで不安でした。だからと言って、今の会社を辞めキャリアや経済的なものを手放すといった決断もなかなかできずにいたんです。

そんな時に姉の子どもである姪と甥と二年ぶりに会ったんですが、その成長のスピードに驚き、衝撃をうけたんです。当時、うちの息子は2歳でしたが、仮に夫が単身赴任したら、夫は我が子の成長を点でしか見れなくなるんだ…と深く考えさせられました。育児の分担が云々よりもその成長を一緒に味わえないことは勿体ないな、と感じました。それと同時に、なんとなく有耶無耶にしていた2人目が欲しいという気持ちもはっきりとしてきたというのもあります。

不思議なもので、心が決まると迷いが吹っ飛び、前向きになれるものなんですよね…。会社を辞めて、東北に引っ越すと決めた瞬間から、今まで働き詰めだった日常から解放される喜びや、ずっとやりたいなと思っていたハーブの勉強をしよう、部屋のインテリアに凝ってみよう、せっかくの東北だから家族でスキーにでかけよう、など私の心は膨らみ、夫の転勤を家族の転機だと思うことができたんです。」 

現在、東北生活2年目のA子さんですが、二人目をご出産され、チャイルドマインダーの資格も取ったそうです。Aさんのお話からは、転勤をひとつのきっかけとし、家族ごと新たなフェーズとして歩み出すといった選択肢もあることがわかりました。

ケース② 単身赴任編 夫婦のキャリアアップ&子どもの中学受験を優先(転勤時 夫40歳/妻38歳/第一子9歳/第二子6歳)

次にお話を伺ったのは、夫婦ともに管理職への昇格が数年後に見込まれる時期において、夫の関西転勤が決まったBさん。Bさんのご家庭は夫が単身赴任をするという決断をしましたが、決断理由の一つとなったのはお子さんの年齢にあったようです。

「第一子が2歳の時、夫の転勤で3年間アメリカに帯同したことがあります。その時、公務員だった私は仕事を辞めてついていき、第二子はアメリカで出産しました。帰国後しばらくして、私は教育系コンサルティング会社の事務職として再就職したのですが、上司から声をかけていただき、今はコンサルタントとして働いています。わりとルーチン作業の多かった公務員時代に比べると、今の仕事は忙しく、仕事を家に持ち帰ることも多々ありますが、充実度でいうと倍ともいえるくらい、自分の性格に合っていると思います。

仕事が楽しくて仕方がない、私がそんな状態だったため、夫が関西に転勤になるとなった時、周りは当然のように単身赴任だね、といった反応をしていましたが、私自身は正直とても迷いました。寂しがり屋選手権があったら優勝するのではないかというくらい、夫は家族と一緒の生活を重視している人で、国内出張でも時間さえ間に合えば宿泊をせず、家に帰って来るような人です。我が家には、“朝ご飯は家族そろって食べる”といったルールがあり、その日一番早く家を出る人の時間に合わせて食卓につく生活をずっと続けていました。単身赴任ともなると、そういった何気ないことで保たれていた家族のバランスが崩れてしまうのではないか・・・と。様々なことを天秤にかけて迷い戸惑う私でしたが、家族会議を開き、最終的に判断を下したのは夫と子供たちでした。

家族の形は、夫婦の抱えている日常や子供たちの成長に合わせ、形を変えていくべき、というのが夫の考えでした。“朝ご飯を家族そろって食べる”が今まではベストの形だったが、これからは各人がそれぞれの場所で頑張り、週末に揃って一週間のトピックスを話し合う時間をつくろう、ということになりました。

子供たちが親の事情を理解し、自分自身の生活との照らし合わせて考えられる年齢になっていたのも大きいかもしれません。仮に2年前くらいだったらこんな話はできなかったと思いますし、下の子はその時6歳(年長)でしたが、上の子の6歳と比べ、精神的に大人だったということもあると思います。これが、関西ではなく、またアメリカ転勤だったら話は変わってくるとも思いますし、転勤は本当に、家庭の数だけ答えがあると思います。」

Bさんの夫は毎週金曜の夜、新幹線で帰って来て、日曜の朝に戻るといった生活を続けています。新幹線代がもったいないとの意見がありますが、家族が趣味だという夫のお財布事情は困っていないそうです。

Bさんとの後日談では、転勤は内示を受けてから家庭ごとに考えるのではなく、年初毎に希望や要望を出し、それを会社が尊重した人事異動を考えるべきだ、とおっしゃっていました。そのようなシステムを導入する企業が多くなることを願うばかりです。

ケース③別居婚編 彼の海外転勤がきっかけで結婚へ(転勤時 男性30歳/女性27歳)

最後に紹介するのは、結婚前の交際中カップルに降りかかった転勤問題です。4年間付き合っていた彼氏の海外転勤が決まったC子さんのケースです。


「商社勤務の彼氏の海外赴任が決まった時、彼が海外希望を出していたことは知っていたので、一緒に喜んであげたい気持ちはあったのですが、なんともモヤモヤした気分でいっぱいでした。場所はタイのバンコクで任期は3年です。彼とは友達の紹介で出会い、付き合って4年目を迎えていましたが、結婚の話がでたことはありませんでした。私は通信会社のSE職をしており、結婚している女性の先輩やワーキングマザーもたくさんいる職場です。素敵な既婚女性に囲まれていたせいか、私の結婚願望はここ数年でむくむくと膨れ上がっていましたし、彼がいつ結婚の話をしてくれるのだろうか、ひそかに期待していたくらいです。

彼からバンコク赴任を伝えられたとき、私はこれからの二人の関係性がどうなるかと動揺するばかりでしたが、彼の態度は普段と変わらず淡々としていたので、私は「結婚しないなら別れる」と口走ってしまったんです。すると彼が「別れたくないので結婚しよう」と…。そんな即答は想定外でした。私は拍子抜けしてしまい、こんなことならモヤモヤしてないでもっと早く言えば良かったな、と思ったくらいです。

そこからはハイスピードで事が進み、その翌週にはお互いの両親に会って入籍を済ませました。二人で話し合い、彼のバンコクでの仕事と生活が落ち着いた半年後に日本で結婚式を挙げ、私は会社の再雇用制度に登録してバンコクへ引っ越すことに決めたんです。ですが、妊娠が判明しまして…。結局、産後子どもが1歳を過ぎてからバンコクへ行くことになりました。今は、別居婚ですが彼との関係性も変化し、家族になったのだなと実感しています。彼の海外赴任がなければ結婚のタイミングを失っていたかもしれないし、お腹の子もいなかったと考えると、人生って本当に読めないな…と思いました。」

C子さんは最後に、自分の経験から言えるのは、先を見据えたキャリア設計よりも大事なのは、転機となる出来事が起きた時に、「自分がどうしたいか」という直観を大事にすることだと言っていました。相手があることであればなおさらそうなってくるのかもしれません。

まとめ

パートナーが転勤になった場合、どういった選択をするのがベストかはその家庭ごとの「バランス」が何で保たれているかが決め手になってくるのかもしれません。共働き家庭がスタンダードとなった今、企業側もライフワークバランスのひとつとして、事前に本人の意向確認をしっかり行ってから転勤辞令を出してほしいものですが、現実にはなかなか思うようにはいかないものです。

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