どのような仕事でも、目標を設定し、その目標に向けて行動を起こすことが欠かせません。目標を達成できるかどうかは、目標設定が正しくできているかどうかがポイントとなります。
目標設定を上手に行うために効果的として注目を集めている「SMARTの法則」をご存知でしょうか。言葉自体は知っていても、どのように活用すれば良いかがわからないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、SMARTの法則の基本や目標設定の方法を具体的な例を挙げて紹介します。
SMARTの法則とは?
SMARTの法則とは、目標を設定する際に役立つフレームワークのひとつです。マネージメントの父と言われている、ピーター・ドラッカーが提唱したことで世界中に広まりました。目標を立てる際に重要な5つの要素の頭文字を取り、SMARTと呼ばれています。
・Specific =具体的な
・Measurable=計測可能な
・Achievable=達成可能な
・Relevant=経営目標に関連した
・Time-bound=時間制約がある
SMARTの法則を用いて目標を設定することで、ゴールまでの道のりが明確となり、目標達成の可能性を最大限に高めてくれるでしょう。
SMARTの法則を活用して目標を立てるメリット
SMARTの法則を賢く活用するために、メリットについて確認しておきましょう。
SMARTの法則を活用する最大のメリットとして挙げられるのが、目標達成までの業務の効率化です。5つの要素を満たした目標を立てることで、やるべき行動が明確になり、スタートからゴールまでの全体の流れを把握できます。
目標を達成するためには、モチベーションを維持することも大切です。ぼんやりとした目標だけでは、モチベーションの維持は難しいものです。SMARTの法則で立てた目標は、「いま何をすべきか」「目標まではあとどれくらいか」などがはっきりとわかるため、モチベーションを維持しながら目標へと向かうことができます。
目標を達成できたという成功体験は、さらなるステップアップを目指すモチベーションにもつながるでしょう。
SMARTの法則を活用した目標の立て方
SMARTの法則を活用して達成可能な目標を立てるためには、SMARTの元となっている5つの要素を満たしていく必要があります。それぞれの要素にはどのような意味があるのかを理解した上で、目標設定を行いましょう。
Specific(具体的に)
目標はなるべく具体的に設定することが大切です。曖昧な目標では、何をどのように進めていけば良いかがわかりません。例えば、複数のメンバーで取り組むプロジェクトで、「売上を伸ばそう」といった漠然とした目標を掲げた場合はどうなるでしょう。目標が明確ではないため、思い描くゴールのイメージも人によって異なってしまいます。認識の違いが生じてしまう目標設定では、目標達成も難しいでしょう。
メンバー全員が共通の認識を持ち、一致団結してゴールを目指せるよう、具体的な目標を設定することが大切です。
Measurable(測定可能な)
測定可能な目標設定とは、達成率や進捗状況が把握できるよう、目標を数値化することです。「今年は顧客を増やす」という目標だけでは、10人増えるだけでも目標達成なのか、あるいは100人増やさなければならないのか、達成の基準が曖昧です。
一方で、「今年は50人の顧客を増やす」という数値化した目標であれば、「6ヶ月で顧客が30人の増えたから、残りの6ヶ月で20人増やせるように頑張ろう」というように、達成率や進捗状況が確認できます。
明確な数値化がされていない目標は、あとどれくらい頑張れば目標達成できるのかがわからず、モチベーションの低下にもつながるため、可能な限り数値化するようにしましょう。
Achievable(実現可能な)
「Achievable」とは、達成可能性を意味する言葉です。上を目指す努力も大切ですが、明らかに達成不可能な目標は、過度なプレッシャーやストレスとなり、仕事への悪影響を及ぼす可能性もあります。
かと言って、簡単に達成できるような低すぎる目標では、モチベーションも上がらず、スキルアップにもなりません。自分のスキルやチーム体制などの状況を考慮し、達成する可能性がある、現実的な目標を立てましょう。
Relevant(経営目標に関連した)
目標を達成することで、「何が生み出されるか」「自分にどのような利益があるのか」という関連性を明確にすることも重要です。例えば、目標達成することで会社の業績が上がった結果、「ボーナスがもらえる」「昇給する」といった、金銭的な利益があることは目標達成を目指すモチベーションとなるでしょう。目標達成で得た経験によって、「自分が目指すポジションへと近づいた」、「スキルアップした」などの成長も利益となります。
Time-bound(時間制約がある)
期限が設けられていない目標は、先延ばしにしてしまったり、時間ばかりがすぎてしまったりと、なかなか目標に近づくことができません。目標を達成するためには、「◯月◯日までに達成する」など、現実的且つ具体的な期限を設けるようにしましょう。長期的な目標の場合は業務を細分化し、それぞれに目標期限を設けることで、スケジュールが立てやすくなります。
期限があることで、適度な緊張感を持ち、集中して業務に取り組むことができます。仕事だけに限らず、日常的なことでも「◯分で終わらせる」など時間制約を設け、「Time-bound」を習慣化すると良いでしょう。
SMARTの法則を活用して目標を設定するコツ
どんなに便利なフレームワークも、上手く活用できなければ意味がありません。目標達成の可能性を最大限に高めてくれるSMARTの法則を、上手く活用できるかが鍵となります。ここでは、SMARTの法則を活用した目標設定のコツを解説します。
成果目標と行動目標の2つを設定
目標は、大きく分けて2つに分けることができます。ひとつは、「年間売上〇〇万円」といった、最終的に達成したいゴールである「成果目標」です。もうひとつは、「年間売上〇〇万円」という成果目標を達成するために必要な、具体的な行動を示す「行動目標」です。
一般的に、目標を立てる場合は成果目標を立てることが多いでしょう。しかし、目標達成率を上げるためには、具体的な行動目標も設定しておくことが必要不可欠です。SMARTの法則を活用し、成果目標と行動目標の2つの目標を設定することが大切です。
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市場・経営状況を考慮した目標にする
仕事の状況や環境は、常に一定ではありません。予期せぬ自然災害や感染症などの影響により、市場や経営状況は日々変化しています。たった数ヶ月でも状況がガラリと変わり、目標達成が難しい状況になることも珍しくないでしょう。最終的な目標を達成できるよう、市場や状況を考慮した目標設定をしましょう。
一度設定した目標は途中で変えてはいけないかというと、そうではありません。状況を分析して立てた目標であっても、その後の状況の変化や数字の進捗状況によっては、軌道修正が必要な場合もあります。状況の変化に合わせ、調整できる柔軟性も持っておくと良いでしょう。
PDCAサイクルを回す
SMARTの法則の効果をより高めるためには、状況や確認として「PDCAサイクル」を活用しましょう。PDCAサイクルとは、 「PLAN(計画)」「 DO(実行)」「 CHECK(検証)」「ACTION(改善)」 の4項目を活用し、課題の解決や状況の改善を図るビジネスフレームワークの一種です。
現在の状況を確認し、改善すべき箇所を分析し直すことで、目標に近づくことができ、モチベーションの維持もしやすくなります。PDCAサイクルは一度きりではなく、繰り返し回すことで、目標達成に向けた適切な行動をとりやすくなるでしょう。
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SMARTの法則の具体事例
SMARTの法則の基本がわかったところで、続いてはSMARTの法則を応用した具体事例を紹介します。SMARTの法則は、どのように活用するかが重要です。ご自身の職種や立場に置き換え、目標設定をしてみましょう。
経営の目標
経営にはさまざまな仕事内容があるため、分野ごとに目標を立てる必要があります。ここでは、売上についての目標を例として紹介します。「売上を上げる」という単純な目標では曖昧なため、SMARTの法則を活用して具体的な目標を設定しましょう。
・S=昨年よりも売上を上げ、利益率を上げる
・M=売上は前期よりも5%増、利益率10%目指す
・A=新規商品の販売を強化。オンラインを積極的に活用することでコストを削減し、利益率を上げる
・R=利益率が上がれば、役員や社員の報酬が増加
・T=上半期
SMARTの法則を活用することで、「新規商品の販売を強化し、前期よりも売上を5%増、オンライン活用でコスト削減し、利益率は10%を目指す」という明確な目標設定ができました。数値化した目標は部署内やチーム内でも共有しやすく、全員で目標達成を目指せます。
営業社員の目標
営業職の場合、売上や新規件数など、数字での目標が立てやすい傾向にあります。しかし、数字だけの目標では何をどのように頑張れば良いのかが不明瞭です。
例えば、「成約数を増やす」という目標を立てたとしましょう。しかし、何件であれば目標達成が可能なのか、どのような行動を起こすのかについては明確ではありません。SMARTの法則によって、掘り下げた目標設定をしましょう。
・S=売上を上げるために成約数を増やす
・M=月間30件の成約数を目指す
・A=直近3ヶ月は平均25件の成約数を獲得している。購買履歴から半年以内の注文履歴がない顧客に対して再度アプローチを行うことで、20%程度の件数増加が見込める
・R=成約件数によってインセンティブ手当てがもらえる
・T=11月末
このようにSMARTの法則を活用することで、「過去の顧客にもアプローチし、今月は30件の成約数を目指す」という、明確な目標設定ができるようになります。
人事社員の目標
人事社員は、営業社員などに比べて数値化した達成基準を設けるのが難しいと言われています。しかし、たとえ数値化しづらい目標でも、SMARTの法則に当てはめることで、より具体的な目標設定が可能です。
ここでは、「労働環境の改善」を目標にした例を紹介します。労働環境の改善というざっくりとした目標では、ゴールがどこなのかがわからないため、可能な限り数値化することが必要です。
・S=労働環境を改善する
・M=時間外労働時間を前年比より10%削減
・A=週に1日、ノー残業デーを導入する
・R=自分自身も働きやすくなる
・T=2022年度末
SMARTを活用することで「週に1日ノー残業デーを導入し、時間外労働時間を前年比より10%削減」という、数値化した目標設定ができます。明確な目標があることで、行動に移しやすくなり、日々の業務にも意味を感じられるでしょう。その他「人材育成」や「有給消化率」などの目標設定にも役立ちます。
まとめ
SMARTの法則は、達成可能な目標を立てるのに有効なフレームワークです。曖昧な目標ではなく、具体的かつ明確な目標を設定できるため、目標達成に向かって確実に進むことができます。「目標を達成できない」、「モチベーションが維持できない」など、目標設定に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。