限られたリソースを最大限活かし業績を上げるためには、効率的に業務を行う必要があるのは言うまでもありません。リモートワークの定着など働き方が多様化している現代のビジネスでは、「誰が、いつ、どこで、どのように」業務を行っているのか、業務を見える化することがその第一歩となります。
本稿では、業務の見える化の方法やそのメリットについて解説します。効率的な業務進行のためにも、業務の見える化について理解を深めましょう。
業務の見える化とは?
冒頭でもお伝えしましたが、業務の見える化とは、従業員の「誰が、いつ、どこで、どのように」業務を行っているかを把握することをいいます。
一人ひとりのスキルやノウハウ、業務手順などの共有や、従業員同士でお互いの状況を把握し合うことも含まれます。そのため、どの従業員が見ても理解できるような方策で可視化する必要があります。
業務の見える化で可視化すべき4つの項目
では業務の見える化のために、具体的にどのような項目を可視化したらよいのでしょうか。
ここでは可視化すべき4つの項目について解説します。
業務フロー
どのようなプロセスで進行するのかを可視化するために、業務フローを作成します。誰もが理解できるように、作図などを用いてわかりやすく示しましょう。
業務フローを作成すると、無駄な工程を減らせるだけでなく、従業員があらかじめ手順を理解できるので、作業時間の短縮やミスの削減にもつながります。
ナレッジ
従業員それぞれが持ち合わせている知識・情報・ノウハウ・経験などのナレッジも、可視化して共有できるようにしましょう。
定型業務などはマニュアルを作成して可視化すると、初めての従業員でも取り組みやすく、クオリティを均質化することができます。無駄な作業やミスの防止にもつながるでしょう。
マニュアル化できない内容も、可能な限り言語化しておくとよいでしょう。スキルの高い従業員のナレッジの共有は、企業としての高い効果が見込めます。
タイムスケジュール
従業員一人ひとりが「いつ・どこで・どのような」業務を行うのか、タイムスケジュールを作成し共有することで、従業員の状況把握ができます。リモート下においてはお互いの様子が見えないため、一層重要となります。
同時にプロジェクト全体のスケジュールも作成し、それぞれの役割や現在の状況を理解することで、連携強化も図れます。
タスクの進捗状況
プロジェクトにおけるタスクの進捗状況を見える化し共有することで、納品の遅延を防ぎ、生産性の向上を可能にします。
遅れているタスクや抜け漏れを早期に発見できるだけでなく、担当者同士の協力も得られます。また、見える化することで、特定の従業員に業務が集中しないように、業務バランスの調整も容易に行えます。
業務の見える化を行うメリット
実際に業務の見える化を行うと、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
3つに分けて見てみましょう。
仕事の量と質の適正化
業務を見える化することにより、業務量も見える化できます。
一部の従業員に業務が偏ったり、スキルに見合わない業務が割り振られたりすると質の低下を招きかねません。従業員へ適切に業務配分を行うことで、質の適正化が保てます。
全体像の把握
業務の見える化を行うと、業務に関わる全ての従業員が業務の全体像を把握できます。
自分の担当業務が果たす役割や、他の業務との関連性を理解して業務を行うことができるため、モチベーションが向上します。
また、部署間の連携やコミュニケーションも活性化するでしょう。
生産性の向上
業務の見える化を行うことで、無駄な業務や非効率な業務進行などが見えてきます。
これらを改善することは、工数の削減につながります。
業務フローやマニュアルの作成により、初めて取り組む従業員に対しての教育がスムーズに行え、業務の質も一定に保つことができます。効率的な業務進行が叶うため生産性が向上するでしょう。
業務の見える化を行うにあたって失敗しやすい注意点
業務を効率的に進めるために、業務の見える化はとても重要な役割を持ちますが、ただ行うだけでは上手く機能しない場合があります。ここでは失敗しやすい注意点について解説します。
目的を見失ってしまう
業務フローやマニュアルの作成をし業務を見える化することばかりに意識が向いてしまうと、何のために業務の見える化を行っているのか、本来の目的を見失ってしまう可能性があります。
業務の見える化は、あくまでも業務を効率的に進めるための1つの手段であることを念頭に進めましょう。
現場の柔軟性がなくなる
業務の見える化により質の均質化が図れる一方で、業務フローやマニュアルに縛られてしまい、新しいアイデアや改善提案が聞き入れにくくなる傾向があります。
新しい提案は、生産性や品質向上の可能性を秘めています。臨機応変に対応をするように心がけましょう。
業務の見える化の方法
どのような方法で業務の見える化を行うと、効果が期待できるでしょうか。
ここからは、効率よく業務の見える化を行う具体的な方法を解説します。
目的を明確にする
業務の見える化を行う際は、まず見える化を行う目的を明確にすることが大切です。
目的を明確にすることで、具体的に何をすべきかが見えてきます。
業務を見える化するためには、従業員の協力は欠かせません。目的を明確にしたら、業務に関わる全従業員に共有をしましょう。
現在の業務を調査・分析する
現在の業務について組織内でどのように行われているのか、業務内容やボリューム・予定作業時間・必要なスキルなどを調査・分析します。実際に現場で担当している従業員に丁寧にヒアリングを行い、正確な把握を心がけます。
業務を詳細に調査・分析することで、無駄な業務や問題点などが見えてきます。無駄な業務を省き、問題点の検討を行いましょう。
マニュアルの作成
業務を調査・分析した結果を踏まえて、マニュアルの作成を行います。
業務内容ごとに作業時間の目安やポイント・注意点などをわかりやすくまとめましょう。
どの従業員が見ても理解できるように作成すると、レクチャーの時間が削減できるなど、業務の効率化につながります。定型業務や比較的難易度の低い業務などは、均質化や業務時間の短縮が促せるため効果的です。
社内に共有し記録をする
作成したマニュアルや見える化した内容は、社内で共有します。
従業員がいつでも確認できる場所にデータを保管したり、紙の場合は見やすい場所に貼ったりしましょう。
また、従業員それぞれが、担当タスクの状況や日々のスケジュールを記録することも大事です。記録データを積み重ねることで、業務フローやマニュアルをアップデートし効率化を図ることができます。
記録した内容の調査・分析・改善を行う
業務の見える化は、業務フローやマニュアル、タイムスケジュールなどを作成して完了ではありません。効果的に活用するためにも、記録した内容の調査・分析を繰り返し、日々改善を行いましょう。
新たな業務の発生や問題点が発覚したら、即座に業務フローの見直しを行うことで、継続的な運用が可能になります。
業務の見える化を行うためのツール
できるだけ負荷を少なく、効率的に業務の見える化を進めるためには、ツールの活用がおすすめです。業務の見える化を行うために活用できるツールを4つ紹介します。
Excel
Excelはビジネスパーソンにとって、最も使い慣れているツールと言っても過言ではないでしょう。多くの従業員が抵抗なく使用できるため、導入のハードルが低いツールです。
無料でダウンロードできるテンプレートも豊富にあり、業務にあったテンプレートを用いれば、簡単に管理表の作成ができるのも利点です。
【エクセルでタスク管理表を作る方法は?おすすめのテンプレートやガントチャートの運用などもあわせて紹介】ではエクセルでの管理表の作り方や無料テンプレートの紹介をしています。エクセルで管理表を作る際にはぜひ参考にしてください。
Googleスプレッドシート
Googleスプレッドシートもまた、ビジネスパーソンに馴染みのあるツールです。Excelと同じ表計算ツールですが、Excelとの違いはクラウド上で保存ができることです。そのため、業務に関わるメンバーで共有ができ、閲覧や編集を同時に行うことができます。
Googleスプレッドシートもテンプレートが豊富にあるので、管理に適したものを選ぶとよいでしょう。
Googleスプレッドシートについては【Googleスプレッドシートでタスク管理を行うには? テンプレートやおすすめの機能について解説】をご参照ください。
かんばん
トヨタ自動車の生産管理方式が起源のかんばん方式は、「かんばん」と呼ばれるボードにタスクを書き出し、付箋のように並べて業務を見える化します。
「未対応」「対応中」「完了」などステータスごとに分類し、一覧にします。タスクの進行に合わせてステータスを移動させることで、進捗状況が一目で把握できます。
【カンバン方式のタスク管理ツール5選。業務を見える化して作業効率をあげよう!】ではかんばんについてくわしく解説しています。
アプリ・ツール
アプリやツールを活用すると、業務内容が複雑な場合も整理して管理することができます。PCだけでなくスマートフォンやタブレットなど、いろいろなデバイスからアクセスできるものも多く、移動中でも確認が可能なことから、多忙なビジネスパーソンには有効な手段です。
多くの管理ツールが提供されているので、アプリやツールを活用する場合は業務にあったツール選びがポイントとなります。
【2023年版】タスク管理・To Do管理ツールのおすすめ15選!導入のポイントも紹介では、Team Hackersおすすめの管理ツールを紹介しています。自身に適したツール選びの参考にしてください。
まとめ
業務フローやマニュアルの作成、タイムスケジュールの管理などに取り組み、業務を見える化することは、業務の効率化や生産性の向上など多くのメリットが得られます。
一方で業務の見える化の運用体制の構築には、労力や時間もかかります。継続的な運用のためにはツールを活用するなど工夫も必要でしょう。
本稿を参考に自社に合わせた業務の見える化に取り組み、業績アップを目指しましょう。