フィンランドに学ぶ働き方改革・後篇:フィンランド在住の日本人が薦める上手な休み方

前回の記事では、「休むことが自然と身についている」フィンランド人と、「休むことに罪悪感を持ち、休みにくい環境が当然となっている」日本人の意識の違いについて述べました。

諸外国に比べ、社会の自由度や他者への寛容さが低い傾向にあり、実際に有給休暇取得率や取得日数も最下位となっている日本。社会の仕組みそのものを改善するのは難しいものですが、せめて「休む時間は休む」ということくらいは個々で実現したいものです。

今回は、日本人がフィンランド人のように「休むこと」を自然に受け入れるにはどうしたらいいか具体的に考えてみたいと思います。

日本における仕事の進め方

有給休暇取得率・取得日数ともに先進国で最下位となった日本ですが、2018年10月に江崎グリコが実施した「仕事中の休憩実態調査」によると、約6割もの有職者が仕事中の休憩さえできていないと感じていることがわかりました。

短時間で効率的に働くことに重きを置くあまり「ちょっとした休憩」すら取りにくくなるとは、日本の働き方改革の進め方自体が本末転倒という気もします。
要するに、日本人は根本的に「休むということ」が下手なのかもしれません。「働き方改革」より、「休み方改革」を促進するべきなのではないかとすら考えられます。

フィンランド流・1日の休み方

これに対して、フィンランド流の1日単位の休み方はどのようになっているのでしょうか。
フィンランドの始業時間は、午前8時から。オフィスに出勤する場合は、この30分ぐらい前から出勤し始めます。出勤したらまずはコーヒーを淹れて一息つきます。仕事をはじめて1~2時間ぐらい経過したころに、またコーヒーを淹れて休憩。

昼食時間を過ぎ、午後の仕事に取り掛かり1~2時間ぐらい経過したら、またコーヒーを淹れて休憩。このように、出勤後のコーヒーを淹れて一息つくのは日本と同じですが、午前と午後に1回ずつのコーヒータイム「Kahvi Tauko(カフィヴィ・タウコ)」と呼ばれる習慣があります。

コーヒータイムは当然の習慣

このコーヒータイムですが、企業によっては雇用契約の中に「Kahvi Tauko」という項目で休憩を取る権利が保証されているところもあるぐらいです。契約には記載されていなくても、どんな業種・職種でも、1日に2回の休憩取得が習慣となっています。

残業はもちろんのこと、仕事帰りに同僚たちと飲みに行くという文化もほぼないため、このコーヒータイムにコーヒーを飲みながら同僚たちとのコミュニケーションを取ると言われています。

また、おしゃべりせずに昼寝をする人のことを考えて、ちょっとしたスペースを設けているところもあります。

特に、研究機関などでは「パワーナップ」といって、30分ほどの昼寝が推奨されているところがあります。高度な業務をおこなう場合は、コーヒー休憩だけではなく心身ともに休んで、リフレッシュした脳と身体で業務に取り掛かることが大切と言われているのです。

またセミナーや会議の休憩時間もしっかり確保されていて、そのときにはコーヒーとお菓子が振舞われます。私も終日セミナーに参加した経験がありますが、どんなセミナーでもちゃんと午前と午後にコーヒータイムが設定されていました。

ちょっとした休憩がパフォーマンスをアップさせる

コーヒータイムのほかに、45分休憩システムを取り入れているところもあります。フィンランドの学校の授業時間は日本と同じ45分ですが、一般社会にもこのシステムを採用しているのです。

先述の研究機関がパワーナップを導入している理由と同じく、定期的に休憩を取ることで脳と身体の集中力を回復させ、生産性や創造性を維持または向上させることが狙いです。特に設計者や技術者にはこのシステムが有効といわれています。

これは仕事効率などの分野で、最近流行りの「ポモドーロテクニック(25分間集中・5分休憩)」と同じ考え方です。
起業家フランチェスコ・シリロ氏提唱の時間管理術であるポモドーロテクニックは、仕事や勉強、家事などを、「集中力の限界」とされる25分間継続し、その後5分休憩します。このサイクルを最大4回繰り返すことで、生産性改善を期待できるのです。詳しく知りたい方は、「キッチンタイマー1つで生産性向上。ポモドーロ・テクニック活用法」を参考にしてください。

先述の江崎グリコが実施した「仕事中の休憩実態調査」でも、デスクでコーヒーを飲んだりチョコを食べたりと、ちょっとした休憩や気分転換が効率アップにつながると考える人は多く、日本もまずはそんな「ちょっとした休憩」から始めてみるべきなのかもしれません。

自分のエネルギーの流れを把握する

伝統文化とともに休み方が根づいているフィンランドに対して、ほぼ毎月のように祝日があるのに休めていない日本。以前に比べると休日は増えたはずですが、しっかり休むことにつながっているとはとても言えません…

本当の意味で「心身ともに休む」ためには、自分が持っている1日のエネルギーの流れを意識することが大切ではないでしょうか。

あるとき、私の義家族やその知人の高齢の方々と話していたら、「私たちが高齢ということもあるけれど、物事を行なうには、物事と物事の間に休みを挟んで一度エネルギーをチャージする必要があるの。『リセット』または『いったん白紙に戻す』とも言うかしら。休まずにさまざまなことをおこなうと、エネルギーがごちゃ混ぜになって、本来のピュアなエネルギーが失われる。すると、本来発揮されるべき自分の能力がすべて台無しになるわ。だから私たちフィンランド人はKahvi Tauko(コーヒータイム)が必要なのよ」と言われました。

これはまさに目から鱗の言葉です。自分のエネルギーのチャージやリセット、それを意識することなど、それまでほぼありませんでした。それ以降、自分のエネルギーをどのように意識またはコントロールするかを心がけるようになったものです。

「休み方」を変えれば人生の満足度も変わる

「1日のエネルギーを把握して、適度な休みを取る」ということによって、創造性を膨らませる時間を増やしたり、自分を内省し次のステップへ活かしたり、自分に充てる時間が増えてそれまでよりも生産性が高まったりする可能性があります。

日本の時間あたりの労働生産性は、世界で20位(OECD加盟36カ国中)。また、1人あたりの労働生産性は、世界で21位(同上)です。一方、フィンランドの時間あたりの労働生産性は、世界で14位と決して高い方ではありません。しかし、残業なしのビジネス文化や4週間の夏季休暇などがあることを考慮すれば、日本より少ない労働時間で、日本以上の労働生産性をあげているといえるでしょう。

さらにフィンランドは伝統文化とともに根づいた「休むこと」や「休み方」のおかげで、2019年の「世界幸福度ランキング」では2年連続の首位を獲得。この結果からフィンランド国内では幸福度、つまりフィンランド人の人生における満足度がわかってきます。

人生の満足度が高いのは、余暇が充分に取れる、またその余暇が取れる社会や社会システムがあるから、など社会的な理由はいくつも挙げられます。まずはひとりひとりがきちんと「休む」ということがいかに大切であるか。そしてその「休み」によって、仕事の生産性はもちろんのこと、自分の人生の満足度が変わる、変われるということを再認識することが重要ではないかと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。日本は10連休を目前に控え、今年の連休はどうしようか? と悩んでいる方も多いと思います。約1億人の国民が一気に10日間続けて休むとなると、それはそれでさまざまな問題が出てくるのではないでしょうか。

2019年、働き方改革関連法施行と同時に超長期休暇10連休、折しも日本とフィンランドは外交樹立100周年を迎えます。この機会に、フィンランド流の休み方を参考に、ひとりひとりの「休み方」、ひいては日本の「休み方」を考える機会にしてみてはいかがでしょうか。

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