- 若手のマネジメントをどうしていいかわからない
- マネジメント層が育っていない
といった悩み。
実際、多くの企業で見られるのは現場で一人前になる為の「プレイヤー教育」はしっかり仕組みがあるのにも関わらず、管理職としてどうあるべきか、マネジメントスキルについての教育がされていないというケース。結果として自身の経験則に基づいた「我流マネジメント」で部下を潰す管理職が台頭。
あなたの会社はどうでしょうか。今回は特に若手・新人のマネジメントにおいて留意すべきポイントを「余白」というキーワードでお伝えします。
若手面談あるある
「◯◯マネージャーの下ではもう働きたくありません!」
新卒1年目の社員面談より。話を聞くと、業務中の全ての行動を監視・確認されて鬱になりそうとのことでした。言った通りにやれ、誰と会った、何を話した、勝手に発言するな。その言動は徐々にエスカレート。休みの日にもfacebookのメッセンジャーやLINEでも仕事の確認が入り出し…
身に覚えはありませんか?いわゆる「管理型マネジメント」です。
旧来の日本企業における代表的なマネジメントスタイルと言えば管理型マネジメントですが、マニュアル通り・軍隊のように人を動かせばいいならともかく、市場変化が早く、個性が多様化し、常態的に人不足といった状況においては社員一人一人が少数精鋭でかつ自立自走型であることが求められます。そういった場合、管理型マネジメントを続けると様々な弊害に繋がりかねません。
教える、の限界
「だって、そんなの教わってないですよ!」
仕事にトラブルはつきもの。でも管理型上司の部下は突発的なトラブルに対応出来ず、このような言い訳をしがちです。教えてもらってないからと本人は言いますが、深層にある本当の理由は違います。
「怒られたくないから」
管理型上司は部下の全ての行動・言動を把握したがる傾向があります。
- 今何をしているのか
- 誰と何を話したのか
- 自分の言った通りやっているか
そして、少しでも報告漏れがあったり、自分が言ったことと違うことをしていたら叱責する。その繰り返しによって部下は萎縮し、空気を読み、自分の意見を言うのをやめてしまいます。単純作業ならまだしも、部下がお客様と直接相対する仕事においては上司が全てを把握するのが困難なケースや突発的なトラブルがどうしても出てきます。
その際、考えることをやめてしまった部下はどうしていいかわかりません。マニュアル人間はイレギュラーに弱いのです。また、仕事を教える際にはルールや手順よりも、「なぜ」そのルールなのか、「なんで」この順番で進めるのかといった「意味と目的」を大切にしたいですね。
意味と目的が分かっていれば、本質を掴んでいるのでイレギュラー時にも対応できる可能性が高まります。
“失敗する機会”を奪わない
皆さんは生まれた瞬間、言葉を話し、二足歩行出来たでしょうか。何をバカげたことを。そう思うかもしれません。
そう、私たちは誰しも最初何も出来ませんでした。
初めての体験をし、それを繰り返し、転んだり、火傷をしたり、痛い目に遭ってひとつひとつ出来ることを増やしてきた結果が今。人は自身で体験したことが一番身になるということです。これは何歳になっても変わりません。しかし、管理型上司は自分が過去に経験したミスを部下にさせないが為に、行動を起こす前に結果を伝えてしまう傾向があります。
そのやり方では失敗する、と。
仮に最初は親切な上司だなと部下が思っていたとしても、何度も同じような指摘をされるといずれこう思うかもしれません。
「本当に失敗するのかな」
結局のところ、やってみないと納得できないのです。もちろん大怪我させてはいけません。ただ、ちょっとつまずくくらいの小石もすべて避けてしまうような過保護だといつまでたっても部下は成長しません。ちょっとくらいの小石はあえて躓かせる、自分で考えて走らせてみて見守るくらいの気概でいるのが大切です。
もうひとつ気になること。ちなみにこの上司は「何のため」にそこまで過保護なのでしょうか。もしかして、部下がミスをして自分が怒られたくないという「保身」?もしそうだったとしたら。上司が自己保身に走っている。それを感じ取った部下はどう思うでしょうか。
“信頼”は信じることから始まる
マネジメントがうまくいっていない、離職率が高いチームの特徴としてよくあるのは、上司と部下が信頼関係を築けていないケース。ここで気をつけたいのは、「信用」と「信頼」の違いです。
一見、似たような意味に感じますよね。でもその意味合いはちょっと違うと僕は考えます。
信用とは、「何らかの担保」を基にして相手を信じること。クレジットカードを思い浮かべて頂けたらわかりやすいと思います。クレジットカードの利用可能枠のことを「与信枠」と言いますが、与信とは「信用を供与すること」を指します。つまり、相手を信用して金銭や物を貸与するということです。仕事に置き換えると、過去の実績や成果を担保として、「出来るだろう」ということで相手を信じるのが信用。
では、信頼とは何か。信頼とは、信じて頼りにすること。あくまで「主観ベース」なんですよね。そこに担保があるとかないとかに関わらず、無条件に相手を信じること。数年以上在籍している中堅層以上や中途採用で入社した人の場合、過去の仕事実績をベースに「信用」することができますが、新入社員や若手はまだ経験も実績もありません。
だから、信じることができない。もしそう考える人は「信用」をベースにマネジメントをしているのだと思います。だから、若手を信じることができず、管理型マネジメントをしてしまう。
しかし、ここで考えたいのは人間には「返報性の原理」という心理法則があるということ。
〜返報性の原理〜
人は他人から何らかの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという感情を抱く
引用:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
つまり、何かをしてもらった相手にはその分何かお返しをしなきゃと思う感情。これはプラスにもマイナスにも働きます。助けてくれた人のことを助けたいと思うのと同時に、悪口を言われたら言われ返すにもなり得るということですね。自分が部下のことを信用していなければ、部下もあなたのことを信用しない。前述した通り、若手・新入社員はまだ経験も実績も少ないです。
そんな中まず上司が心掛けたいことは、まず信じること。信頼して任せる、そして万が一何か起きた時は自身が責任を取る。そういう「覚悟」を持てるかどうかが大切。
上司が言葉だけではなく、そういう姿勢で向き合ってくれると部下も上司を信頼し、任せられていたとしても「自ら進んで」報告や相談に来るようになっていきます。報告とは本来、会社や上司や必要としている情報を部下が自らの意思で伝えることであって、強制されるものではありません。
「部下が報告してこない」
そう悩む管理職は多いですが、それは一概に部下の責任ではないかもしれませんよ。
マネジメントは連鎖する
マネージャー層との面談で感じるのは管理型マネジメントを行なっている人ほど、自身が新人・若手の時の上司も管理型だったケースが多いということ。かく言う僕も最初の会社で強烈な管理型上司の下に居たため、初めて部下がついた時に気づけば同じような管理型マネジメントを行なっていました。その結果、部下は受け身体質になり、全てを指示しないと動けなくなってしまいました。そして僕自身も部下をつけてもらったのに今まで以上に時間とパワーを割かれる羽目に…
もしそのマネージャーに部下が2人、3人と増えたとしたら。管理職が部下の管理にすべてのパワーを使い、本来管理職がすべき仕事に手が付かないといった事態にもなりかねません。
このようにマネジメントは、ちゃんと教えてもらえる機会が少ないこともあり、過去の上司からどんなマネジメントを受けたかによって、そのスタイルが連鎖してしまうことがあります。連鎖が連鎖を呼べば、いずれ会社全体に弊害が及ぶ可能性も。経営層の方々も自社の管理職のマネジメントスタイルを一度チェックしてみるといいかもしれません。
自分の正解がベストではないと自覚する
最後に。あなたは何でも出来るスーパーマンですか?
そんなわけない。誰もがそう思うでしょう。
でも、もしあなたが部下の一挙手一投足をすべて監視し、自分の思う通りに部下を動かそうと管理していたとしたら。あなたのチームは、あなた自身の能力・視野以上の成果を出すことは絶対にありません。
部下の仕事の道筋をすべてコントロールするということは、チームメンバーの可能性とチームが生み出せる成果の最大値を自ら閉ざしているということとイコールなのです。仮に経験や実績がなくても、異なる背景・世代で育った人ならではの視点から生まれる新しい気づきや価値だってあります。
ゴールを共有して、プロセスに「余白」を持たせ、ある程度自由に考え、行動させること。その「余白」からあなたでは浮かばなかった、よりベストな正解に繋がる可能性が生まれるのです。
いかがでしたでしょうか。旧来の管理型マネジメントスタイル、これが行き過ぎると
- 部下の精神状態が悪化
- 部下が自分で物事を考えられなくなる
- イレギュラーに弱い組織になる
- 部下が報告・連絡・相談をしなくなる
- 管理職がいつまでもプレイヤーから抜けられない
- 管理職自身のスキル、視野以上の成果が出ないチームになる
- 組織中に伝染し、会社全体の生産性が下がる
このように様々なリスクが生まれてしまいます。
本来、上司の役割とは、部下が円滑に仕事ができる環境をつくること、チームで成果をあげること、次世代の管理職を育成すること。多様化の時代においてはそのいずれに対しても、管理型マネジメントは悪い影響を及ぼしてしまいます。信頼を基盤に部下が主体的に報告・連絡・相談できる環境をつくり、自ら考え動き体験させることでメンバーが自立自走するチームとなって成果が上がり、新たな価値を創る次世代の管理職が生まれる。
そんな次世代のチームを創るマネジメントのキーワードは適度な「余白」。メンバーひとりひとりとゴールを共有し、プロセスは任せる。
そんな一つの「覚悟」がメンバーはもちろん、チームやマネージャー自身の未来にも繋がっていきます。
あえて余白を創るマネジメント。ぜひ実践してみてください。