戦略は立てても計画はしない仕事術

多くの企業や官公庁は、何か物事を進めていく際に第1フェーズ、第2フェーズなどのタイムスケジュールをつくるのが普通です。公立小学校でも年間の学習指導要領を消化するための授業計画をかなり細かく立てます。

しかし仕事にも教育にも「人」が介在しています。「人」は生き物ですが、生き物はどのように成長していくか、つぶれていくのか、なかなか予測できません。学習指導要領で定められたカリキュラムを教えなければならない公立学校は計画通りに授業を無理に進めますが計画通りに進めても、児童が必ずしもカリキュラムの内容を消化できているとは限りません。

そこで入口・出口を設定しそこに結ぶための基本的な戦略だけを考える仕事術をご紹介します。

スケジュールづくりや計画は無駄?


人が介在する仕事ではスケジュールを立てても、なかなかうまくいきません。人も仕事も生き物で、いついつまでにこれができている、そこからは次のフェーズだ、と成長するわけではありません。
つまり不確定なスケジュールに時間と労力をかけ過ぎるのもナンセンスです。

計画書どおりに仕事も教育も進むなら、大成功の計画書ばかり書けば良いのです。しかし、なかなかそれでは仕事も教育も成功しません。

だからこそ「計画」よりもどんな事態になっても対応できる流動的な「戦略」を立てるべきです。

戦略と計画の違い

戦略と計画の違いを、ここで整理しておきましょう。この二つは似ているようで違います。人が介在する不確定な仕事や教育では戦略の方が計画よりも重要です。

戦略とは

戦略とは入口と出口の二つを設定して、そこを結ぶためのいくつかの基本的な目標達成のストーリーを描くことです。仕事も教育も生き物ですから予測通りには動きません。だからこそ、どんな事態になっても対応できるように流動的な戦略を立てるべきです。

計画とは

計画とは物事を行うための手順やスケジュールです。例えば企業や官公庁では第1フェーズ・第2フェーズといった具合にタイムスケジュールを決めます。公立学校でも年間の指導計画のタイムスケジュールを決めます。しかし、あまりにもタイトで細かいスケジュールを立てても仕事も教育も生き物なので、なかなかその通りにはなりません。

戦略を立てるために必要な二つのこと

戦略を立てるにあたり計画やスケジュールは意味をなしません。少なくとも、あまりにもタイトで細かいものは計画倒れに終わりがちです。しかし戦略を立てるにあたり計画よりも必要な二つのことがあります。それは目標設定と効果測定です。

1:戦略に必要な目標設定

仕事でも教育でも目標を設定します。例えば地方自治体なら街おこしのために人口5000人の村を
10000人にする、公立小学校ならば「2位数の加法及びその逆の減法の計算の仕方を考え・・・」
といった学習指導要領に沿った目標を定めます。

目標設定を定める時は、設定目標を決して低くしないようにしましょう。

2:戦略に必要な効果測定

効果測定では施策Aではどれだけ効果があったのか。施策Bではどれだけ効果があったのかと丁寧に分析していきます。そして測定結果を蓄積していいくことで次第に効果の高い方法が浮き彫りになっていきます。

例えばSNS広告を売った場合と駅前にポスターを貼った場合とで、どちらが来店者数が伸びたのかといった具合に効果測定をしていきます。教育でも講義形式中心の授業と活動中心の授業では、どちらが理解度が深まったかをアンケートやテストによって効果測定します。

効果測定をするコツは明確な指数を設定することです。このケースならば来店者数ですし、教育の場合はアンケートの数値やテストの点数です。

戦略には目標設定と効果測定が必要

戦略で入口と出口の二つを設定して、そこを結ぶためのいくつかの基本的な目標達成のストーリーを描きます。しかし目標設定・効果測定の二つがなければ意味がありません。仕事も教育も生き物なので予測通りにも予定通りにも、なかなかいきません。細かい計画やスケジュールを立てない代わりに流動的で柔軟な思考をする必要があります。それを助けるのが目標設定と効果測定です。

戦略を立て計画を立てない事例

戦略を立て計画を立てない事例をご紹介します。実際は簡単な計画・スケジューリングは立てるのですが、計画とスケジューリングをこなすことが優先されてはいけません。あくまでも目安に過ぎず重要なのは、あくまでも目標設定と効果測定です。

大学で講義計画を捨てる

私は公立の小学校で学習指導要領に沿ったカリキュラムで授業をしていましたが、あらかじめ決めた指導計画のスケジュール通りに進めることに必死でした。児童の学習に対する理解度よりも学級
の授業の進度を優先させていたと思います。しかし形式的にうまくいっているように見えるだけで目の前にいる児童を置き去りにしていました。児童は人間です。つまり生き物であって、どのように成長しどこで、つぶれていくのか予測が難しいのです。

タイの国立大学でも同じ悩みにぶつかりました。あらかじめ決めた講義計画のスケジュール通りに進めることを優先させてしまい学生の理解が追いついていないのに中級・上級の講義をして学生が講義中、退屈そうにしているのです。しかも1回の講義が120分〜180分もあったため退屈な講義をすると学生は不機嫌になるのです。

このまま計画やスケジュールを消化することを優先させては私は大学をクビになるのではと考えました。タイの国立大学は一概には言えませんが学生からのアンケート評価で5段階中、平均3をきると契約が更新されないという噂があったからです。

そのため私は思い切って大学の講義では計画を立てるのをやめてしまいました。その代わり講義の目標設定と効果測定に力を入れました。学生は生き物です。こちらの思い通りに理解してくれません。そこで講義一つ一つの目標設定を立て学生の反応を見ながら時間配分を自由に使うようにしました。

目の前にいる学生を見て理解が出来なていないなと思った時は、ゆっくり説明したり退屈にしていると思えばアクティビティを積極的に入れてみたり学生の反応をみながら対応していくことにしました。ある程度、やることは決めておいて学生の反応を見ながらリアクションをとるようにしました。

すると学生を置いていかずに講義をすることができるようになりました。もちろん講義の準備は入念にします。しかし、あまりに細かい進度はあえて決めないことにしました。その方が結果的に講義のアンケート評価も上がるようになりました。

大学の講師の中には自分の指導計画ばかりを優先させ学生を置いていきぼりにした一方的な講義をしてしまう人も少なくありません。講義を進める進度があまりにも速すぎて8割以上の学生が脱落してしまい最近の学生は努力が足りないと怒っている講師の方もいました。しかし目の前の学生を見ずに置いていきぼりにしてしまう指導にも私は少し問題があるのではと思いました。

株式投資も計画をたてられない

私は実はアメリカの投資メディアの日本版や一部上場企業の金融メディアでも記事を書かせてもらっています。10年以上、アメリカ株や中国株投資をしてきた経験もあります。そこで学んだのは投資も計画が立てられれないということでした。当たり前ですが株が騰がるか下がるかは誰にも分かりません。予想もある程度はしますが無意味です。

そこで市場そのものを見て対応することにしました。市場を予測することはできません。1年目で100万円稼ぐ、2年目で200万円稼ぐというように計画を立てることは不可能です。そんな計画が立てられるなら1年目1億円稼ぐ、2年目3億円稼ぐと書いておけば大儲けです。しかしそんなことは不可能です。

そこで戦略としては、入口ではこうなった場合は買う、出口ではこうなった場合は売るといった具合に入口と出口だけはあらかじめ設定しました。

自分が決めた条件を満たしたら買い、満たしたら売る、それ以外の途中経過は市場の動向を観察し何かアクシデントがあれば対応するという方法をとりました。

投資の世界でも1年目は10%の利益、2年目は20%の利益・・・と綺麗に計画通りに運用することは不可能です。市場も生き物なので計画に意味はありません。丁寧に市場を見ながら反応しつつ立てた運用目標に届くまで粘り強く取引を続けなければなりません。

神子原米のブランディング戦略

石川県の能登の限界集落、羽咋市の神子原の米のブランディング戦略でも細かい計画やスケジュールは決められませんでした。神子原米はローマ法王が食べた米というキャッチフレーズで人気が出ました。PR戦略は権威性のある人に米を献上し食べてもらうことで知名度をあげるというものでしたが最初からローマ法王に献上する決めていた訳ではありませんでした。

最初は天皇陛下、次はアメリカ大統領と献上しようとしては失敗してローマ法王への献上でやっと成功したという話です。

戦略の大枠だけは決まっていましたが相手がいる仕事では、こちらの思い通りには進みません。
だからこそ柔軟に対応できるように細かい計画は立てなかったそうです。

この神子原米のブランディング戦略の目標は「権威性の高い人物に米を食べてもらい、米の知名度をあげる」でしたが、このケースでは権威のある機関からのリアクションを見ながら矢継ぎ早に新しい施策を実行しています。

計画を立てる場合はタイトなスケジュールを組みすぎない

入口と出口を決めて後は目標設定と効果測定をしながら仕事も教育も進めていくという話をしました。しかしチームで進めていく仕事では、ある程度の計画の進捗スケジュールの目安がないと厳しい面もあるのではないでしょうか。

その場合はゆとりを持った計画を設定しましょう。大切なのは計画やスケジュールを消化することが第一になってしまい仕事の本来の目的を見失ってしまうことです。

私は公立小学校に勤めていた頃は年間の指導計画やスケジュール通りに進めることを優先的に考えていたため目の前の児童を置き去りにした授業をしていました。しかし本当に大切なのは目の前
にいる児童がしっかりと学習内容を消化しているかどうかです。目の前にある現場をしっかりと見て仕事を進めるためには計画やスケジュール至上主義になってはいけません。

戦略を立てたら経験したこともない人の意見や反対は聞きすぎない

戦略を決めた後に批判してくる人も大勢います。例えば石川県の限界集落の神子原米のブランディング戦略も最初は多くの人が否定的で反対も多くあったそうです。私もタイの大学で指導計画をつくらない講義をはじめようとした時は周りから、あまり良い顔をされませんでした。

しかし、やったこともない人の意見や予想を聞きすぎると動けなくなってしまいます。やらなくても本を読んだり人から話を聞けば分かるという人もいるかもしれません。しかし、それなら世の中の経済学者は皆、優秀な経営者になれるかといえば、そんなことはないはずです。

戦略を立てる際は実際に同じようなことを体験した人の意見を聞くなら参考になりますが、実際にやったこともない人の反対意見は聞くに値しないことがほとんどです。一度、戦略を設定し確信があれば突き進んでみる実行力も必要です。少なくとも神子原米のブランディング戦略は反対意見をいちいち聞いていたら成功しなかったはずです。

まとめ

仕事も教育も生き物です。生き物は必ずしも計画通りには動きませんし成長もしません。入口と出口の二つを設定して、そこを結ぶためのいくつかの基本的な目標達成のストーリーを描く戦略を
立て後は柔軟に対応できるようにするべきです。そのためには、しっかりとした効果測定も丁寧
にしていきます。計画やタイムスケジュールを事前に組む場合も、ゆとりをもった形にするべきです。そして計画通りに実行することよりも掲げた目標を見失わないことを大切にしましょう。

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