先に結論を言えば、“マネジメントのコツを伝える必要性”はあります。
Peter Ferdinand Drucker(以下ドラッカー)氏の著書で「マネジメント」[1]とは、組織として成果を上げさせることと定義されています。
「マネジメントを実行する」ということは、組織が上げるべき成果に責任を持つことに他なりません。したがって、組織の成果に責任を持つ人は全員マネージャーと呼べるでしょう。つまり、プロジェクトを成功させるために、そこに関わるプロジェクトメンバー1人ひとりが経営管理者としてマネジメントを実行し、組織の成果に責任をもつ必要があるのです。
そこで、今回はリーダーがメンバー1人ひとりにマネジメントのコツを伝える方法についてまとめていきたいと思います。
なぜメンバーがマネジメントのコツを理解する必要があるか
メンバー1人ひとりにマネジメントを実行してもらうためには、マネジメントについて全員に正しく理解してもらう必要があります。
そのためには、メンバー自身が”マネジメントのコツ”をつかみ、それぞれで効率よくマネジメントを行っていく必要があります。
この際、リーダーは、まず自分自身が適切なステップを踏んでマネジメントのコツを伝える準備をしていくことが肝要といえます。
マネジメントに対する共通認識とチームとしての一体感を作ることは容易ではありません。経験や知識も違うメンバーが、同じプロジェクトの中で異なるマネジメント意識を持っていた場合には、チームが空中分解しかねないからです。
しっかりとチームで成果を出していくためにも、以下のプロセスでマネジメントのコツをつかみ、一つずつステップを踏みながらマネジメントについて理解していきましょう。
マネジメントのコツを伝えるために必要なステップを以下にまとめておきます。
- ステップ1:デキるリーダーの自己管理能力に学ぶ
- ステップ2:優先順位を明確にする
- ステップ3:最強のチームを作る
- ステップ4:社内コミュニケーションを活性化させる
- ステップ5:成果を測定しながらチームで目標を管理しフィードバックする
- ステップ6:PDCAを回してプロジェクトをアップデートする
それぞれのステップについて詳しくみていきましょう!
ステップ1:デキるリーダーの自己管理能力に学ぶ
デキるリーダーは自己管理能力が極めて高いといえます。なぜなら、チームメンバーにマネジメントのコツ伝えるためには、リーダー自身がマネジメントを実行できていることが必要不可欠だからです。
ドラッカー氏はまず「目標管理」について次のように述べています。
組織の目標に基づいて自分自身が貢献すべき領域を明らかにし、その領域でいかなる成果を上げるのか、自らの目標を設定し、その目標達成に責任を持つこと by.ピーター・ドラッカー
つまり、リーダー自身は組織の使命と目標を理解し、そこから自らのチームの目標を明らかにする必要があります。まずは、リーダーが自身の目標管理をしっかり行い、各メンバーに対してリーダーとして果たすべき責任を明確に伝えられるようにしましょう。
ステップ2:優先順位を明確にする
次に必要なことは、優先順位を明確にすることです。
プロジェクトにおいては、以下のような領域について明らかにすべきです。
❷ 優先的に廃棄する領域
❸ 推進も意図的廃棄もそれほど効果のない領域
これらは優先すべき仕事、全く優先しない仕事を明らかにする作業と言えます。
優先順位を明確にすることの重要性は、「時間管理術のおさらいをすれば、スーパービジネスマンになれるのか~アイビー・リーの25,000ドルのアイデア」から学ぶことができます。
ステップ3:最強のチームを作る
目標達成のための優先領域が明らかになったら、チームを有機的なチーム(最強のチーム)に組織化していきましょう。
ここでは「強制選択」という手法がおすすめです。これは人材に強制的に順序を付けると同時に、優先領域の機会にも順序を付けていく作業であり、私情をはさむ余地がないところがこの手法の特徴です。
チームを組織していく上で、最も避けたいことは優秀な人材を些末な仕事に振り向けることです。これでは部下やチームの高い成果は望めません。
またこの手法を適切に実施するためにも、チームメンバー同士の関係性の理解しておきましょう。
私情を挟まないと言えど、役割を与える際に適切な伝え方をすることはその後のチームの雰囲気を前向きにしていく上で大きな鍵となり得るからです。
ステップ4:社内コミュニケーションを活性化させる
続いて人材の動機付けと円滑な社内コミュニケーションを推進していきましょう。このステップで重要視したいのが、ステップ1でふれた目標管理です。
まずリーダーがチームの明確な目標を掲げましょう。その目標に従い、個々のメンバーが自身の目標を設定してもらいます。この際に自身の目標をチームメンバー同士で共有し、食い違いがあれば互いに修正をしていくことがオススメです。目標をベースにメンバーの動機付けを実行することで、目標をベースに社内およびチーム内の円滑なコミュニケーションを実現できるでしょう。
ステップ5:成果を測定しながらチームで目標を管理しフィードバックする
いよいよチームとしてプロジェクトがスタートしていきます。
設定した目標と実績を比較して、達成した成果の度合いを測定していきましょう。
測定と評価の際には、次の3点が重要といわれています。
❷ 成果に焦点を合わせること
❸ 測定不能な対象に対しても適用できるようにすること
ここで測定評価した結果は、新たに設定する目標にフィードバック。目標がなければ評価も測定もフィードバックもできませんから、成果の測定は非常に重要です。
ステップ6:PDCAを回してプロジェクトをアップデートする
リーダーはこれらの活動と並行して体系的廃棄を実行しましょう。プロジェクトを円滑に進めていくために、機能しなくなった仕組みやルールを廃棄しアップデートしていく必要があるのです。
❷ 成功しているものについては応用法を考案する
❸ 古くさくなったものを捨て、新しく違ったものを考案する
これらの手順を踏むことでプロジェクトに不要になったものを廃棄しましょう。特に❸では、現在行っていることを実行していないと仮定し、今からでも実行するかを検討します。
生産的でなくなったものを、いつまでも所有していると、生産性向上の足かせになることは言うまでもありません。そうならないためにも、古くなったものを自ら進んで廃棄し、それに代わる新たなことを考えることはマネジャーに課せられた重要課題の一つです。
効率的なPDCAサイクルの回し方に関しては以下の記事をチェックしてみてください!プロジェクト管理にも必ず役立つはずです。
まとめ
- ステップ1:デキるリーダーの自己管理能力に学ぶ
- ステップ2:優先順位を明確にする
- ステップ3:最強のチームを作る
- ステップ4:社内コミュニケーションを活性化させる
- ステップ5:成果を測定しながらチームで目標を管理しフィードバックする
- ステップ6:PDCAを回してプロジェクトをアップデートする
大事なことは、メンバー全員でマネジメント を実行すること
いかがだったでしょうか。「マネジメントをして仕事に取り組め!」といきなりメンバーを鼓舞する前に、できることがいくつもあったのではないでしょうか。少し丁寧にステップを踏むだけで、チームメンバーと確実に成果にたどり着くことができます。
このステップを踏むことでプロジェクトに関わるプロジェクトメンバー1人ひとりが、経営管理者としてマネジメントを実行し、組織の成果に責任を果たせるようになるでしょう。
参考図書
[1] P・F・ドラッカー著、野田一夫、村上恒夫監訳 『マネジメント(上)』 (1974年、ダイヤモンド社) P6