上司は部下の要望をどこまで受け入れるべき?贔屓にならないマネジメント術とは

部下を持つ管理職や中間管理職にとって、後進育成は大きな課題です。思うように部下が育たず、仕事が停滞して頭を抱えている人も多いのではないでしょうか。当たり前ですが、仕事ができる部下も、できない部下も、同じようにひとりの人間です。適性はもちろん、不満や要望も人それぞれ。仕事の内容や組織体制に関することから、空調の温度や座席など労働環境に関することまでさまざまな要望があるはずですし、実際に口にすることもあるでしょう。

このような時、つい仕事のできる部下ばかり優遇していませんか?また逆に、「だめな子ほどかわいい」と、仕事のできない部下を甘やかしていないでしょうか。このような贔屓は、プロジェクトやチーム内でさらに大きな不満の声を呼ぶ結果となります。

とはいえ、部下全員の不満や要望をなんでも聞き入れるわけにはいきません。しかし、拒否し続けると不満をため込みストレスを抱えてしまうため、取捨選択のバランスを取る必要があります。
今回は、部下の要望へ適切に応えるためのマネジメントについてお話しします。

部下の要望の対応に失敗した3つの事例


部下を持っている人であれば、誰でも一度や二度、部下の要望への対応に失敗したことがあるでしょう。ここでは、実際にあった部下への対応の失敗事例を紹介します。

【ケース1】
ある計画で、チーム全員から意見を募り合意の上で進めていましたが、後々になって反対意見を持つメンバーからの不満が噴出しました。

不満が出た背景として、一方の意見だけが集まりやすくなっていたこと、また集まった意見に偏りが見られたことが挙げられます。

さらに、上司に気に入られることを意識した言動をとる人も多く、部下が本当に成し遂げたいと思うことを口にできなかったという点も失敗理由のひとつです。

【ケース2】
仕事内容や進め方について部下に意見を求めた際、複数の意見が衝突。結果的に一方の要望だけを受けいれることになったため、反対意見側の部下からは協力を得られなくなってしまいました。

また、マネジメントの失敗により、職場のメンバー間での議論や衝突を避ける傾向になりました。このことにより、仕事に対する部下の責任感が希薄化し、決定後には主体性を持って動けるメンバーがいなくなってしまったようです。

【ケース3】
マネジメントの失敗により、特定の部下からばかりが要望を出す状態に陥ってました。

また、ある部下から要望を聞いた際、上司は一旦は拒否。しかし、仕事を進めていくうちに部下の要望が適切であることを理解するようになりました。

そのことを部下に伝えた際、「伝え方を工夫してくれれば要望を受け入れたのに」と発言してしまったことで、二度と部下から要望を伝えられることがなくなってしまいました。

部下の要望を上手く受け止めるために必要なこと


部下からの要望を受け入れるかどうかの線引きは、要望の内容によって違ってきます。要望すべてを受け入れられないのは当然ですが、ここで重要なのは「受け入れる・入れない」ではなく、「(YESでもNOでも)部下を納得させられるかどうか」ということではないでしょうか。

前章で紹介した3つのケースはいずれも、受け入れられなかった部下の立場からすると「贔屓」と取られかねません。

贔屓と思われないようにするためには、チーム全員を納得させるよう努め、職場がどのようにチーム構築されているのか状況判断し、課題を見つけ出す必要があります。

どうすれば課題を見つけられるのでしょうか。前章の3つの事例から考えてみましょう。

【ケース1】
ケース1は、政治的駆け引きによって合意形成が行われたために発生した失敗事例です。

駆け引きという手段を取れば、一旦その場では上司自身と駆け引きを行った部下の進みたい方向に収まるでしょう。

しかし、職場全体に決定事項への納得感が漂わなければ、合意形成ができたとは言えません。できたと思っているのは上司と、駆け引きを利用した部下だけです。政治的駆け引きを極力なくすことが課題といえます。

【ケース2】
このケースは、反対側の部下に対してきちんとしたフィードバックを行っていなかったことが問題と言えます。

他の部下の意見も聞きながら検討しなければ、職場全体から納得感を得られず、贔屓と受け止められる可能性もあるでしょう。

最終的に方針をひとつに決定した場合、それが全員の意見を聞き、考慮した上での結果であることをきちんと伝達することが課題です。

【ケース3】
このケースではせっかく受けいれた意見も「もっと伝え方を工夫してほしかった」と部下に責任転嫁したような言い方に問題があったのではと考えられます。

「伝え方を工夫してほしい」と率直な気持ちを伝えるのではなく、どのように工夫すべきかを具体的に説明する必要があります。また、伝え方について一緒に考える機会を持つことも有効策です。

贔屓していると思われないマネジメント術

職場の部下全員が贔屓のない職場だと感じるためには、いまの職場を安全な環境にする必要があります。

安全な環境とは、他人と異なる意見を言ったとしても非難されることなく、立場を気にすることなく、考えていることを誰もが素直に発言できる職場です。

このような職場を作るためには、一度上司自身が自らの態度を振り返ってみる必要があります。上司といえども人間ですので判断を誤ることはあります。一度受け入れた要望が間違いであったことに気づいたときには反省し、部下に意見を募るなど素直で誠実な姿勢を示しましょう。そのような上司の姿勢を見れば、部下にも気づきがあるはずです。

また、上司だからといって常にベストな判断ができるとは限りません。システマティックな判断基準を提示し、運用するのも一手です。

しかしこの基準だけが全てではありません。本当に重要なのは決定プロセスを明確化しておくことです。職場での納得感は、健全な意見交換や議論を行った上で、決定プロセスが誰の目から見ても明らかであり、理解されていることによって醸成されます。

このような環境になれば、政治的駆け引きも有効に働かなくなります。ただし、部下によっては政治的駆け引きによる合意形成手段を取りたがることもあるでしょう。

そのような部下からすると納得感のある職場は働きにくい、または評価されにくい環境と感じるのかもしれません。上司は部下にもさまざまなタイプがいることを念頭に置いておきましょう。

自己認識力を高めてマネジメントスキルを培う

部下に受け入れられる自分になるためには、まず自分自身を正しく知る必要があります。これは「自己認識(self-awareness)」と呼ばれる能力です。

組織心理学者のTasha Eurich(以下ユーリック)氏は、“自分について明確に認識している人は、より自信があり、より創造的である。より適切な判断を下し、より強い人間関係を築き、コミュニケーション能力も高い。”(ハーバード・ビジネス・レビューHPhttp://www.dhbr.net/articles/-/5215)と述べています。

自己認識には2種類あります。ひとつは、自分自身の思考や反応をどれだけ把握しているのかを認識する「内面的自己認識」、そして他者からどう見られているのかをどの程度理解しているかという「外面的自己認識」のふたつです。

このふたつの差をどれだけ違うのか認識している人は、自己認識力が高いといえるでしょう。それぞれの認識力を高めるためには、信頼できる人から率直な意見を求める必要がある、とユーリック氏は提唱しています。

また、問題が起こったときにも「なぜこうなってしまったのか?」ではなく「何をすべきか」と未来に向けて解決策を考えることも、自己認識力を高めるきっかけになるようです。

自分自身のことをより明確に把握すると、職場でもたくさんの恩恵を受けられるでしょう。

まとめ

職場では部下の要望としてさまざまな問題点が現れるでしょう。そのときには部下に対してマネジメントを行なうのではなく、自身に対するマネジメントを行なえるかどうかがカギとなります。

ここで紹介した「自己認識」を高めることによって、マネジメント力の向上を期待できるでしょう。

贔屓をなくし、納得感のある職場にするためには、まず自己マネジメントを始めてみてはいかがでしょうか。

引用サイト
ハーバード・ビジネス・レビューHP http://www.dhbr.net/articles/-/5215

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