工数とは?意味・計算方法などの基礎知識から効果的に行うポイントまで解説

プロジェクトの円滑化や業務の効率化、生産性の向上を実現するうえで、欠かせないのが工数管理です。

日頃の業務で工数管理を行っている場合も、工数管理の「工数」とは何なのか、正しく説明できる方は少ないのではないでしょうか。適切な工数管理を行うためには、工数の意味を正しく理解しておく必要があります。

本稿では、工数の意味や計算方法をはじめ、工数管理を行うメリットや効果的に行うポイント、業種別の注意点について解説します。

工数とは

工数とは、もともと製造業やシステム開発を中心に使われていた言葉です。しかし、近年は産業分野にかかわらず、さまざまな業界で使われています。

また、以前までは工数の対象は人間のみでしたが、機械やロボットにも使用されるようになり、工数という言葉を耳にする機会はますます増えています。

工数管理を行う前に、まずは工数とは何か、定義や必要性、単位、計算方法など、工数の基礎知識を確認しておきましょう。

工数の定義

工数とは、特定の作業に要する時間を表す言葉です。

作業に要する時間とは、特定の作業の開始から終了までに費やした時間を累計した値です。

日本産業規格では、工数は「仕事量の全体を表す尺度で、仕事を一人の作業者で遂行するのに要する時間」と定義されています。

1人で作業を行う場合は、作業時間の累計が工数となりますが、複数人で作業をした場合は、一人ひとりの作業時間を合計した値が工数となります。

▼参考 
日本産業規格 JISZ 8141-1227

工数管理はなぜ必要?

工数管理を行うと、事前計画と実際の進捗具合を比較できます。計画通りに進んでいるのか、あるいは計画よりも遅れているのかなど、工数管理によって事前計画と実際の作業のズレを可視化できます。

また、メンバーそれぞれの進捗状況も把握できます。特定の人に負担がかかっていないか、作業に遅れが生じていないかなど、進捗状況の細かな部分まで確認できます。

進捗の遅れや遅れている要因を把握できると、その都度スケジュールや人材配置の見直しが可能です。プロジェクトの成功に影響を与えるような、大きな遅延が発生することも未然に防げるでしょう。

計画通りの業務を完遂できれば、余分なコストは発生しません。工数管理はクライアントの信頼を獲得するだけでなく、企業の利益を確保するためにも重要な役割を担っているのです。

工数管理の単位とは?

工数を表す際に使用する単位は以下の3つです。

・人時(にんじ)
・人日(にんにち)
・人月(にんげつ)

それぞれの単位について、詳しくみていきましょう。

人時(にんじ)

人時とは、1人が1時間でこなせる作業量を表す単位です。

英語では「Man hour(マンアワー)」と表現し、省略した「MH」は人時を表現する単位として使用されています。

人日(にんにち)

人日とは、1人が1日でこなせる作業量を表す単位です。別名「人工(にんく)」とも呼ばれています。

英語では「Man day(マンデイ)」と表現し、省略した「MD」は人日を表現する単位として使用されています。

人月(にんげつ)

人月とは、1人が1ヶ月でこなせる作業量を表す単位です。

英語では「Man month(マンマンス)」と表現し、省略した「MM」は人月を表現する単位として使用されています。

工数の計算方法

工数はどのように求めれば良いのでしょうか。
ここでは、単位別に工数の計算方法を解説します。

人時の計算方法

人時を求める計算式は、「人数」×「作業時間」です。

1人で4時間かかる作業の場合、計算式は「1人×4時間」となり、必要な工数は「4人時」です。

この計算式を利用し、工数から作業に必要な人数や日数を逆算することも可能です。たとえば、工数が「4人時」の作業は、2人で取り組めば2時間で終わることが予測できます。

人日の計算方法

人日を求める計算式は「人数」×「作業日数」です。

3人で10日かかる作業の場合、計算式は「3人×10日」となり、必要な工数は「30人日」です。

この作業に人員2人しか配置できない場合は「30人日÷2日」、つまり作業完了までには15日間を見積もっておく必要があります。

人月の計算方法

人月を求める計算式は「人数」×「作業月」です。

5人で6ヶ月かかる作業の場合、計算式は「5人×6ヶ月」となり、必要な工数は「30人月」です。

この作業の完了時期を3ヶ月と早めたい場合は「30人月÷3ヶ月」、つまり作業人数を10人確保する必要があります。

工数管理を行うメリット

工数管理のメリットは、作業時間の管理ができるだけではありません。作業時間の管理以外にもさまざまなメリットが得られます。

ここでは、工数管理で得られる、具体的なメリットについて解説します。

予算や見積もりの根拠として提示できる

予算や見積もりの内容によっては、「なぜ、この金額なのか」「なぜ、こんなに日数がかかるのか」など、クライアントに不信感を抱かれる可能性があります。

適切な工数をもとに作成した予算や見積もりであることを証明できれば、クライアントにも納得してもらえるでしょう。

プロジェクトや作業の進捗を把握できる

工数管理の実施により、プロジェクトや作業の進捗状況が一目でわかるようになります。

工数ごとの細かな進捗状況が把握できると、特定メンバーの業務の偏りやスケジュールの遅れを未然に防げます。予想外のトラブルが発生した場合も、早期の対応が可能となるでしょう。

利益の確保につながる

過剰な人員配置は、人件費の増加につながります。反対に、人員不足により納期が遅延した場合にも、人件費が増加します。想定外のコストの増加は、プロジェクトの利益を圧迫しかねません。

プロジェクト全体の工数を把握した適切なリソース配分は、利益の最大化につながります。

工数管理を効果的に行う6つのポイント

工数管理を効果的に行うためには、押さえておきたいポイントがいくつかあります。

ここでは、工数管理を効果的に行う6つのポイントを紹介します。

見積もり段階のクライアントへのヒアリングと握り

工数管理は、見積もり段階から正確に行うことが重要です。

そのためには、クライアントに丁寧なヒアリングを行い、必要な人数や作業時間を正しく見積りましょう。クライアントと最終的なゴールの認識合わせしておくことで、より効果的な工数管理が行えます。

メンバーの能力やスキルを考慮する

先述した工数の計算方法には、メンバーの能力やスキルは考慮されていません。作業スピードには個人差があるため、工数に対して人員が適切であるにもかかわらず、作業に遅れが発生するケースもあります。

数字だけを見るのではなく、メンバーの能力やスキルの差を考慮することで、より現実的かつ正確な工数を算出できます。

過去のプロジェクトの工数を参考にする

工数管理の精度を高めるためには、過去の類似したプロジェクトの工数と比較してみましょう。

万が一、工数に大きな差がある場合は、現実的な工数が算出できていない可能性があるため、見直しや修正を行う必要があります。

スケジュールにバッファを設ける

バッファとは、スケジュールや予算、人員などに設ける「余裕」を指します。

プロジェクトは、すべて計画通りに進むことは珍しく、多少のトラブルはつきものです。想定外のトラブル発生に備え、スケジュールにはバッファを設けると良いでしょうただし、スケジュールのバッファが過剰すぎる場合、人件費がかさみ、コストの無駄につながるため注意が必要です。

プロジェクト発足後も適宜見直しをする

準備段階で算出した工数が、必ずしも最適か正しいとは限りません。プロジェクト発足後に、計画に変更や修正が発生することもあるでしょう。

工数と実態にズレが生じないよう、プロジェクトの進捗状況にあわせて、工数の適宜見直しを行いましょう。

ITツールを活用する

アナログな方法での工数管理には、多くの時間と手間がかかります。正確な工数管理を行うことは大切ですが、工数管理そのものに時間がかかってしまっては本末転倒です。工数管理の効率化を目指すためには、便利なツールを有効活用しましょう。

【業種別】工数管理の注意点

誤った工数管理は、納期の遅延やリソース不足を招くだけでなく、会社全体の利益にも影響を与えかねません。

工数管理の注意点は業務によって異なります。工数管理の注意点を業種別に確認しておきましょう。

製造業・制作会社など受注仕事の多い業種

受注仕事とは、クライアントからの発注に従って製品を提供する生産形態です。

受注仕事は、限られたリソースでいかに受注を効率的に進めるかが重要となるため、より正確な工数管理が成功の鍵を握ります。

工数と作業の実態にズレが生じないよう、工数管理には担当者のスキルや能力を反映させましょう。

コンサルティング会社・士業などの専門職

専門職は1人で複数の案件をかかえることが多い業種です。業務の効率化を促すためにも、どの案件を誰が担当するのか、適材適所の人材配置をしたうえでの工数管理が必要です。

見積もりよりも少ない工数でプロジェクトが完了した場合は、担当者の能力が高いと判断できます。次回の工数を見積もる際には、チーム構成を見直すと良いでしょう。

ソフトウェア開発などの小規模プロジェクト

小規模プロジェクトでは、リソースの確保と作業の割り振りに重点をおいた工数管理が必要です。

メンバーが少人数の場合、欠員が1人出るだけで、納期が遅延することは往々にしてあります。小規模なプロジェクトでは、想定外のトラブルにも対応できるよう適度なバッファを設け、柔軟な工数管理を行いましょう。

適切な工数管理にはツールの活用がおすすめ

ここでは、適切な工数管理が行える代表的なツールとして、Excelと工数管理ツールを紹介します。

Excel

Excelは多くの企業で導入されているツールのため、工数管理を行うツールとして使用する際にも導入コストがかかりません。日頃から使用しているため、新たに操作方法を覚える必要もないでしょう。

一方、Excelでの工数管理を行う場合、シートの作成や工数の手入力など、多くの手間が発生します。プロジェクトの規模が大きれば大きいほど、その手間は膨大となるでしょう。

また、Excelは複数人が同時に編集を行うことはできません。誰かが編集している間、他のメンバーは書き込みができないため、最新のデータの共有にタイムラグが生じます。

Excelは、手軽に導入できる工数管理ツールではあるものの、管理が煩雑になるデメリットがあることを理解しておきましょう。

工数管理ツール

工数管理ツールとは、プロジェクト全体の工数を、簡単かつ効率的に管理できる便利なツールです。

あらかじめ工数の管理に最適化されたフォーマットが用意されているため、導入してすぐに工数管理が行えます。ドラッグ&ドロップで簡単に入力できるツールも多く、工数管理にかかる手間も大幅に削減できるでしょう。

工数管理ツールにはさまざまな種類がありますが、そのほとんどがインターネット環境さえあれば使用できるクラウド型です。どこにいても工数入力ができるため、最新データの共有も可能となります。

工数管理ツールの導入には初期費用やランニングコストがかかりますが、簡単かつスムーズな工数管理を行いたい方にはおすすめです。

▼関連記事
工数管理ツール20選。種類やメリット・比較のポイントを紹介

まとめ

工数とは、特定の作業やプロジェクトに要する時間を表す言葉です。プロジェクトを成功させるためには、工数の意味を正しく理解し、適切な管理を行いましょう。

工数管理を適切に行うためには、単なる数字として扱うのではなく、メンバーごとのスキルや能力を考慮することが大切です。過去の類似したプロジェクトを参考にし、プロジェクトの発足後にも見直しを行うことで、さらなるコスト削減や生産性の向上も期待できます。

便利なツールを活用しながら、精度の高い工数管理を目指しましょう。

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