苦手な人が多い工数管理。「なんとなく」や「ざっくり」進めている人は少なくないはずです。しかし、業務の効率化や生産性向上を具体的に試算するには、工数管理を行い損益を数値によって見える化することが必要です。
事業を維持・拡大するために、目を背けることができない工数管理について、必要性やメリット、工数管理の方法についてまとめてみました。
工数管理とは?
工数は「作業に要する時間」のことを指して使う言葉です。元々は製造やシステム開発の現場で使われていた用語でしたが、昨今、タスクを達成するためにどのくらいの時間を要したかの指標として、幅広い分野で使われるようになりました。
工数を表すには、以下のような単位を使用します。
- 人月(にんげつ)
- 人日(にんにち)
- 人時間(にんじかん)
例えば、工数「1人日」とは「1人で作業をすると1日で完了する」ことを意味します。
一般的に、どんなタスクもタスクを終わらせるために要した時間に人数をかけて算出される数字が収支のカギを握っています。詳しくみていきましょう。
工数管理の必要性は
工数管理は経営効率をアップさせるために必要なマネジメントです。
経営効率をアップさせるためには改善すべき箇所を見つけ、実際に改善策を練る必要がありますが、そのためには全体の収支だけでなく、プロジェクトごとに細分化した収支を明らかにせねばなりません。
経営効率をプロジェクトごとに可視化できる方法が工数管理なのです。
工数として算出された数字をみてはじめて、生産性や作業効率を見直すことができるのです。
工数管理のメリット
工数管理にはメリットがたくさんあります。ここでは5つのポイントに分けて解説しましょう。
スケジュールの管理が正確になる
担当しているタスクのボリュームや効率、進捗を管理するには工数管理が必要です。
工数まできっちり把握して組み立てたスケジュールは正確であることがほとんどです。工数管理は、タスクを計画通りに進めるために欠かせないマネジメントといえるでしょう。
想定外のトラブルにみまわれたり、急な業務が発生したりしても、全体の工数の可視化ができていれば容易にスケジュールの調整ができ、早期の対応がしやすいこともメリットです。
コストが把握できる
工数管理をすることで、プロジェクトに必要なコストである人件費を正確に把握できます。何人がどれくらいの期間をかければ完了するかを計画段階で計算できれば、利益が確保できるでしょう。
人件費はプロジェクトのリソースの中でも大変高価で貴重なものです。会社全体はもちろん、プロジェクト、部署、チームなど、セグメントごとに利益を算出するためにも工数管理が必要です。
また、正確なコストを把握することで、プロジェクトごとの計画や見積もりの精度を高められることもメリットといえるでしょう。
生産性の向上
工数管理を積み重ねていくと、プロジェクトごとの詳細なデータが蓄積されます。蓄積されたデータは、生産性の高い作業工程や人員配置に軌道修正をする時の検討材料となります。
また、個人ごとのデータも同様で、過去の工数データを蓄積することで自身の作業ペースの振り返りや課題の洗い出しができます。適宜振り返りを行うことで効率化を意識した作業ができ、生産性の向上につながるでしょう。
そのほかにも、今後他のプロジェクトを行う際には、生産性の高い作業計画書や見積もりを作成する時にとても役に立ちます。
従業員のモチベーション向上
工数管理による作業効率の見える化は、従業員のモチベーションアップというメリットも持ちます。実際に工数を目の前にすると、収支や生産性に対する従業員の意識が高まり、生産性のさらなる向上を目指すモチベーションにつながります。
また、プロジェクトごとやメンバーごとの利益を可視化できれば、適切な賞与の配当が行えるため、従業員のやる気を促します。
プロジェクトの改善に役立つ
生産性を向上させるためには、具体的な改善策を挙げねばなりません。よりよい作業フローや体制を作るための具体策を練るには、工数が非常に有益な判断材料になります。
セグメントごとに細かいスパンでの工数管理を行えば、事前の計画と実際の工数のズレや、業務のバラツキを早々に見つけられるので、スケジュールの軌道修正や体制の改善を早期に行うことができます。
工数管理のやり方
では実際に工数管理を行うにあたり、必要なプロセスを細かく分解してみましょう。注意すべきポイントも合わせて解説します。
責任者を決める
思いのほか重要なのが責任者のアサインです。正確な工数管理には「管理をする人」が必要です。
正確な工数を把握するためには正確な工数入力が求められます。責任者がマネジメントを行い、ルールに沿った工数入力を促しましょう。
工程表の作成
進捗状況や収支の管理をするために、工数管理の元になる工程表を作成します。
工程を考える際は数字だけに着目してしまいがちですが、それでは機械的な工程表になってしまいます。メンバーのスキルや得意分野、作業スピードを考慮した工程表を作成した方が、見込みと実績が近しいものが出来上がります。
また、見落としがちなのがコミュニケーションコストです。進捗の共有などで要するコミュニケーションコストまで想定し、工程表の作成を行いましょう。
入力しやすい環境を作る
何よりも重要なのが工数管理を継続することです。そのためには、工数を入力しやすい環境や仕組みを作ることです。
誰もが気軽に操作できるシステムの導入や、無理のない習慣作りをすると、継続した工数管理ができます。
さらに、プロジェクトマネージャーやディレクターなどの責任者が、工数に対して積極的にフィードバックを行うことも大切です。定期的にフィードバックを行うと、工数管理を習慣の一環に取り込みやすいことに加え、メンバーの達成感やモチベーションアップも期待できるでしょう。
工数管理
精度の高い工数入力ができるよう、管理を行います。
曖昧な数字で管理をしてしまうと、プロジェクトや会社全体の収支を正確に把握することができません。
正確な入力はもちろん、細やかなチェックを行いましょう。
数字の分析
入力した工数が計画に沿っているか、比較や分析を行います。
この時、進捗に対しどれくらいのコストがかかっているかという具体的な実績ばかりを意識してしまいがちですが、重要なのは、計画段階で作った工程表と実績との比較です。
分析すべきは「計画に沿った進捗やコストで進んでいるか」という点です。比較対象を誤らないようにしましょう。
改善プランの策定
プロジェクトやチーム、個人ごとなど、さまざまな視点から工数管理をし分析を行うことで、赤字の要因や利益につながるポイントが明確になり、改善プラン策定の役に立ちます。
改善を繰り返すことが収支の安定や向上につながります。
また、セグメントごとに工数を把握し収益を割り出すことができると、作業やプロジェクトの継続の可否を判断することもできます。
工数管理・数字の分析・改善プラン策定の3つのサイクルは、継続して行うことで効果が実感できるということも覚えておきましょう。事業の維持や拡大には、常に現状を把握・分析し、改善し続けることが大切なのです。
チームに共有する
見える化した工数のデータはチーム全員に共有します。これは会社やチームが成長するために大切なポイントです。
チームに共有することで、課題や改善点を考えられる自立した人材の育成が期待できます。
会社やチームの一員であるという意識を持つためにも、工数管理によって得られたデータは共有できるようにしましょう。
工数管理を行うためのツールの紹介
工数管理によって得られたデータは、プロジェクト進行中はもちろん、今後のプロジェクトにも有効なデータであることがわかりました。そこで、工数の入力や蓄積などの管理に役立つツールについて解説します。
エクセルで行う場合
導入コストをかけずにツールを導入するのであれば、エクセルを使った工数管理がおすすめです。
エクセルは使い慣れた人が多く操作にも馴染みがあるため、手軽に記入や分析を行うことができます。
項目やフォーマットのカスタマイズも容易にでき、作成の手間を省けるようなテンプレートも手軽にダウンロードができます。
しかし、エクセルは表計算ソフトであり工数管理のためのツールではないので、機能的な限界があることは否めません。それでも、数式を組み込むことで複雑な管理ができますが、数式を扱える人に依存した管理になってしまいます。
何よりエクセルで行う工数管理のデメリットとなるのが、進捗状況をリアルタイムに把握できないことです。エクセルファイルを複数名で共有し、入力や閲覧はできないので、扱いには注意が必要です。
これらを総じて、工数管理のためのコストが嵩むという懸念もあります。
タスク管理ツールで行う場合
プロジェクトの進捗や収支の状況をリアルタイムで見える化できるのが、タスク管理ツールです。
同じ画面を複数のメンバーで操作できるので、他の作業の影響を受けずに自分のタスクに向き合うことができます。
さらに、データの集計や分析が自動化されることもタスク管理ツールの強みです。すぐに工数が見える化されるので、作業改善までのスピードが上がることはもちろん、工数管理にかかるコストの削減が期待できます。
ただし、ツールによっては導入コストや学習コストがかかることが考えられます。工数管理を行うツールを選ぶ際には、ITリテラシーを問わず、直感的に操作ができるツールを選ぶことをおすすめします。
TeamHackersでは、タイムトラッキング機能による工数管理ができるTeamHackのほか、さまざまな特徴を持つ工数管理ができる34のタスク管理ツールを紹介しています。
タスク管理ツールの導入を検討する時の参考になるはずです。
まとめ
工数管理を行うにあたり、最も重要なことは継続であるとお伝えしました。工数管理は長い期間行えば行うほど、問題点が明確になったり改善の成果が目に見えてわかったりします。
収支を上げ続ける組織やプロジェクトを作るためにも、工数管理を継続して行うことをおすすめします。