プロジェクトメンバーのモチベーションを上げるチームビルディングの極意

スティーブ・ジョブズはかつて、ピクサーについて次のように語っていたといいます。

「我々は、十年をかけ、クリエイティブな人材とテクニカルな人材を育ててきた。外部から気軽に調達できるもんじゃないんだ。即戦力になるような人材なんて存在しない。だから育てるんだ」

長い時間をかけて育ててきた人材は、会社にとってかけがえのないものです。
しかし、ときとしてプロジェクトチームで次のような現象が起こります。

「チームのモチベーションが理由もなく下がっていく」
「優秀なメンバーを特定のマネージャーにアサインすると、なぜか退職してしまう」

日ごろから疑問を抱いていた私は、これまで経験した複数のプロジェクトのステークホルダー分析資料を見比べていました。すると、ある視点からチームメンバーをグルーピングしたときに、グループの相互関係が見えてきました。

私がこれまで経験してきたチームが偶然にもすべてそうだったのかもしれませんが、私が見つけたグルーピングとそれぞれの相性をご紹介します。

1.モチベーションの低下はチームに這い寄る

チームのモチベーション低下は、何かをきっかけに突然発生することは少ないように思います。多くの場合は少しずつ下がっていき、メンバーのモチベーション低下が誰が見ても明らかなほど大きくなってからようやく気づくものではないでしょうか。

あるシステム開発のプロジェクトチームを例に紹介します。

彼らはITエンジニアのもつ高度な技術で、顧客に価値を提供することを目標に掲げていました。

新しいサービスを生み出すために自社で設計作業やプログラミングをする一方で、会社運営に必要なランニングコストを稼ぐために、システム開発現場に出向いて一部作業の手伝い(準委任契約)を行っていました。

半年ほど経ったころでしょうか。チームに人が増えて大きくなり始めました。社長の意向で、保守運用を担当するメンバーや、マネージャー職のメンバーが増えました。彼らにプログラミング経験はほとんどなく、何か作り上げることよりも、課題処理や会議で何かに対して指摘をすることが得意でした。

メンバーの増加によって、準委任契約で毎月安定した売り上げを作ることができていました。

それからさらに半年ほど経つと、チームからエンジニアが抜け始めました。
気づいたときには、チームの中にプログラミングできる人はいなくなっていて、自分たちで新しいサービスを作ることができなくなりました。

2.チームビルディングのためにメンバーの特徴をつかむ

私がオススメしたい方法は、メンバーがどのような「仕事に対するスタイルや志向性」をもっているかを、プロジェクトマネージャーの視点から整理することです。

プロジェクトを進めるためには、さまざまな知識や能力をもつメンバーとの協働が必要です。前述のチームのように何らかの能力に偏ったメンバー構成になると、チームが実現できることが限られてしまうことがあります。

協働できる「強いチーム」を作るために、チームのモチベーションを上げることは不可欠ですが、仕事に対するスタイルや志向性はメンバーによってさまざまなので、簡単なことではありませんよね。

たとえば「ストレングスファインダー」などの性格診断を使うことでメンバーの特徴をつかみ、モチベーション向上に生かすことができるといわれています。性格診断は実際にやってみると面白いのですが、それを生かした取り組みはイメージしにくいものです。

そこで、仕事に対するスタイルや志向性を「どのようなスキルが高いか、もしくは伸ばそうとしているか」の観点で、4つのグループに分けました。

グループ1「野心をもち、夢を語り、情報を集めるスキル」をもつメンバー

彼らは前提条件をもちません。ルールは変えることができるものと信じています。
彼らは現実の課題ひとつひとつに目を向けません。新しい未来の到来によって、いくつかの課題を根こそぎ「クリア」にします。

グループ2「有象無象の情報から完成イメージを作り上げるスキル」をもつメンバー

「有象無象の情報から完成イメージを作り上げるスキル」をもつメンバーは、「野心をもち、夢を語り、情報を集めるスキル」をもつメンバーが集めた情報から完成イメージを創造します。
思い描く理想と現実の間のギャップを課題に落とし込み、要望を引き出します。彼らは前提条件を作り出します。

グループ3「現実の制約のうえで完成イメージに最も近づくものを作り上げるスキル」をもつメンバー

「現実の制約のうえで完成イメージに最も近づくものを作り上げるスキル」をもつメンバーは、課題や要件を、前提条件を踏まえてタスクに落とし込むことができます。
彼らのうち優れた者は成果物を輪郭から作り始めます。動くものをスモールに作り上げながら、完成イメージを他メンバーとすり合わせます。いくつかの小さな完成を通して学び、さらにエレガントなデザイン(設計、商品)が生まれます。

グループ4「落とし込まれたタスクや完成したものから生まれる課題を順次こなすスキル」をもつメンバー

「落とし込まれたタスクや完成したものから生まれる課題を順次こなすスキル」をもつメンバーは、明らかになった課題をひとつひとつ解消することが好きです。また、何かしらの窓口(主担当者)になることを好み、積極的に手を上げます。
上長にとって評価が最も容易であり、容易であるがゆえに評価が高くなりやすい傾向があります。

各スキルを均等に育てることは難しいのではないかと思います。たとえば、グループ1の前提条件をもたないことと、グループ3の前提条件をベースにした考え方は相反します。

3.チームビルディングで気にすべき4つのポイント

強いチームを作るためには、上記の4グループのメンバーを揃えることをオススメしたいのですが、チームビルディングではいくつかの注意が必要です。

各グループは、仕事に対するスタイルや志向性が異なるので、多くの場面で意見の相違が生まれます。異なる意見をぶつけ合うことがプロジェクトの推進力になるのですが、この推進力を生むためには、上下関係や社内政治の優劣によって一方の意見が優先的に採択されないよう工夫しなくてはなりません。

仮に可能な限りフラットな組織にしたいと思っていたとしても、上下関係ができあがることは避けられません。そのときに、各グループから見た別のグループの印象に注意してください。ここでは、気にすべき4つのポイントをご紹介します。

(1) できると思いがちなこと

  • グループ4.は自身が2.3.のスキルをもっていると思いがち
  • グループ3.は自身が2.のスキルをもっていると思いがち
  • グループ2.は自身が1.のスキルをもっていると思いがち

(2) 実態に合わない評価を回避する

  • グループ4.の配下に2.3.を置かないこと
  • グループ3.の配下に2.を置かないこと
  • グループ2.の配下に1.を置かないこと

これは、上記(1)で自身もそのスキルをもっていると思いがちなために、実態に合わない評価になることがあるからです。

(3) 無意識的な他グループへの期待をコントロールする

  • グループ1.から直接3.に依頼する場合は2.が抜けていることを1.が意識すること
  • グループ3.は1.に必要以上に2.のスキルを求めないこと

(4) ルールを敷くのではなく、仕事を任せる

何よりも大切なことは、自身とは異なるスキルをもつ他メンバーをお互いにリスペクトすることです。他メンバーに期待する役割を定義するのではなく、メンバーが「得意な仕事で成果物を出すこと」「不得意な仕事は他メンバーに任せること」を、行いやすい環境を整備してみてください。

まとめ

メンバーは何年もの間、異なるスキルを発揮して仕事をし、そのスキルを日々磨いてきたはずです。それによって蓄積された経験値と知識は、容易に共有できるものではありません。理解するには、そのメンバーが経験した期間と同じだけの時間が必要なはずです。

「そのメンバーがきちんと説明してくれればいいはずだ」

私が参加していたプロジェクトのうちのいくつかでは、声の大きいメンバーがそのようにいっていることもありました。

私はそれには異論があります。

そのメンバーに説明する力がないことが問題でしょうか。私は、自身とは異なるスキルをベースとした多くの経験を、その蓄積を、「短時間で説明できる程度のもの」だと侮っていることが問題だと思うのです。

メンバーを理解することではなく、メンバーのスキルによって作り出された仕事の成果を理解することが、プロジェクトメンバーのモチベーションを上げることになり、ひいては強いチーム作りの助けになってくれるはずです。

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