「部下が無責任で困っている」と愚痴を言うだけでいいの? 部下を適切にマネジメントして当事者意識を持たせる方法

困った部下を抱え悪戦苦闘しているマネージャーが増えています。「自分の責任ではない」という意識が部下だけではなく組織に蔓延していては、マネージャーの苦悩が深まるだけでなく、企業力を維持することも難しくなるでしょう。社会も企業のあり方や、個々の社員の働き方が変化している現代で「誰かが」考えるべき課題があるようです。組織の中の一人ひとりがそれを「自分の責任」と感じて業務に取り組むには「何が」必要かを紐解いていきましょう。

責任を負わない社員の特徴

ここで、多くのマネージャーたちが抱える困った社員(部下)の特徴を「他律型」「放棄型」「自律型」の3つに分けて見ていきましょう。

他律型

他律型は、上司からの指示を受け、忠実に従順に仕事を行なう社員です。
与えられたことのすべてをこなすために、残業も厭わない真面目な社員ですが、指示に従う社員が責任を持って仕事をしていると言い切れない懸念があります。

「それは聞いていません」
「どうしたらいいでしょうか」
「○○課長に言われたから」

このような部下の返答に、げんなりした経験のあるマネージャーもいるのではないでしょうか。
与えられたこと「だけ」をやって、それ以上はしない。つまり、考える仕事は行なっていないということです。

あるように見える責任感の対象が、組織やマネージャーの期待とはずれているようです。責任の対象はどこにあるのが適切なのでしょうか。

放棄型

放棄型の場合は、仕事に対するやる気を感じられない社員です。
自分の仕事に対して意義や目的を見い出せていなければ、積極的になれないのも無理はありません。組織内での自分の存在意義も見いだせていない可能性もあり、組織にとってリスク的な存在にもなり得ます。

業務の指示をしても「それは私の仕事ではありません」という返答が来ることもしばしば。「自分にはできない」という自己認識の低さで業務から逃げようとする社員もいます。

持って欲しい責任感が湧いてこない理由をなくすには、何が必要なのでしょうか。

自律型

仕事をする姿勢も思考力も申し分ない社員がいます。与えられたことしかできない社員や、言っても従わない社員に比べれば、歓迎できる社員かもしれません。
成果や結果につなげる能力を自らの努力で培っている社員もいます。

しかし、その思考力を発揮しても、それが組織が求めるものではないということもあります。自分で考える力はあるけれど自分勝手に進めてしまい、組織に思わぬリスクを運んでくるのです。「なぜ事前に聞いてくれなかったんだ!」「おいおい困ったことになったぞ」という心境に陥るマネージャーも少なくありません。

自律型の社員の持っている責任感は間違っているのでしょうか。

そのときマネージャーに必要なものは


上記のような社員がいる組織でマネージャーを務めるとなると、ただでさえ膨大な仕事がいっそう大変になります。「責任感のない社員」「使えない社員」「思うように動いてくれない社員」はマネージャーの悩みとストレスの種です。

しかし、その悩みとストレスを部下のせいにしていても、何も変わっていきません。そこでマネージャーが知りたいのは「どうすればいいか」や「そのために何が必要か」です。

嘆く前に必要なマネージャーの当事者意識

まず、マネージャー自身が適切な当事者意識を持つことが大前提です。
部下を責めている時点で、マネージャーも上記の部下たちと同じような「責任転嫁」をしています。つまり、当事者から外れた意識を持っているということ。

では、マネージャーが持つべき当事者意識とは何なのかという疑問が湧かれる方もいらっしゃるでしょう。それについて、マネージャーの仕事は何かということに視点を向けることから考えてみましょう。

マネージャーの任務は、部下を育成することに尽きます。細かい業務の目的はすべてそこに集約されるといっても過言ではありません。部下と同じ視点で「自分のタスク」に向かうことは、仕事をしていることにならないという自覚も必要です。

模範となる

マネージャーとしての立ち位置から部下を見る前に、自分自身が「他律型」「放棄型」「自律型」になってしまっていないかを振り返ってみることが大切です。

そうなると、もう他律型的に「決まりだから」という惰性業務も通用しなくなります。自律型的に、自分の経験に頼り切ったマネジメントを行えないことにも気付けるはず。

完璧な人が世の中にいないように、完璧な社員もいません。だからこそマネージャーというポジションが存在していることを考えれば、自らが手本として部下を育成することを放棄してはいられません。

社員の当事者意識を引き出す材料とは

社員がポジティブな責任感を持って業務に取り組んでいけるのが理想的です。
そのために引き出したいのが仕事に対する社員の「当事者意識」です。
仕事を自分ごととして捉えるために必要な要素を、「巻き込む」「理解する」「尊重する」の3つのキーワードにまとめてみました。
社員の当事者意識の捻出に成功した企業の事例も併せてご紹介します。

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巻き込む

当事者意識を持っているときというのは、効力を発揮しようとしている輪の中に入り込んでいる状態です。しかし、無理やり輪の中に引っ張り込んでしまっては、心理的な抵抗が障害になりポジティブな行動も発想も生まれません。社員自らの意思で、積極的に組織に巻き込まれるような戦略が必要です。

【事例】星野リゾート

日本全国でホテルやリゾートを運営している星野リゾートは、「組織の意思決定を上層部だけで行わない」ことを実践することで業績不振からの回復を遂げた組織です。

運営に関わるコンセプト、施策、運営などをすべての社員に委ねるプロセスが採用されています。戦略やルールを「社員」に考えてもらい、答えを探ってもらうことで社員の当事者意識を促しています。

業績不振に陥ったとき、戦略やルールを練り直し取り組もうとするものです。改革にはスピードが第一と考える企業ほど、星野リゾートの取り組みを実践するハードルは高いかもしれません。上層部が考え、戦略やルール、コンセプトを打ち出し社員に従ってもらうほうが早くて簡単と思えるからです。

しかし、トップダウン式である限り、社員の当事者意識は引き出せません。社員が自ら考え、企業幹部と社員の垣根なく意思決定や情報を共有することは、社員のコミットメントの向上にもつながります。自分たちで考えた取り組みの反応を現場で直に感じることは、社員のモチベーションもグッと引き上げています。

理解する

強い組織が強くいられる理由は何だと思われますか?
社員一人ひとりが優秀で、優秀な社員の能力やスキルが集積されているから強いという見解は早計です。強い組織は、組織やマネージャーが、社員をどれだけ理解しているかということも大きな要因。社員の何を理解することが必要で、どうやって理解することができるのでしょうか。

【事例】ヤフー

Yahoo! JAPANを運営しているヤフーは、「1on1ミーティング」という制度を取り入れ、組織改革を進めることに成功している企業です。

1on1ミーティングとは、社員と上司が1対1で30分程度行なうミーティングのことです。

コミュニケーションの円滑化は、業績の向上だけでなく、組織全体の当事者意識を生み出しています。1on1ミーティングにはコーチング手法が用いられ、主役は常に社員です。

個々の社員の気付きを促し、自らの気付きで動けるようになり、仕事に主体的に取り組むことを促しています。やらされ感なく取り組む業務には、当事者としての遂行責任、やり遂げる責任、さらに工夫や改善への積極性も生まれます。

1on1ミーティングの副産物となるフィードバックは、上司が部下を理解するための機会創出にも役立っています。方向がずれていれば、早い段階での軌道修正が可能になっています。

部下の心境や状況、内に秘めた思いは、業務上では表面的な部分しか見えてきません。1on1ミーティングを通じて、マネージャーは部下のさらに深い部分を理解することができるようです。

今では楽天でも社内のミーティングとして取り入れられています。

尊重する

社員を尊重するとは、企業と対等の一人の人間と見るということです。
尊重していると言葉にすることは簡単ですが、何を持って尊重されていると感じるのはどんなときでしょうか。巻き込むの要素にも関わる部分かもしれませんが、社員が組織の中で自分の価値を感じるときではないでしょうか。

【事例】米Google

Googleでは、組織力向上を目的にしたOKRの手法が取り入れられています。
そのOKRのプロセスが社員ひとりひとりの当事者意識を引き上げることにも一役買っているようです。

OKRは「Objective and Key Result(目標と主な成果)」の略で、企業トップの目標を、部署、チーム、個々の社員レベルに至るまでそれぞれの目標に落とし込み、共有する仕組みです。それぞれの目標とする内容や数値は役割を担う個人が設定するというのが特徴です。

個々の社員は、優先順位と目標値をコミットする勇気のいる提示を迫られます。その後の進捗も組織全体に公表していきます。

ここで注目したいのが、この共有によってもたらされる効果です。社員は、自分の仕事が組織全体の輪の中にあることを認識します。自分の仕事の如何が組織にどれくらいの影響を与えるかを常に心に留めながら業務に取り組むようになります。「自分は大切な存在なのだ」ということを言葉ではなく取り組みを通じて感じさせているのです。

組織の仕組みづくりも必要


事例で紹介した企業の取り組みは、すべて企業を上げての人事戦略の一環として行なわれているものです。一人ひとりのマネージャーの能力ややり方にばらつきがあり、上手くこなせるマネージャーが少ないことも懸念されます。
マネージャーも一人の人間、やれることは限られています。企業が、マネージャーの負担を軽くする仕組みを作り出すことは欠かせません。

その企業の取り組みが成功したからといって、すべての企業で必ず成功するわけではありません。ただ、これらの事例の効果の要素となっているものは、小さなチームレベルでもカスタマイズして取り入れられるのではないでしょうか。

まとめ

共に働く部下たちが「当事者意識」を持つことは、部下自身の成長も促していきます。

「他律型」「放棄型」や自由奔放な「自律型」で終わらせない仕事環境を提供することもマネージャーの意義ある仕事と言えるでしょう。
ポジティブな責任感を持って仕事に取り組むための課題を考えるべきは「企業」であり、「その企業に属するすべての人材」です。それも「当事者意識」のひとつではないでしょうか。

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