部下をどこまで管理するべきなのか? 自発的な人材が育つチーム・マネジメント

部下を管理するマネージャーにとって、部下の仕事にどの程度介入するのかという「さじ加減」は難しいもので、一歩間違えると部下のモチベーションダウンになりかねません。もちろんマネージャーという立場、部下のことが気になるのは仕方のないことです。
そこで今回は、メンバーに自発的に仕事ができるようになってもらうためのマネジメントという観点から、マネージャーが気を付けるべきこと、自覚しておくべきこと、そして、自発的人材を育てるポイントをご紹介します。

マイクロマネジメントを行なわない

マイクロマネジメントを行なってしまうと、部下の自発性は失われてしまいます。
マイクロマネジメントとは、逐一細かいことまで干渉するマネジメントのことです。良かれと思ってあれこれやってあげることも含まれます。このマイクロマネジメントには様々な弊害があると指摘されています。

マネージャーが満足することはない

マイクロマネジメントを行なうマネージャーは、部下が多量で質の高い仕事をしても満足することはありません。常に不足やミスを探し続けるのです。不足を見つけたら即座に手を差し伸べるかもしれません。ミスがあれば、重箱の隅を突つくかのように指摘を惜しまないのです。実際は本質とはかけ離れた取るに足らない小さなことでも、まるで人格を踏みにじるかのように……。そのように受け止める部下は少なくありません。

監視からの萎縮が生まれる

毎日毎日、小さなことに指摘を受ける部下は、その指摘を回避することを意識するようになります。
もちろん、業務に改善や修正は必須のものです。しかし、度が過ぎてしまうと部下は監視されているような心理を抱くようになります。そのことにばかりエネルギーを注ぎ、余計なストレスを溜め続けていくのです。萎縮してしまい、自ら進んで考えたり提案したりをしなくなるでしょう。上司の指摘や介入を創り出すことにつながることを避けるためです。

業務コントロール力を失う

マネージャーからの指示や指摘が逐一入る仕事に対して、部下は自分の仕事という意識を失います。すべての仕事、一つの仕事の中の小さなプロセスにおいても「指示を乞う」「指示を待つ」という姿勢を取るようになります。マイクロマネジメントは、自分で考えたり、判断したりする力を消滅させるパワーを持っています。実は、マイクロマネジメントが創り出した部下の仕事のサイクルという可能性があるのに、このサイクルが継続されるとき、マネージャーは「自発性のない部下」と認識するのです。

モチベーションの低下

自分でコントロールできない仕事に対して、内側から湧くモチベーションを生み出すことは難しくなります。部下は、指示を遂行するという外的なモチベーションで動くため、義務感や「やらされ感」を抱くこともあるでしょう。さらに、叱られないため、ミスをしないためのエネルギーも使うことになります。

必然的に、仕事の質を落とす可能性は高まります。マネージャーからの指摘も増え、自分はできない、ダメだという落ち込みが発生することも少なくありません。部下、マネージャー、チーム、成果、顧客など仕事に関わるすべてのものにプラス要素が存在しなくなってしまうのです。

マネージャーの振り返りポイント

部下に日々の業務の振り返りを推奨するマネージャーは多いと思います。ぜひ、自分のマネジメントのやり方についても振り返ってみてください。とくに、部下とのやり取り、意思疎通がうまくいかないと感じるとき、自分の認識、発信が原因になっていないかを自問してみることが大切です。ハッとする気付きを得ることがあります。部下はマネージャーが思う以上に、マネージャーのことをよく見ているものです。自発的に自分を変化させようとしているマネージャーの姿が部下の刺激になることも多いようですよ。

不安を持っていないか

マネージャー自身が自分の仕事、もしくはチームに不安を抱いている場合、その不安をかき消すための行動として介入や干渉をしてしまうことがあります。進まないプロジェクト、上がらない業績、上層部からのプレッシャーなどに対して極度な不安を感じているときは要注意です。家庭や健康上の不安がマイクロマネジメントの源になることもあります。

過去の経験に固執していないか

過去の経験を頭から外しきれずに、マイクロマネジメントとなることもあります。たとえば、自分が部下だったときに安心感を得たり、達成したりがマイクロマネジメント下の業務だった場合、そのまま真似てしまいやすいのです。また、誰の手も借りられず、苦労して能力を身に付けてきたマネージャーは、同じような思いを部下にさせまいとして行き過ぎの介入をしてしまうこともあります。

自分の欲求を反映させていないか

動かしたいという支配欲、自分の影響下に置いて独占したいという欲を満たすために部下に接するマネージャーもいます。そこまではいかなくても、自分の仕事の完結や業績アップするという自己欲求のために、部下を完璧に動かそうとするマネージャーもいます。いらだちやモチベーションを起こしているものが何なのか、自分が発した一言は誰のためで、何を動かすためのものかを常に認識することが必要でしょう。

役割を履き違えていないか

管理職と現場のメンバーの仕事は異なっています。人手不足の中で直接業務に携わる部分も多く出てくるかもしれませんが、管理職のメインの業務は部下の管理と育成です。プレーヤーとしても優秀な人が管理職に昇進することが多いと思いますが、プレーヤー時代のままの仕事スタイルが抜けきれない人がいます。高い業績を上げてきた自分のやり方や経験だけを頼るような仕事をしてしまうとマネジメント業務は遂行できないのです。

自発的な人材が育つチームマネジメントのポイント


チームの人材に自発的に動いてほしいとき、精神論で促してもなかなかうまくいかないものです。部下の業務や心理を取り巻くものをさまざまな側面から考慮して、自発的に動きやすい環境を組織とマネージャーが提供していくことが大切です。自発的な人材が育つチームを作っていくためのマネジメントのポイントをご紹介します。

あわせて読みたい

チームマネジメントを行なう上で、目標設定は欠かせません。しかし、現実的でない目標設定や、独り歩きしてしまった目標では意味がありません。目標に対して達成感を感じられないと、プロジェクトメンバーはモチベーションの維持が難しくなってしまい、ひい[…]

不安や不信感を取り除く

何でも話し合える、弱みも曝(さら)け出せるチームだと感じるとき、メンバーは自発的に働く意欲を高めることができます。チームメンバーの不安や不信感は、さまざまな要素から生まれます。「何を言っても大丈夫」という雰囲気を作り出すことが不安払拭の第一歩。その安心感が自発的な発言や行動を促していきます。マネージャーが自分の弱みを出すのも効果のあることなのです。失敗してもいいという風土は、チームを信頼し果敢にチャレンジしていくパワーを湧かせます。マネージャーが行なうポジティブなフィードバックもそのパワーを後押しするでしょう。

興味・関心を理解する

慣れない仕事には、「難しそう」「大変」という感情を持ってしまいがちです。部下に仕事を割り振るときや指摘をするときに、その時々の事柄に対して、「詳しく知りたい」「もっと良くしたい」「やってみたい」のような感情を持たせることが自発性を促します。興味や関心は人によって異なるため、部下の趣向や捉え方の傾向などを理解することもポイントです。役に立ちそうな情報を提供したり、好きなことや得意なことに関連付けた方法を提案したり、部下にとって身近なものとつなげた例で説明してみるというのも一策です。

強みを相互認識する

強みを発揮できる機会の多い社員は、チームの中で存在意義を感じつつ仕事をすることができます。メンバー自身とマネージャーも含めた周りが、個々の強みについて一致した認識を持っておくことが大切です。指摘や注意は必要ではありますが、自発性を促すものではありません。メンバーの良い面を見ること、それを承認し伝えていくこと、チーム内でも共有していくことが必要です。個々の強みや良さをマネージャーが積極的に承認することでチームにも浸透させていくようにします。

信じて支援していく

メンバーの自発性を促したいとき、自発的に言うことや行なうことに対して、丸投げになってしまっては、「やらないほうがまし」という感情を生み出す可能性があります。メンバーの自発性から生まれた芽をチームで育てていく意識が大切です。メンバー自身が「できる」「できるようになる」ことを信じて、そのプロセスの中で必要としていることを聞き出しながら支援していくようにします。

人材の成長は採用後のマネジメント次第

どんな個性や能力を持っているメンバーでも、チームに属せばそのチームのマネジメントがどのように行なわれるかで成長度が異なります。メンバーの成長はチームの成果や成長に直結していくものとなります。チームの成長には一人ひとりの自発性が秘めた力が不可欠です。組織を「チーム」とするとき、それぞれのポジションがあったとしても、それぞれが対等だという意識を持てるマネジメントが自発性を促すでしょう。コミュニケーションで部下を伸ばす事例については、下記の記事で紹介をしています。

あわせて読みたい

大きなプロジェクトを遂行し、目標を達成するためには、メンバーが一丸となって協力しあう必要があります。かかわる人間が多くなるほど、円滑なコミュニケーションは重要課題となっていきます。個人の能力を活かしつつ、チームをまとめ成果を上げるには[…]

サーバントな立ち位置

リーダースタイルは、人の数だけ存在するといわれますが、メンバーの自発性を促すサーバントリーダーがいます。リーダーの在り方は、個々の強みを反映するのが最良なので、すべての人にサーバントリーダーをおすすめするわけではありません。しかし、チームメンバーの自発性の喚起のために心掛けて損のない特徴があります。また、全員がサーバントな立ち位置を意識することも組織強化には役立つと思います。

サーバントには「支援」や「奉仕」という表現もあります。傾聴し気付きを促し、否定せず受け入れ共有していく特徴を持ちます。指示⇒指示の遂行というプロセスではなく、提案⇒提案の検討と協力のプロセスを創り出すことを可能にします。誰かの提案を皆で検討し、皆で共有することで協力やサポートを提供し合って個人の目標達成を叶えていくことをけん引するのです。

部下をどこまで管理するべきなのか? 自発的な人材が育つチーム・マネジメントのまとめ

チームメンバーの自発性を育てていくには、まず土台となる安心や信頼感を構築する必要があります。
指示することや教えることが行き過ぎると、目の前の業務の完結はできても、メンバーの自発性を削いでしまう可能性があることを念頭に置いてマネジメント方法を工夫していくことが大切です。

あわせて読みたい

例えば、新規プロジェクトでリーダーを任されることになったとします。自分が率いるチームのメンバーに抜擢されたのは、仕事は早いが口うるさいお局先輩の△△さんと、新卒の後輩である〇〇何を指示しても「反対」から入るお局の先輩と、自[…]

仕事ができるけど扱いづらいvs仕事できないけど従順
最新情報をチェックしよう!
>TeamHackで、タスク管理を驚くほどラクに。

TeamHackで、タスク管理を驚くほどラクに。

TeamHackは、タスク管理とチャットが同時にできる「業務コミュニケーションのしやすさ」に特化したオンラインワークスペースです。コミュニケーションツールとタスク管理ツールを行ったり来たりして、二重に管理の手間がかかる問題をスッキリ解決します。

CTR IMG