TeamHackersでは、さまざまなタスク管理の手法を紹介しています。その中でも、今回はタスク管理の元祖ともいえる、「GTD(getting things done)」について解説します。
GTDは、頭の中で管理していたタスクを洗い出し、タスク管理のストレスから解放された状況で仕事を進められる手法です。
GTDによるタスク管理とはどのような方法で、どんなメリットがあるのでしょう。活用するためのコツやおすすめの書籍を紹介します。
GTDとは
GTD(Getting Things Done)とは、デビッド・アレン(David Allen)が同名の書籍『仕事を成し遂げる技術 ―ストレスなく生産性を発揮する方法』(原題:Getting Things Done、2002年)の中で提唱したタスク管理の仕組みです。
上記の書籍は30ヵ国以上の言葉に翻訳されており、世界中のビジネスパーソンが活用する仕事術であるといっても過言ではありません。
GTDの活用場面
GTDは個人・チーム問わず、プロジェクト管理のシーンで活用ができます。また、仕事のみならずプライベートのタスクまで効率的に管理ができます。
・多くのタスクを抱えていて優先順位に迷う時
・タスクが積み重なって思考がパンクしそうな時
・プロジェクトを横断的に管理する必要がある時
はもちろんのこと、
・仕事とプライベートが混在しがちな時
など、GTDは広い範囲において活用が可能です。
最大限の仕事効率で成果に繋げたい全ての人にとって、活用場面があるといえます。
GTDのメリット
GTDを実践すると、以下のようなメリットがあります。
思考がクリアになり集中力が高まる
GTDを活用することで思考がクリアになります。やらねばならないタスクで頭がいっぱいになったり、マルチタスクにパンクしそうになったりせず、今やるべきタスクに集中して取り組むことができます。
タスク管理のストレスから解放される
タスクの期限までのスケジュールに悩まされることや、タスクをどれだけ抱えているか把握できていない不安から解放され、ストレスフリーな状態になります。
行動力の向上
行動力の向上もGTDのメリットです。GTDによってタスクを把握し、整理することで、その時々に最も優先して行動すべきことが明確になり、効率良くタスクに取り組むことができます。
生活する上で必要なタスクを一元管理できる
生きていく上で必要なタスクは仕事のことだけではありません。GTDを用いれば、プライベートのタスクまで全て含めて管理できます。公私問わず、ありとあらゆるタスクを管理することで、頭の中も気持ちも軽くすることができるのです。
GTDの基本的な5つのステップ
ここで、GTDの基本となるステップを解説しましょう。このサイクルでタスクを管理することが重要なカギとなります。
1.把握する
まずは記憶している全てのタスクを出し切ってリスト化しましょう。GTDのキモのひとつが「頭の中にあることは全て出し切る!」ということです。このステップをいかに丁寧に行うかで、GTDの精度が変わります。
・保留していたタスク
・やっておくと今後役立つだろうと頭の隅に置いていたタスク
・新たなアイディア
・気になっていたもののインプット
・ルーティンワーク
など、頭の中の隅々までを「Inbox」に収集しましょう。
「Inbox」はメモ帳や手帳、管理ツールなど、タスクを収集する場所のことで、必要になるまでタスクをストックしておく場所です。
2.見極める
以下の3つのポイントをもとに、把握したタスクを具体的な行動に落とし込んでいきましょう。
・タスクのゴール
・行動する必要があるか
・具体的にどのような対応が必要か
例えば、「会議室の予約」というタスクがあった場合、
タスクのゴール:4月1日10時から10人が着席できる会議室を予約
行動する必要があるか:会議日が決まっているので早めの行動が必要
具体的に必要な対応:会議室のリサーチ・予約の電話
その上で、
・今すぐやる
・誰かに依頼する
・あとでやる
・対応不要
に分類を行いましょう。
「会議室の予約」の場合、早めの行動が必要でした。分類するとしたら「今すぐやる」もしくは「誰かに依頼する」になるでしょう。「今すぐやる」リソースがあれば、すぐにリサーチを行い、会議室の予約をしましょう。もっと優先すべきタスクがあったり、自分よりも先に行動できる人がいたりすれば、「誰かに依頼する」といいでしょう。
3.整理する
把握したタスクの整理を行います。整理するポイントは以下の4つです。
・カテゴリー分け
仕事とプライベート、本業と副業、プロジェクトごと、委託先ごとなど、業務のカテゴリーごとに分類し、整理しましょう。
・細分化
すぐに行動できるレベルまで細分化します。「会議室の予約」の場合、会議室のリサーチ、予約、参加者への連絡などと細分化できます。
・優先順位付け
優先順位を付けて、着手すべき順番を明確にします。「会議室の予約」の場合、会議室のリサーチ→予約→参加者への連絡の順番で行います。
優先順位を付ける時には、「重要度と緊急度のマトリクス」を用いることをおすすめします。重要度と緊急度のマトリクスとは、タスクを重要度と緊急度の2つの軸をもとに分類する方法です。
重要度と緊急度のマトリクスの詳細は「重要度と緊急度のマトリクスとは? タスクの優先順位の付け方や進め方のコツを解説」で説明しています。タスク管理には欠かせない手法なので、GTDと合わせて覚えておくといいでしょう。
・管理ツールに落とし込む
細分化し、優先順位付けされたタスクを管理ツールに落とし込みましょう。有効期限ごとにカレンダーに入れたり、プロセスが明確になるようにガントチャートを用いたりと、プロジェクトや人によって適したツールは異なります。
4.更新する(レビュー)
整理したタスクは、定期的に「把握する・見極める・整理する」のサイクルを繰り返して、見直しを行いましょう。
・新たなタスクの追加
・優先順位の変更
・完了したタスクの削除
など、タスクは常に最新の状態にしておく必要があります。
5.選択・実行する
最後のステップは、タスクを状況に合わせてフレキシブルに選択し、実行することです。
・置かれている状況(使用可能な機器や場所など)
・時間(スケジュールやその時々の時間帯)
・気持ちの余裕
・優先度
などを基準に選択しましょう。
GTDを実践するためのコツ
いざ実践! その前に……。GTDを実施する際に役に立つコツをお教えしましょう。
把握と処理は明確に分ける
GTDでは、把握と処理のアクションを明確に分けることが重要です。
タスクを出してリスト化している最中、効率を上げようと、ついつい「見極め」や「整理」のアクションを並行して行いたくなるかもしれません。しかし、効率が良いように見えて実は冷静な判断ができなかったり、注意力散漫になってしまったりします。
タスクを出し切る作業、見極めて整理する作業、それぞれを必ず切り離して行いましょう。
集中力が切れた時は休憩を取る
人の集中力には限りがあります。集中力が切れたまま作業を続けてしまうと、判断力が鈍ってミスにつながったり、作業効率が下がって余計に時間がかかったりします。
集中できていないと感じた時には、必ず休憩を取りましょう。
GTDのステップの中でも特に「把握する・見極める・選択する」のステップには、労力と時間を要します。適度な休憩を挟むことで、精度の高いタスク管理になるでしょう。
タスクをいつでも追加できる仕組みを取り入れる
公私ともにタスクを管理できるGTDの場合、いつ何時新たなタスクが見つかるかわかりません。
そのため、やるべきことが思い浮かんだらすぐにメモをする習慣を持ちましょう。スマートフォンや手帳など、常にメモできるものを持ち歩くといいでしょう。
些細なことでも思いついたらすぐメモする仕組みを持てば、「更新」のステップが非常にスムーズに行え、GTDは良いサイクルで回るでしょう。
更新は定期的に行う
毎日・毎週など、タスクの更新は定期的に行いましょう。「月曜日の朝に更新の時間を取る」「通勤の電車で更新作業を行う」など、ルーティンワークに組み込むと、更新作業を習慣にしやすくなります。
GTDの代表書籍
GTDについてさらに深く学びたい人は、GTDを提唱したデビッド・アレンの本を読むといいでしょう。デビット・アレンが執筆したGTDに関する書籍の中には、世界30ヵ国以上で出版された本もあります。
デビット・アレンの書籍を読むことで、GTDの理論を深く学ぶことができると共に、GTDを行う意義や、GTDを行うことで得られる効果についても知ることができます。
ここでは、GTDについて書かれた代表的な書籍を紹介します。
GTDの基本的な概念や原則、方法論について、ステップごとにわかりやすく書かれています。GTD入門に最適の一冊です。
ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則
GTDを理解した後、実際の仕事や生活にGTDを適用するための法則を紹介しています。GTDを実践するメリットや心構えについて書かれているので、より精度の高いGTDに挑戦したい人は読んでみるといいでしょう。
ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術 実践編――仕事というゲームと人生というビジネスに勝利する方法
「ストレスフリーの仕事術―仕事と人生をコントロールする52の法則」同様、GTDを理解した後に応用編として読むことをおすすめします。ビジネスシーンでGTDを活用する時に参考になる本です。特にチーム全体でGTDを行う時に読んでおくといいかもしれません。
まとめ
テクノロジーの進化に伴い、デビッド・アレンが提唱した当時に比べ、タスク管理の手法は進化しています。しかし、GTDの手法や考え方は100年前からずっと変わらずにビジネスシーンを支えています。
GTDを用いてタスクのリストアップをし、本質を見極め、状況を整理することで、「やるべきタスク」が明確になります。今やるべきことに集中できる環境が作られるので、作業効率がアップするのです。
頭の中のリフレッシュやストレスからの解放につながるGTDは、現代のビジネスシーンにこそ必要とされるプロジェクト管理方法かもしれませんね。