人的資本を分散投資するポートフォリオワーカーの時代

働き方改革が叫ばれるようになり、日本でも政府が副業を推奨するようになりました。昭和・平成の時代は、日本型の終身雇用のはじまりと終わりの時代でした。そして、令和の日本ではひとつの会社に依存せずに複数の仕事を掛け持ちすることが当たり前になろうとしています。

少子高齢社会の日本では、既に国が国民の一生を面倒見られない時代です。日本政府の副業推進は自分の面倒は自分で見てくださいねという隠れたメッセージが読みとれなくもありません。

人がお金を稼ぐ方法は、大きく分けて働くか投資するかの二択です。投資の世界では分散投資は当たり前になりましたが働き方の分散は浸透しはじめの段階です。世界的なベストセラーになった『Life Shift』では、ポートフォリオワーカーという概念が提唱されました。金融の世界では株や債権などの組み合わせをポートフォリオと言います。これからは働き方も組み合わせてポートフォリオ化する時代です。

お金を稼ぐ2つの柱、人的資本か金融資本とは?


お金を稼ぐには大きく分けて2つの柱がありあます。それが人的資本と金融資本です。まずはこの2つの柱について簡単に解説します。

人的資本とは

人的資本とは人間が持つ能力を資本として捉えた概念のことです。「体が資本」と良く言います。人に備わる働くことでお金を得られる知識や技能・労働力と考えれば分かりやすいでしょう。例えば、会社に労働力を提供したりクラウドソーシングで仕事を引き受けたりすることでお金を稼げます。

つまり
「人的資本でお金を稼ぐ=働いてお金を稼ぐ」
ということです。

金融資本とは

金融資本とは「金融資産」のことです。例えば現金や株、債券などのことです。資産運用の世界では市場で現金や株、債券などを売買することで利益をあげます。

つまり
「金融資本でお金を稼ぐ=投資でお金を増やす」
ということです。

会社に依存しすぎた昭和・平成の日本の人的資本

戦後の高度経済成長の時代に生まれたのが新卒一括採用と終身雇用です。学校を卒業して新卒で就職してひとつの会社で定年まで勤めあげるというお馴染みの働き方です。戦後の昭和から平成の初期までは、概ねこの終身雇用制が機能しました。そのため平成の社会人は親世代から

「良い大学に入って良い就職を目指せ」

という旨のことを家でも学校でも良く言われたのではないでしょうか。しかし、90年台後半からはじまる就職氷河期には新卒一括採用と終身雇用が少しずつ崩壊していきました。不景気による採用抑制やリストラなどで既存のレールに乗った生き方ができない人も増えていきました。そしてレールから外れた人は非正規雇用として雇用の調整弁として扱われるようになりました。

同じ働き方をしても正規雇用か非正規雇用かで給与や福利厚生に大きな差がつけられることが当たり前とされました。同一労働・同一賃金が政府の働き方改革で声高にさけばれているのは、不当な差別があったからにほかなりません。

そして、正社員はレールから外れることを恐れるようになりました。レールから外れて転職に失敗したら差別的な雇用をされてしまうと考えれば当然です。そして、正社員という「身分」を守るために無理な仕事を引き受けて鬱や過労死・ブラック企業などの問題もとりあげられました。

つまり、新卒一括採用と終身雇用は流動性がないためさまざまな歪みを社会に生み出したのです。会社に人的資本つまり働き方を依存しすぎることによる弊害が平成になって少しずつでてきて限界を迎えたといえるでしょう。

働き方改革をしなければいけないということは、「改革」をしなければならないほどん問題になっていたということです。

金融の世界では分散投資が基本

金融の世界では分散投資が基本です。投資関係の雑誌や書籍を読めば分かりますがいたるところに分散投資がいかに重要か解説されています。金融の世界では人的資本に先駆けて分散投資の効果が認められ今では分散投資が主流です。

卵はひとつの籠に盛るな

投資の世界には「卵はひとつの籠に盛るな」という格言があります。卵を全てひとつの籠に盛ると万一、籠を落としてしまったら全ての卵が割れてしまう可能性が高いことから一点集中は危険だという主張です。

昭和・平成の働き方では多くの日本人がひとつの会社に人的資本を一点集中投資してきました。
しかし、会社が倒産したり職場が合わずに退職してしまうと一気に収入源を失ってしまいます。

金融の世界では当たり前に避ける一点集中投資が人的資本・働き方の世界では当たり前のように行なわれてきたのが、昭和・平成の時代でした。金融の世界の分散投資のセオリーが正しいなら働き方でも分散投資をするのはリスクヘッジの観点から有効なはずです。

時代・情勢で銘柄を少しずつ入れ替えることができる

分散投資では株や債券などのポートフォリオを組み合わせます。そして時代の流れにそぐわない株や債券を少しずつ入れ替えていきます。いきなりすべてを入れ替える訳ではなく6つ持っているアセットのうち一つか2つを入れ替えるため、いきなり収入源がなくなることもありません。

一点集中型の投資では一つのアセットを売ると次のアセットを買う時までの間に収入源がなくなります。人的資本に例えると会社を辞めたりリストラされたりして次の転職先が見つからない状況で収入源がなくなるのと同じです。

もしも2つ、3つの会社をかけもちしていれば、ひとつの会社の仕事を失ってもいきなり収入源がゼロにはなりません。

人的資本を分散化させるポートフォリオワーカーの時代


金融や資産運用の世界ではいまや常識になっている分散投資です。しかし、人的資本つまり働き方の世界では当たり前ではありませんでした。

しかし、ベストセラーにもなった『Life Shift』ではポートフォリオワーカーという概念が提唱されました。つまり金融や資産運用では当たり前だった分散・組み合わせの概念を人的資本・働き方の世界でも取り入れる時代の到来です。

金融・資産運用の世界からは少し遅れましたが、働き方をポートフォリオ化するのが今後のトレンドになるでしょう。

SNSでは働き方でフリーランスと会社員のどちらが良いのかが議論されていました。一時期はフリーランスの良さが声高に叫ばれましたが、現在では少し揺れ戻しがきて会社員をしながら副業を持つのがベストだろうと会社員とフリーランスの間を世論が大きく揺れながら落としどころを探っている状況です。

会社員からフリーランス、そしてポートフォリオワーカーへと世論の中心が動いているともとれるのではないでしょうか。もちろん、それぞれの働き方にメリット・デメリットがあるため、ある人にとっては会社員がベストでしょうし、ある人にとってはフリーランスが良いでしょうし、ポートフォリオワーカーが一番、合っている人もいるでしょう。

重要なのは選択肢が増えていているという事実です。

政府はもう国民の面倒を見ることができない

日本の政府も副業を推奨するようになりました。2018年には厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」をまとめました。これは社会の要請である反面、違う切り口から見ると

「政府が社会保障で国民の面倒を見るのも限界なので各自なんとかしてください」

というシグナルと捉えることもできます。会社も政府も人の一生を面倒みることはできない厳しい時代の到来とも言えます。

つまり、働き手はそれぞれ会社にも国にも依存せずに各自で生きていく方法を模索していくことを迫られるようになったのです。

人的資本は金融資本のように自由にポートフォリオを組むのは難しい

国にも会社にも依存できない時代だからこそ金融・資産運用の世界で当たり前の分散投資を働き方でも行なうことで各自がリスクをコントロールしながら働く時代に今後なるでしょう。しかし金融資本と人的資本では分散の仕方や組み合わせのつくり方は変わります。

例えば金融資本ならば銀行の株と航空会社の株を組み合わせるなど思いついた組み合わせを容易に実現できます。別に銀行の実務や航空機の乗り方が分からなくても株を買うだけで金融資本のポートフォリオはつくれるからです。

しかし、人的資本だと銀行員が突然、辞めて次の日に航空機のパイロットになることは現実的には不可能です。もちろん銀行員をしながらパイロットなどできるわけがありません。

実はここに金融資本・投資の強みがあります。株の世界ならば、その時代の旬の業種の株を次々に買い替えていくことができます。しかし人的資本では職業訓練や年齢などさまざまなところで制約があります。働き方のポートフォリオ化は金融資産のポートフォリオ化に比べて自分の思い描いた組み合わせをすることが難しいのです。

人的資本を分散させる時の注意点

人的資本の分散化、つまりポートフォリオワークは金融資本のポートフォリオ化とは違うルールで組む必要があります。株投資の世界のように銀行株と航空会社の株を組み合わせるなどの自由が効かないからです。

それに働くとなるともって生まれた適性や好みもあります。いくらITやプログラミングが盛んだからといって闇雲に適性のないプログラミングをはじめても辛いでしょう。

金融の世界では自由にポートフォリオを売買するだけで組むことができます。しかし人的資本・働き方の世界では、そうはいきません。

業種を分散させすぎない

ポートフォリオワークをする時に業種を分散させすぎることは避けたほうが良いでしょう。例えば、株投資ならば金融・IT・医療・飲食・航空・製造など全く関連性のない業種を組み合わせることができます。

しかし、働き手がまったく関連性のない業種をいくつも組み合わせることは難しいでしょう。そして分散させすぎると、一つひとつの専門性も深まりません。また金融の分散投資でもアセットを5〜6に分散するのは効果があります。しかし20以上の分散、例えば20が30になったところであまり分散の効果がないと言われています。

つまりポートフォリオワークをする際には

・専門性が深まらないほどの分散
・無闇に分散しすぎる

この2点は避けるべきです。

ひとつの分野で専門性をもつには1万時間は投下しないといけないとも言われています。ポートフォリオを組む際は金融資産の組み合わせよりも慎重にできる範囲内で行なう必要があります。

不得意なことはしない

人的資本を活用する際に不得意なことは避けるべきです。例えばプログラミングが流行だからと適性もなく好きでもないのにプログラミングをはじめても苦痛ですしものにならないでしょう。そして、働いている時間は人生のかなりの部分を費やす時間です。そんな働く時間が辛い時間になってしまっても長続きしません。

よくSNSで、これからは○×の時代だ!などと声高にさけばれるのを見ます。しかし、スマートフォンやパソコンを覗いても情報はありますが答えはありません。

自分の過去と未来と適性を振り返って得意なことや好きなことをするのが一番です。もしも適性があるかどうか分からないなら気軽にできるところから手を出してみたり関連する書籍を読んでみると良いでしょう。そして合うものは続ければ良いですし合わないものはやめれば良いのです。

クライアントを分散する。そして、一つひとつの仕事を大切に

副業の時代では違う業種を組み合わせる以外に働く先やクライアントを分散させることもできます。昭和・平成の時代では、万一入社した会社の社風や働き方が合わなかった場合ずっと我慢し続けなければなりませんでした。そして収入源をひとつの会社に握られることで会社の理不尽な命令に従わざるをえないのが普通でした。

例えば、デザイナーでもひとつの会社に所属しながら副業で別のクライアントから仕事を引き受けるなど働くところやクライアントを複数もつことでリスク分散ができます。

ただし、闇雲な分散はリスクヘッジにはなりません。一つひとつのクライアントとの信頼関係を深めることでより良い仕事ができるからです。クライアントを分散させることとクライアントとの関係をないがしろにすることは違います。むしろ分散化が進みプロジェクト単位での仕事も増えるようになる現代社会だからこそ、一つひとつの仕事やクライアントとの関係を大切にしなければいけない時代です。

まとめ

人的資本つまりさまざまな働き方を組み合わせるポートフォリオワーカーという働き方が浸透していくでしょう。金融資本では分散投資が当たり前でしたが人的資本も分散が当たり前の時代になります。今後、国も会社も個人の面倒を一生みることが難しい時代です。だからこそ、金融資産の投資と同じように分散化によって一点集中のリスクを避ける必要が出てきました。

しかし、闇雲に分散することはできません。自分ができる範囲で無理せずにできることを少しずつ増やしていきましょう。またプロジェクトごとに細切れの仕事が増えて複数のクライアントや会社から収入を得ることが当たり前の時代になるからこそ、一つひとつの仕事・クライアントとの関係を大事にしていくことで信用が高まります。

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