人間関係で悩んだら?ゲーム理論から生まれたしっぺ返し戦略

世の中の悩みの大半は人間関係にまつわることではないでしょうか。例えば友人との関係、恋人との関係、同僚との関係、クライアントとの関係、近隣の同業者との関係など生きている限り悩みは尽きません。協力すべきなのか裏切るべきなのか人間関係で悩む度に考えなければならないのは大変です。

そんな時には一貫したルールを設けておくと日々、人間関係に悩んでも自分がどう対応するべきかをシンプルに決められるようになります。有名な処世術の一つに経済学のゲーム理論から生まれた「しっぺ返し戦略」があります。

「しっぺ返し戦略」はどんな場面でも必ずしも有効な手立てではありません。しかし「しっぺ返し戦略」の事例を通して分かることは長期的な人間関係を築く時は、結局のところ信頼を築いていくために誠実であることの大切さです。しっぺ返し戦略を通して長い目で見たら人間は誠実であることが結局はうまくいきます。

しっぺ返し戦略とは

しっぺ返し戦略はいたってシンプルです。

  • 最初は協力する
  • それ以降は相手が協力してくれたら協力し裏切られたら裏切り返す
  • 相手が協調的な態度をとった場合は寛容な態度で協調する

という戦略です。人間関係で相手がいるときに協力的に接するべきか報復するべきか悩むことがあります。相手に攻撃され続けても延々と相手のいいなりになる続ける対応もあれば、先に攻撃的な態度をとる、気まぐれにランダムな対応をする、攻撃的な態度をとられたら倍返しにするなど様々な対応方法が考えられます。

政治学者のロバート・アクセルロッドは「しっぺ返し戦略」が長期的に見ると人間関係の駆け引きにおいて有効な戦略だと言います。

協調と裏切りのゲーム「囚人のジレンマ」

しっぺ返し戦略のようなシンプルな戦略が本当に効果があるのでしょうか。しっぺ返し戦略が有効かどうかを確かめるための根拠になっているのが「囚人のジレンマ」というゲーム理論です。

例えば、あなたと友人が銀行強盗をして捕まったとします。そして警察に2人別々の部屋で尋問を受けました。そして警察から尋問を受けた際に取引を持ちかけられます。

  • 友人が首謀者で、あなたに不利な証言をしなければ友人は5年の刑であなたは釈放される
  • あなたが友人に不利な証言をせず、友人があなたに不利な証言をすれば、あなたは5年の刑で
    友人は釈放される
  • 双方が互いに不利な証言をすれば、二人とも3年の刑になる
  • 双方が証言を拒否すれば二人とも1年の刑になる

このケースでは友人があなたに不利な証言をせずに自分だけが友人を裏切ることが仮にできれば釈放されます。しかし友人も同じ取引を持ちかけられていることを忘れてはいけません。この時にあなたも友人もすぐに釈放されたいがために相手が首謀者だと言い合えば二人とも3年の刑になってしまいます。

そして自分だけが友人を信頼し証言を拒否したのに友人が、あなたに不利な証言をした場合は、あなただけが5年服役しなければなりません。

あなたならどうするでしょうか。

私だったら次のように考えます。

  • 友人に不利な証言をせずに友人も自分に不利な証言をしなければ1年の刑期で済む。しかし万一、向こうに裏切られたら5年も服役しなければならない。
  • 本当に友人は信用できるのだろうか。むしろ友人は自分を警察に売って自分だけが5年の刑に服役する可能性がある。
  • それなら友人に不利な証言をしておいて友人が首謀者であると認めてくれる可能性にかけるか、最悪5年の刑期を避けるために相手に不利な証言をしておこう・・・。

しかし友人もリスクを回避するために同じことを考えるでしょう。

結局、お互いがリスクを回避しようとすると二人とも不利な証言をして3年の刑になります。実はこれが1回限りのゲームだった場合はお互いが信用できないならばリスク回避のために相手を「売る」のは間違った選択肢ではありません。

しかし、このゲームが20回、30回と継続する場合は話が変わってくるのです。

「囚人のジレンマ」で最も得点をあげたしっぺ返し戦略

結論から言うと継続的な「囚人のジレンマ」のゲームを繰り返すとシンプルな「しっぺ返し戦略」が最も「得」をするという結論に達しました。

一方的に相手を信頼し続ける戦略をとった場合は一方的に自分が不利な「ババ」を引き続けることもあり得点は伸びませんでした。しかし相手を裏切り続ける戦略を取り続けた場合は最初は「得」をするのですが回数を重ねるごとに点数をあげられなくなっていくのです。

様々なパターンで、この囚人のジレンマの総当たり戦をリーグ形式でしたところ「しっぺ返し戦略」が総合得点でトップとなりました。

しっぺ返し戦略にみる社会現象

しっぺ返し戦略の事例は世の中の多くの場面で多く見られます。国際関係からアメリカの銃社会、家電量販店の価格競争にまでしっぺ返し戦略で均衡を保っている事例は珍しくありません。

集団的自衛権としっぺ返し戦略

実は日本の集団的自衛権はゲーム理論的に見ると「しっぺ返し戦略」に基づいています。日本の国防の基本スタンスが実は「しっぺ返し戦略」だと聞くとピンとこない方もいるかもしれません。

  • 平和主義である=協調戦略
  • 武力攻撃を受けた場合は集団的自衛権を行使し徹底反撃する=やられたら報復するしっぺ返し
  • 相手が撤退したら、それ以上の攻撃を止め平和条約を締結する=協調戦略

基本的には協調戦略をとるがやられたら報復する、その代わり協調姿勢を見せてきたら協調するというスタンスは実はゲーム理論の「しっぺ返し戦略」に当てはまっています。

もしも自衛隊が軍備を完全に放棄した場合はゲーム理論的にみれば報復手段を失い一方的な協調戦略のみしか取れなくなります。

銃社会アメリカで何故、銃がなくならないのか

アメリカでは度々、銃社会であるが故の誤発砲などの事件がニュースになっています。社会に銃が存在しなければ銃による誤発砲などの事件は起きません。しかしアメリカでは既に銃が社会的に浸透しています。

アメリカの大地は広大で開拓時代のアメリカでは保安官による治安維持が行き届いていませんでした。そのため自分の財産や家族は自分自身で守らなければならないという事情が歴史的背景としてありました。日本が豊臣秀吉の時代に刀狩を行い庶民が刀を持てなくしたことで武器を持つ文化が衰退したのとは対照的です。

アメリカ人も日本の自衛隊と同じように銃を持つのが一般的な社会である以上、ゲーム理論的には使うことを望む望まないに関わらず「しっぺ返し戦略」をする場合は銃による自衛ができなければ一方的に協調することしかできなくなります。

アメリカ人も自分だけが銃を持っていないとなると自分の財産や家族を守れなくなるのではないかと感じてしまう人もでてきます。

家電量販店の値引き争い

家電量販店の値引き合戦でも「しっぺ返し戦略」が見られます。よく家電量販店に行くと次のような文言を見かけることが多いのではないでしょうか。

「他社より1年でも高い場合はお値引きします」

消費者から見ると、この量販店は最安値を保証してくれて親切だなと思うかもしれません。しかし家電量販店の価格調査部隊からみると「しっぺ返し戦略」をとられているように見えるのです。

「もしも値引きしたら、こちらも値引きで対抗する」
「値引きしなければ、こちらも値引きしない」

家電量販店の価格調査部隊からみると、値引きで出し抜こうとしたら報復されてしまうと解釈するのではないでしょうか。一方で協調すればライバル店同士、泥沼の値下げ合戦をせずにすみます。

実はこんな身近なところにも「しっぺ返し戦略」が活用されているのです。

短期的には利己主義が有利

「しっぺ返し戦略」を日常生活に応用する場合に注意する点は短期的には利己主義が有利である点です。言い換えると短期的には嫌なやつがうまくいくことが多いのです。

例えば会社の中で実務に力を入れている人と上司へのゴマすりに力を入れている人では後者の方が高い勤務評価を受けることがスタンフォード大学のビジネススクールのジェフリー・フェファーによると実証されています。

また海外旅行では一期一会の安宿やドミトリーでは荷物の管理や貴重品が無くなります。治安の悪い国では外国人は窃盗の被害にもあいやすい。外国人のスリやひったくりにとって一時的な滞在の観光客は格好のカモです。帰国せざるを得ない観光客は今後スリやひったくり犯にとって関わることのない人なので同国人や近所の人を狙うよりターゲットにしやすいのです。隙あらば盗もうと考える不届き者がいても不思議ではありません。そのためスリやひったくりが多いとされる観光地では旅行者は注意が必要です。

長期で関係が続くなら信頼関係を築く方が良い

利己主義が短期的に得をすることが多いなら、みんな利己主義者になれば良いのでしょうか。そうなると我も我もと利己主義が幅をきかせるようになります。

例えば会社で実務を疎かににして上司にゴマばかりをする人が増えてしまった場合、長期的にみると多数の人が実務を放って上司の機嫌とりにエネルギーを費やすようになります。すると社内やチーム全体の生産性が落ちていき集団そのものの利益をあげる力がなくなります。またお互いが協力できない環境が醸成されていき社内・チームそのものが腐敗していくことになります。

安宿のドミトリーの従業員や経営者が一期一会の客から物品を盗むようなことを継続的にすれば短期的には得をするかもしれません。しかし長期的にみるとドミトリーで盗みが相次いでいることがドミトリーそのものの評価を下げる原因になり客がこなくなり最後には潰れます。特にオンライン旅行サイトで最近は評判が外の世界に可視化されやすい時代です。

東南アジアではやっている配車アプリのGrabTaxiでも評判が可視化される仕組みがとられています。短期的にインチキをしてなれない観光客からぼったくり料金をとって得していたとしても長期的には悪い評価がつけられていき警戒されるようになりボッタクリドライバーは儲けられなくなります。そこでGrabTaxiの仕組みをとらずに個人経営をボッタクリのドライバーがしようとしますが、多くの観光客はボッタクリを警戒しGrabTaxiを利用するのが一般的になります。GrabTaxiは東南アジアのタクシー業界の信頼の可視化を実現したのが画期的です。

長期でみると利己主義者は損をする時代になってきています。特に評判が可視化されやすいSNSの時代では短期的な利己主義は長い目でみて損をしやすくなっているのではないでしょうか。

囚人のジレンマから学ぶ人間関係のコツ

囚人のジレンマでは短期的に見ると不誠実な利己主義者が得をするのですが長期的に見ると信頼関係を築き、万一、利己主義に攻撃を受けたり裏切られてたりする際は同程度の報復をすることが有効ということになります。

しっぺ返し戦略の有効性を証明したアクセル・ロッドは人間関係のコツを4つにまとめています。

相手を妬まない

しっぺ返し戦略では、一つ一つのケースでは相手に勝つ訳ではありません。むしろゼロサムゲームでは相手を負かすことがほとんどできません。しかし、続けていくことで得点の総和が伸びていくのが特徴です。一回一回の取引や対応で相手を妬まずに自分が利己的でないかどうかだけを気にしていれば良いことになります。

自分から先に裏切らない

他者から好意を受けるためには受身の姿勢ではなく主体的に自分から行動することも大切です。ネット上ではよくGiveすることからはじめるべきだという話を聞くようになりましたが先に、Giveすることでより良い関係を築きやすくなります。

長期的な利益を犠牲にして目先の利益を手に入れようとする態度は長期的には信頼関係を築けずに損をするようになります。特に現代社会はSNSなどで繋がっていることも多いため利己的なテイカーは損をしやすい時代ではないでしょうか。

そっくり相手に返す

一方的に従い続けると搾取されるだけ、利用されるだけになってしまいます。そのため、もしも攻撃を受けたらその分、しっかりと報復することでバランスがとれます。言われっぱなし、やられっぱなしでは自分を守ることはできません。

策を弄さない

ずる賢い立ち回りは相手に不信感を与えます。そのためシンプルに行動することで信頼関係を得やすくなります。将棋やチェスのようなゼロサムゲームでは意図を読み取らせないことも重要ですが現実世界では策を弄することで、信頼関係を得にくくなります。

まとめ

しっぺ返し戦略と囚人のジレンマの事例は実際の人間関係を考えるうえで大いに参考になります。
人の悩みのほとんどは人間関係から発生する者です。だからこそシンプルで明快な、しっぺ返し戦略は人間関係で迷った時の指針としやすいのではないでしょうか。特にSNSなどで評判が可視化されやすい時代では短期的な利己主義は長期的な損に繋がりやすくなります。しっかりと守るべきところを守りつつ信頼関係を築くのが長い目でみると良さそうです。

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