はじめまして! 初芝賢です。私はフリーランス向けに特化したWebメディア「東京フリーランス」(https://tokyofreelance.jp/)の編集長として、日々Twitterやメディア等を通じて発信しています。なので、私のことを知ってくれている方の多くは、「東京フリーランスの編集長」という認識の仕方をしていると思います。
しかし、一方で、私はWebデザイン・システム開発会社のCOOという顔を持っています。COOと言うとなんだかかっこいいですが、コアメンバーは数名というスタートアップです(笑)。私が入社する前には社長を含めて社員は2名しかいませんでした。
私はその会社に転職する前、社員数30万人以上のある大手外資系企業に勤めていました。そのため、いまだにお客様や友人から「なんであんな大きな会社辞めたの?将来安泰だったろうに」「辞めることに不安はなかったの?」と聞かれることがよくあります。
たしかに、辞めることに対して不安がなかったと言うと、それは嘘になります。しかし、大手企業を辞めることへの不安以上に「なんとかなる」「この決断に間違いはない」という確信に近い想いを持っていました。
この記事を読んでいる読者の方の中にも、大企業からの転職や独立に悩んでいる方も多いかと思います。そこで、私が大手を辞めてスタートアップに転身するまでの間に吟味した3つの観点についてお伝えしていきます。
- 「いまの会社を辞めたいけど、なんとなく不安」
- 「自分の決断に自信を持てない…」
という方は、ぜひご一読ください。
①現在のキャリアの先に自分が描くゴールはあるか?
前職の大手企業はとても働きやすい環境でした。
- 尊敬できる上司
- 気の置けない仲間
- 分不相応な給料
- 責任感ある立場
- 融通の利くプロジェクト
- 異動しやすい社内制度
というように、世の中の多くの会社と比べても職場環境は整っていた方だと思います。少なくとも、自分にとっては十分すぎるほど良い環境でした。
「そんなに良いなら、なんで辞めたの?」と不思議に思う人もいるかもしれません。しかし、客観的な職場環境としての充実度と、自分の目指すキャリアとの一致の度合いは、必ずしも重なるものとは限りません。自分にとって、前職のキャリアを進むことは、自分の目指すゴールから遠ざかっていくものであるという強い実感がありました。
前職で私が行なっていた仕事は、2つのシステム開発プロジェクトのリーダーでした。少人数のチームでしたので、部下のマネジメントやクライアントとの折衝をしながらも、自分でコードを書く仕事もしていました。当時は、文章力を評価していただき提案活動の支援もしていましたが、基本的には「マネジメント業務が多めのエンジニア」といったところです。
私は毎日「自分はどの道を歩むべきか。いまの道の先にあるのは何か」を考え、情報収集もしていましたが、前職の先にあるのは、どう考えても「システム開発のマネジメント職」というキャリアでした。もしくは、「ITに強いコンサルタント」というポジションです。
このまま今の会社でのキャリアを積んでいくか、転職を繰り返してキャリアアップしていくか、2つの選択肢しか見えていませんでした。
しかし、私が目指していたのは「WEBマーケティングに強みを持って、独力でビジネスの立ち上げ・コンテンツの作成~発信をできる人物」でした。要するに「大企業を転々とし、あらゆるリソースを活かして価値を生み出すビジネスエリート」とは全く違うものだったのです。
私が前職の会社に入社した理由も、その道を行くための前段階という位置づけでした。IT知識やコンサルティングの技術、そして経歴を得るために前職を選んでいたため、辞めること自体はタイミングの問題と考えていたのです。
それでもギリギリまで考えた末に、「いまのキャリアを進んでも、目指すべき道からはどんどん離れていく」ことを確信し、退職を決意しました。
そして別の仕事や独立について考えていた頃、現在のスタートアップの社長から誘われました。
②自分のやりたいことを実現できる会社か?
そのスタートアップの社長は、もともと仲の良い友人でした。前職の入社前に知り合い、妙にウマがあって定期的に飲んでは将来のことを語り合っていた仲です。そんな彼は少し前に会社を辞めてフリーランスデザイナーとして活動していたのですが、売上が好調で「仲間ともっと大きなことをしたい」と思ったタイミングで起業していました。その起業した矢先に「うちの会社入らない?」と誘われたのです。
私は彼と話し、すぐに入社を決めました。急成長している他の企業からも誘われていたのですが、できて間もない彼の会社を選びました。
そんなに待遇が良いのか、あるいは業務内容が自分とマッチしていたのか。と考えた人もいるでしょう。けれど、それはどちらも正しくありません。むしろ、業務内容に余白があることこそが魅力でした。
その社長がどんな人柄かというと、情熱と合理性を併せ持った人です。メインの事業はWEBデザイン・システム開発ですが、他に面白そうな事業があったらどんどんやっていく、上手くいかなかったらその時は方向転換すればいい。働き方も、成果さえ出せばリモートでも全然OK。そういうスタンスの人でした。
なので、システム開発のPMやお客様への提案活動という実務をこなしながら、余った時間でゼロイチの新規事業を立ち上げられる環境は、自分の目指す姿へ近づくのに適した環境だったのです。自分が優先していたのは「目指す姿に近づくか」の一点なので、まさに最高の環境と言えるでしょう。実際、そんな環境であるから「東京フリーランス」を始めることができ、充実した日々を送れています。
また、その他にも決め手となったのが、信頼関係です。私は彼を見ていて「人柄的にも能力的にも信頼できる」と強く確信していましたし、彼も私に信頼を置いてくれていました。だからこそ、「この業務をやって欲しい」と明確な線引きをせずに、言わば「なんかやってくれそうななんでも屋」として迎え入れてくれました。
仲間との起業は危ない、絶対喧嘩別れする、ということを言う人がいます。絶対は言い過ぎと思いながらも、ビジネスである以上、そういう事態が生じることもありえると思います。
それでも彼の会社に入社したのは、絶対に喧嘩別れしない自信があるからではありません。劇的な恋愛結婚をした夫婦でも離婚することはありますし、人間関係に過信は禁物です。けれど、この先何かあったとしても後悔しないと思える相手となら、一緒にリスクを取っていく決断をしてもいいのかなと思います。
自分の目指す姿に近づく事業内容か、一緒にやっていきたいと思える人か、その両方が必要だと思います。
③セーフティネットはあるか?
さて、ここからは現実に戻り、お金についての話をします。
生きていく以上、お金は何よりも大事です。明日寝る場所がなければ、そもそも仕事なんてできません。お金の悩みが頭の片隅にでもあると何をするにしても中途半端にブレーキがかかってしまいます。
僕はスタートアップに転職したわけですが、お金について完全に安心しきっていたわけではありません。当然経営が不安定になることも考えられますし、社長が期待するモノを僕が提供できなければ、いつ切られてもおかしくないと考えていたからです。
明日から無収入になるかもしれない。スタートアップに転職する以上、それは考えておくべきリスクです。なので、私はそのスタートアップを辞めたときのことも想定し、自分で独立した場合のことも想定して、自分の中でリスクを最小限にしたうえで大企業を辞めました。
お金には3種類あります。
- いま手元にあるお金
- 入ってくるお金(収入)
- 出ていくお金(支出)
出ていくお金については具体的な節約術の話になるため割愛します。ここでは、自分が会社を辞めるときに気を使っていた「持っているお金」と「入ってくるお金」について、私自身の体験談を交えて書いていきます。
持っているお金について
僕は貯金が200万円ある状態で独立しました。100万円は長期投資にあてていたため、実質的に使えるのお金は100万円でした。「独立するには300万円貯めろ!」と言う声もあるので、100万円という金額は少ないと思われるかもしれません。3~5ヵ月ほどで貯金が無くなってしまう計算です。それでも会社を辞めたのは、「入ってくるお金」をコントロールできると考えていたからです。
入ってくるお金について
入ってくるお金に関しては、ライターとしての仕事を増やすこともできるし、流行りの技術を習得すればフリーランスエンジニアの道もある。
また、スタートアップで何か成果を残せば、転職という道もある。そのように、「収入がなくなったとしても、収入を作るための手札がある」という状況でした。読者さんの中にも同じような状況の方がいれば、300万円も貯めなくても独立はできると思います。むしろ、備えばかりしていて、ここぞというタイミングを逃すほうがリスクかもしれません。
2つのお金のバランスを考え決断することが大事
持っているお金と入ってくるお金に関するリスクはトレードオフです。収入を増やすことに自信がない場合は余裕をもって貯金をした方が安心ですし、「いつでも稼げる」という自信のある人は、タイミングをみて飛び出した方がチャンスをつかめる確率が高くなると思います。
「○○円貯めてから独立した方がいい」というような赤の他人の言葉に惑わされず、自分のいまの状況に応じた判断をしましょう。
まとめ
以上のように、私が大企業を辞めるときに意識していたのは次の3つの観点です。
- 現在のキャリアの先に自分が描くゴールはあるか?
- 自分のやりたいことを実現できる会社か?
- セーフティネットはあるか?
今回お話したのはあくまで私自身の体験談です。というのも、会社を辞めるべきか否かの判断は、本人の状況や目指すべき姿によって様々です。
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