「転職は35歳まで」と言われていたのをご存知でしょうか。でも、もはやそれは昔のこと。現在では、30代どころか、40代、50代の転職も珍しくなくなってきました。子育て中の女性の転職も少し前までかなり難易度が高かったのですが、最近はワーキングマザーの転職事例も増えてきています。
実際に私の周りでも40代のワーキングマザーが転職した例もあり、社会も会社も急激に変化していっていると感じています。これは、「はたらくMama +」「ママテラス」などのワーキングマザー(ママ)専門の転職支援サービスが増えてきていることからも明らかでしょう。そこで、今回はワーキングマザーの転職事情についてご紹介したいと思います。
転職意向がぐっと高まる育休期間
私が転職支援サービスに携わっていた頃の話
女性は結婚を意識した頃と、産後の育休期間に転職希望者が増える傾向がありました。男性は、25歳、30歳、40歳と切りの良い年齢に転職意向が高まることが多いのですが、女性は年齢関係なく、結婚や出産などのライフイベントをきっかけに仕事を見直したくなるようです。結婚も出産も、女性にとっては男性以上にライフスタイルに大きく影響するイベントになりますから無理もありません。
確かに私も、直前の会社に転職したのは、結婚する少し前でした。当時は「結婚したいから転職」と意識していたかと言われるとそこまでではないのですが、潜在的に結婚を意識した上で仕事(主に働き方)を見直したいと思ったのかもしれません。このように、20代後半から30代前半の結婚前の女性は転職希望者の中でも高い割合を占めたと記憶しています。
育児休業中の女性
転職を希望する育児休業中の女性は年々増加傾向にあるといえます。私自身は育児休暇中に転職をまったく考えていませんでしたので意外なことでした。ただよく思い出してみると、育児休業中は、その名の通り新生児の育児でゆっくり食事を取ることも、寝ることもままならない期間でありながら、いろいろ考える時間はあった気がします。
特に、はじめての育児の場合、その自分ではコントロールできない育児の難しさに、「こんな育児を続けながら、仕事できるのかな」と、まだ復職してもいない仕事と育児の両立に不安になったりもするものです。そんな気持ちを抱いた育児休業中の女性が、転職サービスのカウンセリングで打ち明ける悩みといえば、「在職中の会社にはワーキングマザーがいないから、両立できる自信がない」「残業が当たり前で働いていた会社なので、もっとワークライフバランスが実現できる会社はないか」がほとんど。育児を実際に経験したことで実感する仕事や働き方の不安をどう解決すればいいか、転職したほうがいいかという気持ちになるのでしょう。
ワーキングマザーの転職の理想と現実
ワーキングマザー転職のハードル
少し前までは幼い子どもを持つワーキングマザーが転職するのはとてつもなく高いハードルがありました。かなり限定した不人気業界や不人気職種、または最初は契約社員からといった低い条件でしか転職することができませんでした。逆に、例えば「アメリカでMBAを取った、英語も堪能な公認会計士」というようなスーパー経歴のワーキングマザーだけのハイスペック転職ぐらいでした。男性は転職面接で「お子さんがいますか?」と聞かれ、仮にいたとしても不利になることはありませんが、女性は明確に違いました。子どもがいるだけで面接に進むこともできないというのが普通だったのです。
時代による変化
しかし、時代は劇的に変化して、ワーキングマザーでも転職する事例は一般的になりつつあります。女性(特にワーキングマザー)に特化した転職支援サービスも多く目にするようになったほど。企業も、ワーキングマザーだからという理由でネガティブな印象になることも今ではあまりないのではないでしょうか。もちろん、業界や職種によって差はありますが、男性の育児休暇などと騒がれていることもあり、女性でも男性でも関係なく、許容する社会には確実になってきていると思います。
転職希望者と採用企業のギャップ
しかし、転職希望者と採用する企業の間にまったく温度差がないといったら嘘になります。転職を希望するワーキングマザーの多くは、あくまでも正社員で今とそれほど給与水準・条件を変えずに、働き方だけを時短やフレックスなど柔軟にしたいといった意向が強くあります。一方で企業は男性も女性も関係なく、スキルや経験に加えて、「可能な限り残業も頑張ります」といったやる気を求めます。つまり働き方を理由にした転職は未だなかなか受け入れられないと言えるでしょう。中には、時短勤務、在宅勤務前提の中途採用はしていないといった企業も少なくありません。時短勤務や在宅勤務、育児に関する特別休暇などを活用できるのは勤続●年以上など、あくまで産前まで頑張った社員のためにある制度とし、中途で入ってきた人間がいきなり使うのは認められていなかったりするのです。
このように、ワーキングマザーでも転職はできるようになったものの、「働き方」を第一の理由にした転職ではなく、あくまで「実現したいこと」など仕事における動機があることが前提になっているのが現実です。
ワーキングマザーの転職活動の要は人脈
では、働き方を理由にした転職はワーキングマザーにはできないのでしょうか。それも、ノーです。とはいえ、働き方を理由にしたワーキングマザーは一般的な転職方法とは少しやり方を変えたほうがスムーズではある気はします。
一般的な転職方法
一般的に行なわれる求人メディアや転職支援サービスを介しての転職だと、企業を選ぶ個人も制度や諸条件を軸に選んでしまいますし、企業も個人の経験や能力といったスペックだけで判断してしまいがちです。このようなマッチングは、ワーキングマザーにとってマイナス面が多くて適していません。例えば、子どもがいるので16時まで(時短勤務)希望などレジュメに書くと、その文言だけを判断して、能力面では優っていても残業可能な男性や若い転職希望者の方が有利になってしまうからです。また、時短勤務、フレックス、在宅勤務などの制度があることだけを理由に希望した企業も、「勤続2年以上でないと利用できない」などの制限があったりすることもあります。
ワーキングマザーにおススメの転職方法
ワーキングマザーにとって重要なのはカルチャーフィットです。時短勤務、フレックス、在宅勤務といった“制度”があるかどうかではなく、柔軟に働ける“文化”や“風土”があるかということが大事なのです。このような自由で柔軟なカルチャーの会社は、意外に大手よりも中小企業やベンチャーなどに多く、制度としてはなくても、社員一人ひとりに合った働き方を認めてくれているところがあるものです。
ただ、こういった制度が整っていないような中小企業やベンチャーは求人メディアには求人情報を掲載していなかったり、掲載していても制度がないので検索でヒットしなかったり、で見つけるのが困難です。なので、友人が務めている会社やお客様の取引先など、人脈をたどって出会うことが一般的です。このような出会い方だと、スペックや条件といった物差しでお互いを見極めるところから始まるのではなく、個人対個人で理解が深められるので、「一緒に働こう」となった時は働き方についてはいくらでも調整してくれるようになります。
まとめ
普通に仕事と家の往復だとなかなか人脈が広げられないという場合は、ワーキングマザー向けのイベントに参加するだけでも良いと思います。私も過去何度となく参加してきましたが、女性はコミュニケーション能力が高いので、一人で参加しても「働く+母」という共通点があるだけで案外すぐに仲良くなれます。またはもう少し踏み込んで、ボランティアや副業もおすすめ。より深く広い人脈が作れます。
個人的には、結婚や出産などさまざまなライフイベントに合わせて、仕事や働き方は柔軟に変えたほうが絶対に良いと思っています。年齢を重ねたり、子どもを持ったりすると仕事でもなんでも慎重になってしまいがちになりますが、40代だから、子どもがいるからと諦めず、イベントに参加したり、ボランティアや副業などから人脈を広げるところから試してみてはいかがでしょうか。意外なキャリアの可能性が広がるきっかけになるかもしれません。