ピラミッドストラクチャという言葉を知っていますか? その名の通り、結論が頂点に置かれたピラミッド型の図を一度は見たことがあるかもしれません。MECEと並び、ロジカルシンキングの必須ツールとして知られています。
この記事では、ピラミッドストラクチャの定義について説明したあと、どんな場面で使えるのか、そして実際に作成する方法について解説していきます。これを読めば説得力のある意見を作れるようになりますよ!
ピラミッドストラクチャとは?
ピラミッドストラクチャとは、頂点に結論を置き、その下を複数の根拠で支えるという構造のことです。一つの結論-複数の根拠という関係がピラミッドのように重層的に積み重なっているため、その名前で呼ばれています。MECEと並んで論理的思考の基礎とされています。
ピラミッドストラクチャを使う最大のメリットは、説得力を抜群に上げられるということです。結論に対して網羅的に検討がされていること、結論と根拠の関係が明確であることから、「どういった論理構造でこの結論が出てきたのか」を理解しやすいのです。
ピラミッドストラクチャはどんな場面で使えるのか?
ピラミッドストラクチャが最も効果的に使えるのは
- 誰かを説得したい場面
- 聞き手に意思決定を促す場面
- 情報を整理する場面
特に、ビジネスシーンでは「この事業を撤退するべきか」「売上を上げるためには何を最優先事項とすべきか」など、意思決定が迫られる場面が多々あります。
ビジネス上の問いに対し、結論を感覚で出すことはできません。あなたがワンマン社長でない限り、「こうした理由があるため、撤退すべきです」など、明確な理由をもってステークホルダーを説得する必要があります。こうした場面において、ピラミッドストラクチャを用いて論理を構成するのは非常に有効です。
というのも、ピラミッドの頂点にある結論とは、書き手の主観的な主張に他ならないからです。「地球は丸い」「人間は哺乳類である」といった、客観的な事実を説明するのにわざわざピラミッドを描く必要はありません。事実とはまだ認められていない、自分の主観的な主張の正しさ、たしからしさを納得してもらうために使うのがピラミッドなのです。
主張が正しいと認めてもらうためには、その根拠を論理的に説明しなければいけません。よく「議論において事実と意見を混同してはいけない」と言われますが、意見や主張には必ず根拠(事実)が必要となります。ピラミッドストラクチャでは、主張と根拠の境界がハッキリ分かれており、主張-根拠の関係性を直感的に理解できます。
だからこそ、聞き手に結論の妥当性を検証させやすく、説得しやすいのです。
ここまででピラミッドストラクチャの定義・意義について理解できたかと思います。次に、ピラミッドストラクチャの具体的な作り方を解説します!
ピラミッドストラクチャを作る3STEP
では具体的にピラミッドストラクチャをもとに意見を固めるステップを解説していきます。
① 答えるべき問いを明らかにする
まず行うべきは、「何の問いに答える必要があるのか」を明確にすることです。論点設定とも呼ばれる作業です。
上司から「この事業ドメインに進出すべきかどうかを検討しろ」と言われたというシチュエーションなら話は簡単です。答えるべき問い、論点が既に設定されているため、ただそれについて考えるだけで問題ありません。
ただ、ビジネスシーンでは自分で問いを作らなければならないことがほとんどです。「利益を上げたい」という目的一つとっても、それを達成するために「どうやって売上を上げるのか」「どうやってコストを下げるのか」といった問いを立てるのか、「製品の品質を上げるにはどうするべきか」「製品の広告費を増やすべきか」のようなより具体的な問いを立てるのかなど、様々な選択肢があります。
もし問いを間違えて設定してしまうと、この先の検討は全く意味のないものとなってしまいます。例えば自社の利益が低迷しているときに、「どうやったらコストを削減できるのか」という問いを設定したとします。けれど、実は利益が下がった原因は競合の新規参入にあり、コストについては既にギリギリまで切り詰めていたとしたらどうでしょうか? コスト削減の方法を議論するのではなく、「どうやって競合に打ち勝つのか」「競合と差別化するためにはどうするべきか」こそが考えるべき本質的な問いになります。
不適切な問いのまま検討を進めるのは、目的地を間違えたまま歩き出すようなものです。課題に対して本当にクリティカルな、「答えるべき問い」をしっかり考えるようにしましょう。
② 問いへの結論をシンプルにまとめる
答えるべき問いが明らかになったら、問いに対する結論をシンプルに書きます。
「この新規事業を行うべきか」のようなクローズドクエスチョンなら、「行うべき」「行うべきでない」のようにYES/NOがはっきりわかる回答を書きます。
「どうやって競合に打ち勝つのか」といったオープンクエスチョンなら、「差別化を行った新製品を作るべき」「認知度向上のためリスティング広告を行うべき」のように、何をすべきかを端的に示す文章を書きます。
問いに真正面から対応する答えをシンプルに示したものが、ピラミッドの頂点に置かれる「結論」になります。
③ 結論を支える根拠を並記する
前述したように、ピラミッドの頂点にある結論とは書き手の主観的な主張に他なりません。そのため、主張の妥当性を担保するための根拠を提示する必要があります。
例えば「認知度向上のためリスティングを行うべき」という結論を導出するには、「予算内でシミュレーションをしたら、投資収益率が100%を超える試算がある」「施策を実施する社内リソースが揃っている」という二つの根拠が必要です。この二つの根拠が結論を支える形になります。
根拠を並記するコツは、並べた根拠同士がMECEになるようにすることです。MECEとは、「モレなく、ダブりなく」という意味です。根拠が網羅的に示されていれば、結論の妥当性も上がります。
上記の例では、施策の効果×実現可能性というフレームワークを使っているため、MECEに根拠を示せています。投資収益率の話が施策の効果、社内リソースの話が実現可能性に対応しています。結論を論証するために必要なことが何か、このようにモレなく提示することが大切です。
ここで並記した根拠についてもさらに根拠が必要な場合、それもピラミッドの下層に追加していきます。「投資収益率が100%を超える」という根拠を成立させるには、その具体的なデータ、エビデンスが必要です。「社内リソースが揃っている」についても同様です。こうして「本当に?」というのを掘り下げていくことで、ピラミッドのすそ野は広がっていき、より精緻な検討結果となっていきます。
まとめ:ピラミッドストラクチャを見直すときのチェックポイント
ピラミッドストラクチャの作り方を解説しましたが、最後に簡単なチェックポイントを記します。
- 結論は問いに対応しているか
- 根拠は結論に対応しているか
- 並列された根拠はMECEになっているか
- 根拠を裏付ける具体的なデータはあるか
ピラミッドを作った後は、これらの観点から見直すことをおすすめします。これらがすべてクリアされていたら、その結論の妥当性はかなり高いと言えるでしょう。
現代の多くのビジネスパーソンには、「複雑な問題を検討し、その答えを簡潔にコミュニケーションする」という難題が課せられています。仕事の背景にある環境が目まぐるしく変化する中、関係者を巻き込みながら素早い意思決定をすることに迫られているのです。
そうした難局の中、ピラミッドストラクチャは人を説得する際の強力な武器として私たちを助けてくれます。しっかりとしたピラミッド構造を土台とした意見は説得的であり、わかりやすくもあります。ぜひ一度、実際に作ってみてください!