近年、IT企業を中心にプロダクトマネジメントという言葉を耳にするようになりました。企業において、プロダクトマネジメントはどのような意義や役割を持つのでしょう。
本稿では、プロダクトマネジメントの仕事内容や必要なスキルについて、わかりやすく解説します。
プロダクトマネジメントとは?
プロダクトとは、製品や商品、成果物、製作物などを意味し、ビジネスシーンでは広くクライアントに提供する製品のことをいいます。形のあるものはもちろんのこと、サービスやシステム、役務といった形のないものも含まれています。
では、プロダクトマネジメントとは、何を意味するのでしょう。
プロダクトマネジメントは単なる製品の管理にとどまりません。クライアントや市場のニーズや抱えている課題を解決し、プロダクトに対するクライアント満足を獲得するところまで行うのがプロダクトマネジメントなのです。
プロジェクトマネジメントとの違いとは?
似た言葉に「プロジェクトマネジメント」がありますが、プロジェクトマネジメントとプロダクトマネジメントには大きな違いがあります。それぞれの性質を比較してみましょう。
プロジェクトマネジメントとは?
プロジェクトマネジメントは、プロジェクト完了を期限とし、決められた期日までに与えられた予算内で、高いクオリティの成果を収めることを目的とし行う管理のことをいいます。プロジェクトの達成に向け、QCD(品質・コスト・納期)が目標値を下回ることのないよう、計画の見直しや軌道修正、課題解決などを行います。
プロダクトマネジメントとは何が違うのか?
品質・コスト・スケジュールなどに視点をあて、管理を行うプロジェクトマネジメントに対し、プロダクトマネジメントは「クライアントの課題解決のためにどのようなプロダクトが必要か」という視点で製品の管理を行います。
また、プロダクトマネジメントには完了時期が予め定められていません。クライアントに対し価値を提案し続けることを目標としています。
「when:いつまでに」「How:どうやって作るのか」が求められるプロジェクトマネジメントに対し、プロダクトマネジメントに求められるものは「what:何を作るのか」「why:なぜ作るのか、なぜ必要なのか」という点です。
そのほか、プロダクトに向き合うか、チームのメンバーに向き合うかという違いもあります。
プロダクトマネジメントはいくつものプロジェクトマネジメントにより成り立っていると考えられています。たとえば、プロダクトを企画する場合、その企画からリリースし振り返りを行うまでのプロセスはプロジェクトにあたります。リリース後に行うアップデートひとつとっても、改善点の洗い出しからリリース、振り返りを行うまでがプロジェクトとして管理されています。
つまり、プロジェクトマネジメントはプロダクトマネジメントの一部なのです。
プロダクトマネージャーとは
プロダクトマネジメントを指揮する人のことをプロダクトマネージャーといい、PDMと略して呼ばれることもあります。このPDMという表記は求人サイトなどでもよく目にするのではないでしょうか。
顧客の満足度を上げられるのはどんなプロダクトか、どのように販路を開拓するかなど、プロダクトがクライアントに提供する、意義や価値を最大化することを目的としたマネジメントを行うリーダーが、プロダクトマネージャーです。
次章から、プロダクトマネージャーの役割や具体的な業務について詳しくみていきましょう。
プロダクトマネージャーの役割
企業におけるプロダクトマネージャーの役割は、ステークホルダーと連携してプロダクトの開発や改善を行い、クライアントの満足度アップや最大利益を生み出すことです。この章では、プロダクトマネージャーの担う役割についてまとめてみました。
プロダクトマネージャーの3つの軸
プロダクトマネージャーは。UX(User Experience:ユーザー体験)・テクノロジー、ビジネスの3つの軸を構築する必要があります。
「UX」はプロダクトを届けたいユーザーが本当に求めているUIやUXを探求し、どうしたら実現できるかを考えたプロダクトを作ることです。
「テクノロジー」はプロダクトの実現可能性を判断する領域にあたります。エンジニアが提案する技術が、コストやプロダクトの目的に対して最適であるかなど、技術面の知見を持った検討も求められています。
「ビジネス」は市場で求められるプロダクトとは何か、収益を上げることができるか、どうやって市場に浸透させるかを判断する領域です。
この3つが交わる部分を管理するのがプロダクトマネジメントにあたるのです。
プロダクトマネジメント・トライアングルとは
プロダクトマネージャーの役割を解説するために欠かせないのが「プロダクトマネジメント・トライアングル」です。
プロダクトネットワークと呼ばれる三角形は、どんなプロダクトにも共通する、プロダクトを取り巻く環境を意味しています。
プロダクトネットワークの中心にはプロダクトがあり、3つの角に開発者・クライアント・ビジネスが置かれ、それぞれに繋がりを持ちます。
開発者とクライアントの間には、カスタマー・技術サポート、データ分析、デザインがあり、クライアントとビジネスの間には、マーケティング、パートナーシップ、ビジネスデベロップメントがあります。そして、開発者とビジネスの間には、プロジェクトマネジメント、社内外調整・資源獲得、プロダクト仕様があります。
これらの役割を健全に機能させることがプロダクトマネージャーの役割なのです。
プロダクトマネージャーの仕事内容
プロダクトマネージャーの役割がわかったところで、具体的な仕事内容について解説します。プロダクトマネージャーの仕事は大きく分けて2つ。それぞれみてみましょう。
プロダクトをより顧客満足度の高いものにする
クライアントに提供する意義や価値を最大限引き上げるために、プロダクトマネージャーは課題設定と仮説検証を行います。
クライアントやカスタマーの抱える課題を深掘りし、原因の究明とともに、プロダクトによる課題解決や改善方法を仮説を立てながら検証します。検証をする上で必要な戦略の策定や計画、デザイン、開発、テスト、リリース、振り返りなど、関連するプロセスに幅広く携わります。
ステークホルダーと連携しチームをまとめること
プロダクトをより顧客満足度の高いものにするためには、各所にいるステークホルダーと連携をする必要があります。ステークホルダーとは、プロジェクトに関わる人々のことを指します。そこにはセールス、研究開発、財務や法務などの社内メンバーだけでなく、クライアントや他社の取引先など、さまざまな立場の人が関わっています。
異なる考えを持つステークホルダーをまとめ、承認を得た上で、プロダクトに関係する意思決定を行い、その責任を持つのもプロダクトマネージャーの仕事なのです。
プロダクトマネージャーに必要なスキル
プロダクトマネージャーは、企業にとって非常に重要なポジションであることがわかりました。社の命運を左右することさえあるプロダクトマネージャーには、どのようなスキルが必要なのでしょう。
本稿の最後に、プロダクトマネージャーとして身に付けておきたいスキルについてまとめてみました。
理解力
プロダクトの課題に向き合うためにも、プロダクトマネージャーは課題に向き合わねばなりません。そのためにも、クライアントやカスタマーが持つ課題やニーズ、その背景を正しく捉える力が求められます。
課題への理解が浅かったり、ズレがあったりすると、課題を本質的に解決するプロダクトを作ることができません。また、クライアントが課題を認識していないケースもあるでしょう。そのような場合でも、潜在的な悩みや課題を引き出し、的確に理解するスキルが求められます。
考察力
課題を理解するだけではプロダクトマネージャーとしては力不足です。そこで求められるのが考察力です。
ロジカルシンキングやシステム思考、デザイン思考など、さまざまな視点を持って考察する力があってこそ、課題を構造的に理解しプロダクトの改善計画を立てることができるのです。
発想力
プロダクトの課題解決に取り組むには、これまでなかった発想が求められることも少なくありません。固定観念や前提に囚われることのない発想力は、プロダクトマネージャーとしての大きな武器になるでしょう。
コミュニケーションスキル
プロダクトマネージャーに限ったことではありませんが、コミュニケーションスキルも欠かすことができません。多くのステークホルダーを関わるプロダクトマネージャーは、コミュニケーションスキルがあってこそ。プロダクトマネジメントを行う過程には、交渉したり共感を得たり、情報を伝達したり、時にファシリテーションをするようなシーンが数多くあります。
ステークホルダーの中心に立ち、リーダーシップをとるポジションゆえ、臨機応変なコミュニケーションが必要です。コミュニケーションスキルがあれば、チームの団結を生み、メンバーを巻き込んだ効率の良いマネジメントが叶うでしょう。
ステークホルダーマネジメントスキル
プロダクトマネジメントを行うにあたり、最も重要ともいえるスキルが、ステークホルダーマネジメントスキルです。優れたプロダクトを作るためにも、ステークホルダーとの良好な関係を築き、関係性を維持することが重要です。
ステークホルダーマネジメントを行うことで、ステークホルダーへのベネフィットの提示や妥協案の交渉などがスムーズに行えるようになるでしょう。
さらには、良好な関係性を築くことだけでなく、ステークホルダーが必要なタスクを計画通り進めているかを管理したり、時には組織内の対立を解決するためのコンフリクトマネジメントを行ったりします。
まとめ
プロダクトマネージャーの役割や意義、仕事内容が明らかになったでしょうか。プロダクトが目まぐるしく進化する昨今、プロダクトマネジメントがこれまで以上に求められています。分野を横断する難しい業務ですが、企業やプロダクトの成長のために、プロダクトマネジメントを意識し、業務に生かしてみてはいかがでしょうか。