「時間がない」と感じる理由は思い込みであるケースが多く、対処することによって解消できます。
毎日時間に追われて「忙しい」と感じている人は少なくないでしょう。しかし、同じ仕事量をこなしている人の中には、時間に余裕がある人もいます。この差はなぜ生まれるのでしょうか。
本稿では、「時間がない」と感じる人の特徴と原因を解説し、時間を効率的に使う対処法を紹介します。
時間がないと感じる3つの思い込みとは
「時間がない」と感じることは、単なる思い込みかもしれません。
時間がないと感じる3つの思い込みとは以下です。
・物理的な時間がない
・やるべきことが多すぎる
・忙しい人は仕事ができる
思い込みを変えることで、時間に余裕が生まれる可能性があります。3つの思い込みについて詳しく見ていきましょう。
物理的な時間がない
時間がないと感じている人の中で、もっとも多いのが「物理的な時間がない」という思い込みです。
時間は誰にでも平等に与えられています。時間が足りないからといって、1日を25時間にすることはできません。では、本当に物理的な時間がないのでしょうか。
厚生労働省が発表した「労働者1人平均年間総実労働時間の推移」によると、日本の労働者1人当たりの平均年間総実労働時間は、昭和35(1960)年の2,426時間をピークに、緩やかに減少しています。
かつて、日本政府は年間総実労働時間を1,800時間に短縮することを目標に掲げていましたが、平成21(2009)年の年間総実労働時間は1,777時間となり、その目標数値を達成しています。
2019年には、時間外労働の上限規制が設けられました。長時間労働の是正は引き続き行われており、年間総実労働時間は今後も減少傾向で推移するでしょう。
これらの結果から、日本の労働時間は確実に短縮していることがわかります。1日24時間であることは、今も昔も変わっていないため、労働時間が短縮した分、プライベートの時間が長くなっているはずです。
つまり、物理的な時間がないという考えは思い込みであり、時間の使い方に問題がある可能性があります。
やるべきことが多すぎる
定期的なミーティングやメールの返信、上司に提出する報告書の作成、クライアントとの商談など、やるべきことが多すぎて、時間がないと感じることはよくある話です。
人材不足や業務の割り振りのミスなどで、本当にやるべきことが多すぎることもあるでしょう。しかし、「やるべきことが多すぎる」という考えも、思い込みであるケースがほとんどです。
たとえば、上司から依頼された仕事の中には、自分ではない他の誰かでもできる仕事があるのではないでしょうか。自分がやらなくてもよい仕事も、自分の仕事に置き換えてしまうことで、自分で自分のやるべきことを増やしてしまっているのです。
やるべきことが多すぎるのではなく、やるべきことの正しい選択ができないことが、時間がないと感じる要因です。
時間がないと感じるほど多くの仕事をこなしていると、人は生産性が向上している感覚になります。しかし、内閣府の発表によると、1人当たり労働時間が10%減少すると、1時間当たりの労働生産性は25%高まるとされています。
生産性の低下を防止するためにも、やるべきことを絞り込む必要があるでしょう。
忙しい人は仕事ができる
常に複数の案件を抱え、いつも忙しそうに走り回っている人ほど、仕事ができる印象がありますが、忙しい人が必ずしも「仕事ができる人」とは限りません。
仕事ができる人には、計画性をもって仕事に取り組める特徴があります。納期や締め切りから逆算し、無理のない計画を立てて行動するため、締め切り間近に焦ることがありません。タスクの優先順位付けも適切で、業務が滞ることもないため、常に落ち着きがあり、忙しい人には見えないでしょう。
一方、無計画でタスクの優先順位付けができていない人は、納期寸前でタスクに取り掛かるため、いつも時間に追われています。周囲から見ると忙しい人に見えますが、実情はタスクの管理ができていないだけであり、仕事ができる人とは到底いえません。
このように、忙しさと仕事の能力は比例しないため、忙しい人は仕事ができるという考えも思い込みに過ぎないのです。
忙しさは長時間労働の原因となり、心身的な疲労やストレスをもたらします。心身ともに疲れている状態では、集中力の低下やミスを誘発し、悪循環に陥ってしまうでしょう。
時間を効率的に使うメリット
時間を効率的に使うもっとも大きなメリットは、心に余裕が生まれることです。
心に余裕がないと、些細なことにイライラしたり、集中力の欠如により仕事のミスが増えたりします。しかし、心に余裕が生まれると、感情の起伏が安定し、どのような状況であっても冷静かつ柔軟な対応が可能となるでしょう。
また、時間を効率的に使うと、より多くの仕事がこなせるようになり、生産性の向上が期待できます。業務時間内に仕事が終われば、残業の必要もなく、自分の時間を確保できます。
確保できた時間は、家族と過ごしたり趣味を楽しんだりなど、プライベートの時間にあてることで、心身ともに健康になるでしょう。また、スキルアップや資格取得の時間にあてると、自己成長につながり、キャリアアップが目指せます。
このように、時間を効率的に使うメリットは相互に連鎖し、さまざまな側面にポジティブな影響を与えます。
「時間がない」と感じる人の特徴と原因
物理的な時間があるのにもかかわらず、なぜ「時間がない」と感じてしまうのでしょうか。その特徴や原因について紹介します。
マルチタスクをしている
複数のタスクを同時並行で取り組むマルチタスクは、適切な方法で行うと業務効率が上がります。しかし、常にタスクに追われる慌ただしさや焦りから、時間がないと感じる原因にもなってしまいます。
優先順位を決めて行動できていない
仕事を効率的に進めるためには、タスクを重要度と緊急度で分類し、優先順位付けすることが重要です。優先順位を決めず、手当たり次第に作業に取り組んでいては、期日の迫ったタスクを慌てて処理することになり、時間がないと感じてしまいます。
作業にかかる時間を把握できていない
作業にかかる時間を把握できていないと、適切な時間配分ができません。30分と想定していた作業が、実際には1時間かかった場合、その他の予定にもズレが生じるでしょう。残業や休日出勤も必要となり、プライベートの時間が削られてしまいます。
スケジュール管理ができていない
スケジュール管理ができていない人は、締め切りや納期を意識せず、目先の仕事から取り組む傾向があります。期日に余裕がない状態で作業を行うため、常に仕事に追われる状態となり、時間のゆとりがなくなります。
無駄な予定を詰め込み過ぎている
時間を無駄にしたくないからといって、予定の詰め込み過ぎにも注意が必要です。すべての予定が本当に「やるべきこと」なのであれば問題ありません。しかし、無駄な予定までも詰め込んでしまっては、やるべきことに取り組む時間が減ってしまいます。
時間の使い方を見直していない
時間の使い方は定期的な見直しが必要です。業務時間内に作業が終わらなかった場合、その原因を突き止め、改善しなければなりません。時間の使い方を見直さなければ、また同じことを繰り返し、時間がない状態が続いてしまいます。
すき間時間を有効活用できていない
5分〜10分程度のすき間時間でも、貴重な時間であることに変わりありません。「5分しかないから」といって、なんとなくSNSを閲覧したり、ボーッと過ごしたりしていては、貴重な時間を無駄使いしていることとなります。
「時間がない」と感じたときの対処法
時間がない状態が継続すると、やがて大きなトラブルやミスに発展する恐れがあるため注意が必要です。
ここでは、時間がないと感じたときの対処法を紹介します。適切に対処し、時間がない状態を解消しましょう。
時間を可視化する
まずは時間を可視化し、時間がないと感じる原因を突き止めましょう。いつ、どこで、何に、どのくらい時間をかけていたのかなど、時間の使い方を可視化することで、問題点や課題点を発見でき、改善に取り組めます。
タスクマネジメントを行う
タスクマネジメントとは、タスクを適切に管理する手法です。各タスクの納期や進捗状況を把握し、適切に管理できれば、時間に追われることはなくなるでしょう。タスクマネジメントは、ITツールを活用すると手軽に行えます。
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タスクマネジメントとは? 正しい方法やコツ・おすすめのツールについても紹介
スケジュール管理を取り入れる
スケジュール管理とは、日時や相手が決まっている予定を管理することです。ミーティングや商談などの予定を時系列に沿って管理するため、無理のないスケジュールを組むことが可能となりでき、時間の有効活用ができます。
周りに助けてもらう
周囲に迷惑をかけたくないからといって、自分の能力以上の仕事をこなそうとする人は少なくありません。しかし、ミスや納期遅れが発生すると、結果として周囲の人に大きな負担を与えます。自分ではどうにもならない場合は、思い切って周りの人に助けてもらいましょう。
やること・やらないことを決める
あれもこれもと、やることばかりが山積みになっている状態は、いつまでたっても時間がないままです。時間がない状態を解消するためには、やることだけでなく、やらないことも決め、タスクの取捨選択を行いましょう。
スキルを磨いて作業のスピードアップを目指す
時間がかかりすぎているタスクや業務がある場合は、スキルを磨いて、作業のスピードアップを図ることも大切です。すでに保有しているスキルに加え、新たなスキルを身につけるのもよいでしょう。スキルを磨くことは、作業の効率化だけでなく、キャリアアップにも役立ちます。
早寝早起きを心がける
生活習慣を整えることも、時間がないと感じるときの対処法です。毎日始業時刻ギリギリに出社し、1日のスタートが慌ただしい人は、早寝早起きを心がけてみましょう。いつもより1時間早く起きるだけで、時間に余裕が生まれます。気持ちにも余裕が生まれ、落ち着いて仕事に取り組めるでしょう。
まとめ
「時間がない」と感じることの多くが思い込みであり、実際にはマルチタスクやスケジュール管理ができていないなど、時間の使い方に問題があるケースがほとんどです。
時間がないと感じたときには、まず時間を可視化し、適切な管理を行いましょう。タスクマネジメントやスケジュール管理のほか、やらないことを決めたり、スキル向上を目指したりすることで、時間がない状態を解消できます。
時間は有限です。ツールやアプリなども導入しながら、時間を有効活用しましょう。