ベンチャー企業がバックオフィスを構築するのに苦戦する4つの理由

企業というのは大きく2種類の職種に分けることができる。それが「事業部」と「バックオフィス」である。この2つの性質はまったく異なる。
事業部門はリスクを取り会社の業績(売り上げ)を伸ばしていくことを目標としている。反対にバックオフィスは事業部門の計画が本当にリスクに見合ったものかを冷静に判断し、必要とあれば止めるといった管理やマネジメントをする部門になる。また一方で事業部の計画を推進・支援する側面も持ち合わせている。企業はこの両輪がうまく連携することで、成長することができる。しかし、事業部とバックオフィスがうまく噛み合うことができるのは、ある程度規模が大きく売り上げが立つ会社である。殊、ベンチャー企業に関しては事業部門の比重が大きくなり、バックオフィスの構築がおろそかになってしまう傾向にある。バックオフィスは直接的には利益を生み出すことがないためである。むしろ人材の採用やツール利用など、費用として出ていく面で見られる。そのためバックオフィスは社員で分担するなどして凌いでいる。だが利益を追うために人材は事業部に傾けて登用することが、かえって利益損失につながるケースも珍しくない。具体例を挙げると

  • 営業活動で関係を作るものの、フォローができず売り上げに繋がらない人脈ばかりが広がってしまい管理コストがかかる
  • 顧客が増えすぎると事務作業が多くなり、もっとも重要な成果物の品質が下がり単発的な売り上げに止まってしまう
  • 法務知識がないための法令遵守ができない、従業員やパートナーへの報酬の不払い、などの企業存続のリスク

安定的に事業を伸ばしていく上で、支えとなるバックオフィスが機能することがで拡大することができる。しかし一部調査(freee 中堅法人調査)によると、500人未満のベンチャー企業のバックオフィス部門メンバーは平均3.7人で、10人未満だと1.2人となっている。この少ないメンバーのなかで事業を伸ばす活動と掛け持ちをしながら、専門性の高い法務・経理・労務などの業務を片手間でやっているのが現状である。

バックオフィスをきちんと構築することが、リスクヘッジになり最終的には業績拡大につながるので、多少のコストがかかっても専門の人材を確保することが重要となる。しかし、実はここが1番大変な部分でもある。ベンチャー企業がバックオフィス人材を採用しようとしても、難しい現状がある。その理由を見ていこう。

ベンチャー企業がバックオフィス人材難に遭う4つの理由

そもそもバックオフィスの人材流動性は高くない

企業内での全従業員のうち、約5〜25%の人がバックオフィスだと言われています。つまり多くて20倍、少なくても3倍の人が事業部でキャリアを積んでいるということになる。

転職サイトDODAを参考にしてみる。営業職の募集が10,000件以上あるのに対して、経理や労務が含まれるバックオフィスの募集はわずか4,000で止まっている。さらに言えば、エンジニアなどの技術職なども加えると、バックオフィスの求人数の割合はさらに小さくなる。

つまりなにを表しているのか?それは、バックオフィスで困っている企業が少ない、もしくわバックオフィスより事業部の人材確保が優先という企業が多く、人材の移動が活発に行われないというのが現状である。

ベンチャー志向が強い若手でバックオフィス経験者が少ない

ベンチャー企業への転職を検討している人には大きく2つの傾向がある。1つは、どんどん成長していきたい若手、もう1つは、大企業の企業体質の嫌悪からフレキシブルなベンチャーへ転職したい人。この両方に共通しているのが、新卒でベンチャーに入る22〜3歳から、いわゆる新卒3年離職の25〜6歳、もしくわ少し伸びて30歳手前までの層が転職でベンチャーを検討する最も多い層である。この年代の多くが1つ目の職域が営業や企画といった事業部となっている。なかなか新卒すぐにバックオフィスを経験している人は少ない。

そうなると必然的にベンチャー企業への転職を考えている人の中から、バックオフィス経験者を採用することは難しくなる。freeeの調査にあるように、ベンチャー企業のバックオフィスは社内の従業員のわずか1.3%である。状況としては教育・指導するという環境や制度が整っていない状態が多い。

一刻でも早く経験者を採用し、バックオフィス機能を確立させたいところだが、それに見合った若手を転職市場では稀な存在である。

バックオフィスでのキャリア経験が豊富な人は、より高待遇に流れる

DODAで見たようにバックオフィスの求人数は少ない。裏を返せば、本当に困っている企業は何としてでも採用をしたいと採用戦略を練っている。そしてそれは報酬という面で大きな差が生まれてくる。

母数の小さい転職市場から良い人材を採用することにおいて、転職者を1番惹き付けるのはやはり報酬である。さらに、バックオフィスを経験している人はある程度キャリアを積んだ人になることが多い。先に挙げた20代後半以降になる。この年代になると新卒や入社3年目までの社員とは報酬額がまったく変わってくる。特にいわゆる大企業になるとボーナスの額の桁が1つ変わる。

さらに人によっては家族を持ったりなど、守るべきものができ安定を求める年代にもなってくる。そうなると不安定で報酬も落ちる傾向があるベンチャー企業への転職を検討する人は少なくなる。人材流動が少ない上に、偏った流れをするバックオフィスの転職市場はベンチャー企業にとって、非常に不利な市場となっている。

1つで複数のバックオフィスを経験している人は少ない

バックオフィスといっても様々ある。経理・人事・労務・総務・財務・広報とあるが、これはあくまで一般的なものである。業界によっては審査など特殊なものもある。

そしてバックオフィスすべてが専門性が高く、エキスパートが多い。ほとんどの人がその道一本で進んできているので、たとえ1人を採用したとしてもバックオフィスすべてを任せられるわけではない。

すべてを揃えようとすると、その分の人件費がかかり経営を圧迫させる。それに耐えうるだけの体質でないベンチャーにとっては、自分がやった方がよいという判断になってしまう。

ベンチャー企業のバックオフィス構築方法

業務支援ツールを使い、外部のパートナーに委託する

バックオフィスは間接売上に貢献はするが、直接的な売上は事業部になる。ベンチャー企業としては、やはりどれだけ売上を伸ばしていけるかが、事業継続の鍵となる。バックオフィス部分への人材登用は必要最低限に抑えたいところである。

その場合はバックオフィスは管理ツールを導入し効率化し、管理しているデータは専門家や業者に委託することが重要である。税理士は昔から外部へ委託されてきた。これもバックオフィスの外注の1つの例である。そして税理士は、会計ツールにデータを入力すれば、それに付帯する手続きなどの事務作業も、引き継ぐことができるようになっている例も多くある。

今後はあらゆるバックオフィス業務、法務・経理・労務などが委託できるようなツールが揃ってくる。ツールを活用することでバックオフィス構築初期時から効率化を前提とするので、規模が拡大したときでも、費用対効果を考えながら組織設計ができる。

バックオフィス代行会社に委託する

支援ツールは結局は自社で管理するものである。効率化したといっても管理コストは少なからず発生する。それすらも惜しいというのであれば、バックオフィス代行会社に委託をする。

依頼をすれば、それに必要な書類作成や法的手続きをしてくれる会社も出てきている。こういった会社はベンチャー企業の成長支援をする会社として存在しているので、かなりコストを抑えることもできる。

例えばBizerを使えば、月額2,980円から人事・労務・経理・法務と幅広くバックオフィスを委託することができる。必要に合わせて代行会社を使うのも検討するとよい。

>>「ベンチャーキャピタルから見た、資金調達ができる企業の特徴」を読む

まとめ:事業とバックオフィスをきちんと噛み合わせることが成長の鍵

直接的に利益を生まないバックオフィスだからといい、費用を掛けないために自分でやるではなく、ツールの導入で労力を軽減し、より利益貢献につながる活動をすることが、ベンチャー企業が大きく成長するために重要となる。

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