世界のウォルト・ディズニーをご存知でしょうか。知らない人を探すほうが難しいかもしれません。
子どもも大人もディズニーのアニメをみて、テーマパークを楽しんだ経験がある人も多いと思います。私も小さい頃は千葉県の浦安市に親戚がいた関係でよく日本のディズニー・ランドやディズニー・シーに遊びにいったものです。
ちなみに私がディズニーアニメで一番、好きなのは『わんぱくダック夢冒険』(ダックテイルズ)という作品で大富豪のお爺さんのアヒルが大冒険をするというお話です。未知の国や遺跡に冒険する話は小さい頃、とてもワクワクしたのをいまでも覚えています。
世界を代表するエンターテイナーのウォルト・ディズニーは3つの人格を使い分けることでアニメーションやテーマパークを成功させました。人格は単純ではなく多面的です。そんな自分のうちにある多面的な人格をうまく引き出しアイデアを実現させるディズニー流のブレストをご紹介します。
3つの人格が生み出したウォルト・ディズニーの数々の偉業
ウォルト・ディズニーの3つの人格は数々の偉業を成し遂げました。
ウォルト・ディズニーは言わずとしれたアメリカを代表するアニメーター・実業家などの多様な顔をもっていたエンターテイナーです。世界的に有名なアニメーションキャラクターの「ミッキー・マウス」をはじめとするキャラクターを生み出しアニメ制作で成功をおさめました。世界初のカラー長編アニメーション映画『白雪姫』をはじめ代表作は枚挙にいとまがないほどです。
また世界的なテーマパークの建設でも大成功をおさめました。現在ではアメリカのみならず日本、中国、フランスでもディズニー関係のテーマパークは興行的に大成功を収めています。
ウォルト・ディズニーが亡くなった後もアメリカのウォルト・ディズニー社は現在、世界的な総合エンターテイメント企業でありニューヨークダウ工業株30にも選ばれている大企業として位置づけられています。
さすがにアメリカのニューヨークダウに選ばれる大企業をつくるのは難しそうですが、ウォルト・ディズニーの思考メソッドは大いに参考になるはずです。しかもディズニーの思考メソッドは難しくありません。
ディズニーのアイデアを実現させた3つの人格とは?
ディズニーのアイデアを実現させた3つの人格をそれぞれご紹介します。人は単純ではなく多面的な存在です。
例えば優しい一面もあれば厳しい一面もあるでしょうし、ひょうきんな面もあれば、真面目な面もあるはずです。あなたのアイデアを実現させるためには、あなたの中にもある3つの面を浮き彫りにします。
①夢想家
夢想家はアイデアを司る人格です。アイデアを実現させたい、偉大な作品をつくりたいなどのクリエイティブな面です。ディズニーの場合はねずみが動いたら楽しい、当時はなかった大人も楽しめるテーマパークを実現したいなどのアイデアを出します。
人には誰しも想像力があるはずです。最近は情報化社会で情報を受けとるばかりで、自分の想像力を発揮する機会が少ない人もいるかもしれません。大人になればなるほど現実的な考えばかりになり自分の夢やアイデアを考える機会も少なくなることもあるでしょう。
しかし、オリジナリティのある考えや「遊び」が仕事になるとよく言われる時代だからこそ、この夢想家の人格を解き放つことを意識してみてはいかがでしょうか。
②実務家
実務家はアイデアを現実に落としこむ人格です。実際にアイデアを現実にするためには、いくら資金調達をしなければならないのか、タイムスケジュールをどのように組めば良いのか、実現するためにはどんなチームを組めば良いのかなどを考えます。
ウォルト・ディズニーが単なる夢想家ではアニメもテーマパークも実際のカタチにはならなかったでしょう。彼はアニメーターであると同時に優れた実業家でもありました。
アイデアを思い浮かべる人はたくさんいても実際に行動におこせる人は決して多くはありません。実際にアイデアをカタチにする段取りを実行する力もビジネスには不可欠です。
③批評家
批評家は実務家が現実に落とし込んだアイデアの問題点を指摘する人格です。例えば、この資金調達の方法はうまくいかない、タイムスケジュールが現実的ではない、この計画では大赤字になってしまうなど実務家のアイデアを粗を指摘します。
ただ単に何も行動せず批評するだけでは生産性がありません。しかし闇雲に無鉄砲な行動を続けていては限りある時間や資金なども尽きてしまいます。
ウォルト・ディズニーが単なる夢想家でも実務家でも現実的なビジネスとしてアニメやテーマパーク事業を成長させることはできなかったでしょう。批評家の一面もあったからこそアイデアを具体的な形として世に出すことができたのです。
ディズニーは3つの部屋でアイデアを生み出した
ウォルト・ディズニーは夢想家・実務家・批評家の3つの人格を綺麗に使い分けるために部屋を3つ用意したと言われています。夢想家のときはミッキー・マウスの部屋、実務家のときはルードヴィッヒ・フォン・ドレイク(ドナルドダックの親戚の科学者)、批評家の部屋は毒舌家のドナルド・ダックの部屋と人格に応じて空間を分けていたのです。
空間を変えるとアイデアも切り替えやすい
居間・寝室・書斎と部屋や空間に目的を持たせることは珍しくありません。私は自分の散らかった部屋では仕事はできませんし、寝室で勉強も落ち着きません。私はよくコワーキングスペースや喫茶店で執筆や仕事をすることが多いのですが、やはり自分の散らかった部屋や寝室よりも空間を変えることで仕事がはかどります。
目的別に空間を変えるのは有効
目的に応じて空間を変えるのは意識を切り替えるのに有効です。くつろぐための部屋、本を読むための部屋と人は古来より生活の中で空間を分けてきました。空間を分けることで気持ちの切り替えも容易になります。
空間を変えられないなら考えるノートや紙を分ける
3つも部屋や空間を用意したり変えることができないならば、考えをまとめるノートや空間を分けてみるのも有効です。例えば夢想家、実務家、批評家のノートと分けてみたり一枚の紙を3つのスペースに区切るなど、それぞれの人格が混ざらないようにするのがポイントです。
ウォルト・ディズニー流ブレストの流れ
ウォルト・ディズニー流のブレーン・ストーミングでは夢想家・実務家・批評家の3つの人格をしっかりと分けて段階的に考えるのがポイントです。夢想家→実務家→批評家の順で人格を切り替えて思考します。それぞれの段階で考えるポイントを見ていきましょう。
夢想家の段階
夢想家の段階では
- どんなものがあると便利か?
- どんなものがあるとワクワクするのか?
- もしもなんでもかなうとしたら?
- なにをしたら楽しい?
- こんな企画があったらウケるんじゃないか?
- 理想の生活は?
このようにWhat to do、つまり何をするかを考えます。このときに気をつけることは一般的なブレーンストーミングと同様に批評や批判をしないことです。クリエイティブなことを考えるときに批評家が同居しているとアイデアがなかなか出ません。そして良いアイデアが出だとしてもすぐに実現可能かどうかを考えずに闇にほうむりさってしまいがちです。
夢想家のステージではとにかくアイデアを出すことに集中し、実現可能かどうかなど水をさすようなことを考えてはいけません。水をさすのは夢想家の役割ではないからです。
実務家の段階
実務家の段階では
- アイデアを実現するための資金は?
- アイデアを実現するために必要なスペースや人材は?
- アイデアを実現するためにはどのような技術が必要なのか?
- アイデアをどのような段取りで実現する?
など、
夢想家が考えたことを現実的なプランに落としこみます。夢想家がWhat to doつまり何をするのかを考えるのに対して実務家はHow to doつまりどうするかを考えます。
このときの段階でも実際に夢想家が考えたことが実現可能であると考えながら行動します。実務家の段階でも一通り結論が出るまでは批評家を登場させてはいけません。実現可能なアイデアの芽を批評家が摘んでしまう可能性があるからです。
批評家の段階
最後に批評家の段階です。批評家は最後の最後まで夢想家と実務家の思考プロセスを邪魔しないことが大切です。実務家の実現可能なアイデアを評価するのが批評家の役割です。
- 計画は利益が出せるのか?
- どんな失敗をしそうか?
- この計画に漏れはないのか?
- そもそも、この計画は実現可能なのか?
- このアイデアを用意ることができない理由は?
この段階ではWhat not to do つまり何をするべきではないのかを考えます。そして、どのような問題が起きるのかを事前に予想します。
夢想家・実務家から引き継がれた実行プランを最終評価するのが批評家の役割なのです。
ウォルト・ディズニー流ブレストの優れているところ
ウォルト・ディズニー流のブレストの3つの人格を段階的に明確に分ける方法には、大きく分けて2つのメリットがあります。わざわざ分けるには理由があるのです。
ひとつずつステップを踏むからアイデアに水をささない
もしも夢想家と批評家を同居させたらどうなるでしょうか。夢想家がせっかくのアイデアを出しても批評家がケチをつけていき夢想家の素晴らしいアイデアをすべて潰してしまいます。夢想家のアイデアのうち本当に実現できるものは少ないかもしれません。しかし有益なアイデアの下には無数の没案があるはずです。
夢想家と批評家を同居させないことで夢想家の想像力とクリエイティブ性を100%出しきるため批評家を外に出してしまうのがウォルト・ディズニー流です。
せっかくアイデアを出す力があるのに「やっぱり無理だな。現実的ではないな。」とすぐに批評してしまっては良いアイデアがうまれる可能性すらなくなってしまいます。
アイデアを現実化できるところまで落とし込める
ディズニー流のブレーンストーミングではアイデアを一連の実行可能なプランまで落としこみやすいのが良いところです。単なるブレーンストーミングではアイデアと実行のプランニングが同居してしまうことも多いため必要な論点を段階ごとに分けて考えられるのが強みです。
ウォルト・ディズニー流ブレストで気をつけるべきこと
人間の多面性をひとつずつ発揮する
ウォルトディズニー流の3つの人格を段階的に分けるブレーンストーミングでは人間の多面性をあえて同居させません。そしてひとつずつ段階的に人格を出していくことで、それぞれの人格のもつ能力を100%発揮させていくのです。人は多面的でときには矛盾しています。だからこそ、多面性を分けて矛盾をなくし段階的に、それぞれの人格がそれぞれの役割を果たせるようにしたのがウォルト・ディズニーの3つの人格を分ける方法なのです。
実際の会議でも論点をしっかり決める
会議やミーティングでも論点からブレないようにするために3つに分けることが有効です。例えばクリエイティブな人材と批評家タイプの人材をいきなり鉢合わせにして会議をはじめてしまうと、話が進みません。
会議でもこの時間はアイデアを出すことに集中する、この時間は実務に落とし込むプランを練る、この時間は実現可能性を検討すると分けることで話し合いが進みやすくなります。
つまり会議でも目的と論点をしっかり定義してからはじめることが大切なのです。
3つの人格を3つの論点にして会議を進める
私はタイの大学講師をする前は日本の小学校で教えていたことがあります。小学校では保護者を集めた会議や子ども同士の話し合いなどをする機会がたくさんありました。
その場限りで集まる保護者同士で保護者会をはじめても論点をしっかり決めないと、それぞれの主張ばかりが飛び交い話が進まないことが多かったなといまになって思います。
また子ども同士の話し合いでも私がしっかり話し合う論点を明示しなかったことから、話し合いの収集がつかなくなってしまったこともあります。
ウォルト・ディズニーの3つの人格を応用するなら、
- この時間はアイデアを出し合ってください。批判は一切しないように。
- まとめたアイデアを実際にできるプランに落とし込むために話し合いましょう。
- このプランの漏れや弱点を指摘しましょう。
このように段階をうまく分けて司会進行できたなと思います。一人で考えるときだけでなく複数人のミーティングでも3つの人格に分けて考える方法は応用可能です。
まとめ
世界のエンターテイナー、ウォルト・ディズニーは偉業を成し遂げるために3つの人格を分けて物事を考えたと言われています。夢想家・実務家・批評家の3つの人格を順番に引っ張り出すことで発想と具体化、評価を分けてアイデアを実現可能なレベルまで育てやすくなります。
そしてアイデアに水をさしてしまいがちな批評・批判を封じ込めることで豊かな発想をしやすくなります。ウォルト・ディズニー流のブレストでブレストを一段階レベルアップできるかもしれません。