私はプロジェクトマネージャーとして、システム開発・システム導入・業務改善などさまざまなプロジェクトを経験してきました。そして今までの経験から、プロジェクトが成功するかどうかは、
「プロジェクト立ち上げ時にどれだけ準備しているかで決まる」
と確信しています。
では、プロジェクトを成功させるために必要な準備を行なう際には、具体的にどんなポイントに注意すべきなのでしょうか。
今回は5つのポイントをご紹介したいと思います。
1.プロジェクトのゴールを明確にする
プロジェクトのゴールを明確にすることはプロジェクトの成否を決めるといっても過言ではありません。
ところが、さまざまなプロジェクトを実際に経験していると、プロジェクトのゴールが不明確なことが実はとても多いのです。
では、なぜ不明確なことが多いのでしょうか?
それは本人たちからすると、自分たちが決めたゴールは明確になっている、と錯覚しているというのが理由の1つとして挙げられます。
私が新人研修トレーニングに使っている例をご紹介します。
例えば、あなたは上司に「新聞をすぐ買ってきて欲しい」と指示されました。
あなたはまず、どんなことを考えますか?
新聞とは一口に言っても、日経や朝日、産経、毎日など種類があります。
また、「すぐ」とは具体的にいつまでなのか?という部分が実は曖昧であることがわかると思います。
これらを明確にすることはもちろん間違っていないのですが、私が伝えたいことは、上司の指示に対して追加で次のような質問ができるかどうか、です。
「なぜ新聞が必要なのですか?何の情報を確認したいのでしょうか?」
つまり、新聞というのはメディア媒体であることを理解して、ゴールの本質を理解しようとできるかが最も重要です。
例えばこの質問をすることで、上司は次のような回答をしたとします。
「Xという会社の合併情報が載っていると知人から聞いたから、それを見たい。」
このように本当に求めているゴールが明確になると、実現方法も具体的に検討することができます。
必要な情報、つまりはゴールが「合併情報を知りたい」というゴールだった場合、X社の公式ホームページで会社合併の内容が掲載されていれば、新聞を買いにいく必要もないかもしれません。
いかがでしょうか?
例は簡易的なものですが、プロジェクトが壮大であるほど本当のゴールというのは抽象的になりやすく、見えにくくなります。
このような場合はゴールの設定に関してプロジェクトオーナーとコミュニケーションをよくとって、本当のゴールは何なのかを明確にする作業を必ずするようにしましょう。具体的であればあるほど成功しやすくなります。
2.プロジェクトスコープも明確に。「やらない」ことも明確にする
1.のプロジェクトのゴールが決まれば、自ずとスコープも決まっていくのですが、1点、注意すべき点があります。
それは、プロジェクトスコープ外も明確にしておくことです。
例えば、システム開発プロジェクトだと、気がつけばプロジェクトゴールで定められていない機能を新たに実装することになった、という経験はないでしょうか?
その場合、いうなればプロジェクトゴールが変わった(追加された)わけですから、成功する可能性が下がる要因となり得ます。
他にも
- システム導入だけかと思ったら業務の整理もすることになった。
- 事業部の業務改善のプロジェクトのはずが、管理部の業務改善もすることになった
など、本来プロジェクトで決めたゴール以外のことが知らず知らずのうちにプロジェクトに盛り込まれていることは実際多いと思います。
こういったことを発生させないことのコツとしては、
1.で述べたプロジェクトゴールを明確にすること
そして、このプロジェクトではやらないこともきちんと明記しておくことをオススメします。
もちろん状況変化により、プロジェクトスコープ外のことも必要になった、というようなこともあるかとは思います。
その場合は、別プロジェクトの立ち上げをすることで、本来のプロジェクト遅延等のリスクを最小限とすべきです。
3.前提&制約条件を明確にする
これもプロジェクト立ち上げ期にはできるだけ明確にしておくことが重要です。
例えば、
- あるシステム開発のプロジェクトが発足した場合、別のシステム開発が完了していないと、プロジェクトを進めることができないという状態であること
- システム導入のプロジェクトではXという業務が整理中であること
など、プロジェクトに着手する前に、あらかじめ完了していないとプロジェクトに着手できない場合は立ち上げ期に明確にしておきます。
また、制約条件はQ(品質)・C(コスト or 工数)・D(納期)を元に書くといいでしょう。
例えば、
- コストの上限は○○百万円
- 納期はこのタイミングを逃すと来期にならざる負えないので、必ず3月までに完了する必要がある
などを制約条件として、プロジェクト立ち上げ期になるべく明確にしておくといいでしょう。
この前提条件、制約条件はプロジェクトに何らかの問題が発生した場合、オプションに対して意思決定する際の判断材料となります。
例えば、コスト上限が○○百万円の場合という制約条件でAとBの機能開発が完了できない場合、Aのみ今期は開発し、Bの機能は来期予算に盛り込んで開発する、といった判断ができます。
4.プロジェクトチームメンバーと役割を明確にする
よくあるのがプロジェクトを立ち上げキックオフしたものの、メンバーが予定通りの動きができない、という状態です。あるメンバーは忙しくて全然プロジェクトに参画できないため、タスクが遅延している。Aさんが担当してくれると思ったタスクをいつのまにかBさんがしているなどなど。
関係者が多いほど、プロジェクトチームメンバーでのタスク分担は不明瞭になっていきます。
後々トラブルとならないよう、プロジェクトに参画するメンバーは誰なのか、また参画するメンバーにはどんな役割を担って欲しいのか明確にしましょう。
そして、プロジェクトメンバーが所属する上長にも、アサインされたメンバーの役割をきちんと共有するようにしましょう。
定期的にプロジェクトメンバーのパフォーマンスを上長に共有するのもオススメです。
5.プロジェクトリスクを初期段階で明確にする
例えば、会計システム開発時に消費税の税率が変わるような事案を知った場合は、税率変更のことを考慮に入れたシステム開発をする必要があります。
もちろん、プロジェクト立ち上げ期にすべてのプロジェクトリスクを書ききることは不可能です。
ですが、初回に書いた後、定期的に見直してリスク対策を別途検討するようにしましょう。
プロジェクトが成功したパターンを振り返ってみると、リスクの洗い出しを事前にできているかが重要なキーとなっています。リスクが洗い出されていると、対策を練る時間があるので適切な対応が取れる可能性が高まります。
プロジェクトの中盤以降になって、さまざまなトラブルが発生する場合は黄色信号です。
一度チームメンバーを集めてリスクの洗い出しと対応方法を検討する場を設けることをオススメします。
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