勤務先の人事課・人事部の社員がどんな仕事をしているか、ご存じですか?実は、人事担当が行っている人事評価業務の中には、社内でキャリアアップしていくためのノウハウが詰まっています。
そこで今回は、人事評価を利用して、効率よくキャリアアップしていくための具体的な方法や、私が人事担当として実際に見てきた成功・失敗例を紹介します。
人事って何してるの?人事の業務を徹底紹介
人事が何をしているのか、実際のところよく分からない…という方も多いのではないでしょうか。
もちろん企業によって業務内容に多少の差はありますが、メインとなる業務は以下の5つとなります。
1.採用業務
まずは新入社員・中途社員の採用業務です。いつまでにどのような人材を何人採用するかを計画し、求人票を作成します。次にその求人票をどの媒体に出すべきか、媒体選定を行います。
欲しい人材の属性によって、求人を出す媒体をアレンジする必要があり、場合によっては転職サイトではなくエージェントに求人を出すこともあるため、様々な媒体とのやり取りが発生するのです。
採用業務の一環として、応募書類の確認、試験の作成・採点、面接官として面接試験を実施するなどの業務も行っています。面接試験は一次面接を人事が行い、二次面接以降は実際に一緒に働く部署の管理職が行うケースが大半です。
2.社員教育
採用が終わったら、次は社員教育(社内人材の育成)を行います。
これは、大きく「新入社員を対象とした研修」と、「中堅~ベテラン社員を対象としたスキルアップ研修」に分けられます。
どちらも人事のみで行う場合もあれば、業務内容に精通する外部機関に委託し、セミナーという形で実施することもあります。
3.人事評価
社員の能力や働き方の姿勢、会社への貢献度が給与に反映されますが、これらの給与に反映される事柄について評価を行うことも、人事の仕事です。
ただし、人事評価については人事ではなく、部署ごとに管理職が業務内容を直接見て評価するという形式をとる企業もあります。
人事評価の結果がポジティブなものであればキャリアや給与も上昇し、評価の結果がネガティブなものであればキャリアや給与は現状維持もしくは下降する可能性もあるのです。
4.労務管理
労務管理とは、就業規則の作成や、社員の勤怠管理、給与の計算といった業務を含みます。労務管理だけでも相当な業務量のため、多くの会社では人事と労務を分けて部署をつくり、業務を分担しています。
ここまでご紹介してきたように、人事は1年を通して忙しく、主に人材に関わる業務をこなしています。それだけに、上記でご紹介した業務の中には、社員の待遇と密接に関わる業務があるのです。
キャリアアップに繋がる人事の業務とは?
では、社員の待遇と密接に関わる業務とは何でしょうか。ここでは、社員のキャリアアップに繋がる人事の業務に的を絞ってご紹介します。
この社員はどれくらい会社に貢献してる?人事評価
人事評価とは、社員の業績や仕事ぶりを特定の期間内で客観的に評価することです。
人事評価の結果は、直接給与の査定や、昇進・昇格の決定に反映されます。そのため、大きくまとめて「社員の待遇」を左右する極めて重要な業務だと言えるでしょう。
人事評価の方法は、業界によっても異なりますし、企業によっても異なります。
基本的な人事評価の方法は、職種(営業、事務など)や職位(主任、係長、部長など)によって評価項目を作成し、5段階評価で評価します。
この時、企業の方針が年功序列なのか、実力主義なのかによって、評価の仕方が大きく変わります。年功序列なら、年齢や社歴を重視する一方、実力主義の場合は社員が業績に直接与えた影響を考慮するのです。
では、人事評価が行われる際、実際にどのような項目が評価の対象となるのでしょうか。具体的には、以下の3つを評価しています。
1つめは、「社員の業績」です。たとえば営業担当の場合は、売上の目標値が個人で設定されているでしょう。この目標値を達成できているかどうかを評価します。
2つめは、「社員の能力」です。たとえば上記の営業担当の場合、新たに業務で能力(スキル)を身に着けたかどうかを重視します。もっと具体的に言えば、コンペの結果、これまで取引実績のなかった企業との取引を実現した…などが該当します。
ここで注意したいのは、どれだけ能力が高くても、等級の範囲内になることが多いということです。たとえば新入社員でまだ等級が低い状態で、どんなに能力があっても、評価に反映される分には上限があって、給料がものすごく上がるとか、異例の昇進が実現するということは極めて稀です。
3つめは、「社員の情意」です。情意評価と呼ばれるこの項目では、社員の業務に対する積極性、チームや他部署との協調性、仕事への責任、職務規定の順守を評価しています。
業績も能力もあまりポジティブに評価できない社員でも、チームのムードメーカー的な役割を果たして間接的に業績アップに貢献していることもあるでしょう。
また、業績や能力にはまだ反映されていなくても、成長途中の社員が積極的に新しい試みに挑戦している場合も、情意評価の面でポジティブに評価されることが少なくありません。
この人はどうやったらもっと伸びる?人材育成・教育
人事の業務の一環として行っている社員教育では、ロールプレイ(役割演技)などを通して日々の業務に対する態度を評価し、その後望ましいとされる働き方の教育を行います。
社員側としては、あくまでも「研修を受けているだけ」「教えてもらう立場」だと思いこんでいる方も少なくありません。しかし、実際にはこのような人材教育や社内セミナーの場面で、情意評価を行っている企業もあります。
どれだけ業績がよくて、能力が高くても、態度を含めて人格的に問題のある社員を昇進させると、結果的に業績の悪化につながる恐れがあります。このようなリスクを管理する目的で、社内セミナー内で情意評価を行い、人格的に問題があるかどうかを人事が見ていることがあるのです。
そのため、社内セミナーだからと言って手を抜いたり、見下したような態度で参加したりすると、給与査定や昇進・昇格で不利益を被って後悔する可能性もあります。
昇進可能性アップ!人事評価を攻略してキャリアアップする方法3選
社内で効率的にキャリアアップしていくためには、人事がどのようなところを評価しているかを把握する必要があります。ここまでご紹介してきた評価ポイントをおさえて具体的に行動することで、何も考えずに働くよりもずっと効率よくキャリアアップできるでしょう。
そのために必要な具体的行動とは何かについて、3つ厳選してご紹介します。
業績評価を意識する!とにかく数字で結果を出す
人事が最も客観的に評価しやすいのが、数字で明確に出る業務の成果です。特に営業・販売職の場合には、契約・販売数に顕著に成果があらわれます。目標値の設定(ノルマ)がある場合には、言うまでもなくこれを達成することがキャリアアップへの近道となるでしょう。
業務が個人ではなくチームで行われる場合には、どの社員のどの仕事が、業績にどれくらい影響を与えたのかが非常に分かりにくいものです。この場合には、他の2項目を意識して、チーム全体の評価アップを狙うことをおすすめします。
能力評価を意識する!アイディアや臨機応変さをアピール
従来の方法では解決できなかった問題に対して、新しいアイディアでアプローチした結果、問題解決につながったというケースでは、分かりやすく評価されやすいものです。
具体的には、従来手作業で行っていて、長時間作業に要していたのに対し、低コストの新システムを導入したら作業効率がアップし、受注件数が増加したというケースが挙げられます。
このような問題解決能力や、新奇性のあるアイディアが出せる人ほど、能力が評価されて効率的にキャリアアップしやすくなるでしょう。
情意評価を意識する!会社の求める人材像を目指す
いつも精神が安定していて、積極的で、周りの和を乱さないことは、情意評価の面でポジティブに評価されやすいものです。いくら業績がよくても、会社が扱いにくい人物だと評価されれば、昇進・昇格はしにくくなります。
会議などでバンバンアイディアを出せば能力評価は上がりますが、他の社員の出した案を高圧的にけなしたり、モメたりすれば、情意評価は下がる…ということです。
ただし、外資系の場合は情意評価を重視しない企業も多いため、外資系企業に勤務している場合は、上記2項目で挙げた「業績評価」「能力評価」に重きを置いて取り組むとよいでしょう。
一方、国内企業で年功序列が残っている企業ほど、情意評価を考慮しやすい傾向にあります。経営者や管理職の立場に立って、扱いやすい人物かどうかということがわかっていれば対策を立てやすいのではないでしょうか。
人事担当が見た!実際にあった人事評価を使ったキャリアアップ事例3選
実際に人事に従事していた私が、この目で見てきた「人事評価を使って効率的にキャリアアップした例」についてご紹介します。
新規開拓横取りで成果評価がアップ!すぐに給与に反映されたA氏
社歴が10年と、ある程度長かった営業職のA氏は、ノルマの達成ができない月が続いていました。しかし、会社全体の業績が著しく悪化した月に、図ってか図らずか、A氏は社歴2年目の新入社員がアポをとりつつあった企業の案件を横取りする形で、大型の契約を締結したのです。
会社として業績悪化の中、A氏の功績は大きく評価され、すぐにA氏にはインセンティブとは別途、給与査定に影響を与え、収入をアップさせました。
社会性がなく営業成績が最下ランクでもマーケティング新案でキャリアアップしたB氏
B氏は人間関係が希薄で、営業成績も今一つ。このままではどこを評価してもキャリアアップは難しいという局面でした。
それまで営業が行っていた紙ベースのマーケティングに対し、マーケティングオートメーションの導入を提案し、実際にデモンストレーションまでこぎつけた行動力とアイディアが評価され、B氏は給与査定にて十分な額を実現したのです。
ムードメーカーで社内ムードを救い、評価降格を防いだCさん
広報を担当していたCさんは、広告媒体による業績がなかなか伸びず、評価されにくい状態でした。しかし、Cさんはいつも明るくすべての社員に平等な態度で接し、会議でも場を和ませる存在でした。
会社の業績が下降気味で、管理職がピリピリしていた時期に、Cさんの業務態度は非常に会社全体の空気をよくしてくれたのも事実です。
Cさんの業務自体は評価されませんでしたが、職務態度が情意評価でポジティブに作用した結果、降格予定だったCさんは待遇維持を実現しました。
人事評価のポイントを抑えて、効率的にキャリアアップしよう
評価基準や項目は、業種によって大きくことなることもあります。今回ご紹介した3つの項目を意識しながら仕事に取り組むことで、何も考えずに働くよりも、ずっと効果的にキャリアアップが目指せるでしょう。
就業規則に評価基準が掲載されている場合もあるため、事前にきちんと確認し、評価基準を常に意識することをおすすめします。