KGIやKPIは、ビジネスシーンにおいて目標を設定し管理するための重要な指標です。目標達成へのプロセスを具体化する指標があることで、効率的に目標を達成できるでしょう。本稿では、KGIとKPIの違いや設定の方法を解説します。
KGI・KPIとは?
KGIとは「Key Goal Indicator」の頭文字を取った略語で、「重要目標達成指標」とも呼ばれています。一方、KPIとは「Key Performance Indicator」の頭文字を取った略語であり、「重要業績評価指標」と訳されています。
KGIは「最終的なゴールを数値化したもの」であり、企業やチームなど組織全体の大きな目標です。売上高や利益率・成約数や顧客数などがこれにあたります。部署やチームに関係なく、組織全員の共通認識として達成を目指します。
KPIは、KGIに影響を与える要素を数値化した指標です。KGIを達成するための手段やプロセス、進捗が適切かを管理し、定量的に評価するために用いられています。
組織の達成目標として掲げられるKGIに対し、KPIは目標の達成度合いを評価する「中間目標」として、各部署やチーム、業務ごとに設定されます。
例えば、「1年後までに組織全体の売上を20%アップさせる」というKGIを設定した場合、「6ヶ月以内に成約数を10%アップさせる」「1年以内にコストを20%削減する」などのKPIを設定することになるでしょう。
KGIやKPIを適切に設定することで、組織の目標が明確になり、部署やチームの方向性が統一され、意思決定や優先順位の判断がしやすくなります。さらに、目標の達成度合いが定量的に可視化されるので、進捗管理や評価も容易になるでしょう。
KGI・KPIの違い
前述した通り、KGIとKPI、両者は異なるものですが、同時に使われることが多いため、混同されやすい言葉です。
「結果」を見る指標であるKGIに対し、KPIは「過程」を見る指標で、最終目標までの中間指標の意味を持ちます。
また、KGIとKPIには、具体化された複数のプロセス(KPI)を経て、最終目標(KGI)が達成できるという相関関係があります。
最終目標であるKGIさえ達成すれば良いのでは?という考えを持つ人もいるかもしれませんが、ほとんどの企業や組織は、複数の部署を持ち、業務を分担して行っています。その個々の業務を単体で見ると、KGIとして掲げた目標は自分ごととして捉えにくく、業務につなげることは困難です。
例えば「1年後までに組織全体の売上を20%アップさせる」といわれても、従業員一人ひとりの業務で見ると、どのような行動を取ればよいか具体的に捉えることができません。そこで必要とされるのがKPIです。売上を20%アップさせるために、自分の部署やチームがやるべきこと、つまり、小さな部門レベルでの業績目標がKPIなのです。
KSF・CSF・OKRとの関係
KGIやKPIに関連する用語としてよく用いられるのが「KSF」や「OKR」、「CSF」です。しっかりと区別して使用する必要がある言葉なので、合わせて覚えておきましょう。
KSF(Key Success Factor)とは
KSFとは「Key Success Factor」を略した言葉で、「重要成功要因」と訳されます。KGIやKPIを達成するためのアクションや要因を定性的に示しています。
KFSを設定する時は、通常、自社のビジネスモデルはもちろん、競合他社や市場の動向などを考慮して、さまざまな要因を導き出します。その中から選ばれた、成功には欠かせないと考えられる要素がKFSになるため、目標達成のための重要なカギといってもいいでしょう。
CSF(Critical Success Factor)とは
CSFとは「Critical Success Factor」を略した言葉で、KSF同様「重要成功要因」と訳されます。CSFとKFSは、ほぼ同義語として使用されます。目標達成のための重要なカギを握っていることも同様です。
OKR(Objectives and Key Results)
OKRとは「Objectives and Key Results」を略した言葉です。「達成目標と主要な成果」や「目標と成果指標」と訳される通り、個人や組織のための目標管理フレームワークのことを指します。
インテル社からはじまったOKRは、Meta社やGoogle社などの有名企業が導入し成果を上げたことで注目され、今ではメルカリやココナラなどの日本企業でも導入されています。
達成目標(Objectives)と、目標の達成度を測る主要な成果(Key Results)を設定することで、企業やチーム、個人が同じ方向を向いて業務を進められるとされています。KGIやKPIとは異なり、人事評価のために活用されるケースが多いでしょう。
KGI・KPIを設定する方法を具体的な事例で解説
KPIになりうる指標やKGIとなる目標値は、業務やビジネスモデルに応じて無数にあるため、適切に設定することが重要です。
ここからは、KGIやKPIを設定する方法を具体的な事例を用いて解説します。
KGIの目標数値を設定する
KPIを設定する前に、KGIを設定します。設定するKGIは、企業や組織全体で共有するものなので、誰が見ても把握でき、人によってズレのないように、具体的な数値を用いて設定するといいでしょう。
数値にすることでモニタリングができるので、うまくいった要因はもちろん、課題や問題点が見つけやすく、うまくいかなかったとしても改善につなげやすくなるでしょう。
KGIの例
- 1年後の決算までに売上高を50%アップさせる
- 3年以内に市場シェア1位になる
ロジックツリーでKPIを洗い出す
KGIからKPIを導き出すには、ロジックツリーを用いて目標に対するプロセスを洗い出すといいでしょう。
ロジックツリーでKPIを洗い出すには、KGIを頂点とし、達成するための要素を分解して書き出して線で結びます。必要な要素を細分化し、計測すべき指標を明確にしましょう。
例えば「1年後の決算までに売上高を50%アップさせる」というKGIを設定した場合、セールスチームのKPIは以下のような指標になるでしょう。
- 新規顧客の成約率
- 見込み顧客の獲得数
- 既存顧客の単価
- 既存顧客の継続率
売上高の対象を新規顧客と既存顧客に分けて、KPIを分解しました。上記のように、KPIはさらに細分化されたKPIへと派生していきます。それぞれのKPIに期限を設定し、具体的な数値を打ち出していくことで、KGIを達成できるでしょう。
ロジックツリーでKPIを導き出す方法や注意点、具体例は下記の関連記事で詳しく解説しています。
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KPIの目標数値を設定する
次に、各KPIに目標数値を設定します。
この時、指標として測れること、自社での改善が可能な数値であることが大切です。経済情勢や他社の動向は、自社ではコントロールできないためKPIとして掲げる必要はありません。
また、KPIはKGI達成を前提とした数値を設定しますが、あくまで実現可能な範囲であることが重要です。非現実的な数値では、モチベーションを下げる恐れがあります。過去のデータや他社のモデルなどを参考に、的確な数値を打ち出します。
ロジックツリーで洗い出した上記のKPIの場合、
- 商談数を月20件から30件に増やす
- アポイント数50%増
- 既存顧客のミーティング実施率100%
のように目標数値を設定できるでしょう。
KGI・KPIを設定する際のポイント「SMARTモデル」
KGIやKPIを設定する時に役に立つフレームワークが、「SMARTモデル」です。
SMARTという言葉は、目標を立てる時に重要な5つの要素の頭文字を取っています。
- Specific 具体的である
- Measurable 測定できる
- Achievable 達成できる
- Relevant 経営目標に関連している
- Time-bound 期限が明確である
SMARTモデルを構成する5つの要素は「成功因子」とも呼ばれており、この5つの要素を満たすように目標を設定することで、目標達成の可能性が高まるといわれています。
SMARTモデルを用いることで、現状を踏まえた現実的な目標や指標の設定ができます。目標達成までに必要なタスクも明確になり、プロセスが把握しやすくなるでしょう。
SMARTモデルを用いた場合、以下のように目標を設定することができます。
セールスチームの場合
S:2023年度の売上を20%アップさせる
M:新規営業を週30件増やし、月10件の新規商談の機会を得る
A:オンライン会議ツールを利用することで効率を上げ、新規商談の数を増やす
R:新規の商談に付随して売上が増え、会社の業績がアップする
T:年度の締め日の3月31日
カスタマーサクセスチームの場合
S:顧客の30%がアップセルやクロスセルを達成
M:顧客とのミーティングを月2回にし、課題のヒアリングを行う
A:チャットツールを用いて気軽にコミュニケーションを取れる体制を作る
R:利用率が上がり、会社の業績がアップする
T:2023年度中
SMARTの各要素が持つ意味や具体事例は、下記記事で詳しく解説しています。KGIやKPIを設定される前に、合わせてご覧ください。
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SMARTの法則とは?目標設定の方法を具体例付きで紹介
まとめ
やみくもに使うと混同されがちで、設定しにくかったKGIやKPIも、その概念や違い、設定方法を理解することで、目標達成の大きな力になるでしょう。ロジックツリーを活用し、KGIやKPIを正しく設定しましょう。
また、KGI・KPI共に、設定して終わりではありません。実際に運用し、数値の変化を追って、必要に応じて設定し直すことも忘れてはなりません。PDCAサイクルを回し、組織の成長につながる目標管理を行いましょう。