- 「この人はどうして人を動かせるんだろう?」
- 「この人の言葉はなんでわかりやすいんだろう?」
こう思ったこと、ありませんか?
私は前職で大手外資系企業に勤めていましたが、筋の良い意見を言える人が共通して持っている力というのがありました。
それは、論理的に考える力です。
コンサルタントに限らず、ロジカルシンキングは仕事をする上での基礎となります。戦略の立案や仕事の進め方、お客さんとのコミュニケーションなど、あらゆる場面でロジカルシンキングは必要です。
ロジカルシンキングと言うと、頭が良い人だけが身に着けられる特別な能力と思っている人もいるかもしれません。けれど、そうではありません。
ロジカルシンキングは誰にでも身に着けられる思考の技術なのです。どんな人でも頭の使い方を少し変えるだけで、思考がとてもクリアになり、問題を素早く整理できるようになります。
この記事では、ロジカルシンキングのトレーニングに有効な“フェルミ推定”の解説と、それを実践するための3つのSTEPについて解説します!
- 「ロジカルシンキングを身に着けたい」
- 「普段から頭を鍛えるコツを知りたい」
- 「お店の売上をサッと概算できるようになりたい」
という人は必見です!
フェルミ推定とは?
フェルミ推定とは、実際に測定が難しい数量を、論理的に推論することです。例えば、以下のような問題を即興で解くときに使われます。
- 「シカゴにピアノの調律師は何人いる?」
- 「都内に郵便ポストはいくつある?」
- 「つまようじの市場規模は?」
こうした問題を解くためには論理的な思考能力が必要なため、採用面接で聞かれることがあります。
実際に、上記のような問題は外資系コンサルティングファームで出題され、そのことがきっかけでフェルミ推定が広まるようになりました。
フェルミ推定は役に立たない?
一方で、フェルミ推定は就活のためのツールで、実際には役に立たないという意見も最近では出てきました。
面接で突飛な質問をするとこで知られているGoogleも、「この種の質問を解き明かす力と、将来業務で発揮できる能力やIQとの関連性に疑問が生じた」
参考:https://www.j-cast.com/kaisha/2013/07/03178573.html?p=all
とコメントしています。
たしかに、面接でフェルミ推定を行なって求職者を試すことは非合理的かもしれません。面接時間は短いですから、業務で必要な専門知識やこれまでの経験を聞く方がよっぽど能力を測ることができます。
ましてや、近年では問題集を解いてフェルミ推定の公式を覚える人も多いため、本来測りたかった地頭を知るには有効な手法とは言えないでしょう。
フェルミ推定を覚えれば日常的に思考トレーニングができる!
しかし、それでも私はフェルミ推定の方法を知っておくことはとても大切だと考えます。なぜなら、日常的に思考トレーニングを行なえるようになるからです。
特に、「この喫茶店、一日の売上はいくらだろう?」「このイベントの来場者数は何人だろう?」と、ビジネスに関するお題を考えることで、次のような力を身につけることが出来ます。
- MECEに物事を切り分ける力
- 経営に関する数字感覚
- 効果的な施策を考える力
これらの力を身に着けるため、ビジネスパーソンならフェルミ推定を覚えておいて損はないでしょう。それでは、「ある喫茶店の一日の売上を考える」というお題を例に、具体的な方法を解説します!
STEP①:ゴールを因数分解する
フェルミ推定のスタートは、ゴールである「売上」を因数分解することから始まります。ビジネス的なフェルミ推定をするときには、以下のように売上を因数分解に分けることが基本となります。
売上=顧客数×客単価
規模が大きい企業の売上を考えるときには「市場規模×市場シェア」で考えることもあります。ただ、今回は喫茶店一店舗の売上を考えるため、顧客数×客単価を採用します。
また、売上ではなく利益を考える場合には、
利益=売上-費用
と分解されるため、費用を考えることも必要になります。
このように、ゴールとなる数字を出すための因数分解を行なうのが初めのSTEPとなります。
STEP②:さらにMECEに分解する
次に行なうのは、因数分解したものを、さらにMECEに分解していくことです。MECEとは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、「モレなく、ダブりなく」という意味です。
例えば、“人間”をMECEに分けることを考えます。この時、
- 「男」「女」
- 「0~20歳」「21~40歳」「41歳~60歳」「61歳以上」
のように分けられていればMECEであると言えます。けれど、
- 「日本人」「アメリカ人」
- 「会社員」「エンジニア」
のように分けられていたら、MECEとは言えません。
一つ目は、日本人とアメリカ人以外の国の人々がモレていますし、2つ目は会社員のエンジニアがありえるためダブりが生じています。物事の全体像を欠かさず、重複なく考えるのがMECEです。
さて、先ほどの公式で言うと、
売上=顧客数×客単価
の「顧客数」と「客単価」をMECEに分けていきます。例えば顧客数について、小売店の場合は以下のように分けられます。
顧客数=1時間あたりの来客数×営業時間
また、個人の営業販売の場合は
顧客数=訪問件数×成約率
と分けられます。ただ、今回の喫茶店のケースでは席数に限界があるため、もう少し複雑になります。
顧客数=席数×満席率(稼働率)×1時間当たり回転率×営業時間
これが飲食店の売上を考える基本になります。
最初のお題からだいぶ深堀できましたが、もっと突き詰めることもできます。
例えば、喫茶店には昼時のピーク時と夕方では混み具合が全然違います。そのため、朝・昼・夜に分けて顧客数を考え、それらを足し合わせるという考えも可能です。
このように、初めのシンプルな公式をどんどん要素分解していくのがSTEP②になります。
STEP③:数字を当てはめて計算する
最後に、分解した数式に対して数字を当てはめていきます。
例えば、「ある喫茶店の一日の売上を考える」というお題が次のように分解されたとしましょう。
売上=席数×満席率(稼働率)×一時間当たり回転率×営業時間×客単価
そうしたら、このそれぞれの要素に入る数値を考えて代入していきます。この時、数字がわかるものについてはそのまま当てはめ、わからないものは経験から推測するのがポイントになります。上の式の場合、席数は簡単に数えられますし、営業時間も調べればわかります。
けれど、だいたいどれくらいで人が入れ替わるのか、一人当たりいくらくらい使うのかは調べても正確な数字はわかりません。そういったものについては、「だいたいこれくらいかな」と数字を考えて当てはめていくのです。
すべての数字を当てはめ終わったら、計算してみます。ここまで行なって概算の数字を出すのがフェルミ推定です。
……が、計算が終わったら最後にぜひやって欲しいことがあります。それは、「実際の数字を調べて答え合わせをする」というものです。自分が計算で出した数字と実際の数字を比べ、どれくらいギャップがあるかをたしかめるのです。
そして、もし実際の数字が計算よりも大きかった場合は、「ひょっとしたら客単価がもっと高いかもしれないな」と、自分の計算のどこがおかしかったのかを見直します。
こうした概算⇒答え合わせ⇒見直しを繰り返すことで、自分の論理的思考力や経営に関する数字感覚といったものがグングン磨かれていきます。
まとめ
以上のように、
- ゴールを因数分解する
- さらにMECEに分解する
- 数字を当てはめて計算する
の3つがフェルミ推定を行なう流れになります。
本文中で紹介した例は、慣れてくればもっと緻密に考えることが可能です。ランチ時は満席率や客単価が変わることを考慮したり、顧客をセグメント分けして回転率や客単価を設定したりすれば、より正確な数字を概算できるでしょう。
普段の生活からフェルミ推定をする癖をつけておけば、論理的思考力をトレーニングする機会が圧倒的に増え、思考の瞬発力が磨かれていきます。
フェルミ推定はロジカルシンキングの基本を体得するのにうってつけですので、ぜひ今日から使ってみてください!