良い人間関係を構築するためには、コミュニケーション能力が必要不可欠です。ビジネスにおける人事考課では、コミュニケーション能力が重視されることも珍しくありません。
「コミュニケーション能力を身につけたい」「コミュニケーション能力を鍛えたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
本稿では、コミュニケーション能力を鍛える方法を解説するとともに、必要なスキルや練習方法を紹介します。
コミュニケーション能力とは
コミュニケーション能力とは、他者と意思疎通をスムーズに図れる能力を指します。
コミュニケーションは、伝える側と受け取る側の相互関係によって成り立ちます。コミュニケーション能力が高い=話が上手というイメージがありますが、伝達力があるだけではコミュニケーション能力が高いとはいえません。伝達力に加え、傾聴力や理解力、共感力なども必要です。
環境や相手との関係性によって、求められるコミュニケーション能力は変わります。臨機応変に対応しながら、相手の情報を柔軟に受け止め、なおかつ自己表現ができる人は、コミュニケーション能力が高いといえます。
コミュニケーション能力を構成する重要な要素
コミュニケーション能力を鍛えるためにもまずは、コミュニケーション能力を構成する重要な要素について理解を深める必要があります。
コミュニケーション能力を構成する重要な要素は以下です。
・バーバル/ノンバーバル(言語/非言語)
・論と情
・前提(前提条件)と双方向性(変化)
コミュニケーション能力を鍛えるためにも、これら3つの要素を理解しておきましょう。
バーバル/ノンバーバル(言語/非言語)
コミュニケーションには、バーバルコミュニケーションとノンバーバルコミュニケーションの2種類に分けられます。
バーバルコミュニケーションとは、言語を使うコミュニケーションです。言語コミュニケーションとも呼ばれ、会話やメール、手紙など、言葉や文字を使用した意思疎通のことを指します。
一方、ノンバーバルコミュニケーションとは、言語に頼らないコミュニケーションです。非言語コミュニケーションとも呼ばれ、表情や視線、声のトーン、身振り手振りなどによる意思疎通のことを指します。
これら2つのコミュニケーションは、無意識に組み合わせている方がほとんどでしょう。しかし、コミュニケーション能力を鍛えるためには、無意識を意識化し、それぞれのコミュニケーションを有効活用することが大切です。
コミュニケーションにおけるメラビアンの法則
メラビアンの法則とは、1971年に心理学者のアルバート・メラビアン氏が提唱したコミュニケーションに関する概念です。
メラビアン氏は、言語情報・聴覚情報・視覚情報の3つの情報に矛盾があった場合、人はどの情報をもっとも重要視するかを検証しました。その結果、表情やしぐさなどの視覚情報が55%、声のトーンやボリュームなどの聴覚情報が38%、言葉や話の内容などの言語情報が7%でした。
メラビアンの法則によると、バーバルコミュニケーションである言語情報の影響はたった7%です。一方、ノンバーバルコミュニケーションとされる視覚情報と聴覚情報の結果を合わせると93%にも及びます。
つまり、コミュニケーション能力を鍛えるためには、バーバルコミュニケーションよりもノンバーバルコミュニケーションを磨く必要があるといえます。
論と情
コミュニケーションの表現には、論理的と感情的の2種類があり、どちらを押し出すのかによってコミュニケーションは大きく変わります。
論理的なコミュニケーションとは、きちんと筋道を立て、論理的思考をベースにした意思疎通です。正確な情報伝達が行えるため、認識のズレが生じにくくなります。
一方、感情的なコミュニケーションとは、気持ちや考え方、価値観に焦点を当てて意思疎通を図ることです。良好なコミュニケーションがとれ、信頼関係を築きやすくなります。
論と情に優劣はありません。論理的に話すべきか、感情的に話すべきかは、時と場合によって異なります。論と情の両方が必要な場合もあるでしょう。
大切なのは、その時々の状況を見極め、より効果的なコミュニケーションをとることです。その判断力が、コミュニケーション能力の向上につながります。
前提と双方向性
コミュニケーション能力を向上させるためには、前提の違いを理解したうえで、双方向性を意識することが大切です。
多くの人は、自分の前提をもとに話をします。自分の前提と相手の前提は必ずしも同じではありません。
相手との前提が異なっていては、認識のズレが生じ、いわゆる「ボタンのかけ違い現象」が起こります。熱心に話をしたとしても、相手の理解は得ることはできないでしょう。
共通認識を得るためには、前提のすり合わせを行い、互いに歩み寄る双方向性のアプローチが必要です。
前提の差異と双方向性なアプローチを意識しておくと、コミュニケーションの質は大幅に向上します。
コミュニケーション能力が高い人が持っているスキル
コミュニケーション能力が高い人が持っているスキルに、アサーティブコミュニケーションとロジカルコミュニケーションがあります。それぞれのスキルについて詳しくみていきましょう。
アサーティブコミュニケーション
アサーティブコミュニケーションとは、相手を尊重しながら、自己主張をするコミュニケーションスキルです。
立場が異なる相手とのコミュニケーションでは、遠慮したり威圧的になったりと、一方的な自己主張になりがちです。しかし、アサーティブコミュニケーションは、まず相手の気持ちに配慮するため、どのような相手とも相互的な意思疎通が可能となります。
アサーティブコミュニケーションスキルは、良い人間関係や良好なメンタルヘルスに寄与します。メンバーとの情報共有もスムーズになり、業務効率や生産性の向上も期待できるでしょう。
▼関連記事
アサーティブコミュニケーションとは?意味や具体例・DESC法についても紹介
ロジカルコミュニケーション
ロジカルコミュニケーションとは、論理的思考をベースに行うコミュニケーションスキルです。伝えたい内容を整理し、相手が正しく理解できる方法でアプローチします。
頭の中では自分の考えを整理できていたとしても、相手に伝えられなければ意味がありません。正しい情報伝達ができなければ、人間関係にも支障が生じる恐れもあるでしょう。
ロジカルコミュニケーションスキルが身につくと、正確かつスムーズな情報伝達が行えます。会議や商談といったビジネスシーンでも役立ちます。
すぐに実践できるコミュニケーション能力を鍛える方法
コミュニケーション能力を鍛えるには、どうすれば良いのでしょうか。
ここでは、すぐに実践できる方法について紹介します。
挨拶を心掛ける
コミュニケーションの基本でもある挨拶は、自ら積極的に行いましょう。
暗い表情や小さな声での挨拶は、相手に不愉快な思いをさせる恐れがあり、かえって逆効果となるため注意が必要です。相手の目を見ながら、笑顔で明るい挨拶を心掛けましょう。
感謝をする
相手に感謝の気持ちを伝えることでも、コミュニケーション能力は鍛えられます。
心の中で感謝していても、相手には伝わりません。感謝の気持ちは言葉にして伝えることが大切です。挨拶と同様、相手の目を見て笑顔で伝えると、より気持ちが伝わります。
結論から話すことを意識する
結論が見えず、ダラダラと続く話し方では、結論が会話に埋もれてしまいます。時間に追われている場合は、相手を苛立たせることとなり、人間関係に悪影響を与えかねません。
コミュニケーション能力を鍛えるためには、結論から話すことを意識しましょう。短時間で必要な情報が伝わるだけでなく、説得力が生まれ、信頼関係も構築できます。
比喩表現や例え話を使う
聞き手の理解をうながせるコミュニケーションをとるためには、比喩表現や例え話を使うことも有効です。とはいえ、身近ではない表現や人によって解釈が変わる例え話では、かえってわかりづらくなる可能性があります。
比喩表現や例え話を使う際には、誰にでもわかりやすいもので例えるようにしましょう。
相手の話を傾聴する
自分の話ばかりをするのではなく、相手の話を傾聴することも重要です。相手の話に耳を傾けることで、「この人は自分の意見を聞いてくれる」という印象を与え、より良い信頼関係を築けます。
相手の心理や気持ちを考えて話す
コミュニケーション能力を鍛えるためには、相手の心理や気持ちを考えて話すことが欠かせません。
相手は今どのような状況なのか、自分に何を求めているのかなど、相手の立場を考慮して話す内容やタイミングを見極めましょう。
相手を否定しない
人は誰しも、否定されたり話を途中で遮られたりすると、不快な気持ちになるものです。
相手の意見が自分とは異なっていた場合でも、否定するのではなく、まずは相手の意見を受け入れましょう。相手を尊重する姿勢を持って会話を進めると、コミュニケーション能力は鍛えられます。
コミュニケーション能力を鍛える練習方法
コミュニケーション能力は練習で鍛えることができます。
コミュニケーション能力を鍛える練習方法を紹介しますので、ぜひ実践してみてください。
エレベータートーク
エレベータートークとは、エレベーターに乗り合わせた程度の短時間で、自分の言いたいことを伝えるトークスキルです。短時間の会話で相手の興味を引き、「この人の話をもっと聞きたい」と次につなげることがエレベータートークの目的です。
エレベータートークのスキルを身につけるためには、端的に話すことを意識します。数十秒間から1分程度で、相手の印象に残るためには、回りくどい表現や無駄な話は省かなくてはなりません。まずは伝えたい要点を書き出してから、無駄な部分を省いていきましょう。
頭の中だけで考えるのではなく、実際に口に出して練習しましょう。
ミラーリング
ミラーリングとは、相手の言葉使いや行動を鏡のように真似して、心の距離を近づける心理的効果のことです。
人は自分と似ている行動をしている人に対して、無意識に親近感や好意を抱きます。例えば、相手と同じスピード感で話す、相手がうなずいたら自分もうなずくなどです。
ミラーリングは、わざとらしさを感じさせないよう自然に行いましょう。ミラーリングをしていることが相手に気づかれた場合、コミュニケーション能力を鍛えられるどころか、不信感を抱かれる可能性もあるため注意が必要です。
バックトラッキング
バックトラッキングとは、相手の言葉をオウム返しのようにそのまま返す手法です。相手の話を傾聴していることを示すとともに、相手に自分が発した言葉を再認識してもらうことが目的です。
例えば、「プロジェクトが無事に終わって安心した」と相手が話した場合、「プロジェクトが無事に終わって安心したんですね」と繰り返します。
相手は「肯定されている」と感じ、安心感を覚えるでしょう。話も弾みやすくなり、コミュニケーション能力も鍛えられます。
パラフレーズ
パラフレーズとは、意味を変えずに他の言葉で言い換えることを指します。難しい表現や専門用語をわかりやすい表現に変え、相手の理解を促します。
相手の話を言い換えたり要約したりすることもパラフレーズです。相手と自分の認識のズレを調整でき、内容を整理したうえで話を進められます。話がまとまっていない場合でも、話の要点を掴んでわかりやすくまとめてあげると、相手は「ちゃんと理解してくれている」と感じ、より良い信頼関係が築けます。
まとめ
コミュニケーション能力を鍛えると、意思疎通がスムーズに行えるようになります。良好な人間関係を構築でき、業務効率化や生産性の向上も期待できるため、ビジネスでは身につけておきたい能力といえます。
気持ちの良い挨拶を心掛けたり感謝をしたりなどを日頃から意識し、コミュニケーション能力を鍛えましょう。